堕ちる犬

四ノ瀬 了

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痛かったか?痛かったら、痛いと言って叫んだっていいんだ、別に、やめはしないから。

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 結局南はその日、仕事には行かなかった。行けなかったのである。身体がだるい、熱っぽいからと青い顔をして霧野に言う。霧野は多少は南のことを心配した、しかし、人の心配をしている場合では無く、南が心配に値する相手かと問われれば全く値しない。唐突に、腹減ってるなら南が寿司でもとるか、と言う。

 寿司、そう聞いた瞬間に霧野の口内に大量の涎が溢れ出た。「あそこ」にいた時には、欲望のまま食べたい物はなんだって食べられ、可愛がられの贅の極みの愉楽を覚えた。まともな警察官時代ではあり得ない程著しく潤った。美里から馬鹿舌と冷めた目で罵られようが、この時だけは別に、かなりどうでもよかった、寧ろ美里の偏食が極まる程、こちらに回ってくるモノの量も増えるのだから。こういう自分を多少は卑しいと思う。
 贅の極み、そういう意味では、川名からも二条からも、そして時々美里からも、人の、生活の基本の根本、衣・食・住の観点から教わるものがあった。あり得ない口座の残額、現ナマの束、狂っていく金銭の感覚。

 ファミレス、そして黒木との生活の中で、人間並みの食事は出て、確かに美味しいには変わりなかったが、贅とはかけ離れたチェーン店料理と素朴な家庭料理に過ぎない。ここにきて急に寿司。南が頼む寿司ということは、まがい物ではない、それなりの寿司である。ここであからさまに悦んでは、南にあらぬ疑いをかけられる。霧野は「ああ……、それがいい……。」と、そっけなく答えて、南に背を向けるようにしてソファに座り指を組んで俯いていた。指が震えていた。南は、霧野が落とし前をつけさせられている最中だと思ってはいても、まさか人間以下の扱いを受けているとは知らない。

 寿司が来る。予想通り高級寿司、桶二つ。南は俺はあまり食欲が無いから、大目に食べていいぞと言う。
 もう、初手から、狂いそう。口に入れた端から涙が出る。駄目、席を立って、戻って、続き。続き。
 これが最後になるかもしれない、と思いかけ、いや、弱気になってどうする、と、自分を奮い立たせる。

「ところで、何やらかしたんやお前、言えなきゃ言えないで別に良いんやけど。」
「……言えない、今は、悪いけど。全部片付づくまでは。」
「ああ、そう、でも、優希君のことや、なんやかんやうまいことやるんやろ。困ったことあったらまた俺に頼ったらええよ。俺ができる範囲で手伝ったるから。でぇ?許してもらえそ?今のとこ、五体満足のようやけども。」

 ふいに、霧野の脳裏に川名の涼し気な表情が浮かんだ。涼しげな顔のまま「二度と逃げられないように、今度こそ、お前の四肢を、いただいておこうかな。」と言って可愛らしい笑みを浮かべるのだ。霧野の背に冷や汗が流れた。存在するはずの無い視線、それから、身体の上に線上に走る痛みを。痛む程、思ってしまう。効率を考えれば、例え制裁だとしても、四肢切断した成人男性一頭を所持し続けるなど、あり得ないことで、せいぜいいたぶって殺すのがいいとこのはずなのだ、本来は。しかし……。霧野にはわかる。川名はまだ霧野をいたぶることに、まったく飽きていないということが。そして、そうやって、物理的に自由を奪った人家畜を終生飼い続ける余裕も余力もあることを。考えてみれば、川名屋敷でしばらく飼われていた間にも屋敷の全貌は掴めなかった。他に飼育されていない人間がいないと果たして、言えるだろうか。見えない場所に飼われていて本人は飽きたので世話の一切を別の人間に任せて飼い殺して時々思い出したように観に行くなど、しているのでは、ないだろうか……。………………。

「ああ、まぁ、やり方、次第かな……。夜には出るから、今少し寝させてくれ。」

 食後の仮眠の間に、霧野は鮮烈な夢を見た気がしていた。
 目覚めた時には、厭な夢を見たという感覚だけが残っていた。
 夜も更けた頃、霧野は身支度を整え、玄関先に立った。

「帰ってくるのか?」
「いや、もうしばらく世話にはならない。」

 霧野は黒木のスニーカーを履いて振り返りもせず外へ飛び出していった。出ていったあと、礼の一つも言わなかったことに気が付く。風が吹きすさんでいた。月明かりの下を、黒雲が勢いよく流れていた。月が雲に翳り、あらわれをくりかえして、世界が、薄光と薄闇と完全な闇とまだらになって、霧野の周囲に漂っていた。

 周囲には、風の音だけが響いていた。
 途中、ホームセンターで、リュック、チェーンカッター、ハンマー、大型ナイフ、ロープを買っておいた。

 霧野は用意した道具を手に、自分が飛び出してきた川名の城、彼の事務所へと向かった。事務所を囲う塀の四方には監視カメラが仕掛けられている。しかし、それらの監視カメラは、それぞれ特定の時間だけ、数十秒単位で映像が切り替わるような仕掛けを施されていた。それは、霧野が川名組に潜入して直ぐに仕込んだ仕掛け。切り替わる時間が、ほんの数十秒単位であるという工夫もあって、今もバレずに稼働し続けているはずだった。特定の時間帯に、決まった道筋で事務所に忍び込み、気になる箇所を漁り、元に戻し、また決まった時間に決まった道筋で、出ていく、そうするとカメラには映らない。今まで、そんなことを密かに繰り返してきた霧野である。

 事務所の見える位置までやってきた。路地奥、暗闇の奥に身を潜ませ、時間が来るまで事務所を眺めていた。事務所は変わった様子は無い。一階の一室、夜番の見張り番のいる部屋だけ、いつものように明かりがついている。腕時計を見、隙間の時間が来るのを待った。時計も黒木のモノだった。電波時計で狂いはない。
 
 時が来た。影に紛れ、霧野は地下室への階段の前まで駆けていった。
 ここまでは、簡単なことだ。

 地下室へ下る階段へ足を踏み出して、すとん、と、一つ、降りる、浮遊、堕ちるような感覚。足はしっかりと一段下った階段を、踏みしめている。頭の中に電流が走った。帰った方がいい、大体、どうして戻ってきた、美里のことなんか、どうだっていいじゃないか、何を執着している、川名にはわかっている、全部わかっている、わかる、戻ってくる、わかっている、俺には今、川名の、彼の考えていることが、どうしてか、手に取るようにわかる気がするのだ。だから、今、戻れるうちに戻れ、でも、どこへ行く。

 霧野は、いや、杞憂だ、畏れているだけだ、と思い、また一つ、堕ちた。すとん、と体重を預けるように階段を、下った。まだ戻れるぞ。闇の奥底に見慣れた地下室の薄錆びた分厚い鉄扉がうっすらと見えてくる。また一つ、降りる。帰るべき。と思いながらも足は降りていく。とん、とん、とん、と降りる、あたりの闇が一段と濃くなった。

 霧野を背後から照らしていた月明かりが、雲に覆われ、翳り、完全な闇になった。闇の中を降りていく度、何か一つずつ失っていくような錯覚を覚える。それでも一度下り始めた足は止まらないで、懐かしい闇の底まで、降りていくのだった。血にも似た鉄の香り。ポケットから取り出した鍵束、念のため鍵穴から鍵を作れる用意もしてあるが、予め作っていた鍵を、嵌め込んだ。それは、すっぽり奥まではまりこんだ、つまり、鍵は最後に黒木が型をとった時から変えられてない。いや、回らないかも、そう思いながら鍵を摘まみ、回す、カチ、子気味の良い音がして、簡単に鍵が開いた。開いてしまった。

 霧野はドアノブに手をかけ、体重をかけるようにして重い鉄扉を押し開け、中に滑り込んだ。重い音を立て扉が閉まった。蒸れた臭い、蒸し暑い。手さぐりで、電気をつけた。前方の、かつて自分が留められていた場所に、一人、細身の男が後ろ手に手錠をかけられ、こちらに背を向けて地に横たわっていた。心が、急いた。向こう側へと駆けだしそうになるのを抑え、足早に歩み寄った。しかし、言い知れぬ違和感。なんだ?再び、足を止め、霧野は探るように前方を見る。男は、寝ているのか、電気が付いたにもかかわらず、動く気配が全く無い。死……?いや、よく見れば、男の脇腹辺りが動いている。霧野の視野が男を中心にして拡がり始める。鎖やロープが垂れ下がり、床に、拷問具、拘束具、その他、陰惨で猥雑な道具の類諸々、それらがテーブルや、床の上に相変わらず、片づけられずにある。懐かしさを覚えるくらいだ。ふと、他も変わりはないのかと、何気なく、背後を振り返った。

 霧野は後ろを振り向いたと同時に、絶句し、目を大きく見開いたが、反射的に手が、リュックの方へとのびた。今自分が入ってきた扉のすぐ横に立っていた男が銃口をこちらに向け、霧野は手を降した。真っ黒い穴が、こちらを狙っている。

「なぜだ?、まさか、南の奴が、」
「南?誰だっけ?それ……ああ、思い出した、あの小僧もお前をかくまうのに加担したか。へぇ……。」

 死ぬほど聴きなれて耳に馴染んだ声の主が銃を上げたまま近づいて来る。

「いや、関係ない、南は。」
 
 彼、川名の、瞳はいつものように冷え冷えとしていたが、完全に冷めているわけでもなかった、闇の色が深すぎるだけで、その奥に何か愉快な様相が、見える。

「ふーん。俺も別段興味がない。ところでその荷物、邪魔だな。降ろして、こっちに投げてよこせ。」
「……。」

 川名との距離は、おおよそ4メートル。手を出すには遠すぎる、距離を詰める前に、撃たれる。馬鹿だった。入った時、つい美里の方に集中してしまい気が急いて前進して、ドアの周りを確認するのを怠った、俺の落ち度……。しかし、この時間、この場所に、誰かいるとしても、まさか、川名本人がわざわざ待ち構えて居るとは、どういうことだ……、いや今さらくよくよしても、こうなったら仕方ないんだ、第一、ドアを開けたと同時に川名を発見したとして、身体に直接銃口を当てられ、全く動く余地も無くなっていたかもしれないだろ。逆に考えろ。今、ここには川名一人、今の川名の精神状態を考えると、俺を撃つとしても、致命傷になる位置を狙うはずない。頭じゃない、多分、足を狙う、膝より下。ある程度推測が付けられれば対策を練る余地はある。

 川名は、霧野が逡巡する間に、銃身を霧野の横にずらした。

「どうした、聞こえなかったか。」

 川名の視線が霧野を通り越して、そして、もう一度霧野の方に戻ってくる。
 銃身はずれたまま、霧野の背後にいる、もう1人の人間の方をさしている。
 
「……、ははは、なるほどねぇ、汚ぇぞ……、川名っ、」
 霧野は口元に笑みを浮かべ、川名を睨んだ。
「でも、はったりなんだろ?撃てるのかよぉ?アンタに、あいつが。」
「……。」
「ふふふ、撃てないのだろう!!」

 霧野は川名に向かってすごんで見せた。愉しい殺気が辺りに満ち始めた。川名の表情は変わらないが、薄っすらと顔の表面に汗が浮かんでいるのが見えた。霧野は、ある種の愉快さまで感じ始め、袋の鼠の状況は変わらないのに、テンションが、ぐん、ぐん、と、上がり始めた。

「撃てないだろ。いくらアンタでも。俺は撃てても、アイツは!面白い、お前にも情と言うものがあるとはな!」

 霧野が勢い一歩踏み出すと、川名は手早く銃の安全装置を外し、霧野はまた足を止めざるを得なかった。照準は変わらない。背後に横たわる人物から、動かされていない。霧野は背後の男をかばう様に、身体をずらしたが、そうすると川名の方が軽く自ら横にずれ、照準は一ミリも動かない。やはり正確に背後の男を狙い続けるのだ。川名の銃の腕が異様に良いのは知っている。だからこそ、正確に霧野の脚、ふくらはぎ辺りを狙う、必ずそれは、着弾する、それを前提にしたカウンターを考えていたのに、これでは、それもできない。では、後ろの男に覆いかぶさって見せたら、どうなるだろう。そうしたら、彼はこちらに容赦なく近づいて来て二人の隙間に銃をねじ込んで、直接撃つのだろう。心拍数がどんどんと上がっていくのを感じた、体温が上がって、皮膚が、紅潮していく。逆に川名は暗がりの中で、青白く見えた。

「霧野。お前何か勘違いしているみたいだな。」
 彼の声が地下室に響いた。
「何。」
「それが誰かわかって言ってるのか?確認していいぜ、その間俺はここから動かないから。」
「……、……。」

 霧野は川名に対峙しながら、後ろ歩きをして、男の元まで到達した。かがみ、男をの肩を持って、顔を覗き込む。

「………。」

 全く身に覚えのない、知らない若者が、気を失っていた。確かに背格好も身なりも普段の美里によく似ており、顔も整っているが、全くの他人、組の者でもない、全く霧野の知らない男だったのだ。どういうことだ。

「もう一度言うぞ、荷物をこっちに投げろ。」
「誰だ、この男は。」
「……。ハル、荷物を寄こせ。最終通告だぞ。……はぁ、しょうがないから、特別に、お前の質問に答えてやるよ、そいつは俺達には何の関係も無い、堅気の人間、そう、お前が、真実に守るべき、民間人様だよ。霧野、俺が何のためらいも無くそいつを撃てる、殺せることが、お前には、よくわかるはずだ。そして、お前は今、そいつを救えるんだ、今のところそれは、お前が、救える唯一の命なんだよ、霧野巡査。」

 霧野は、茫然自失としながらも、川名の殺意を身体で感じていた。リュックをなんとか降し、川名の方へ、放り投げた。川名が銃をそのまま近づいて来て、リュックを拾い上げ、後退し、ドアの向こう側へ投げ捨て、再び最初にいた位置に戻った。川名はポケットの中から何か光るものを取り出し、霧野達の方へ投げた。小さな鍵だった。

「手錠の鍵だ。そいつで、お前の手で、その男を解放してやれ。」
「……。」
「そして、空いた手錠をお前自らの手に嵌め、そこまで終わったらその鍵を、俺に投げて返してくれ、できるな。」
「……。」

 言われた通りにする他、無かった。霧野は慣れた手つきで男の手首を手錠から解放した。そして、躊躇いながらも、どうしようもなく、手錠を自らの両の手首に通して、カチチチチ……と手首の太さまで輪を絞っていく、自分の指で、強く押し込んだ。最後の金属のカチリと鍵の締まる音を聞いた。歯噛みをしながら、霧野は立ち上がり、繋がれた手首を振り上げ、鍵を投げ返した。床に落ちた鍵を、川名の革靴が踏みつけて自分の元へ引き寄せ、再びポケットの中に落とし、仕舞い込んだ。

「さて。戻ろうか。お前が先を歩け、俺は後ろをついて行くから。」
「……この男は。」
「ふぅん、他人の心配する余裕があるか、いいねぇ……、外で随分羽を伸ばしてきたようだな、リフレッシュになったかな?そんなに心配なら、お前が自分で抱えてここから外へ出してやるんだな。軽く眠らせているだけだから、目が覚めたら勝手にどこかに行くだろ。安心しろ、その男は、俺にとって、どうでもいい男だから。」

(……、へぇ、じゃあ、裏を返せば、俺はもう、お前にとって、どうでもいい男じゃないってわけ。)

 霧野は顔を伏せたまま、不自由な身体で男を抱え上げ、川名の方へ歩いていった。一瞬、この男を投げつけ隙を作り反撃することも考えた。もしもこの男が本物の美里ならば、そんなこともできたのかもしれなかったが、川名が、堅気の人間だと言い張っている無防備な男を雑に扱うことは、やはり霧野には、できなかったのである。

 川名は銃を降し、霧野の衣服を点検した。霧野は、ポケットの中に、お守りの意味もこめ、黒木の折りたたみナイフをいれたままにしていたが、当然それは没収された。他の武器になりそうな物はすべて、リュックの中だ。

 不本意な形で、来た道を戻る。背後から銃を突きつけられている気配を感じながら、不吉な13階段をあがりきる。それでもまだ何か糸口は無いかと考え続ける。考え続けるしかなかった。そうしないと、狂ってしまうから。

 月明かりが、来た時とは反対に、煌々と光り輝いて、まるで何か霧野を祝福でもするように辺りを昼間のように明るく照らしてる。霧野は男を足元に降し、事務所の壁にもたれさせ、座らせた。

 何にせよ、また、自分のせいで人が、巻き込まれ、犠牲になったに違いなかった。……。
 
 霧野と一切面識はないが、その男とは、矢吹光秀だった。矢吹は自分なりにできることを考え抜いた結果、川名の事務所に真正面から出向くという大胆な行為をやってのけたのである。肝をつぶしたのは、退院したばかりの久瀬である。久瀬は最初、それが矢吹だと気が付かなかった。どこかの若いチンピラが組に入門にでもやって来たと思ったのである。しかしそれは、矢吹なりに美里の知古の者であるということを示すための変装、偽装であり、美里にも雰囲気が似ていた。美里のことで、川名に用があると言って、直接話すまで帰らないと、ヤクザ者達に囲まれているというのに、威勢よく啖呵を切るのである。とても堅気とは思えない威勢の良さ、同時にどこか人懐っこい雰囲気に、久瀬以外の、血の気の多い川名組の鬼達は、彼を大変に気に入って談笑、川名が訪れるまで待つといいと気を許したほどだった。

 そうして、川名は、矢吹の話を最初から最後まで黙って聞いてやった。つまり、美里が何らかの落とし前をつけられているのを自分が知っていて、そろそろ勘弁してやってほしいという、途方もない、あり得ない願いについてである。川名は多少驚くものがあった。美里の動向について大体把握しているつもりであったが、最近、霧野「で」遊ぶのに夢中になっていたせいで、少し目を離していた間に、よくわからない虫がついていたということに。久瀬が、美里の映像を何かに使いたがっていたことや、隠れて何かにいれこんでいたのは知っていたが、こういうわけか、と、久瀬との会話の記憶と照合させ、全てを理解、目の前の男が、矢吹光秀という新進役者であることまで、川名は正しく理解した。

「それで?代わりに君が何かしてくれるって言うのか。」
「できることなら、……金、ですか?」
「……、……。」

 川名は目の前の人間が、ガワの偽装は上手くても、この世界からは遠く本質的な部分で全く向いていないことを見抜いた。暇潰しに、戯れに、アイツのためにどこまでやれるのか、口先だけでは無い本気を、誠意をもって証明してみせることが出来るか、試してやろう。

 久瀬が密かにこれから囲おうとしていた男だ。久瀬の眼の前で、壊してやるのも、悪くないかもしれない。まだ若い、これからの将来が超有望という人間の未来を腐らせるのだ。が、今は他に、気を紛らわすことが様々ある。少し遊ぶくらいにとどめるか。それに、本当は堅気の癖してそれを偽り正々堂々と気後れするところも見せないで事務所に乗り込んでくるところは霧野に似たところもあり全く見どころが無いわけでもない。

「いくら用意できる?」
「二百万、程度であれば。」
「本気で言ってんの?桁が一つ違うよ庄野君。」

 ”庄野光”というのは、矢吹が使った偽名である。この一言で、川名は相手の精神が一歩後退したのを見た。
「……。」
「でも、そんなに、美里のことを思ってくれてるのか、君は。君みたいな若くろくな職業にもついてないろくでなし人間にとって、二百万が大金だということくらい、俺にもわかる。俺にもそういう屑の時代があったしな。」

 川名は椅子から立ち上がり、机の向こう側に立っている矢吹の側までゆっくりゆっくり歩いて行って、目で、部屋に居た他の男達を、外に出した。矢吹の緊張が、さらに大きくなるのが、他の人間には見えなくても、川名には手に取るように感じられた、多少面白い、もっと、詰めてやるか。川名は矢吹のすぐそばに立って顔を覗き込んだ。

「なあ、庄野君、アイツと寝たのだろ?どうだ、随分、具合が良かったろ。」
「何、してませんよ、そんなこと、」

 さっきまで野蛮さを醸し出していた矢吹の瞳に揺れが生じた。
 なるほど、寝たのだな。

「……、庄野君、次に俺に嘘をついたら、指、一本ずつもらうからな、いいな。もう一回聞く、寝たのだろ。」
 矢吹は、しばらく呆然とした表情で、震えさえしていたが、小さくうなずいて、それから続けた。
「でもっ、本意じゃなかった、俺は、」
「ああ、そうだろうな、わかっているよ。」

 川名は急に打って変わって明るい、優しい声を出し、矢吹を励まし始めた。

「アイツの方からだろ?そういう奴なんだよ、君だけじゃないんだよ、被害者は。セックス中毒なんだから。困ったもんだよ。皆アイツには困ってるんだ。だから、今回だってああいう目に遭ってるんだな、それを、君は許してやってくれだなんてわざわざアイツのために身体を張りに来てくれて、随分とイイ子なんだねぇ。でも、あれで、悦んでいるかもしれないじゃないか、本人は。だから君がわざわざ心配する必要なんか無い、杞憂なんだよ、さ、俺の気分が変わらない内に、さっさとお家に帰んな。おぼっちゃん。」

 矢吹はもうショックを隠そうとしない。その表情を見ていると、川名は多少、気分がよくなるのを感じた。しかし矢吹は、再び息を吹き返したように恨みがましい視線を川名に向け、その不屈な雰囲気は、川名を余計に悦ばせた。久瀬が目をつけていた点からも、もしかしたら、戯れに潰さなくても、面白い育ち方をするかもしれない。川名の猫のような気紛れな性格、その日の気分が、たまたま働き、矢吹は運よく助かっている状態にいた。

「悦んでる?そんなはずありませんよ。そんな風に言うのなら、今すぐにでもやめさせたらいいんだ!それをやめてないのだから、言ってることとやってることが、矛盾してる、そうでしょう……。」

「ふふふ、そうだな、君の言い分はもっともだ。じゃ、どうするんだ?二百万ぽっち、そんなカスみたいな金、全然、いらないね。君がアイツの肩代わりでもしてくれるのか。君が代わりに、同じ懲罰を受け、それに、耐えられるとでもいうのかな。……見たところ、喧嘩一つしたことが無さそうな肌つやだが……。」

「……、……。」

「ふふ、ごめんごめん、虐めすぎたな。部外者の、カタギの、君にそんなことしない。ところで、立派な衣装だな、わざわざ買ったか?ねぇ、どこで買ったの?それ。でも、俺が帰っていいよと言ったのに、これは本当に珍しいことなんだぜ、それなのに、帰らず、そんな啖呵を切っておいてさ……もう、タダで返すわけにもいかなくなったな。」

 川名は、元から部屋に居た二人の構成員を呼び戻した。

「君のその、蛮勇を買って、君が頑張ったら頑張っただけ、美里の刑期を無くすのは無理でも、少しくらい短くしてやってもいいよ。でも、君が頑張ったことは、美里には一言も言わないし、ここに来たことも言わない、お前の口からも言ってはいけない。それでも良いってなら、一つ課題を出してやる。」

「……。わかりました、それで、俺に、何を、頑張れって、言うんです。」

 矢吹は正面に川名、両サイドを組員に囲まれ、逃げ出したいのを必死にこらえているのが川名にはわかった。

「逃げ出したいか?でも、もう無理だよ。もうお前にはやる選択肢しか、与えたくなくなったから、俺が。ただ、俺もカタギをそこまで虐めようと思わない。だから、どこまで頑張れるかは、お前の裁量で決めて良い。」

 川名は部屋の奥の戸棚を開いた。中には、特製の高級鞭が、10本ほど垂れ下がっている。川名は中からそこそこ使い込んだ柔らかめの一本鞭を取り出し、元居た場所に戻ったが、矢吹の瞳は見たことが無い凶器に釘付けになっていた。川名は手の中で鞭を愛でながら矢吹を見降ろした。

「お前が……、1発、耐えられたら、1発ごと、1時間、美里の懲罰の時間を短くしてやる。本当なら1秒とか、長くても1分とか、そういう単位でやっていいはずのお遊びなんだが、君にはなかなか見どころがあるし、一般人だからね、サービスしてやるよ。」

「……。」

「降りないだろ、まあ、今さら降りるって言ったって、降りさせない。一発はやるし、お前は美里をどうにかしたくてここにいるんだよな?まさか、一発で音を上げるわけ……無いよな?だって、お前が、頑張れば頑張る程、お前の望み通り、美里は救われるんだよ、文無しのお前の願望を、叶えてやろうってんだぜ。逆に言えば、お前が直ぐに音を上げたら、美里の刑期は少しも短くならない。それどころか、お前みたいな部外者が首を突っ込んできたせいで、奴を責める理由が余計にでき、刑期を伸ばすことになるかもしれない、お前のせいでだ。そうだろう……矢吹君……おや、どうした、顔色が悪いな。ところで、その服わざわざ買ったんだろ、台無しにしちゃまずいから、脱げよ、全部、下着まで。自分で脱げないっていうなら、そこの二人に手伝わせてやるよ……。」

 川名は、生まれたままの姿になった矢吹をしばらくの間しげしげと眺めいっていた。わざと繕った装いをして、身分を偽っていたせいもあり、細身ながらもその肢体の良さに気が付かなかった。よく見ればほんの軽い痣がある。なるほど、美里が苛めたのだな。衣服は男達に握らせ、これで逃げることもできなくなった。設備のそろった地下室と違い、括って吊るして打つなどはできないが、これは、懲罰でもない、川名にとって暇つぶしの軽いお遊びであり、矢吹にとっては友人を救うのための尊い行為なのである。

「じゃあ、こうしよう。お前は立ったまま頭の後ろで手を組んでいろ。そう、それでいい。首から下を打つ。姿勢を崩し、膝をついたら終わりだ。声は別に上げても良いことにする、もしくは、もう無理だと思ったら、もしくはお前が満足したら、そうだな、「終わり」と言え。そこで止める。それ以外は何を叫んでもいい。何を叫ぼうが止めてやらないから、安心して叫ぶと良い。止めてと言っても、痛いと言っても、やめないから……、なんだ、その恰好が、恥ずかしいか。恥ずかしがることは無い、」

 と、言い終わりもしない内に、川名は一発目の鞭を振った、鞭は、軽やかに矢吹の脇腹から胸にかけて、巻き付くように飛び、音を立て、矢吹は初めての衝撃に声を上げずに、ただ、脚で地面を強く踏ん張り震え、耐えた。

「……ふふ、痛かったか?痛かったら、痛いと言って叫んだっていいんだ、別に、やめはしないから、」

 二発目が振るわれ、ほんの数ミリずれただけ、ほとんど同じ位置に巻き鞭が、部屋中に響き渡る程の肉の破裂音と共にさく裂し、流石に声が上がったが声が上がったと同時に連続して、鞭が、矢吹が崩れ落ちる前に一発でも多く打ち込もうとでもいうように、飛んでいき、斜めに蚯蚓腫れを作った、ぁ、ぁっ、と引きつった悲鳴を上げ、若干前傾したものの、持ち直した、10発、それだけでも、身体は真っ赤になった。矢吹は唇をかるくかんで睨み上げるように、川名を見て、その口元に、脳が痛みを和らげるために何か物質を出したか、口角の若干の上がりさえある。矢吹は、十時間、十時間、と心の中で唱えた。矢吹の態度は、川名の気分を上げるにいたった。矢吹の膝はガクガクと震えて、足元をふらふらさせながらも、まだ膝はつかない。

 川名は自分の心音があがりはしないが、もっと先に進めたいという感情が昂っているのに気が付いた。緩急をつけながら、五発追加して、堕ちそうなところで、強めの一発を、股座に向かって真っすぐ入れた。流石に「ああ゛あ゛っ゛!!!」と悲鳴が上がり、無理か?と川名は目を細めて見守っていたが、二三歩後退して、まだ耐えた。

「痛かっただろう……?今のは……。」

 川名は猫撫で声でそう言った。「あ、ああ、そりゃあ、」と、もう呂律も回っておらず、息も絶え絶え言ってる先から、川名は二発股間に鞭を入れ、矢吹は呻きよろめいて、どん、と音を手て、川名の机に手を付いたのだった。川名は鞭を手元で可愛がるように撫でた。

「終わりだな、姿勢を崩した。23発、約1日分。大したもんだ。」

 川名が鞭を可愛がっている自分の手元から、また、矢吹の方に目をやった。痛みに声も出ないようだが、何だか、まだやりたいという顔をしていた。川名の中でマッチが擦られるような音がした。

「……やるか、まだ。ああ、声が出せんだろ今、やりたいなら頷いて、やめたいなら、そのまましてろ。」

 川名は矢吹の様子を見守っていたが、軽く頭が動いたのが見え、「そうか……、まだ、俺と、続きを、やりたいか……いい子だな……」と呟き、「おい」と舎弟の男の1人を側へと呼んだ。

「彼を背後から支えてやれ。多少当たるが、彼に比べたら大したことないだろ。」

 男は承諾し、矢吹を背後から抱きしめるようにして再度立たせ、川名の向かいに立たせ、腕をとり、自分の身体に矢吹の背をもたれさせた。ふらふらとしていた身体が、多少安定し、また続き、今度は倒れそうになっても、背後から手が伸びてきて、倒れたくても倒れられない、が、その前に矢吹の脚に限界が来ていた。上半身を真っ赤にされた後は、下半身と内腿、時にふくらはぎの方にまで重点的に鞭を飛ばされ、脂肪の薄い部分に鞭の先端があたると、死ぬほどの痛みがある。立てなくなるように敢えて狙われていると矢吹は察し息も絶え絶え「足は、やめてください、」と言うと、股間打ち、悶絶する中、痛みのよく響いて来るやはり足、特に誰でも一番むちむちしてよく音が鳴る内腿を重点的にやられ、本格的に立っているのが難しくなってくる、これでは、仕事にも支障が出てしまうかもしれない、終わり、と言うか、言えよ、言ってしまえっ、と思うが、川名の方を見ると、川名と美里が二重に重なって見えて、全部が、呻き声に集約され、視界がにじみ、ぼやけた。

「石川、お前、勃つか?」

 声が遠い。川名が何を言っているのか、そもそも石川とは誰なのか、矢吹は最初全く理解できないでいたが、鞭が一時的に病んだのに安堵している内、すぐ背後の男が「まぁ、できますが。」と低い声で言ったのを聞き、遅れて、察した。

「や……、やめ……」と、言って終わらないは知っている、終わり、と言ってしまえ、終わりと。川名がいつの間にかすぐ近くまで来て、顔を寄せ、じーっと矢吹の眼の奥の方を見ていた。

「おーい、聞こえるか?今、36発だ、さ・ん・じゅう・ろ・くぅ。およそ1.5日分だ、すごいすごい、もうよしてもいいんだぜ。思ったより全然頑張るじゃないか、君。美里の刑期は最低でも1か月はあると考えてたから、まあ、貢献できてるぞ。でも、もう、足が限界のようだからな、でも、まだ、膝をつきたくない、やりたいのだろう?だから、お前のために、軸を一本足して、代わりに後ろの奴に足をやってもらえるようにしよう。嬉しいか?嬉しいだろ。もっと、頑張れるんだからな、奴のために。ほら、俺に対して、ありがとうございます、は、どうした?」

「ぁ……ぐ……」

「言えないか?もし、お前が俺の舎弟だったら絶対に許さんところだが、お前は部外者だし、お前は今、お前自身のわがままのために勝手に身体を張ってこんなことしてるんだからな。ま、言えなくても許してやるよ。」

 こ、この野郎……何てこと考えやがる……っ、矢吹は言葉を発せない代わりに眉をしかめ、唾を吐くまではしなかったものの、奥歯をぐぅと食いしばった。もう限界に近かったが、36、これだけ耐えて、たった36時間。と思っていると同時に身体に、美里から、身体に覚え込まされていた感覚、裂くような痛みと共にせり上がってくる気持ちの悪い快楽が下から上に、走り抜けていく。
「ぁぁ゛……っ、……、……!!」
 見知らぬ男の雄棒が自分の中に突き上げ侵入し、身長差から、一瞬身体が浮き、爪先立つようになって、背後から羽交い絞めされたのけ反った身体、そこにまた、飛んでくる、痛みの線、一発ごと、頭の奥から、痺れ、後ろから、肉溝の奥を抉られている内、痛みを加えられるたび、底を内側から押され、悶えると、中が動き、熱い、熱い、いつの間にか矢吹自身も、川名の目の前で勃起してしまい、あまりの羞恥と悔しさに、蚯蚓腫れ以上に身体全身が発汗、上気しているところ、新たな的を見つけた鞭が、ソコ、肉棒を重点的に狙いはじめ、矢吹は痛みと邪な快楽と共に、どろどろとした白液を噴いて、そのままぷっつりと、意識まで手放してしまった。

 矢吹が石川の身体の前で完全にぐったりとしてしまったのを見、川名はようやく手を止め、矢吹の頭を掴んで見降ろし、半目になって意識の完全にどこかにぶっ飛んでいることを確認した。これが霧野なら、張り飛ばして、自分の噴いた生ゴミを舐めさせるなりして掃除させてまだまだ何時間でもこちらの体力が持つ限り継続するところだが、今回は堅気の彼の願いのためにお遊びをしてやったまでの話だ。結果意識が飛ぶまであの鞭で50発弱か、初めてにしては悪くはないかな。霧野なら連続100、やすみやすみ1000くらいやったって、おそらく死にはしないだろう。

 そういうわけで、その後、彼の要望通り、霧野が戻るまでの間で、最低50時間以上美里を外に出すことに決め、美里の代わりに役に立ってもらう、そういう役を川名は彼に与えてやったというわけだった。川名は自分の部屋で矢吹を打擲した後は、元の通りに服を着せてそれ以上は何もせず、地下に置いていた。

 霧野が矢吹の元から立ち上がり、振り返ると、事務所の外に、この時間帯、普段ならあり得ない程の組員が居り、みな、揃いも揃って黙って霧野を見ていた。不気味であった。事務所の電気は、一階の一室だけでなく、今は一番上の、川名の部屋にも明かりが、煌々と灯っていた。

 窓の向こうから、人影が覗いていたが、霧野が見上げたと同時に、素早く引っ込んだのだった。
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