堕ちる犬

四ノ瀬 了

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お前は本当に酷い悪魔みたいな奴だよ。

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正午、美里がマンションの駐車場に車を入れたと同時に澤野が出てきた。

立場が上の人間ほど時間には遅れてくるものだが、澤野は誰と仕事をする場合でも時間に遅れることがなく、下の者が万が一遅れた場合にも、緊急時以外はかなり大目に見ていた。

美里はそれを甘いと何度か伝えていたが、彼は「人には向き不向きがあるから、習慣を矯正しようとしても治らない者は治らない。それよりも向いている能力を伸ばせばそれでいい。」と言って取り合わなかった。結果として澤野が逆に何も言わないのを皆が恐れ、澤野がいる場合ほとんど誰も遅刻しないような状況が生まれた。

彼はいつものように無言で助手席に乗り込みノートPCを開いて何か始めた。
シャワーを浴びたばかりなのか甘いミントのような匂いをむんむんと漂わせ、煙草臭かった車内の淀んだ空気が上書きされた。

美里は何か話しかけようか迷ったがそのまま車を出し、似鳥の経営する風俗店の入ったビルに向かった。
シノギの回収と経営状況の確認だ。澤野にも顔合わせくらいさせておく必要がある。
暫く走らせると、澤野がPCを閉じてクマのある目を不快に眩しそうに細めた。

ジャケットのポケットから、今まで見た事がないサングラスの端が飛び出ていた。
かけるのか?と見ているとそれをかけ始めたので、面白くなってしまう。第三者から見ればよく似合っているし、威圧感が増して良いのだが、見知った人間の見たことがない姿というものは面白いものだ。

「お前、なんだそれは?」
「は?」
澤野がそれをかけたままこちらを見るので、軽く眉をひそめ面白い気持ちをこらえた。

「ヤクザのコスプレか?似合ってねぇんだよ。」

澤野が、サングラスの下でどんな表情をしているのか読めないが、間を空けて軽く声を上げて笑い始めた。サングラスに手をかけて軽く下にずらし上目遣いで美里の方をじっと見つめた。
奇麗にバランスのとれた双眸が細められている。日の光に照らされて普段より一層奇麗な瞳の色をしていた。双眸のすぐ上に整えられたシャープな眉は彼の気の強さを醸し出している。しかし、目の下のクマが徹夜明けだということを語っており、瞳孔が若干開き白目の端が赤く、悪い言い方をすれば狂気じみた目つきをしていた。

「そうだよ、ヤクザのコスプレだ。似合っているだろ。……ま、こんなもの、俺が自分で買ったわけじゃないけど。」

彼の口角の上がった口が開くと、きれいにお行儀よく並んだ歯がよく見えた。普段好んで人と話さない割に、声を出す時に口を大きく開いてはっきりとした口調で話す。
「女にでももらったんか?」
澤野はサングラスをかけ直し、前を向いた。
「お前が似合っていないと笑っていたことを贈り手に言っとくよ。」 
「は?」
「二条さんが徹夜明けの俺の目付きが最悪だからと言ってくれたんだよ。どうせ今日会うだろ。うるせぇから、媚び売っておくんだよ。」

美里が何か言おうとすると助手席の窓が全開に開けられ、ごうごうと風が入り言葉が全て掻き消された。
あてつけるように車を飛ばして目的地に辿り着き、澤野を置いて先にビルに入った。
先に自分が挨拶して、問題なさそうならそのまま澤野を紹介する手はずだ。車から降りると日差しが目を刺し舌打ちが出る。ビルの入口の階段を何段か上ってからふりむくと彼はポケットに手を突っ込んで助手席に深く腰掛けこっちを見もせずに「暑いんだから早くしろよ」と言った。

霧野は、美里がビルの中に消えてから、美里の煙草を拝借して車内でふかしていた。
座席を倒し、しばらくそうして晴れ渡った空を見上げていると、ビルの窓から美里が顔を出し口パクで「こい」と言っていた。それから勝手に煙草を吸っていたのが気に食わなかったのか中指を立ててから窓の向こうに消えた。単純な奴だ。 

煙草を吸いたいわけではなく、穢れた臭いをつけておきたかった。清涼感ある香りで似鳥の前に立ち下手になめられると面倒だ。
似鳥という男については調べが済んでおり、美里の口からも彼の知っている情報を聞いている。川名の組の更に上層部の組のOBで、戦闘狂、拷問狂、色欲狂の最悪の種類の人間だ。一生関わりたくない。立場上こちらの方が上なのだ、気を使う必要はあるが、ある程度は強く出るべきだ。

彼の息のかかった店は多く組への影響もまだ残る。風俗店など違法性が高い店以外は泳がせて繁盛させておけばいいが、児童売春や人権を無視した従事者への扱いを行う店については対処が必要だ。
吸いかけの煙草を運転席のドリンクホルダーに備え付けられた携帯灰皿にねじ込み、車を降りた。



「あんな激しいもん目の前で見せられたらそりゃあ勃起もする。」
「ふーん……、そんなもん俺らに見せつけられてもね、困りますよ。」

似鳥の一物が、露出、勃起していた。
彼の向かいのソファに座った美里は背に深くもたれ、煙草を吸いながら冷めた目で一物を見下していた。隣に霧野を座らせたままにして様子を見ていた。少し離れていても精のキツイ臭いをむんむんと周りに振りまき鼻につく。

二条はあの後、電話がかかってきて広間から出ていったきり戻ってこない。出ていく寸前の会話の電話口の口調、二条のキレ方からして大方間宮だろう。彼がここにいたらこんな風に霧野を休ませることなど無理だったはずだ。どれだけ言ったとしても彼らには理解できない。

似鳥はソファの上で2人の女に密着するようにして挟まれていた。右隣に明るいロングヘアを巻き紺のドレスを着た女が微笑み、左隣に紺の髪にショートカットで黒いピッタリとしたドレスを着込んだ女が無表情で座っていた。

横目で霧野を見ると、膝に肘を置き俯いて手錠で繋がれた両手で顔を覆っていた。さっきからこの調子で何を考えているのか分からない。身体の震えはだいぶ収まっているが、これではまだ使い物にならない。

似鳥は粘っこい目つきで霧野と美里を見据えていた。
「あんたらが楽しんでる間、あんたらのご主人様に許可とったからね。今度はすぐに出すから、こっちに来て、しごくか、しゃぶってくれないかい。」
似鳥は明らかに美里の方も視野に入れていたので、わざとらしく目を逸らす。
「きもちわりぃな……俺の方を見ないでくれませんか?用があるのはコイツでしょ。」

霧野は顔からゆっくり手を離すと、しばらくの間伏し目がちに無表情に床のあたりを見てから目を上げ、屹立したグロテスクなタワーの様な物を目にした。

気持ちが萎え、なにもかもどうでもよくなってきていた。途中まではどうにか逃げる隙、外部と連絡を取る手段などないか考えていたが、今は早く全部終わらせて帰りたかった。しかし帰ったところで余計にチャンスは無くなる。

霧野は口の中で何か唱えるようにしてブツブツ言ってから立ち上がり、ゆっくりした歩調で向かいのソファの方へ向かった。美里は一言何か言って行かせてやろうと思っていたので、彼の意外な従順さに驚きつつ様子を見ていた。

似鳥は目の前に立つ男を見上げた。照明の影になって表情が分からない。
「その手錠じゃ手でするのは無理だな、口だ。疲れているかもしれないがすぐに済む。」
美里は似鳥の様子と言葉にも意外性を感じ言った。
「へぇ、やけに優しいじゃないすか。」

霧野は似鳥の足元に跪き、それの根元あたりを触り顔を近づけた。似鳥と女二人の6つの目がそれを見下ろしている。霧野は「肉棒を見たら口に入れる」ということだけをさっきから頭の中で繰り返しそれ以外のことを何も考えないようにしていた。

しかし、初日に見せつけられて驚嘆し問答無用でぶち込まれたグロテスクな一物を間近に見、臭いを感じることは、霧野に恐怖を蘇らせ、長時間に及ぶ残酷な仕打ちを思い出させた。

治りかけた肛門の裂傷痕がじりじりと痛みだし背中に汗がつたい傷にしみ始めた。
初日の記憶の中で木崎の死体とそれを強姦、処理する美里の記憶までフラッシュバックし、身体が僅かに震え始め、背後に座っている美里の存在さえ恐怖として感じ始めた。
「怖いのか?大丈夫だ、いきなりつっこんだりしないから素直に好きなタイミングでやってみろ。」
美里は今の霧野にかけるには、あまりに優しい言葉を吐く似鳥を驚嘆の眼差しで見つめた。

怖いのかと聞かれて怖いと言えないのが霧野の性格であり、似鳥の言葉が意外にも霧野の意識を初日の記憶から現在に取り戻した。「肉棒を見たら口に入れる」仕事の延長として、それをゆっくり口に含み舐め上げ始めた。

そこそこの雄の臭いが鼻をついたが、さっきまで男達に犯されまくっていた口の中では最早大した刺激ではなかった。こりこりとしたピアスの先端が口内の肉を刺激し妙な気分を湧き出させてくる方が気になった。他人の気持ちの悪い男根をしゃぶって気分を出すなどあってはいけないことだと思うほど、霧野の身体はそれに歯向かうように軽く発情した。

一定のリズムで粘着質な音を立てながら舐め立て吸い上げていると、似鳥の言葉通りすぐにゆるりとした暖かい液体が舌の上に吐き出された。口から肉棒を取り出し喉を動かして中に出されたものを飲み込んで息を吐いた。2、3度呼吸すると他の者の出した液体と自分が胃の奥から出した液体が混ざりあいもう、誰の何なのかわからない。

「上手いな。3日でこれか。大したものだな。天才なんじゃないか。」
似鳥がそういうと紺のドレスの女が眉を下げながら口を開いた。
「なぜこんなことをさせるのか理解できない。ケジメにしても酷すぎる。似鳥さん助けられないの?」
「俺に言われても、何の権限もないからねぇ。組長がコイツに飽きて俺のとこ回すとか懲罰のために回すとかそういうことでもないと。まぁ、そうなったとしても『今』使えることが解ってしまった以上、自由にしてやるのは厳しいな。なぁ、お前より上手いんじゃないか?」

似鳥はようやくニヤけた視線を美里に合わせた。
美里は何の感情も無い顔で彼を見返した。 

美里は似鳥が霧野を制裁する為でも自分が気持ちよくなる為でも何でもなく、霧野が1つの商品として使えるか品定めするために咥えさせたことを悟り、一瞬でも彼に優しさが存在するなどと思ってしまったことが馬鹿らしくなった。

「ねぇねぇ、似鳥さん。私も霧野君に舐めて欲しいんだけど。」 
黒のドレスの女が言うと、似鳥はひとしきり笑ってから、霧野を見下げた。
「馬鹿言うな。お前、こいつの中は今ここにいる男たち殆どの精液まみれだぜ、こんなもんの舌を中に入れられてみろ。誰のか分からん子種受精させられるぞ。はははは、蜜蜂みたいなもんだな。」
「蜜蜂?」
「そうだ、知らんのか?蜜蜂は蜜を求めて花の周りを飛びまわり身体中をだらしなく花粉にまみれさせ、他の花に擦り付けて受精させるのさ。それと同じだよ。……霧野君、今のお前はチンポを女に挿れてやることなど決して許されないから、子孫は残せないかもしれないが、その口で人間同士の性行為を手伝うことは許されるかもしれないねェ……?次は後ろだ。中を見せてみろ。チンポのデカさとマンコが何センチ開くか中を点検してやる。」

3人が下品に笑っている足元で、霧野は黙って下の方を見ていた。あまりの侮辱に途中から何を言っているのか聞き取れず頭がキリキリと痛み、体が熱を帯びていた。しかし、先程の性暴力の余韻がまだ彼の身体を浸しており、何も言うことが出来ない。身体がおかしな感じ方をし始めてどうしたらいいのかわからない。

美里は立ち上がりながら、テーブルに置かれた灰皿で雑に煙草の火を消し込んだ。
霧野が打ちのめされたように、しかし軽く息を荒らげながら呆然としているのを見て何となく嫌な気分になった
。今、彼は何も考えられず「他の奴に責められても俺のことを考えておけ」という美里の言いつけを守っていないことになる。ただ、美里は今すぐ怒ってやる気にはなれなかったし、似鳥の前で何かを言って巻き込まれ事故になるのはもっと嫌だった。

粘付いた視線が熱を持ち、地面に這いつくばった霧野の周囲だけに漂っている。誰も美里を見ない。視線というのは本当に気持ちが悪い。人にじろじろ見られると腹が立つ。

下座の方には熱気や臭気に澱んでいたが、上座に行くほど空気がまともに澄んでいた。まるで何も起きていないかのように。

テーブルの上を見るとコース料理のスープと1品料理が幾つか来ており、美里の席には何の手もつけられていないコース料理が詰められて置かれていた。

「おう、遅かったじゃん。何してたん?」
竜胆がにやにやしながらくわえ煙草で上目遣いに美里を見上げた。
「可愛い顔して、よくも自分の元パートナーみたいな奴にあんなことできるねぇ、俺らは見てて楽しいからいいけどさ、お前は本当に酷い悪魔みたいな奴だよ。」
竜胆の目がさらに細められ、美里はそれをじっと無表情に見降ろしていた。
彼はささやき声で続けた。
「お前が組長にあいつを生かして欲しいなんて言ったんだって?何故そんなことをしたんだ?普通、殺してやるだろ……?根っからのドの付くサディストだな。そういう血なのか?」

竜胆のすぐ目の前に灰にまみれた灰皿がある。翡翠で創られた厚みのある灰皿だ。これで頭を殴れば人などすぐに死ぬ。川名の刺すような視線を感じて目を灰皿から逸らした。

「……。使えるからすぐ殺す必要は無いと箴言しただけだ。あんたの隣か、久瀬さんの隣の方がまだ良かったな。まあ、関係ねぇけど。」

言いながら自分の目の前のスープ皿を手に取った。厚く肉が締まりてらてらと光るフカヒレの沈んだスープだった。向かいの席の皿に手を伸ばしかけた。食欲がないが自分も霧野も固形物が少ないものくらいは食べれるだろうと2人分手に持ってソファに戻るつもりだった。
霧野の席にも何か置かれていたため遠目に同じものが置かれているように見えたのだ。
「どうした?持っていってやれば、ソレ。今一瞬ソレに手を伸ばしただろ?」

竜胆の揶揄するような調子に気が立ち、紛らわすために久瀬の方を見ると何の感情もない目で携帯を見ながら、ストローでオレンジジュースを飲んでいた。美里の視線に気がついた久瀬は軽く申し訳なさそうな顔をし、携帯をポケットにしまう。
「すまん、妻が早く帰ってこいとうるさくてな。何の話だ?」

久瀬はそう言ってから美里が自分の手に自分のスープ皿を持ったまま突っ立っているのを見て何かを察したように微笑み始めた。
「早く持って行ってやれよ。」

美里は頭の奥の方が何か痛くなってきてそのまま川名の方に目をやる。彼はポケットからハンカチを出して霧野の席にあるソレを掴み、それから床に置かれていた別の皿を手に持って立ち上がった。

「お前はそこに座って腹を満たして、そいつらと適当に話でもしていろ。」



霧野は肘を床に着いて臀をあげた四つん這いの姿勢になり、ふくらはぎを重い似鳥の脚でふみつけられて床に固定されていた。複数の視線が霧野の下半身に熱く注がれていた。
排泄孔を肛門鏡で押し開かれているのだ。医療器具でありSMプレイでも使われる無機質な鉄製の器具で、秘所を押し開き中を点検するために使う。

見えづらいという理由でベルトを外されパンツを膝まで降ろされ剥き出しの下半身が晒された。
組員の視線が自分を突き刺すのを感じ、体が羞恥に震え床に向けられた視線が無意味に泳ぎ、呼吸が上がった。中を確認するために使われているらしいペンライトの熱がくすぐったく、皮膚と肉の上をとおりすぎる。

誰かの気配を感じ、俯いていた視線を軽くあげると、さっきまで美里が座っていた位置に川名が座ったのがわかった。顔をそれ以上上げる気が起きず、再び視線を床に向け目を閉じた。

痛みと屈辱と羞恥のため、最初は心を無に、何も考えないようにして開いていた手に徐々に力が入り、今では手にくい込んだ爪で血が出そうなほど強く拳が握られ震えていた。川名が目の前にやってきたことが、霧野の心をかき乱し、羞恥心に拍車をかけ身体を熱く疼かせた。

少しずつ押し広げられ、中の感想をいちいち似鳥か女がここにいる連中に聞こえる声量で言っていた。

「奥まで見ても精液ぶちまけられてるだけで便がないな、綺麗に洗ってもらってるのか?どうなんだ?」
「…………。」
「聞いてるのか?」
似鳥の腕がローテーブルの上に置かれたままになっていた飲みかけのグラスにのばされた。すぐにジョボジョボと液体のこぼれる音がし、身体の中に焼け爆発的するような感覚が走った。
「!!、うああっ……!!」

思わず悶えると更に尻穴を拡げていた器具がミリ単位で開いていき、ミチミチと肛門括約筋を引き延ばした。巨大なハサミを開く要領で奥に行けば行くほど広く拡張される。
「ああ゛………っ!!!、う゛あぅぅ……」
アルコールを流し入れられた衝撃で穴の筋肉が締まろうとして収縮するが、鉄の器具がそれをガッチリと押さえつけて肉壁に食い込む。
凄まじい痛みと熱い感覚を与え、肉門を中心にじんじんと強く下半身が脈打ち始めた。
床についていた手が開き、マットレスに食い込むように爪を立てギリギリと震えた。

「はひぃ………、」
「汚ぇ糞穴を洗ってもらってるのかと聞いてるんだよ」
「……あ、洗って、もらってます……」
声が上ずり震えており、情けなさに目の端の方がひきつる。
「誰に?いつ?どうやって?」 
「……。」
カチカチと音がしてさらにミリ単位で穴が押し広げられ、表面の薄い粘膜のある皮膚がピンピンに張り詰めていた。
「やめろ!!、裂ける……!ああ!!言うから、ちゃんと言うから゛…!!」
筋肉は霧野の意思や肛門鏡とは関係なく押し戻ろうとするため、常に中が躍動していた。身体に力が入ると余計に痛いのだが、力を抜くことが出来ない。
「美里に!、多分朝!、ホースで水!」

身体がガクガクと震え、川名の視線を感じ、霧野の中の死んでいた感情がよみがえり始めた。最悪だった。
無様な様子を見せ、死にたくなってくるが、屈しているところを見せたくなく、何とか抗わなければという気概と衝突し、羞恥が高まり、下半身の痛みと疼き、熱い脈拍がどんどん強調され、意志と関係なく呼吸が乱れペニスが勃起し始めた。
「んっ…ふ………」
似鳥の手が勢いよくパンと臀を叩いた。
「んん……!あぁ……」

「なんだお前は、ケツ穴拡張され、みんなに中を見られて喘いで、本当に恥ずかしいマゾ警官だな。あ?お前みたいな者がコスプレヤクザやれてた事が未だに信じられねぇ、やれてコスプレ男娼だろ、マゾ性癖こじらせた変態のくせになぜ俺のところに潜入しに来なかったんだ?お前のような淫乱の天才は俺のような変態に飼われているのがお似合いだぜ。中も淫乱なピンク色して蠢いて、こんなエロいケツ穴見たことねぇよ。んん……、なんだこれは、お前らのより綺麗なんじゃねぇのか。光に照らされててらてら光ってるぞ。」

「あはは、どうかな?自分でここまで見たことないからわからないかな。凄いうねうねしてる……」
「霧野君、膣がうねうねしているらしいぞ、早くも新しいちんぽ突っ込んでもらいたくてたまらんのか?」
「馬鹿言うな……!こんなの誰だって!……あ゛あぁ!!!」
カチカチと背後で音がする度に恐怖で全身に鳥肌がたち、想像通りの痛みが加えられる。
余りの痛さと屈辱感に、落ち着いてきて止まっていた涙が再度ボロボロと零れ落ちてくる。
「い゛っ……ぐあうう…………」
「……お前か?うちの系列店潰したのは?」 
背後からさっきとは打って変わった地獄の底から溢れ出てきたような低いドスの効いた声がかかり、カチカチカチカチと音がしてさらに穴が大きく押し広げられた。
「あああ!!???知らない゛!!!俺じゃない、っ!!」

俯いた視線の先にいつのまにか川名の靴があり、靴が手錠を上から踏みつけ、霧野の手首を床にはりつけた。 
「本当か?嘘はつくなよ。後でわかるからな。」
その後も一瞬緩められては拡張、軽度の尋問を繰り返され、身体から反抗しようという力が抜けても強い力で前後から手首とふくらはぎを脚で抑えられ続けた。上から時々川名の息遣いが聞こえており、それが熱を持っているのが恐ろしく、身体の震えを増長させる。

「うーん、ここで限界だ。まぁ合格点だな。こんなことされてもすっかりチンポが反応しちまってることでボーナス点2万点だ。すっかりド変態だなお前。」
後ろで肛門鏡を拡げるのとは別のカチャカチャとした音が聞こえ、冷たく細い金属棒のような物が中に入ってきた。冷たさにゾクゾクと身体を別の意味で震わせていると、似鳥が「まるで怒った猫だな」といいながら金属棒を肉壁の特定部位を擦り上げ始めた。
「!!…………うあ…っ!よせ……、ん゛ぁあ、っ」

ミチミチと音を立てて穴が快楽を求めて締まろうとするのだが、押し開いている金属が強く喰い込み、痛みと快楽で身体の中が煽動が止まらなくなり頭が発狂しそうになる。
「い゛っ゛…‥…!!、ひうぅ‥‥、おああ゛!!」

「おお……凄い絵面だな。こりゃあいい。そんなに締め付けても締まらんのにチンポが欲しくて堪らず、締め付けが強すぎてコッチの器具が震えて折れそうだ。他の奴でやってもここまでの迫力は無いぞ。ミキ、面白いから中をスマホで撮っておけよ。M性感の店の奴らに参考映像として回して勉強させておけ。」

コリコリと特定部位を擦られ続け、勃起しきった肉棒からだらだらとだらしなく熱いものが流れ出し床を汚していく。よく分からない声が出て、ここがどこなのかも忘れよがりそうになるのを、自分の親指を付け根を噛んで堪えた。眉がしかめられ、紅潮しきった目の下はぐしゃぐしゃに濡れていた。
ダラダラと涎が垂れぐるぐると喉の奥で出口を失った声がうずまき獣の呻き声のような声がふりまかれていた。

「んく……っ、ぐ…ぅ…っ、んうぅーー……!!!」
中を擦られたままデコピンで二三発軽く勃起した一物をピンピンと弾かれ、一段と高い声が出てしまう。
 「ふっ!…んんっ!」
「おう、いい声出すじゃないか。皆の前で気持ちよくなれてよかったな。そろそろやめてやる。こっちも擦ってんのだれてきたからな。」

金属棒が抜かれ、カチカチと音がして少しずつ押し開かれていた肉穴が元に戻り始めた。肩で息をし、自分の身体に抵抗する入っていた力も少しずつ弱まって、ふくらはぎと手錠の上から脚がどいた。

ゆっくりパンツ上げようとすると、思い切りペニスを捕まれ引き戻され、悲鳴をあげた。家畜同然の扱いだ。
「あ゛あ゛!!!!!」
「ははは、でかい声出して。そんなにみんなの視線浴びて、だらしない姿に注目されたいのか?ド変態。そんな元気だから皆からいびられるんだよォ。まだこっちのサイズを測り追えてないだろ。扱いてギンギンにしてやるから膝立ちになってこっちを向け。気持ちいいぞ。」
「……。……。」

股間を掴んでいた手が離れる。締まった尻の穴が何かを求めるようにじんじんと疼き、自らの雄を乱雑に掴まれ、頭の奥がぼーっとしていた。似鳥が何を言っているのかよく聞き取れていなかった。

「おい霧野、俺だけじゃなく、ちゃんと皆の言うことを聞けよ。」

川名の声、彼の声は不思議なほど一瞬で耳に届く。以前からそうだった。人混みの中にいても彼に話しかけられればすぐにわかるし、彼の命令する口調は人を惹きつけた。一瞬迷ってから顔を上げてはっきり彼の顔を見ると、薄ら笑っているように見えたが、笑っているのか確信が持てない。霧野にだけわかるレベルで笑っている。

「お前を外に出してから、お前がどういう言動するのか見てたからな。帰ったら採点結果を教えてやるから楽しみにしているんだな。あーあ、100点を採ったら明日から少しずつ地下から出してやろうと思ってたのに、それがもう不可能なのは自分でもわかってるな。今のままじゃ一生監禁だ。組の慰み者として地下で生涯を終えるか?」

今のままじゃ一生監禁などと言っているが、霧野が徹底して彼らに従順にしたところで解放するとも一言も言ってない。言っている言葉とは裏腹に声も嬉しそうに響いている。どうやっても彼らの気分が収まらない限り監禁なのだ。そもそも採点基準などあってないようなものだ。

今、解放されるために明確に提示されている条件は、警官としての自分を捨て彼の犬になることを宣言することだけだ。そうすれば、「ある程度の懲罰」の後、仕事に戻される。そして、今までの自分、生活には二度と戻れなくなる。

もうひとつ明確に提示され続けている条件が1つあることを思い出した。この中の誰かに、自分を殺してくれるように頼むことだ。

「お前の行動は今まで通りずっと見ててやるし、評価するのも今まで通り俺だ。お前も含めたここにいる奴ら全員を評価するのは俺なんだ、今ここで俺が奴らに向かって全員でお前をまわせと言ったらアイツらはなんの躊躇いもなくやるぞ。そういう風に育てたからな、お前もそうだからわかるだろ?今だって同じだ。慰み者としての役目を果たせ裏切り者。今お前にできる償いはそれだけだ。……ああ、そうだ、アイツらに今、ここでやってることが『遊び』じゃなくて『仕事』だと言ってやろうか?お前だけ働かせてるのも悪いもんな?」
「……」
「……顔色が悪いな、心配するな。冗談だよ。ほら、早く似鳥に陰茎を見せて検査を受けろ。後ろで見ててやるから。」

脅しだった。組員の霧野に対する折檻、懲罰の具合をはっきりと評価の対象にいれてやろうかと遠回しに言いたいのだ。そんなことになれば、全員で誰が一番霧野を半殺しにできるか競いあうことになり、彼ら個人の遊び心や感情といったものを越えた仕事としての冷酷なリンチが待っている。

霧野はゆっくり現実感の感じられない上半身を起こし、川名に背を向けるようにして似鳥の前にパンツを下ろしたまま膝立ちになり、ペニスを握らせた。目を閉じて何か別の女のことでも考えようかと思うが全くそんなに思考にはなれず、いくら扱かれても全く勃起できない。

「おいおい、なんだ?調子悪いねぇ。しっかりしろよ。さっきヤられてる時はガン勃ちで、ケツ穴拡げられて半勃起させ、中擦られて雄汁出しておいて、手で扱かれて勃ちもしねぇってなんだ?はははは、いよいよやばいよお前。」
「あんたじゃ勃たないです……」
「何でもいいから考えるんだよ。」
「………、無理です、なにも、かんがえられない……」
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