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第9章 鹿児島上陸作戦と鹿児島占領
第9話
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6月21日に、重富に海兵隊は上陸を果たして、鹿児島へと向かった。
そうした中で。
「実戦は初めてか」
第2中隊長の梶原雄之助大尉が、新兵に声をかけるのが、林大尉の耳に聞こえてきた。
鹿児島奪還に一兵でも多く投入したためか、重富は見張り程度の兵しか西郷軍はおらず、半分脅しを兼ねた数発の艦砲射撃で、その兵も鹿児島へと急を知らせに走って行ってしまった。
そのために、重富への海兵隊の上陸は無血で成功した。
上陸後に海兵隊は隊列を速やかに整え、林忠崇大尉の第1海兵大隊は先陣を切って鹿児島へと急いでいたのだが、八代での補充の新兵もそれなりにいる。
そういった新兵の多くが、初の実戦を前に、多くが緊張しきっていた。
「はい」
と新兵が口々に答えた。
「まず、生き延びることを考えろ。いいな」
梶原大尉が新兵に話すのが、林大尉に聞こえてきた。
新兵は顔を思わず見合わせていた。
「敵を倒すのは、まず生き延びてからだ。
歴戦の兵というのは皆、生き延びてこそなれる。
それを頭に叩き込んでおけ」
梶原大尉が新兵に言い聞かせていた。
林大尉は、いいことを梶原大尉はいう、と感心した。
まず、生き延びてこそだ、新兵にはそれがまず第一だ。
そう思っているうちに、西郷軍の警戒線に林大尉率いる第1海兵大隊は接触した。
「いよいよ来たか」
鹿児島奪還作戦の司令官を務めていた別府晋介は、達観した顔をして、海兵隊が迫るのを見た。
その傍にいる桂久武らも、同じような顔をしている。
西からは大口から撤退する西郷軍を追撃してきた政府軍3個旅団が、北からは重富に上陸した海兵隊3個大隊が、鹿児島を攻囲していた西郷軍を、逆に包囲殲滅しようと迫ってきている。
大口から撤退してきた辺見は、別府らに最期の一戦を挑むように訴えたが、西郷さんに合流すべきだという大勢に結局は同意した。
「海沿いを行くのは艦砲射撃を考えると無理だ。何とか山道を抜けるぞ」
別府らは、西郷軍を率いて速やかな撤退を策した。
辺見は1人、意気軒昂で殿軍を買って出た。
蒲生へ加治木へと目指して、西郷軍は撤退を開始した。
「どう見ても山から逃げる気だな」
林大尉は、西郷軍の軍気を見ていった。
「どうしますか」
梶原大尉が尋ねた。
「適度に追撃をかけるが、無理はしない。
窮鼠、猫を噛むというだろう。
自分は噛まれたくない。
このあたりの地理に我々は不案内だ。
下手に山に入ると逆撃されるぞ」
林大尉は、鼻を鳴らすような口調で言ったが、目元が完全に笑っている。
「それが無難でしょうな。
新兵に実戦の空気を味わせるだけにしますか」
梶原大尉も、それに合わせるような口調で返した。
「一応、大鳥大佐の指示は仰ぐがな」
林大尉は大鳥大佐に伝令を走らせた。
大鳥大佐の判断も、林大尉と同様だった。
海兵隊は、形ばかり西郷軍を追撃した後、追撃を止めた。
一方、大口から来た陸軍は、西郷軍の追撃に掛かった。
結果的に、鹿児島救援の名を海兵隊が取り、鹿児島救援の実を陸軍が取った。
そして。
「海兵隊が来てくれたぞ」
見張りの声が、鹿児島中に響いた。
鹿児島を死守していた陸軍、海兵隊、警視隊の面々は全員蘇生の思いがした。
幾ら港からの補給があったとはいえ、陸路は完全に包囲されているというのは重圧だった。
それが6月22日の夕方、ようやく終わったのだ。
「土方少佐、誠の旗を持って先頭に立って、鹿児島に入ってください」
「俺は見世物じゃないぞ」
「いいじゃないですか」
第3海兵大隊は、鹿児島へ入る際に、土方少佐を先頭に立てることにした。
土方少佐は嫌がったが、永倉新八らが押し切った。
その光景を見て、写真師が土方少佐の写真を撮り、犬養毅らが記事を書き、更に多くの新聞を飾ることになった。
そうした中で。
「実戦は初めてか」
第2中隊長の梶原雄之助大尉が、新兵に声をかけるのが、林大尉の耳に聞こえてきた。
鹿児島奪還に一兵でも多く投入したためか、重富は見張り程度の兵しか西郷軍はおらず、半分脅しを兼ねた数発の艦砲射撃で、その兵も鹿児島へと急を知らせに走って行ってしまった。
そのために、重富への海兵隊の上陸は無血で成功した。
上陸後に海兵隊は隊列を速やかに整え、林忠崇大尉の第1海兵大隊は先陣を切って鹿児島へと急いでいたのだが、八代での補充の新兵もそれなりにいる。
そういった新兵の多くが、初の実戦を前に、多くが緊張しきっていた。
「はい」
と新兵が口々に答えた。
「まず、生き延びることを考えろ。いいな」
梶原大尉が新兵に話すのが、林大尉に聞こえてきた。
新兵は顔を思わず見合わせていた。
「敵を倒すのは、まず生き延びてからだ。
歴戦の兵というのは皆、生き延びてこそなれる。
それを頭に叩き込んでおけ」
梶原大尉が新兵に言い聞かせていた。
林大尉は、いいことを梶原大尉はいう、と感心した。
まず、生き延びてこそだ、新兵にはそれがまず第一だ。
そう思っているうちに、西郷軍の警戒線に林大尉率いる第1海兵大隊は接触した。
「いよいよ来たか」
鹿児島奪還作戦の司令官を務めていた別府晋介は、達観した顔をして、海兵隊が迫るのを見た。
その傍にいる桂久武らも、同じような顔をしている。
西からは大口から撤退する西郷軍を追撃してきた政府軍3個旅団が、北からは重富に上陸した海兵隊3個大隊が、鹿児島を攻囲していた西郷軍を、逆に包囲殲滅しようと迫ってきている。
大口から撤退してきた辺見は、別府らに最期の一戦を挑むように訴えたが、西郷さんに合流すべきだという大勢に結局は同意した。
「海沿いを行くのは艦砲射撃を考えると無理だ。何とか山道を抜けるぞ」
別府らは、西郷軍を率いて速やかな撤退を策した。
辺見は1人、意気軒昂で殿軍を買って出た。
蒲生へ加治木へと目指して、西郷軍は撤退を開始した。
「どう見ても山から逃げる気だな」
林大尉は、西郷軍の軍気を見ていった。
「どうしますか」
梶原大尉が尋ねた。
「適度に追撃をかけるが、無理はしない。
窮鼠、猫を噛むというだろう。
自分は噛まれたくない。
このあたりの地理に我々は不案内だ。
下手に山に入ると逆撃されるぞ」
林大尉は、鼻を鳴らすような口調で言ったが、目元が完全に笑っている。
「それが無難でしょうな。
新兵に実戦の空気を味わせるだけにしますか」
梶原大尉も、それに合わせるような口調で返した。
「一応、大鳥大佐の指示は仰ぐがな」
林大尉は大鳥大佐に伝令を走らせた。
大鳥大佐の判断も、林大尉と同様だった。
海兵隊は、形ばかり西郷軍を追撃した後、追撃を止めた。
一方、大口から来た陸軍は、西郷軍の追撃に掛かった。
結果的に、鹿児島救援の名を海兵隊が取り、鹿児島救援の実を陸軍が取った。
そして。
「海兵隊が来てくれたぞ」
見張りの声が、鹿児島中に響いた。
鹿児島を死守していた陸軍、海兵隊、警視隊の面々は全員蘇生の思いがした。
幾ら港からの補給があったとはいえ、陸路は完全に包囲されているというのは重圧だった。
それが6月22日の夕方、ようやく終わったのだ。
「土方少佐、誠の旗を持って先頭に立って、鹿児島に入ってください」
「俺は見世物じゃないぞ」
「いいじゃないですか」
第3海兵大隊は、鹿児島へ入る際に、土方少佐を先頭に立てることにした。
土方少佐は嫌がったが、永倉新八らが押し切った。
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