R18 硝子少女は夢を見る

きゃっさば

文字の大きさ
11 / 20

しおりを挟む
この世界に来てから、絶対に未来には不安しかないと信じて疑わなかったのが馬鹿みたいだ。

不安や絶望でぐるぐると渦巻いていた心の中は今は不思議と落ち着いている。

自分より理不尽な目にあった人の話を聞いたからだろうか。

「リティアさん。私、転生してみたいと思います。」

まだ不安は残っているし、トラウマが消えたわけではないけれど、私の心の中には確かに今までなかった未来への期待と希望がつまっていた。 

すると

『うわーーーン!!!よかったわぁ!!』

リティアさんが綺麗な顔からボトボトと涙をこぼしながら勢いよく私に飛びついてきた。

「わぁ!..?え????」

好みの顔の女性に抱きつかれながら泣かれているこの状況にワタワタしてしまう。

え、なんかめちゃくちゃ良い匂いだし!?

胸にとっても柔らかいものが当たってる気がする!!!!?

それに、私のために泣いてくれているのがひしひしと伝わってきて、嬉しくて、嬉しくて、、

「あれ..??」

気がつくと私の目からもポタリと涙が出ていた。

今日は泣いてばっかりな気がする。

『良いのよ。泣けば良いの!胸の中に感情を溜めすぎるのは身体に毒だから。前世での悲しみはたくさん泣いて、ここに置いていきましょう!』

そこからは声も出なかった。今まで溜め込んでいたのだろう涙が滝のように溢れた。

リティアさんは私が泣いている間私と同じくらい泣きながら私を抱きしめてくれていた。

ぐすぐすと泣き続けどれくらい経ったのだろう。涙は出なくなっていて、頭の中はスッキリ透明だった。

私の顔はふやけてしまいぐしゃぐしゃで、顔を押し付けていたリティアさんの服はもっとぐしゃぐしゃで。

申し訳ないと思ってパッと顔を上げると私と同じくらい顔がぐしゃぐしゃなリティアさんと目があった。


2人でじっと真顔で見つめあったあと、なんだかおかしくなって2人でゲラゲラ笑った。

なんだか、大きな悲しみを2人で共有して、吐き出した。そんな不思議な感覚に包まれていた。

『なんだか疲れちゃったわね。ふふふ。』

「そうですね。」

疲れるなんて感覚は久しぶりだ。

『休息は誰にでも必要だわ。』

そう言ってリティアさんは母がよく作ってくれた、ほかほかのポトフとハンバーグをテーブルの上に出した。

クゥと私のお腹が鳴ってしまい顔が熱くなる。

『ほら!遠慮しないで!』

ぐいぐい進められるがままにハンバーグを口に入れると、さっきまでとは違いちゃんと味がした。

母が作ってくれた思い出そのままの味で枯れたはずの涙がまた溢れた。

「..美味しい。です。」

『良かった。』

リティアさんは呟くように返事をし、

『さぁ!たくさん食べて!あとお水も飲むのよ!』

「はい!!」

食べて飲んで食べて、食事とはこんなに楽しくて美味しいものだったのか!と感動した。

全部食べ終わると、今までの疲れからか眠くなってしまった。

『こちらへいらっしゃい』

ずっと隣にいたと思っていたリティアさんは気がつくと部屋の奥にあるベッドの上に座っていた。

花に吸い寄せられる虫のように足が勝手に動いた。

私が10人寝ても余るんじゃないか、という大きさのベッド。

促されるままに横になるとそこはとってもふかふかで、雲の上に寝転がっている気分だった。

リティアさんに背中をトントンと叩かれると自分でもびっくりするほど眠りに落ちていくのがわかった。

ぼやける視界の中でリティアさんが慈愛に満ちた目で私を見ていたことだけは覚えている。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

処理中です...