堕ちる犬

四ノ瀬 了

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俺がもっとアンタを壊して、使い物にならなくしてやるよ。

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部屋中に焼けたような匂いが漂っていた。
海堂が上裸の間宮の上に覆い被さって、タトゥーマシンを皮膚から離した。

「はい、完成。」

海堂はビニール手袋を外しながら椅子から立ち上がる。寝椅子にうつ伏せに寝ていた間宮は椅子から降りて鏡に身体を写した。

左わき腹に豹の頭をモチーフにした黒い刺青が、赤みを帯びた皮膚の上に浮き出ていた。黒豹の斑点までもが精密な透かし彫りで彫られていた。良い出来、まるで革細工にでもされたみたいに。

間宮はしばらく余韻で火照る身体を眺めた後、シャツを着た。隠れてしまってもまだ熱を帯びた刺青の位置がよくわかる。刺青を中心にした身体が熱を帯び、だるく、性行為のはじまりのように頭がぼーっとしていた。

海堂が器具を片づけながらも、間宮の方に意識を向け続けているのを感じていた。めくり上げられた袖の下に間宮と似た模様の刺青が所狭しと並べられている。よく見れば精巧な刺青の下に未熟な刺青の跡が残っていて、自身の身体で練習を続けた結果だということがわかる。

「じゃあ俺は帰りますよ。」

間宮はわざとらしくはっきり言って、床に置いた荷物を手に取った。スタジオのノブに手をかけても粘ついた視線が続いていた。ドアに嵌められた窓ガラス越しに海堂を見ると目が合った。おどおどとした刺青の入った男にあるまじき恥じらいある少女のような目だった。

「帰りますよ。」
「待ってくれ。」
「……」
黙ってドアノブを回す。
「俺の口からは言えないんだよ。わかってるだろ。」
「汚い奴ですね。」
間宮は溜息をつきながら、しかし高まる心を抑えきれないといった調子でドアノブから手を離すと乱暴に荷物を床に投げ置き、寝椅子の方に苛立ちを隠さない調子で戻り、海堂を見降ろした。それから視線を寝椅子の方にやって「そこに寝な」といった。

今でこそ自ら好きでいれている刺青だが、初めての刺青は間宮に対する懲罰目的だった。二条とそれから海堂のふたりに代わる代わる犯されながら、首元と腰元に刻まれていったのだった。その時の痛みを今になっても忘れることが出来ない。なぜ懲罰されたのかは覚えていないというのに。

刺青を彫る行為に慣れてくると皮膚を削られて熱を帯びる痛みは、性行為のそれによく似ていると思えた。犯される痛みと皮膚に刻印される痛みに耐えている間宮の姿にふたりはよく欲情した。

一人でスタジオに来るようになるころには、痛みにもだいぶ慣れて、苦しみより快楽が勝るようになっていた。施術中の皮膚に針の挿し込まれるスリル完成するまでの熱を帯びた余韻、期待。
二条はほとんど間宮に付き添わなくなった。それでも屈辱的な刺青を彫られるときは別だった。

何度か寂しさから自ら屈辱的な刺青を彫ってくれと彼に頼もうかと思ったが、そんなことをすれば、際限なく取り返しのつかない物をいれられることが目に見え、流石にブレーキがかかった。実際もう少しで飾り文字のrape meが完成してしまう。

海堂は、二条と異なり彫られることに快楽を得るようになった間宮に対しても、変わらず欲情するようだった。
しかし、二条に黙って間宮と行為に及ぶことが怖いのか手を出してくる様子がなく、間宮から誘うように仕向けるのだった。どちらでも変わらないのに。

同じ構図を彫るにしても、他の客にするよりも遥にじっくりと時間をかけた。手つきは丁寧できめ細かく優しく、構図も当初より徐々に誰よりも凝ったものになっていった。

海堂が間宮に施した刺青は作品としても素晴らしく、皮膚に無数につけられた傷の模様は密かに快楽を刻んだ痕でもあった。海堂は間宮の身体を見る度にうっとりとした気分になった。

自身の腕の上がっていく軌跡も見て取れ、いくらかの刺青は自分の中では傑作と言えた。ホームページにサンプルとして彼の刺青の写真を掲載させているくらいには。

それはある意味間宮の身体を借りた自慰にも近い。間宮の身体が初めて会った時から発達してしなやかな身体になったことも海堂の調子を上げた。張りのある皮膚に刺青を落とし込んでいくのは愉しい。

間宮は再び着たばかりのシャツを脱ぎ、下も脱ぎ捨てた。海堂の既に勃起した見飽きたペニスを見降ろしていた。亀頭の下に小さなピアスが二つ顔を出す。

「このまま蹴り上げて去勢してあげましょうか?そうすればこんな面倒くさいことしなくて済むんだ。タマが人間の身体から飛びでていくところって、なかなか見ものだぜ。」

海堂は黙ってにやけた顔を間宮の方に向けたままにしていた。海堂の目には、口とは反対にもう耐えきれないという顔をした間宮の顔をがうつっていた。

「ムカつく」

間宮は海堂に跨って、勃起したそれを一気に体の中に突き挿れさせた。ほとんど痛みはなくすぐに中に収まっていった。
あてつけるように中を擦り上げるようにして動き始めた。知り尽くした一物が身体の中で跳ね動き、身体の奥底から絶頂の前奏となる疼きが始まった。

「はぁ……」

間宮は身体を一定の早さで動かしながら目を閉じた。身体を打ち付けるようにして上下に動かしていると、機械にでもなったような気分になる。

海堂のことなど最早どうでもよく、彼の一物を使って長いことまともにさせてもらっていない、二条のことを考えていた。風呂場で窒息させられながらの挿入も悪くはないが、余裕がなく、愛情よりも懲罰の気を強く感じた。

「あっ……いい……」

自分の加減で中で自由に海堂の獣を暴れさせることができた。二条の物とは全く別のものだが、やり方をにせることはできる。

徐々に激しさが増し、身体がぶつかる音、寝椅子が軋む音、どちらかの脚が、椅子や施術台に当たる音の方が大きく響く。

身体が蒸れ、汗ばみ、腰をそのままに街道の身体に抱き着いた。抱き着いてしまえば視界が狭くなって、余計にこれが誰なのかと言うことを意識しなくても済む。その時、海堂が「う゛……」と太い声を出し、その首筋に間宮が強く噛みついた。獲物に咥えられた草食動物のごとく小さな声が出て、静かになると口を離す。
間宮は海堂の身も元に口をつけ、腰の動きを軽く緩めた。

「おい、しゃべるなよ、気分が下がんだよ屑!、ここで止めるか?」
海堂の耳に大量の熱い息と共に震え昂った間宮の声が響き、間宮の頬にこすりつけられるようにした海堂の首が横に揺れた。
「じゃあ黙ってろよ肉ディルド。次に何か言ってみな、上に乗ったまま俺がアンタの首に下手糞なキティちゃんでも彫ってやるよ。」
間宮は再び目を閉じ、彼の身体を使って自慰行為にふけった。

行為を済ませ、ぐったりした海堂に一言もかけずにさっさとスタジオを出た。一瞬の快楽の後、余計に二条のことが恋しくなってしまいそのまま彼の家に向かった。

把握している予定に沿えば、家に居るはずなのだが不在。会えないとなると余計に会いたい気持ちが大きくなる。しかし、もし急用に追われていること等を考えると、要件もなく電話をして邪魔をするのも躊躇われ、一度帰宅することにした。

遮光カーテンが閉められた部屋は真っ暗で起動したままのPCモニターだけが光っていた。そのままPCの前に座り、読みかけの資料を眺めた。

資料、霧野遥の簡易報告やら消されたメールやら抹消データの残骸やらを彼のPCから抜いて自分のPCにも移植していた。間宮を含む情報操作に詳しい組員達と専門業者で可能な限りデータを解析、復元し、上に献上。

警察官は捜査のプロであって、ITのプロではない。サイバー犯罪専門家ならまだしも彼は違う。どれだけ丁寧に消したつもりでも残ったカスからデータは浚える。

彼が几帳面に記録、調査したデータは、復元したものだけでも膨大だった。元々はこの何倍かあったのかと思うと発狂ものだ。業務外まで「副業」とはご苦労な事だ。

手元にあるデータは大体読み終わっていたが、これらは読み物、娯楽としても最高に面白く、いくらかのページは何度か読み返した。

被害を被ったと思っている上の人間や真面目な組員は怒り心頭だろうが、自身のことを一介の組員としか思っていない間宮にとっては、今回の件に怒りの要素はほとんどなく、寧ろ日ごろの苛立ちや不安の種であった澤野が消えてくれ最高くらいに考えていた。

また、彼を装って彼の仲間、つまり警察にコンタクトをとっても、何一つ疑われなかった。組織としてあまりに杜撰すぎて話にならない。霧野のことが可哀そうだと一瞬だけ思ったくらいだ。

「可哀そうな霧野さんは元気かな。」

言いながら、まさか暇を作った二条がまた霧野のところに行っているのではないだろうか。という嫉妬と腹立たしさの様なものが間宮の中にじわじわと沸き上がり始めた。

「……あの野郎」

一度考えが浮かんでしまうと、消すことができない。霧野の人を見下したような顔が浮かんで離れない。元々、二条に取り入るようにして間宮に与えられていた汚れ仕事ではない方の仕事まで巻取り始めていたのだ。

「最初は口で、今度は下半身で人の上司を誘惑しようっていうのか。あははは……笑えないな。」

居ても立っても居られずそのまま玄関をでようとしたが、Uターンして作業台の方に向かった。

PCを置いてある部屋とは別に、電子機器や罠、拷問器具の改造、作成を行う作業台のある部屋があった。

「色々用意してても忘れちゃうんだよな……。」

作業台の下のボックスから幾らかの手ごろな道具と工具、その他諸々を取り出してボストンバッグに放り込み、それを持って部屋を後にした。

「二条さんも馬鹿だよ、くそ……いや、俺が馬鹿なのか……どうでもいいけど……」

クロスバイクを走らせること20分、深夜の事務所に人はおらず車も組の所有車しかなかった。地下への通路はぽっかりと黒々とした口をあけており、人の気配など感じられない。地下への階段をおり、念のため強めに扉をたたいたが、何の反応も返ってこない。ドアノブをひねると鍵がしまっていた。
「なんだ……」
二条がいないことに安堵と同時にもどかしさを覚えた。
「せっかく来たことだし、遊んでいってやる。」
ポケットから石膏で型をとって作成した手製の鍵を取り出し手で弄んでから、鍵穴に嵌めこんだ。多少つっかえはしたが問題なく鍵の開く感触がした。
「簡単すぎる」
電気をつける前にまず普段より強い臭いが鼻をつき、空気が蒸れた感じがした。美里が清掃や換気を怠ったか、そもそも来ていないのだろうか。手探りで電気をつけると、奥の方に白と黒の塊が寝ていた。
ノアが霧野と一緒にリードを繋がれたままになって放置されて寝ているのだ。
「なんだ……?」

近づいていくと先にノアの耳がピンと立って、頭を起こした。一瞬だけ警戒した顔を見せたが相手が間宮だとわかると、すぐに舌を出して立ち上がり、甘えた声を出した。もう一方の犬は気が付きもしないのかそのままじっとりと寝汗をかいて寝ていた。

「どうしたお前、こんなところで。……。」

間宮はノアの側に屈みこんで抱えるようにして頭をなでながら周囲をよく観察した。観察するほどに状況が理解出来てきて、喉の奥から笑いが上がってきた。

「そうか。お前も大変だったねぇ。でもこれ動物愛護法違反じゃないかな?ノアが可哀想だよ。」

笑いをこらえながらそう言って立ち上がり、ノアのリードだけフックから外してやりそのまま地下室から出し、事務所の庭につなぎとめた。鼻歌まじりに地下室に戻り、鉄製の厚いドアを勢いよく音を立て閉めた。

部屋中に響き渡る様な大きな音に、寝ていた生き物が身体を跳ねさせ頭を上げた。鍵を閉めなおし、彼の下にずかずかと歩み寄る、彼は疲れからか寝起きからかぼんやりした目をしていたが間宮の姿を確認すると、まぶしい物を見るように目を細めて睨むような仕草をした。

「おはよ。元気か?俺の言った通りになっただろう。お前の仕事はアイツらの性処理道具になったんだ。今夜はまた俺が訓練してやるよ。俺のが恋しくって仕方なかっただろ。」

間宮は閉じられた霧野の太ももの間にミリタリーブーツをねじ込むようにしてぐりぐりと刺し込んだ。すでに固まった液と粘ついた液が照明に光っていた。
「なあに?漏らしたの?まあ、しょうがないよね。」
そのままごつごつとした重いミリタリーブーツの底でコリコリと陰部を軽く踏んでいるだけで、足の下で男が苦悶の声と共に足を閉じ、逃げようとする。首輪が壁と繋がり、首輪と手錠が繋げられている状態で必死に後退している姿を見ていると笑えてくる。

「どこいくの?」
間宮は屈みこむと霧野の両足首をとって立ち上がり、無理やり足を開かせた。抵抗はあったが、握力でだけで抑え込める程度のもので簡単だった。
「うう……」
「御開帳~」
体勢が変わった拍子に身体に溜まっていたものが音を立てて外にこぼれ出たらしく、既にできあがっていたシミの上にさらに体液をこぼして震えていた。シミの量はおねしょのあとのように広くこびりついていた。

「あれ?もしかして昨日まわされてから、中洗ってない?俺が見てる前だけでもあんなに出されてたのに、汚いねぇ……。ゴミ溜めだよ、これじゃ。」

霧野は眩しさに顔を覆うように腕で顔を隠していた。
「こんなの放っておいたら病気になるよ。美里はどうした、ついに愛想をつかされたのか?」
「……知らない、来てない」
「しょうがないなアイツ。まかされたことくらいやってほしいよね。これは組長に言っておかないとな。その内俺と交代になるんじゃない?嬉しい?霧野さんは俺のが一番いいんだもんね。」
間宮は事務所での輪姦の最中に意識が朦朧とした霧野が誰のがいいか聞かれて口走った言葉を覚えていた。悪い気分ではなかった。

間宮は霧野を離すと、作業台の上から鍵をとりだし霧野の拘束を解いていった。首輪だけ残してあとは自由に。突っかかってこられるかもしれないが、今の霧野であれば隙さえ見せなければ簡単だ。

「観ててやるから、そこで身体をきれいにしておいで。俺がいちいち洗ってやるなんて嫌だから。」

霧野は黙って重い身体を引きずるようにして起こして立ち上がり、洗い場に向かった。間宮はすぐ近くに椅子を持ってきて様子を見ていた。視線を感じて、中を洗うのを躊躇しているようだった。

「……霧野さん、今更アンタが何を恥じているのか知らないけど、こっちにお尻向けて良く見えるようにして中洗ってみせてくれない?そうしないと、きれいになったかわかんないだろ?浣腸器使っていいからさ。」

間宮はガラス製の1L浣腸器と洗面器を霧野の側に置き、遠回しに使用するように指示した。
「素人が立ったまますると腸が損傷する。四つん這いでやることだね。慣れた姿勢だろ。ずっとさせられてんだから。」
「……」
霧野は何か言いたげな顔をしていたが、黙ってその場にひざまづいて洗面器に水を張って浣腸器に水を溜めた。
ゆっくりとした調子で四つん這いになり、浣腸器の先端を中に刺し込んだ。それから中の水を入れていく。すべての水がはいりこみ、浣腸器を抜いた。

「霧野さん、見た目に似合わず可愛い尻穴ときんたまがフルフル揺れてるよ。恥ずかしいねぇ。アンタが死んだら俺がそれを切り取って小銭入れにして使ってやるよ。」
「……何馬鹿言って、」

間宮が靴底を後孔と玉の裏にこすりつけるようにして押し付けた。
「う゛‥‥…っ」
「生きたままやってもいいんだぜ……、おい、まさか、まだ漏らさないよね?」
「…わからない」
「俺のブーツをお前の中に出された誰かの精液で汚してみろよ。一発犯すくらいじゃ済まさないからな。」
「‥‥、……」
霧野の体内で精液と体液と混ざった大量の水が渦巻き、便意と共に汗をかき始め、身体を支える腕が徐々につらくなっていく。煽るように靴底がまたぐらを優しくこすりあげ、時にぐいぐいと押され、その度に中の液体が揺れて身体を苦しめ、脂汗をかかせる。
「……る、」
「あ?なんだ?」
「もう……っ、でる、だしたい…っ、お゛あ!」
一層肉を強く押され、反動で腹の中のものが吹き出しそうになるが、精神力で何とか耐える。
「だしたい、だ?何言ってんの。ものの頼み方がなってないね。どんな調教受けたらそうなるわけ?あ、まさか俺だからそんあナマ言えちゃえるの?なめられたもんだな!」
「……出させて、ください……」
「いいよ、出せば?」
「……足を、どけてください。」
「なぜ?」
「……なぜ、って」
霧野は主に浣腸を施された身体の苦痛、そして精神の苦痛と疲労で頭が回っていないようだった。ただ身体を耐え、震わせて悶えていた。

「惨めだねぇ霧野さん。アンタ何してんの?本当に情けないよな。笑える。」

間宮は足をどけて代わりに椅子に座ったまま、尻の上に足を組むようにして置いた。足の下の霧野には中から責められる苦痛だけでなく、間宮に足置きのように使われたことでさらに身体を晒す以上の恥辱が加わった。

「く……、」
「ほら、どかしてやったよ、出せよ。なるべく丁寧出すことだな。俺の服に飛ばさないように。」

そう言われ、最初こそチロチロと穢れた液体をこぼしていた下半身であったが、一度勢いがつき始めると腸内の顫動がとまらず、ところどころ勢いよく音を立てて、汚液がとびだして周囲にまき散らされた。

「おい、丁寧に出せと言ったじゃないか。」
尻の上で、トントンと踵を軽く落とされ、尾てい骨のあたりをぐりぐりとこすられる。
「あっ……だ、だめだ……っ」
身体に振動が響き、快楽の芯が揺らされて、余計に勢いのついた汚液が跳ね、間宮のパンツの裾に軽く跳ねた。
「ああ‥‥っ」
「あーあ、やったな。まあいいや、一回目を出し終えたみたいだな。水が透明になるまで見届けてやるから、何度でもやれ。慣れたもんでしょ?……。なんだ?なにをがくがく震えてるんだ、次はどうしたの?」
「……二回目をするので、‥‥足を、どけてください……っ」
「そうだよ、そういうことだ。わかってるじゃん、流石マゾ奴隷だな。今のお前は誰がどう見ても警官でもヤクザでもない、最底辺のマゾホモ奴隷にしか見えないね。びっくりしたよ、知らない間にピアスも刺青もされ、すっかり調教されて。俺にこんなにされても気分が上がって仕方ないんじゃないの~?」

そうして5回繰り返されたところで、水は殆ど色がなくなっていた。
間宮は息を荒げてへたり込んだ霧野にタオルを投げ渡し、軽く脚を上げて濡れたパンツの裾のあたりを点検した。
「面積にして10㎠くらいだな。何ぼーっとしてるの?こっちに来いよ。」
間宮は疲れきってほとんど身体を拭けていない霧野の腕をとった。

その瞬間抵抗の兆しを感じたので、容赦なく腹部に重いアッパーを入れ、続けざまに顔をあげさせ強い平手を顔の下の方を狙って入れた。脳が揺れてバランス感覚がなくなった霧野を抱えるようにして、床に転がす。床の上でに咳き込んでいる霧野の腹部にもう一度今度はブーツの先を叩き込むと、顔を伏せて唸っていた。

足で彼を仰向けにさせてから、腹の上に勢いよく座り込む。くぐもった声を出した彼の首を絞めながら顔を近づけた。負けたことを恥じているのか視線が下を向いており合わない。はぁはぁと苦しそうな息遣いと共に顔を赤らめており、ヤラれてる時と大差ない淫乱な面だと思った。あかの他人や女にする時より別の興奮が沸き立ち、下腹部に熱い昂りを感じ始める。このまま殺したい。

「ふん、今のアンタに負けるわけないんだよ。二週間とはいえろくに歩いても無いんだ、筋力だって落ちたし勘だって鈍っただろ。ああ、下半身の筋肉は別だな。あはは、使いすぎて切れそうか?」
「……、のかよ…」
霧野が吐息交じりに吐き捨てるように小さな声で言ったのを間宮は聞き逃さなかった。首を絞めていた手をゆっくり離した。

立ち上がり腹部に体重をかけていった。足の下でいくら悶えようが内臓が壊れようがべつにいい。どうせ、これくらいでこいつは壊れない。確実にやるのなら下腹部からナイフを差し入れて内臓を見せてやりながら殺すといい。

「なんだよ?続きを言えよ。」
頭の中で霧野の身体を裂きながら、彼を見下ろした。視線が合い、力のない瞳であったが、以前の人を見下す調子がありありと浮かんでいた。彼は踏みしだかれているのにも関わらずさっきよりハッキリとした口調でいった。
「人のこと言えるのかって、言ってんだよ、とっくに切れてんだろ、お前の下半身は、つかいものになるのか?」
「ははぁ……何を言うかと思えば」

間宮の顔色に変化は無かったが、霧野の身体に乗っていた体重がさらに重くなり、出しきれていなかった水と体液が下半身から零れ落ちていった。

呼吸が更に苦し気になるが、一度出た物は、下から出ていく物と同じように止まらない。

そしてとにかく、人でない物と結合させられた記憶を虚構、夢としてどこかにやりたかった。人の言葉を話して自我を保っていたかった。いっそのこと狂って自身を犬と思い込んだ狂人にでもなろうかと、いや、なりかけたくらいであった。

記憶の中で、川名や似鳥が去ろうがお構いなしにノアは盛り、時計がないため実際はわからないが無限とも思える時間、中に犬の性器を押し入れられ続けたのだ。人間のものと違い持続力が異常なのだ。萎む気配というものが一切ない。

こちらがいくらもがこうが、声を掛けようが無駄。「ノア、やめろ!」などノアに話しかけている時が最も惨めな気分になり、自分を犬と思い込んでいたほうがまだよかった。

身体の中で怒張した文字通り獣の一物は楔の用のはまり込んで外せず、意図しているのかいないのか、霧野の良いところを圧迫し、姿勢を少しでも変えたり動いたりすれば擦れ、最悪な快楽を身体中に施し、刻んで行った。
情けないと思うほどさらに感じ入ってしまい、人がいないのをいいのことに泣きながら全身で感じてしまった。誰かを思い浮かべると惨めさに死にたくなるので、痛みと快楽に集中し、考えるのをやめていた。

「なんだ?まだやってたのか。」

川名は幾度か地下に降りてきた。最初こそ霧野もやめさせろなどと言っていたが、鳴き声と認知されるだけで無視された。川名にも自然に終わることを待つ以外どうすることもできないのだった。無理やり外そうとすれば内臓が傷つき、損傷する。

「お前の様な無能な犬に似合いの姿だな、霧野。発情期のノアの性処理道具として役に立って良かった。いや、獣にそんな立派な名前はいらないか?ノアの番なのだからハルがいいかな。」
「……、いい加減に、しろよ、くそ……、」

霧野はなんとか小さく声を出すが上ずり震えており、怯えが隠せず何の迫力もなかった。

「気持ちが良くて鳴いているようだ。今日はノアをここに置いていってやる。ノアと仲良くしろよ、ハル。」

どれくらい経ったのか、中のつっかえようにな物が動き、徐々に身体の中の圧迫が外れていく、ずるりと肉の楔が抜け、ぬるくなったものが身体の中にいつまでも残っていた。

気力も性力も歯向かう気も尽き果てた霧野をノアが嘗め回していた。それがまた余韻の残る身体にはゾクゾクと気持ちがよく、抵抗してもノアがはしゃぐのを辞めないことはいつものことなので、早く飽きてくれるように耐えていた。

川名が何か言っていたが、聞き取れず、気がつくと彼の足元でノアのと並んで目の間に差し出された皿に頭を突っ込んで舐めていた。急な吐き気に鉛のように重く火照った頭をあげるとやはり川名が何か言っていたがその隙にノアがこちらの皿にまで頭を突っ込んでくる。

川名が止めるそぶりをみせない、恐る恐る視線を下げるとまさに犬の餌が盛られノアが霧野の代わりにソレを食っていたのだ。途中まで自分が口をつけた痕跡がある。食っていたのだ、犬の餌を。そうして狂気の時間を過ごし、知らぬ間に眠っていたのだ。

目覚めた時には、川名もノアも夢のように消え失せ、代わりにノアの代わりにまだ言葉の通じる間宮が目の前に立っていた。どこからどこまでが現実で夢なのかわからなくなる。

穢れ果てた身体に水を浴びせたことで、意識もはっきりしてきた。救われた気分だ。

彼には人としての言葉が通じたのだった。IQは高そうだがEQの低そうな頭の悪い彼を利用することは難しくないだろう。IQは単純な知能指数、EQは人間関係を構築するための心の知能指数だ。彼を使ってせめて正気をを取り戻したい。それから、溜まっていた澱のようなものが心の底から溢れ出た。

「俺なんかとくそホモごっこなんかしていないで、さっさと変態異常者二条のとこでもどこでも行って、好きなだけヤられてこい、変態同士お似合いなんだよ。誰がマゾホモ奴隷だ、大体奴隷はお前だろ、お前の預金残高を言ってみろよ奴隷。ヤクザがヤクザに借金してクソサイコに好き勝手に使われてんだから。」

「なんだとこの野郎……俺のことはまだしも……」

「二条のことか?あんな奴を慕うとは救えない野郎だ。思ってるのは俺だけじゃないからな。俺にばかりヘイトを向けるのはお門違いだぜ。」

間宮はしばらく無表情に黙って遠くの方を見ていたが、足をどけるといつものにやにや笑いに戻って、霧野を見降ろした。

「なるほど、お前がいつまでも壊れないから、二条さんもいつまでもお前のような裏切り者の処理待ちの屑に執着するわけだ。しかし、正気を保てる時間も以前より短くなっているんじゃないか?前より反発も胆力も随分弱いぜ、霧野さん。大丈夫か?……。俺がもっとアンタを壊して、使い物にならなくしてやるよ。そうすればあの人の興味も多少は失せるだろ。ついでにお前も救われる。」
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