R18 硝子少女は夢を見る

愛

最初から考えられた名前が出ているにもかかわらず、バルッサは冷静でした。

「では、私の考えた名前を発表しよう。

グレース

だ。

この名前には神の恵みという意味が込められている。

彼女こそ、神々から与えられた私達の恵みであり、この名前こそがふさわしい。」

それを聞いてカティがフッと笑います。

「神に捧げる？神からの恵み、ですって？

貴方達何にもわかってないわ。」

自信満々に、そして妖艶に微笑む彼女に視線が集まる。

「この子を神に捧げるなんてとんでもない。貴方達は、この子が誰かのものになっていいって考えているの？。

それに、神からの恵みというのも気に入らないわ。

この子が輝いているのは、神達のおかげではなくて、この子自身の輝きよ。」

アンナとバルッサは悔しそうにうめいた。

彼女を崇拝するあまり、彼女自身のことが見えていなかったのだと気づかされ二人は愕然とした。

「貴方達が、この子のことを思ってくれているのはわかっているから、あまり落ち込まないで頂戴ね。

だけど気付いてほしかったの。この子はこんなに輝いているけれど神ではないわ。

私たちと同じ人間よ。」

ふう、とため息をつき、彼女はまた口を開く。

「私が考える名前は　　

ルーナ

よ。

この名前は、我が国の月の女神ルーナティア様から頂いたものよ。

この子の月のような静かなきらめきを見て決めたわ。

そして私はこの子が将来暗闇で人々を照らす人間になってほしいと思っているの。

美しいから、そして力があるからこそ傲慢になり、ひどい人間になってしまった人を私は何人も見てきた。

私たちの子供に生まれたのだからそんな人間には絶対させないわ。

たっぷりの愛を与えつつ、この子が間違えた時には正してあげなければ。

それが親ってものでしょう？

今のこの子は神になる器がある状態なのではないかと私は考えているのそれを完成させるのは彼女自身であって、私たちではないわ。

この子がこの世界でできるだけ平和に、そして幸せに暮らしてほしいという願いを込めて、この名前に決めたわ。」

慈愛と決意に満ちた表情でカティはそう言い切った。

愛の深さが伝わってくる名前に一同黙り込む。

「完敗ですね。」

アンナは悔しさも感じていないような晴れやかな様子でそう言った。

「そうですね。」

バルッサもそれに同意した。

ただ崇拝するのではなく彼女のことをもっと知り考えよう。

強敵二人が母の愛というものに破れ、そして考えを改めた瞬間だった。

そんな中、公爵はカティのあまりにも素晴らしい意見を聞いて私はこれに勝つことができるのだろうかと震えていた。