堕ちる犬

四ノ瀬 了

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俺なんかに使われるのが一番嫌なんでしょ?それって最高だぜ。

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間宮は三島が廊下の向こうに消えたのを確認して、部屋の中に戻った。顔に張り付いていた笑みがゆっくりと消えていく。

ベッドの上に、間宮が最初見た時と同じ姿勢で霧野がこちらに背を向けて横たわっていた。しかし、穴はさらに締まり切っておらず、こちらに向かってだらしなくピンク色の口を開けていた。

「準備満タンだな、今からゆっくり使ってやるよ。」

もちろん返事はなく、何か言いたげな呻き声が返ってきた。舌を噛んで自殺などしないように、枷を噛ませてやったからだ。普段の奴なら絶対にそんなことをせず耐え、ありもしない希望にすがりついて惨めに生きようとするだろうが、薬抜き中の精神不安の中では、マイナス思考が加速して、やりかねない。

眼鏡を外し、着込んでいたジャージを脱ぎ黒のTシャツとボクサーパンツ一枚になった。鏡の中で汗ばんだ体の下でタトゥーが光っていた。「誰だよお前は」鏡に向かってそう言って微笑みかけ、真顔に戻した。

美里が言っていたことを律義に守る気は無いが、自殺という救済に逃げることだけは絶対に許さない。

どうせ、そのためにこんな相応しくない場所に保護されているのだろう。奴の居場所はあの薄汚く、出口のない、死臭のする、湿って、光の当たらない地下だ。死ぬよりひどい目に遭え。今まで事務所の中ですれ違うたびにイライラしていたのだ。

霧野は間宮とすれ違う時、用が無ければ目も合わせようとしてこなかった。二条とすれ違う時はもちろんそうではない、気さくな表情をして尻尾を振り、媚び、長々と話をしながら、間宮が入ることの許されない部屋の中に消えていくのだ。自分の方が二条との関係も長いのに、彼は霧野を子供にするように可愛がって、自分の方をさらに見なくなっていった。

奴の人に取り入る能力は組織の中でも重宝されたが、つまりそういうことだったのだ。最初からそういうつもりで二条に近づき情報を抜いていた。許す余地などひとつもない。

霧野がこちらを見てくるときは、決まって殺しと拷問仕事の後に事務所に立ち寄った時だ。「刑事の勘」という奴だったのだろうか。他の誰も自分になど関心を持たないのに、彼だけが、ほとんど嫌悪に近い表情でこちらを見ていたので印象的だった。面白いので話しかけようと近くによると、無言で距離をとってどこかに行ってしまう。ある晴れた日だった。一度、霧野が屋上で煙草を吸っている時に追い詰めたら「臭いんだよ、お前。」と言われた。

「アンタの方が煙草臭いんですけど。」
「お前が臭いから吸っているんだ。死人の臭いがする。ここに入ってくるんじゃない。」
「死人の臭いは嫌い?」
「好きな奴なんかいないだろう。お前は知らないが。」
「ビビってるのか?俺に。さっきから目を合わせようとしないじゃないですか。」

霧野はゆっくりと間宮に流し目を送ってきた。奇麗な目だった。濁っていない目をこの建物の中で見つけるのは珍しい。濁っていない人間を殺すことも少ない。結局のところ世界は狭い。

「見てやったぞ。満足したら消えろ。」

その時一陣の風が吹き、煙草の匂いを掻き消して彼本来の朝露に濡れた森のような良い香りが間宮の周囲を包み込んだ。この香りもこの建物の中ではほとんどない。近いものがあるとすれば、川名の部屋を含む事務所の最上階で雨上がりのよく晴れた日に、窓から流れ込んでくるあの高い山の香りだ。

そうやって度々嫌がる霧野を追いかけ回して遊んでいるのを二条に見られ、キツい折檻を受けた。その間、罰せられながらずっと二条ではなく霧野のことを考えていた。反省せず、普段と違うことを考えていることを二条に読み取られ、さらに酷い懲罰を課されたが、考えるのを止めることができなかった。

「霧野さん、俺なんかに使われるのが一番嫌なんでしょ?それって最高だぜ。」

間宮は自分の出した声が疲れていると感じた。
とてつもない疲労感が襲ってくる。三島のせいだ。人と対等な会話をすると疲れる。何故なら頭を使うからだ。
命令する、命令されることは頭を使わなくていい。そればかりやっていて、対等な人間関係の築き方をほとんど忘れた。人と楽しく会話したことも過去にはあった。もうずっと前の記憶で、思い出そうとすると頭が痛くなる。ここに入ってからそういったものは殆どない。暗黙の了解で二条から禁止されていたし、組の奴らとウマがあったためしがない。暴力的で直情的な馬鹿は嫌いだ。コネ男娼なんて特に最悪、あの調子づいた顔をめちゃくちゃにしてやりたい。特に霧野と二人で楽しそうにつるんでいる時など交通事故に遭って死ねと思った。一度本気で美里の車に「仕掛け」をしてやろうとしたが、これもやはり二条にすぐにばれ、後はいつもの通りだ。

霧野の身体で遊んだ後は、負けの代償を払わせた。

チョコレートの一部を火であぶって溶かし、それをペンに塗り付け潤滑油にしてさらに五本ほど無理やりいれた。最初の方は何か騒いでいたが、最後の方はほとんど何も言わなくなった。その後、ふたりしてまだ立ち直っていない彼に飲精、飲尿を強要し実行させた。身動きが取れない霧野の顔の上に跨るようにして口内を順番に犯していった。

三島の番までは問題なく終わり、霧野が、息も絶え絶えに「少し待ってくれ」というのを聞かずに、間宮が入れた直後、霧野が耐え切れずに盛大に嘔吐した。

そのまま続けていたが、あまりにも止まらず嗚咽を続けた。余計に喉の奥を掘ってやると、出口がないために鼻からまで出はじめる。隙間なく肉棒が器官に詰められているのに、鼻まで自身の出した吐しゃ物でふさがれ、殆ど窒息しかけているようだった。詰められていたペンが音を立てて飛び出ていった。三島に遠回しにやめるように言われ、併せてこちらにまで臭いがつきそうになったことで、止めた。盛大に咳き込みこちらにまでゲロ汚物を飛ばしてきたので、顔を叩くと死んだような目をしてこちらを見ていた。

引き抜いてからわかったが、それはただの嘔吐物ではなかった。殆ど白い何かだ。作り笑いではなく、本気で笑ってしまった。

「何?腹の中ほとんど精液じゃん……。飯を食わされたんじゃなかったのか?」
「……まともなものがなかった」
「は?まともなものがなかったからって男の物を咥えて遊んでいたのか?最悪だな。」
「ちがう……」

笑いが止まらないのに対して横にいた三島が徐々に引き始めのか、青い顔に戻っていったのだった。そのまま取り戻さず、突っ切っていけば自分と同じところまで落ちてこれるのに。いや、そうでもないか。そのくらい頭のネジが外れていないと出世はできない。三島にゲロ汚物の片付けさせると、彼は汚がりもせず甲斐甲斐しく霧野を拭き、介抱していた。それからフロントから替えのシーツまでもらってきた。

霧野の身体の中に残っていたペンを一本ずつ抜いていった。抜き終わった直後の穴は想定通り締まり切っておらず女性器のように軽く縦に口を開けていた。霧野の頭を抱えてやり、鏡でソコを見せてやった。

彼は嘔吐の衝撃で青白かった顔をさらに青白くしていた。そのザマがまた面白く「立派なマンコ」だと褒めてやったが怒らずに泣き出しそうな表情をしていた。まだこの程度なら放っておけばしばらくすれば治るが、そんなことは教えてやらず「こんなマンコじゃ二度と女に身体を見せられないな」と追い打ちをかけた。三島が興味本位でソコを見続け「そんなになっちゃうんだぁ……」と言うと、良い具合に霧野が悔しそうにしておし黙っていた。

脚の拘束を解き、手だけの拘束で鎖を長くして、一時的にベッドから降ろさせ、その間に三島がシーツをとりかえていった。再び最初のように寝かせると、霧野が帰りそうな素振りを見せる三島の方ばかり見ているので、何か言い始める前に口を塞いでおいた。三島に三万円支払うと、彼は仕事のため、若干物足りなそうにしながらも、ホテルを後にした。最後に霧野を見降ろしながら「可哀そうですが、仕方がないですね。せいぜい死なないようにがんばってください。」と言い残していた。

テレビの有料チャンネルをつけ、本来の奴が好きそうなキツめのプレイ動画を流して見始めた。キツめといっても所詮一般受けするレベルでたかがしれている。今やってることの方がよっぽどキツイ。霧野は特に反応せず、最初のようにベッドの上で入口の方に背中を向けて横になったままだった。時折、身体がさっきまでの余韻と生理現象でびくついており、とまらず、本人もそれがわかって居心地悪そうに身体を動かしていた。

テレビ画面の中で一段と女が大きな声を出した。ベッドの上に飛び乗って霧野に覆いかぶさる。下着の下で勃起したペニスを押し当て、こすりつけてやると、疲れ切った眼がこちらを向いた。

「やっと邪魔もいなくなったし、前みたくいっぱい使わせてもらうよ。」

何か言いたげだったので、口枷を一時的に外してやると「また、寝てもいいか、身体がだるいんだ……水も欲しい……何か口を、紛らわせたい……」とわがまま放題言い始めた。

あまりにも酷いので呆れて何も言う気が起きず、黙ってチョコレートの匂いを漂わせたままの開きっぱなしの穴に親指を突っ込むと、軽く喘いだ後に「起きたら、させてやるから……!頼む……おねがいだから……」と弱弱しい声で続けた。声の端々が上ずっていた。それは間宮の嗜虐心を煽ったが、同時に何か自分だけが特別な物を見ているような優越感を刺激した。

「ふーん、なんでもさせてくれんの?」
「……。」
「違うなら、今このまま使う。」
「わかった。なるべく言うことを聞くから。」
「なんでもだ。」

霧野の目が伏せられ、悩むようにしてシーツの上あたりをしばらく彷徨っていた。
再び目が合った時には、疲れの中に少しだけ意志のような物が戻っていた。

「何でも聞く。」
「ふふふ、そうか。言ったな。じゃあまず人に物を頼む態度をもっとマトモにしな。『すこし寝させていただきますが、起きて元気になったら、遥のオナホ穴をいっぱい使って犯してください。』くらい言えよ。」

明らかに霧野の表情が険しくなり、疲れた目ながらも、こちらをにらみつけ始めた。

「なんだ?言えないなら休憩は無しだぞ。」
霧野の目線がゆっくりと、間宮からシーツの方へと移動していった。

「……すこし寝させていただきますが、起きて元気になったら………遥のオナホ穴をいっぱい使って犯してください。」

「いいじゃんか。よく言えたね。お前の言う通りにしてやるよ。軽く何か摂らせてあげる。ただ、次からは目を合わせる努力、そんなキレた調子じゃなく媚びた感じで言えるように努力しなよ。わかったな。」
「……はい」

美里が三島に買ってこさせた物を改めてよく確認し、ある物を発見して反吐が出そうになった。
別れる前に三島と連絡先を交換していたため、電話をかけた。2コールですぐに出た。

『はい、三島です……』
声が疲れ、若干震えていた。今のさっきで自分のような者に連絡されるのは嫌だろうが仕方がない。

「今、三島君が買ってきた物を確認してるんだけどさあ、これ三島君のセンス?」
『いや、美里さんに言われた通りのもの買ってきただけです。』
「メーカーも指定された?」
『ああ、そういえば一部謎に指定されました。』

霧野が、遅くまで事務所で仕事をしている場合など、彼は付近のコンビニで軽食を買ってくることがある。その際に猫をモチーフにした玩具のついた児童向けのチョコレート菓子「ちょこにゃん」という馬鹿な物を必ず一緒に買ってくるのだ。隠そうともせずに出た玩具を翌一日は机の上に飾って仕事をしているし、自宅のデスクの引き出しの中に128個も入っていた。
128個のソレも一応回収して事務所に持っていったところ、二条が「へぇ~」と言って笑っていた。

「なんなんですかこれ。キモいんですけど。」
「遥の完璧主義と収集癖の賜物だな。」
「は?」
「これはな、コンプリートするには180種類、さらにシークレットが10種必要なんだ。俺もな、甘いものを買うときはこれを買って中身をくれと言われたことがあるんだよ。買わないがな。最初の一個を冗談で奴にやったのは俺だから、俺が悪いと言えばそうなんだが……。」
「……。」

その「ちょこにゃん」が2つも入っている。

「『ちょこにゃん』も?」
『ああ、そういえばそうです。馬鹿みたいな名前のお菓子でしょ。これ探すのに3件もコンビニ回らされたのでよく覚えてますよ。なんなんですか?それ。』
「別に、なんでもないよ。急に電話して悪かったね。」

電話を切って、ソレを自分のリュックの中に押し入れようとしたが、興味本位でひとつ開けてみることにした。猫の形のチョコレートと一緒に「さどにゃん」というボンテージを着た雌猫の趣味の悪いマスコットが入っており、頭の中がキリキリしてきた。指で雌猫の頭をへし折ったが、まったく気分が晴れない。わざわざ奴のためにこんな物までパシらせて買ってこさせるとは、あのコネ野郎こそ担当を外されるべきだ。

常温のスポーツドリンクをコップに入れて三回、水を二回ほど飲ませてやり、ホテルの皿の上に拳で粉々にくだいて原型をわからなくした「ちょこにゃん」のチョコレートと普通のチョコレートを混ぜて、ベッドの上に置いた。

「普段やらされているように食えよ。」

前に地下に行った際、床に皿が直置きされていたのを思い出したのだ。

そう言うと霧野は文句も言わず、慣れたように器用に皿の中に頭を突っ込んでそれに舌を這わせていた。皿が奇麗になったところで皿の中に水を流しいれると、一瞬嫌な顔をしたが、同じように舐めとっていった。
皿を回収して戻ると、既に睡眠に落ちかけていた。どうせすぐには起きないだろう。布団をかけてやると軽くもぞもぞしてからすぐに動かなくなった。

「……動物め。」



再び休息を与えられ、目覚めたと同時に身体の中に暴力的な衝撃がやってきた。
「おはよう、霧野さん。約束通り、今から使わせてもらうね。」

自分の上に最初から間宮が覆いかぶさっており、彼が霧野が起きるまでずっと上で待っていたことを理解した。触れている範囲に布地がなく、彼も全裸だということがわかる。口を手でふさがれ、後ろから覆いかぶさられ勢いよく凶悪な一物で中を抉られた。

「ん゛ん!!!んっ……んぅー……!」
「暴れるなよ。散々休ませてやっただろ。暴れるんならこうだぞ。」
彼は結合したままベッドから軽く身を乗り出し、サイドテーブルの上から何かをつまみ上げた。
「ん゛!?」

プツ……と今まで無いような刺すような痛みがはしり、喉から「かひゅう……」と高い悲鳴が出た。陰嚢から何か抜かれる感覚があり、目の前に血に濡れた針を提示された。

「俺は最高18本やったことがある。お前のせいでだ。お前もできるようになりたいか?」

返事の代わりにわかりやすく霧野のペニスが小さくなっていった。

「あーあ、びびっちゃって、ダセェな。大体寝る前に俺とした約束を忘れたのか。何でも言うこと聞くんだろ。俺が飽きるまで、おとなしく俺に使われな。そのためにあんだけ拡張させたんだ。」

ゆっくりと口を塞いでた手が離れていき、後ろから両手で腰のあたりを抱えられて、中をさらに奥まで貫かれた。
「おあ゛……っ」

間宮の両手の親指が、後ろから穿たれた穴を押し広げていた。

「おおっ…‥、一発でちゃんと、奥まで入るじゃん。最高だな。」

自分の穴が開いたせいで余計に奥までミッチリと凶悪な獣が入ってきて、身体の中で擦れていない部分がないのではないかというほどに肉を押し広げ、臓器を圧迫していった。広がった穴の半ば、そのあたりが無理やり腹の前の方に張り出して、確実に快楽の座を刺激している。

「ふふ……きゅんきゅんしているよ。他の奴らとどれだけ遊んだか知らないが、やっぱり俺のが一番いいだろ。ん?どうなんだよ。どうせ美里にも掘られてんだろ。情けねぇ。で?それに比べてどうだ?感想を言ってみなよ。内容次第では優しくかわいがってやるよ。」
ずりずりと腰を押し当てられ、そのたびに中で巨大なものが軽く動いて、こすってはいけない場所の表面を軽くくすぐった。
「んっ、…‥ぅ」
これが勢いよく動いた時の感覚はすさまじい、前回はそれでも痛みが大きすぎて、ほとんど何が何なのかよくわからなかった。しかし、今は「わかって」しまい、勝手に息があがっていった。これを雑に動かされてはたまったものではなく、嘘でもいいから何か言うべきだが頭が回らず、奴をほめるような言葉を言いたくない、しかし‥‥…。

「喘いでいないで、感想は?」
「……。」
「無し?つまんねー。じゃ。もう好き勝手、雑に使わせてもらうよ。」
「ま、待ってくれ……いうから、」
「あ、そう。じゃ、どうぞ。」
「きもちがいい……」

「あ、そう。野郎のくせにケツ穴にデカマラいれられて動かされてもないのに気持ちいいんだ?マジで最悪だな。で?そんだけ?……。あ?、霧野さん、何だよ、可愛いとこあるじゃないか。俺に罵倒されてよくなっちゃったのか?さっきより下がきゅんきゅんしてるぞ。」

酷い状態のまま責められどんどん自分の息が上がっていった。そのまま、ゆっくりと刺し込まれていたものが引き抜かれていき、入口のあたりでとどまった。

「ぁ…っ、うう‥…」
「他に何か言うことはあるか?」
ゆっくりとそれがふたたび奥の方へ進み始めた。
「…んんっ…」
「は?もう喘ぐことしかできないのか?それじゃあ感想としては落第点だな。100点満点たっだらせいぜい10点だね。やっぱりアンタの上は最悪だよ。使えねぇ。もうしゃべんなくていいよ。」

それから勢いよく、運動が始まった。突かれ、引き抜かれるたびに身体全部がめくれあがり、ゴリゴリと広い範囲を擦り上げた。

「ああ゛っ!!!‥‥…っ、うあ゛あ…っ‥!!」

「うるせぇオナホだな。もうしゃべるなと言っただろ。野郎にそんなでかい声出されたって、萎えんだよ。わざわざあんだけ拡張してやったんだ。前より余裕なはずなのに、堪え性がないクソ雑魚だな!お前みたいな雑魚が警官やってたとは、あまりに雑魚過ぎて使えないからこんなところに飛ばされたんだろ。まあ、でも、良かったな天職がみつかって。」

「うう゛……っ、」
「ん、何か言おうとしてるな?もうアンタに発言の機会はないよ。そんなとこ使うなよ。使えねぇんだから。」

口を塞がれ、横に落ちていた口枷を再び咥えさせられてしまい、意思疎通が完全にできなくなった。以前もこうされて、散々中に出されたのだ。

「んぅー……」
「はーん、そうやって甘えた声出せば甘やかすと思ってんの?この俺が?人を馬鹿にするのもたいがいにしろよ。今更無理だろそんなの!」
語気の節々に、ため息のような空気が混ざっていた。
「うるせぇから、こうしてやるよ。自分の役だけやってろ。わからなくなったら顔上げな。お手本があるからよ。」

結合したまま、身体を抱えられ、頭がベッドの上から下の方に向けられた。

ホテル内にとんでもない音量で女の喘ぎ声が響き始めた。シーツから顔を上げると、テレビの大画面でアダルトコンテンツが流されており、今まさに音量ゲージがみるみるMAXに向けて上がっていくところだった。後ろを観ようとすると頭を押さえつけられ、より強く腰が押し付けられていった。

枷の下でどれだけ声を上げても、ビデオの中の喘ぎ声や男の強めの責め声に全て掻き消されていき、意味をなさなくなった。間宮自身も会話をする姿勢を見せてこない。

大きく押し開かれては戻され、大きく押し開かれては戻され、が機械的なリズムでずっと繰り返されていった。身動きも、コミュニケーションもとれず、まるで工場の一部品、自分の意志とは関係なく、快楽を感じさせらる機械。いや、感じさせてやる機械か。この状態の自分が間宮を感じさせてやっていると思うと、最悪な気分になっていった。最悪な気分になって抵抗しても何の反応も返ってこない。それに反比例するように、物のように扱われて身体の中が痛みを伴って昂まっていってしまう。

自分が何を言おうと、どんな反応をしようと、昂ろうと、萎えようと、震えようと、攣ろうと、痙攣しようと、意識が薄れようと、射精しようと関係がない。無視。暴れても叱られることも叩かれることもなく、黙って力で押さえつけられる。自分と間宮の意思疎通は全てビデオの中の声がやっていた。

身体がもたず上げていた腰が落ちてくると、凶悪なサイズを誇る獣が引き抜かれた。ぽっかりと半身に空洞があいたような違和感に慣れず、見えない自分の下半身には彼のサイズの大きな穴が空いたままになっているのではないかと思われる恐怖に浸されていった。さっき見せられた穴、マンコ、アレがさらに自分の知らない形に変えられているのではないかと。よくわからない喪失感で身体が勝手に穴を締め、締まらない穴が開いた。下半身の筋収縮、身体の痙攣を止めようとしても止まらない。

両手首を強く掴まれ、鬱の思考から戻された。手錠が外されたのだ。

咄嗟に身を起こそうとするが流石に読まれており、後ろから股間に強い衝撃をくらう。
「うう……」

逆に這うのはどうだ。痛む股間に耐えてベットの縁に手をかけて一気に下に降りようとするが、ヘッドロックをかけられてそのまま戻されてしまう。外そうとしても、最早体力で勝つことができない。この間にもずっとバカでかい喘ぎ声が部屋に響き続ける。首筋がくすぐったく、生暖かい物があたった。彼の顔がほとんど至近距離にあり、耳元に口をつけていた。

「ウチじゃあ職務放棄は厳罰対象だろ?」

そのまま首に強い力がかかり、意識がどんどん落ち、身体から力が抜けていった。

視界の端に二つの輪を繋いだような拘束具がうつった。右手首は右脚の方へ持っていかれ、右足首と束ねられ、左手首は左脚の方へ持っていかれ、左足首と束ねられた。腰を軽くあげるだけで基本姿勢が頭より臀の方が高くなり常に相手方に秘所を明け渡す姿勢になる。それから目隠しをされ、視界を奪われた。

上の方で間宮が何か言っているようだが、全て女の喘ぎと男と扱き声に上書きされてひとつも聞き取れない。耳の中から脳の奥までその音一色。声を上げると代わりに女が叫び男が怒鳴った。

言葉の代わりに、彼の獣が再び一気に身体に突き刺され、身体の一部となって強く脈打ち始めた。彼ととれるコミュニケーションはこれだけだ。目も口も塞がれ耳は犯され、残されたコミュニケーション手段は穴だけ。再び一方的な捕食が始まった。

自分の中の全てが食いつくされたと思って沈んでいても、再び痛みと快楽で起こされる、それを繰り返した。

今や自分の傷口にピッタリと馴染んだ獣の爪は身体の一部と化したかのように違和感がない。永遠に内側から痛みと快楽を与えて自分を処罰する。獣の爪が深く刺さる度、快楽の真っ赤な血が吹き出して、腹の中から全身に巡って脳まで犯した。脳にもともと巡っていた自分の血はすべて吸い尽くされ、彼と自分の間に共通の血が流れ始めた。

もはや残っていない肉までしゃぶられ持っていかれた端から、自分の肉が復活して、また噛みつかれ削ぎ取られ持っていかれるような感覚だ。頭の中が繰り返される捕食の苦痛と快楽でいっぱいになる。自分は身分も名も無いただの肉、そしてそれを提供する機械。彼の言葉を借りれば意志を許されないオナホールそのものだった。

唯一彼と疎通している器官を、拒絶のため締め付けたり、押し出そうと力を入れたりすると、彼は敢えて動きを緩めるか、止めた。まるで、そこでだけなら、何か言ってもいいぞと言っているように。しかし、そんな無駄な抵抗も長くは続かず結局良いように乱暴に使われ続けた。

小便を漏らした。それでも何も変わらなかった。罵倒、平手ひとつなし。

背中と首筋に何か熱い液体が垂れて弾けた。獣で抉られる以外の新しい意思疎通だった。汗ばんだ自分の首筋で彼の流した液体が垂れ混ざりあう。それは、ポタと一雫だけ流れる時と、ポタポタポタと連続して流れる時とがあった。
混ざりあった液が、雫になって皮膚を伝っていった。
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