土方歳三ら、西南戦争に参戦す

山家

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第4章 西南戦争の勃発

第4話

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 少し時が前後する。

 本多幸七郎率いる海兵隊員は、私学校生徒らの襲撃を1月30日に受けたのだが、全員が私服を着ていたことから民間人と誤解され、その際には海兵隊員とは気づかれずにすんだ。
 だが、それでも暴行を受けることは避けきれず、2名の重傷者と10数名の軽傷者を出す羽目になった。
 命からがら、本多を含む海兵隊員全員が、何とか赤龍丸に逃げ込み、更に大阪港にたどりついた。
 そして、本多が東京の海兵局に電報を打ったところ、事情聴取のために至急、本多は、東京の海兵局に向かうように指示が届いた。
 そのために、本多は取るものも取りあえず東京に向かった。

 本多が東京の海兵局にたどり着いたのは、2月7日になってからだった。
 海兵局内は緊迫した空気に包まれており、本多をより緊張させた。
 海兵局長室に事情聴取のために入ると荒井郁之助局長に加え、大鳥圭介副局長と滝川充太郎第2中隊長、北白川宮第3中隊長といった海兵隊の幹部の面々も集まっていた。

 荒井が会話の口火を切った。
「正確な情報を、主な幹部全員が共有するために、ここに集まってもらった。
 実際のところ、海兵隊に死者は出ていないのだな」
「重傷者はいますが、死者は出ていません。
 海兵隊以外については私にはわかりません」
 本多は明確に答えた。

 その答えを聞いた他の幹部の面々全員が、沈黙して考え込んだ。
 やがて、沈黙に耐えかねたこともあるのか、滝川がぽつんと言った。
「はめられたな。鹿児島は」
「どういうことです」
 本多が、言葉を発した。

「陸軍省が新聞に情報を流した。
 海兵隊員を含む多数の死傷者が私学校生徒の襲撃により出たと」
「海兵隊に負傷者は出ていますが、死者は出ていません。
 明かな誤報です」
 滝川と本多は、そうやり取りをした。

 荒井が口を挟んだ。
「だから、わざと誤報を流したのさ。
 鹿児島を暴発させて、更に色々と相手を分断するために」
「まさか、幾らなんでも考えすぎでは」
 本多は、反論しかけたが、大鳥がそれを押しとめるように言った。

「陸軍省の発表では、海兵隊員は軍服を着ていて、それに対して私学校生徒が襲撃したことにもなっている。
 ところで、襲撃を受けた時に海兵隊員は軍服を着ていたか?」
「着ていません。あの時、大鳥さんもおられる場で、事前に相談していた通り、険悪な雰囲気になった際に私学校の生徒を刺激するべきではないと考えていましたので、それに作業を行っていたこともあり、私服です」
「それなのに軍服を着用していたことにもなっている。
 幾らなんでも誤報が過ぎると思わないか?」
 大鳥の言葉は、本多の背筋を冷たくさせ、絶句させた。

 大鳥は、本多の反応を半ば無視して、言葉を継いだ。
「正確な情報を、確認したうえで、陸軍省は発表することもできるんだ。
 それなのに正確ではない第一報段階で、大々的に発表する。
 しかも過激な方向でだ。
 こうなると土佐とかの不平士族の面々も鹿児島と一緒に行動することに二の足を踏まざるを得ない。
 一方で鹿児島はますます憤激するが、表立っては大義名分が立たない。
 鹿児島の特権を維持しろという名分では、鹿児島以外からますますそっぽを向かれてしまう」
 
 大鳥の言葉を承けて、荒井が言葉を発した。
「だが、陸軍のやり方は傍から見れば見事なやり口だ。
 犠牲者にされたこちらはたまったものではないがな。
 それに対して、専門家の筈の川路大警視があんな下手をうつとはな」
「まだ何かあったのですか」
 本多は、聞きたくなかったが尋ねざるを得なかった。

 ちなみに、北白川宮殿下は、先程から深く俯いてしまっている。
 本多は、北白川宮殿下が目元に涙を浮かべているのに気づいた。
 これからどんな悲劇が起こるのか、察しておられるのだ。
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