堕ちる犬

四ノ瀬 了

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俺にも味の好みくらいあるのだ。お前はタイプじゃない。薄い。酸味が強く、苦みが少ない。栄養とってるゥ?どうだ……?自分の精液味わった気分は?

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 美里が猫の首に回した指に強く力を込めかけた時、滅多にならないインターホンが鳴ったのだった。ルカが汚声を上げながらベッドから滑り降り、玄関の方へ駆けていくのを、美里は身体を半身に起こし、目で追った。手の中にまだぬくもりが残っている。

 殺そうとしていたのかもしれない。他人事のようにそう感じていると、再びインターホンが鳴った。客はこちらが家に入ることを確認して訪れているに違いなかった。そうでなければ、あまりにもタイミングが良すぎるから。正直今は人に会いたくはない。だがせめて誰が来てるか位は確認した方が良い。ベッドから起き上がろうとした時、身体が泥のように重いことに気が付く。おそらく体重は減っただろうに。いや、減ったからか。壁に手を付き手を付きしながら、リビングの壁に備え付けられたモニターを確認した。「切」のボタンの上に指をのせていた。

「なんだよ、アンタか、直で家に来るんじゃねぇ。とはいえ、もうそんな呑気してる場合でもないか。」

 普段と同じ調子の声が自分の口から出ていくが、どこか他人事のようだ。モニターの向こうに神崎が立っていた。

『やぁ、わかってるじゃないか。そう、だから、俺のことを救うとでも思って、早々にこの扉を開けてくれると嬉しいね。』

 霧野に似た言い回しだった。切、のボタンにかけた指に力が入りかけた。しかし、押さない、耐える。

「……。悪いけど、俺は自分の家には他人をあげねぇ主義なんだな、でも、わかったよ、一時間後。別の場所で。」

 シャワーを浴び、着替える。できるだけ目立たない服装。パーカーに目深に帽子をかぶって外に出ることにした。なぜ会う気になったのか。人とかかわってもろくなことなど、無いというのに。

 今日は暦の上で休日だったようだ。人でにぎわっている場所のほうが目立たなくていいだろう。待ち合わせ場所の駅の改札付近でなるべく目立たないように顔を伏せって待ってみる。

 最寄りには複数の行楽地があり、親子連れやカップル、友人同士の集まり等で、賑わっていた。美里の眼前に世の中は平和にうつるのだった。動悸がする。こうして平和な世界の中に身を置いてしまうと、一体自分が何者で何をしているのか、そして、何をしたいのか、急に、わからなくなるから。

 正常の幸福を前に動悸が激しくなり、服の下に厭な汗が流れ始める。全身に疲労感が満ちてくる。これ以上ここに、いられない。穢れた自分が居ていい場所じゃない。美里がそう思って踵を返しかけた時だった。

「なんだ、今日は普通の格好なんだな。一時間も待たせるからてっきりめかしこんでるのかと思ったな。……と、いうのは冗談だ。」

 冗談言ってる場合かよと思ったが、彼なりに人の気を和ませよという気づかいをしているのだとわかった。

 美里は駅の方へ向けかけた足を止め神崎に背を向けて歩き出した。一歩一歩大股で歩くと身体の動きに合わせて心拍数が元の調子に戻ってきた。汗がひく。すぐ横に、彼がついてきていた。高まっていた何かがおさまっていくことがわかるが、この男のおかげとはとても思いたくない。理性では。そう思う。

「身体の調子はどうだ?大丈夫か?」

 神崎の口から先ほど川名からされたのと殆ど同じ質問をされたことが奇妙だった。おそらく彼はある程度のことを知っているのだろう。ああ、やっぱり来ないほうがよかった。

「別に。悪くない。それで、何の用。俺が先走って失敗したことを、わざわざ馬鹿にしにでも来たの。」
「馬鹿に?お前ができる最善策をやったんだろ。馬鹿になんかしないさ。ところでお前、これからどうするつもりなんだ。」
「どうするも何も。何も変わらない。変わらないで済んだんだから、これで良かったんだよ。」
「ふーん……」
「何だよ、その反応、何か話があるんじゃねぇの。」
「うーん、それもそうだな、それじゃあ、どこへ行きたい?」
「はぁ?」

 神崎は観光案内の巨大な地図の前で足を止め、どこがいい?と気だるげに聞くのである。

「歩き続けるよりどこかに入ってしまった方が良い。人を撒くにしても。」
「どこでもいいよ、アンタが決めてよ。」
「そうやってお前は今までも自分で選択することから目を背けて来たんじゃないのか?」
「なんだよ、急に、あははあ、何を、言ってんだよ。こんなしょうもないことに脳の容量を割きたくねぇだけだよ、どうでもいい。」
「どうでもよくないな。これは練習だからな。お前が自分で自分の頭を使えるようになる、練習。」
「何だと?まるで俺が普段頭使ってねぇみてぇ言い草じゃねぇかよ。帰る。」
「まぁあそうムキになるなよ。帰るってのは最も逃げの選択肢になるわけだが、いいのかそれで。」
「ははぁ、煽りなさる。そうやって煽れば俺が乗ってくるとでも思ってんのか。誰かさんじゃあるまいし!」
 
 神崎は目の前で美里のまなじりが吊りあがっていく様子を眺めていた。
 
「わかったわかった。そこまで意地になるなら俺が行き場所を決めてやるから、ついて来い、その代わりどこへ連れていかれても文句言うのは無しだ。」
「……。」

 神崎が歩きだすと、今度は美里が不承不承で付いていく形になる。
 そうして、二人は人でにぎわっている人口釣り堀に入ることになるのだった。美里はあからさまに厭な顔をしたが、さっきの会話の手前、拒否することはできないのだった。

「センス無いってば……」
「俺が決めて良いんだろ。最初から自分で選択していればこうはならなかったのになぁ。ま、せっかく来たんだ、もちろんやるよな。」
「やるわけ……」

 目の前にチケットを大人二枚分見せつけられ愕然とする。あれよあれよと道具一式スタッフに与えられるまま、誘導され、二人並んで腰かけることになる。餌のゴカイが蠢いている。気持ちが悪い。動じる様子もなく器用に餌をつけて吊竿を落とす神崎を横目に、思わず苦笑いしていると「賭けるか?」と言われる。

「何?」
「普通にやっても面白くないんだろ。どうせ。だから、何か賭けようかって言ってんだ。」
「やだよ、だいたい、俺は一度だってやったことないんだぜ、こんな気色悪い、」
「じゃ、ハンデつけてやるよ。それでもやらないのか?ほら、そこにいるガキだって釣れてんだぜ。」

 はす向かいで、小学生程の子どもが大きな魚を釣り上げ、はしゃいでいるのが目についた。

「……。じゃあ、何を賭けようっての?金?」

「金なんて……、そんなつまらないもの賭けても仕方ないだろ。大体、悲しいことに、今の俺より今のお前の方が金はあるだろうしな。お前は知らないかもしれないが、俺のような真面目な公務員は意外と薄給なんだな。そういうわけで、霧野も最初は驚いただろうな、だって貰う額の桁が一個下手すりゃあ二個、違うんだから。最初からそう伝えられていたとしても実際に本物を目の前にしたら、狂うだろ……、多少は、誰だって……。霧野のこと。お前が知らなそうで俺が知ってることと、俺が知らな層でお前が知ってること。これを取り合いっこしようか。どうだこれで少しは面白いだろ、お前にとって。」

「……、何、言ってんの、俺にとってじゃなくて、アンタにとって、だろ。」

「それこそどうでもいいだろ。考えるに値しないことだな。で?やるのか?降りるのか?」

 結局、美里は降りなかった。魚を獲得する度、先に釣り上げた方に、釣りあげられなかった方が情報を開示する。上限はどちらかが五匹釣り上げるまで。先に五匹の上限に達したのは神崎だったが、それまでに美里も二匹なんとか釣り上げており、大した情報では無いが、全くの収穫無、にはならなかった。賭け事は別として、行為自体が全く面白くないわけでも無かったのだった。やってみたら意外と面白い。同じように神崎行った競馬でクソ負けした時よりマシなほどだ。……あれはあれで、まぁ、悪くは、なかったけど……。

 川名からは溜まっている仕事をなんとかしろと言われていたが、別に今日から手を付けようが明日から手を付けようが、大量なことは確定しており、どうせ大して変わらない。それにどうしても昨日の今日であの事務所に行くのは正直、心の底では、嫌だったのだと、今、なぜかここにきてわかった。

 神崎が訪れていなければ、家にいても腐るだけだから、何も考えず、いや、考えたくないから、行って仕事に没頭していたに違いなかった。それこそ神崎の言いたい、思考停止状態だとでもいうのだろか。でも、だったら、どうすればいいって言うんだ、どうすればよかったって言うんだよ。

「大丈夫か?」
「ああ……全然、大丈夫、平気。」
 
 美里は俯いたまま答えた。酔いが回るのが、早い。雑踏。人気の多い酒場に来ていた。四人のテーブル席を二人で使っていた。

「どこへ逃げる気だったんだ。せめて俺に連絡くらいくれればよかったのに。」

 連絡しなくても勝手に特定していただろう。言葉に詰まった。邪魔されたくなかったのだとわかった。一時しのぎ的な場所として一度関西か九州方面に行こうと考えていた。そのついでに、拝んでもいいと思っていた。龍一郎の姿を。血がたっていた。

 そこへ、酔っぱらいか何か、誰かが、突如として神崎の横に勢いよく座ったのだった。美里は反射的に顔を上げた。決してガタイが大きくないわけでもない神崎よりも一回り大きい男が座っている。男の顔は、初め美里からは見えなかった。何故なら男は、テーブルに太い腕をついて、神崎の方を腕をついて覗き込んでいたからだった。

「俺を探し回ってんだって?誰だお前。」

 低く、特徴的な声だった。神崎は、動じる様子もなく男の方に目だけを正面から冷ややかに見ていた。

「ああ、確かに。だが、どうして今なんだ。」

「別に。ちょうどいいと、思ったから。」

 男が身体を椅子の背もたれに預けるようにしながら、美里の方へ向き直った。それから軽く目を見開くような仕草をして、相貌を崩しにやにやと笑い始めるのだった。その目を見開くタイミング瞳の吊りあがり方、間が、対面している美里と、全く、同じだった。傍から見ていた神崎にはまるで被って見えた。男は口の端をあげながら、雑踏の中でもよく響く声をして話しかけてくる。周囲の音が、遠ざかる。

「ああ……、なるほどねぇ……、しばらく会わない間に、お前、…………、ますます似てきたな。見てくれだけは最高に良かったからな、あの女」
 
 美里は酔い回って熱くなっていた身体の奥が一層燃えるように痛むのを感じた。つい、テーブル越しに男のほうへつかみかかろうとするのを、神崎が止める。

「どういうことです?神崎さん、離してください、」
「こんな人混みで騒ぎを起こしてどうするつもりだ。俺の立場も考えろ。」
「関係ない」

 揉みあっている側で、その男、龍一郎は頬杖をついて様子を見ていたが笑っていた。

「そうだ、その通りだな、他人なんて全然関係ないよな、涼二。どうする?今俺がこの横の男を叩きのめしてやろうか、そうしたら、一対一で、”話し合い”ができるだろ。健全な話し合いがな。」

 美里は自分の中の何かが急速に冷めていくのを感じた。それに、よく考えれば向こうから来てくれてよかったのではないか。川名が猛烈に彼に嫌悪感を示しているのは知っている。だからこそ、自分のことをわかってくれていると感じていたのも真実である。ただ裏を返せば、反対もあり得るということ。川名と対等に闘おうと思ったら、そうあの時のように、もう手段なんか問わずただ走り続けるしかない。そういう状況になれば、彼と対峙するのも時間の問題だったということ。そう、神崎の言う通りここで熱くなってはいけない。別に、殺す気になればいつだって、殺せるのだから。今直情的になって何の策も無くぶつかって何になる。美里はうつむきがちになり、言った。

「……、なるほど……悪くない。悪くはないが、お前の提案に乗る方が、ずっと嫌だとわかったよ。生理的に。」

 美里は手から力を抜き、神崎を払いのけた。それから、椅子に再び深く腰掛け、目の前に現れた男、龍一郎の方を見た。年齢的な衰えは感じない。同時に美里の中に抑え込んでいた記憶が脳内に抱く料の流れ込むようによみがえり、動悸がする。だが、駄目、動揺を見せては。テーブルの下で強く握る拳の中が酷く汗で濡れていた。龍一郎は美里の心情を知ってか知らずかそのままの調子で言った。

「お前が来ると言っておいて来ないから、様子を見に来てみれば、お前、まだあの異常者につきあってやってるんだって?正直がっかりだ。なんでよりにもよってあんな低層の奴の所に行く。理解できない。」
 
 美里は俯いていた頭をもたげ、上目遣いに血縁上の父を見た。

「異常者?どの口が言うんだ。」

「怒っているな。うん、その調子で怒るといい。そうすりゃあ多少マシになるよ。ほら、怒れ怒れ。怒ってみろ。」

「マシ?さっきから突然現れて何言ってんだてめぇ……」

「ううん……、うん、駄目だな、やっぱりあんな女に孕ませる必要無かったのかもな。労力をかけた時間を返してもらいたいくらいだ。はぁ。お前は少し、奇麗すぎる。」

「……なんだって……今、何て言った、」

「なんだ?まさか、今ので動揺したわけじゃないよな。お前。別に、大したことは言っていない。お前を生ませるためにかけた時間を、返して欲しいと言っただけだ。だって、もったいないから。」

 龍一郎がそう言って席を立ちあがりかけるのを今度は神崎が引き留めるのだった。龍一郎が立ち上がり手を振りほどこうとするが、神崎も立ち上がって無理やり再び席に着かせるのだった。

「……なんだ?」

 龍一郎は神崎ではなく、呆然としている美里の方を見たまま笑顔でそう言った。

「俺が誰なのか確かめに来たんじゃなかったのか。」

「……ああ……、そうだった、そうだった。自分から名乗ってくれるっていうなら、ありがたいね。こちらも無駄に武力行使したくないんでね。疲れるだけだから。」

 テーブルのを警察手帳が滑り、男の視線が落ちる。

「へぇ……刑事さんね。」

 龍一郎は警察手帳から再び美里の方へ視線を上げ微笑んだ。

「多少は良いカードを持ってるじゃないか、涼二、少しは見直したよ。ほんの少し、な。」
「……、俺の名前を、呼ぶんじゃねぇ……」
「どうして俺がお前に付けた名前を、俺が呼んではいけないんだ?涼二……。あれ、何だか前にも似たような会話をした気がするが、俺の気のせいか?ところで刑事さん、別に俺を逮捕しに来たというわけではないようだな。涼二とも関係して、まぁ、一体どういう関係か知らねぇけど何の用があったんだ?俺に。一寸当ててやろうか?」

「……。」

「ぶつける気だったのだろ、俺と、あの愚弟を。でもさぁ、俺がわざわざ手出ししなくてもあんな滅茶苦茶……、いつか勝手に破滅するだろう。時間の問題。ま、まだ、もう少し時間は必要だと思うが。」

「なるほど話が早いな、その時間がもう無いという話なんだ。」

「ああ、そう。なるほどわかった……何か、刑事さんにとって、大事なものでも、奪われたんじゃないかな。そういう手を、アイツは使いがちだから。好きなんだよ、そういういやらしいことがな。あれで中身がガキの時からほとんど変わってないのだからな。まぁそれが、どういう品物かによるが、それが、アイツが失って困るものだっていうのなら、手伝ってやってもいいし、そいつが一体どういう性質のものか、気にもなる。人が何かを大事にする場合、それが弱点になるから。まぁ、いい例が一般的な家族ってやつかな。サラリーマンが仕事を辞めたくても家族のため、家族を人質に取られてるから辞められない、どうにもそういうものらしいから。馬鹿だね、人間って。で、本来ならそれなりの報酬をいただくところだが、相手が相手ということと、それから……」

「嫌だぜ俺はこんな奴に協力してもらうなんて」

 ついそう口走って美里は立ち上がった。神崎が美里が今まで見たことのない冷ややかだがどこか芯のある目つきで美里を見ていたのだった。それはどこか霧野を彷彿とさせた。神崎は急に他人行儀な調子で言った。

「じゃあお前は霧野がこれ以上どうなっても全然気にしないということで良いんだな。そうすると俺とはお前とはもう、意見が分かれることになるからな。」

 頭が、どうにかなりそう。穢い。美里は気が付いた時には店を飛び出ていた。手が痛い。何か殴ったらしいが、記憶がない。血が付いているのを誤魔化すように服に擦り付け、足の向くままに歩いていた。どうやって帰ったのかもあまり覚えていない。

……、そうだ、明日からまた、仕事だ……。

……、……、……、そうやってまた誤魔化すのか、俺は。
わかっている癖に。



 澪は、屋敷の中を知ったように先導して歩く間宮の後を歩いていた。体が異様なほど疲れていた。体が重い。目の前の男のほうがよほど体力を使ったはずなのにそのような様子は少しも、見受けられない。男との距離が、広がる。どんどん広がっていく、男が廊下の角を曲がりかけたところで澪のほうを振り向いた。

 彼は頭を掻きながら面倒くさそうに歩み寄ってきたかと思うと身体がふわっと浮いた。かかえあげられたのだった。反射的に顔面をひっぱたいて男の顔が左を向いた。ゆっくりと頭が戻ってきて、その瞳が、澪を覗き込んだ。侮蔑的な笑いが暗い目の中に浮かんでいた。口角も上がっている。なんからなにまで、不気味だった。

「これは失礼しました。歩くのもしんどそうでしたので私が出口まで運んであげようとしたまでです。お嫌でしたか。」
「自分で歩ける。」
「……あ、そう。」

 間宮は澪をゆっくりと下したかと思うと今度は先を恐ろしい速さで移動し始めた。こちらが軽く走らないと追いつかないほどだ。ようやく追いついて、裏庭につながる出口の外で間宮は待っていた。口に出さずとも顔に遅いと書いてある。自分ひとり、息が切れていた。

「悪いけど、お前と違ってこっちは人を待たせてるんでね。」

 トゲのある物言いとともに再び腕が伸びてくる。払いのけようとするところ今度は乱暴に胸ぐらをつかまれ足がつま先立ちになり反射的にまた手が出るが、こちらが何度で手を出そうが、何も言わない、手も離さない。そして今度は無表情の顔が月明かりの下で上から澪を見下ろすのだった。

 間宮は平手されて軽く赤くなった顔で咳払いをしはじめた、澪はそれを呆然と眺めていた。彼は口の中を何かもごもごしていたかと思うと、澪の頭を両側からおもむろにわしづかみ頭を上げさせた。そして、口から生暖かいものを、どろり、と、吐き出した。よける暇もなかった。それは澪の精液の混じった唾液と胃液であり、澪の顔をぼとぼとと滴った。白濁した液体の煮凝りのような塊が、澪の汚れない顔の上を流れた。間宮のとがった舌の先から、まだ白いものがぽと、ぽと、と垂れ続けいる。澪の顔射でもされたように汚れていた。澪があまりのことに何も言えずにいると目の前の舌が唇をなぞりながら引っ込んでいって、その口が、大きく開いた。

「くっっそまずかったから返してやるよ。俺にも味の好みくらいあるのだ。お前はタイプじゃない。薄い。酸味が強く、苦みが少ない。栄養とってるゥ?どうだ……?自分の精液味わった気分は?ああ~?」

 澪が言い返そうと口を開くと素早く間宮の親指が澪の白く煮れた唇をぬぐいながら口の中へするりと滑り込み、その口内と舌をもてあそびぬちぬちと犯すのだった。

「ん……っ、なに……ひゃめ…」

「あはは、ふーん、そういう声も出るんだな。でも全然興味ないし、勃たないな。やっぱり。やめてほしいか?え?だったら頼み方があるよな?できねぇか。できねぇよな。お前みたいな最初から優位な立場の奴は。かわいそう。かわいそうだよ、お前って。おい、クソガキ、お前さんが本家の人間だとかそんなことは俺にとっては至極どうでもいいんだ……だって俺は出世だとか立場だとか、そういうものは薫としか築かないことにしているからな。これ以上暴れようっていうなら、俺だって強硬手段を使わせてもらう……。結構痛いぜ、頚椎やられると、しばらく痛むし、下手すれば……、まぁ、ある程度俺も加減はするつもりだ。とりあえず、疲れて気絶したのを運んだとでも報告しておくよ。お前が後から俺の報告が嘘だなんだとほざこうわめこうが、親や何やに泣きつこうが。俺にとっては”まったく同じこと”だから意味はないよ。わかる?だって。二条さんに伝わってただ折檻されるだけだから。どっちでもいい。というか寧ろ、イイよね、その方が。ただ、俺が気持ちよくなるだけだ。だから今のこの俺の行為だって、チクりたければチクってくれたってかまわないぜ。わかったか、小僧。わかったらおとなしく俺に背負われな。」

 三島と白井は、竹林に停めた車の前で間宮を待っていた。その間、三島も白井もどちらも話すことはなかった。澪を背負った間宮が先ほどまでのあれこれなどまるでなかったかのように「じゃあ、行こうか。」とだけ言って車に乗り込んだのだった。子供三人と大人一人、まるで引率の先生のようだな、と三島は思うのだった。澪が先ほどまでの傍若無人のそぶりも見せず間宮の前ではおとなしくしているのも、不思議といえば不思議だ。



「遅れまして申し訳ございません。」

 遅れてはいないが、一応そうことわって間宮は二条の元に戻った。
 わざと、数刻だけ遅れようかな、と魔が差しはしたが、五分前には馳せ参じた。

「問題なく送り届けました。」

 何も言わない二条の後をついて川名の元へ向かった。川名は書斎で爪を切っていた。

「ずいぶん派手にやったようだな。」

 すでに話は伝わっているらしかった。

「はぁ、申し訳ございません。」という二条に横から頭を鷲づかまれ下に抑え込まれた。(気持ちいい……)二条に追従するように、申し訳ございませんでした。とつぶやいた。

「お前らが盛り上がるのは結構だが、やるなら自分たちの家でやれよ。」
「至極、もっともです。」

 間宮は頭を下げさせられながら、川名が席を立ち、移動している雰囲気を感じていた。それから、獣臭い。視界の端に何か黒いものが横切って犬だとわかるが、ノアではない。ノアだったら、川名の前だろうがこちらにやってくるはずだ。そういう仲だから。ということは、他人ならぬ、他犬がこの部屋にいるようだ。

「それは?」

 間宮の代わりにノアとは相性の悪い二条がこわごわと口調で尋ねた。

「少しの間知り合いから預かってるんだ。設備もあるし、ノアの遊び相手にもなるだろ。間宮、弁償代わりに少し、俺のために働いてもらおうかな。どうせ払える金ないんだろ、お前。」

 頭を上げると、すぐ目の前に川名が立っていた。ついて来いと間宮を一瞥して部屋を出ていく。あ、そうだ、と川名は二条をふり見た。

「二条、お前はお前で急な仕事で疲れたろ、だからさ……少しこの部屋で、休んでいたらどうだ。」

 これは提案ではなく、命令である。

「……、アレと?アレと一対一になるんですかい……。」

 二条は視線を黒い生き物のほうへ向けあからさまに嫌そうな顔をした。

「ふふふ、そうだよ、心配しなくてもノアみたく選り好みするタイプでもないから、放っておけばいい。」
「……」
「不服か。でも今回の件はお前にも問題があるのだから、これくらい飲めよ。……それとも、俺に間宮を連れていかれるのに何か思うことがあるとか?」
「……別に。お好きに使われたらよろしい。」

 二条はそう言って顔をそむけた。

「ありがとう。また後で呼ぶから。」

 ありがとう、川名の口から感謝の言葉を聞くことほど、意味深で、嫌なことはなかった。
 川名の後について暗い廊下をうねうねと進んでいくうちに、だんだんと心細さを覚え始めた。
 その時川名が図ったように、人の心に入り込むタイミングをわかっているかのように、声を出した。

「部屋を掃除してもらいたいんだ。ああ、お前らが破壊した部屋じゃないよ。」

 嗅いだことのある独特な臭いが鼻をくすぐった。ノアがいる気配。それから……

「……もしかして、霧野さんが、いる?」

 川名が足を止め間宮をふり見た。少しだけ眉を上げ、驚いているらしい。

「よくわかったな、さすが長らく隠密してるだけある。」
「別にそういうわけでは……、ねぇ、組長、俺からもお願いがある……」

 間宮は逡巡しながら、二条のいない今、言えることを、言ってみることにした。

「……、めずらしいな、どうしたんだ。」

 川名は間宮のほうへ対面するように向き直った。間宮はつい爪を噛みながら、言った。

「……、霧野さんのこと、組長が殺すべきと判断するなら、それは殺すべきで、俺は何も言えないし言う権利もない、けど、もしもう飽きたから処分する、ようなことになるくらいなら、俺のところまで降ろしてきてくれれば、……使えるようにするよ、俺ができること全部ができるように一から教育してあげるよ。そうすればさ、万が一俺が抜けても、大丈夫になる。」

「抜ける?……、ああ、死ぬってこと。」

「……ま、そゆこと。スペアが一個くらいあった方がいいでしょ、組長も、二条さんも。」

「考えておくよ。」

「ありがとうございます。」

 その通りになるかどうかは別として、組長の逆鱗に触れることはなかったようだ。川名には意外に思われるが間宮の話を真正面から聞く一面がある。

 間宮の予想通り、その部屋には情事を終えたらしい痕跡、ノアと霧野とが、地に臥せっていた。首輪同士がつながっているので折り重なるようにして、畳の上に臥せっている。

「これもう、意識ないんじゃないの?トんでるようにみえるけど。」
「そうかもな。お前、確認してみろ。触りたくないからな。」
「でしょうね!」

 間宮は率先して部屋の中心の熱源のほうへ向かい、同じ視線にかがんでみた。

 軽く霧野の頬をつねってみる、うなる、が、起きる様子はない。瞼を持ち上げるとぐるぐると茶に深緑色の混じった瞳が動いている。離すと、今度は半目になった。熱い肉が時々痙攣して内側から、意外にも繊細、白く薄い張りのある皮膚を通して紅く発光していた。

 なんて蚯蚓腫れ映えする皮膚なんだろう。

 組長はここに絵を描くように打つのだろうと容易に想像できる。

 こいつはずいぶん質のいいキャンバスだろうな。部屋の温度もまだほくほくだ。まず意識のありそうなノアのほうを抱え上げる。もう交尾は終わっており、結合もされていない。ノアはくぅんと鳴いて、目の前にいるのが間宮だと気が付くと、目を開きはぁはぁと息遣いながら軽くしっぽを振った。すぐ横に鍵束が飛んできた。川名が放り投げたのだ。これでノアと霧野をつないでいる鎖を分離できそうだ。ノアの首輪に留められた鍵を外す。

「ノアのほうは問題なさそうだけど……。」

 ノアは自由になった途端に、霧野の体をいたわるように舐め始めるのだった。

「ふふふ、ノアも霧野さん大好きなんだねぇ。俺とするより気持ちいの?そいつはちょっとだけ妬けるかな。俺のほうが先にお前と寝てんのにねぇ……。」

 間宮がノアの頭をなでてやると、背後から川名が声をかけてきた。

「そういうことなら、お前もそいつをきれいにするのを手伝ってやるといい。それでいつまでも寝ているようならついでに気付け薬でも打ってやってもいいな。」

「……なるほど、そういう仕事。いいよ別に。やるよ。なんでもね。ところでさ、組長って今、二条さんのことどう思ってるわけ?」

「……。そんなこと聞いてどうするんだ。大体俺がお前に本当のことを言うと思うか。」

「いや、全然。でも、あんまりいじめないでほしいなぁ……、薫のこと……、……それだけ!!」

 川名の視線を背中に感じながらノアと一緒になって霧野に覆いかぶさった。競い合うように塩みの強いその厚い肉感的な身体を、隅から隅まで、舐めていった。舌で彼の肉体のやわらかで張りのある凹凸を感じとる。わきのくぼみ、ふともものつけねのくぼみ、そういう細かいところはノアの代わりに舌を通して丹念になめあげると、頭の中が霧野の臭い、霧野で満たされていくのだった。生きて呼吸しているその全部が霧野の臭いで満ちている。

 その間も霧野の瞼が痙攣するように動いたり、彼の腕が意識がないというのにいきなりハンマーパンチの要領で振り下ろされるのを、頭を下げて避けたり、手で防いだり、ノアを抱えて遠ざけ守ったりする必要があった。

(無意識でも防衛本能が働いているようだな……それにしても口の中があのクソガキのせいで気持ち悪かったから多少口直しになってよかった……おいしい……薫以外の肉体にこのような感情抱くのはよろしくないが……ダメなのに……組長が見ている……組長が見ている前で、霧野さんの一番濃い部分、そう、肉棒をしゃぶっても問題ないのだろうか。いや、問題ないだろう。だって掃除しろって仕事なんだから、一番穢いところまでやらないとな。恥垢のひとかけらもないほどきれいにしてやらないとな。霧野さんがいやがってもこれは組長命令の仕事なんだから。)

 口内に霧野の雄を含む前に、まずは尻の肉をつかみ、そのかわいらしい見慣れた割れ目に舌を這わせる。舌の上で肉菊が吸い付くように開閉し中から暖かい蜜が溢れ間宮の舌の粘膜にからまった。あふれたのは蜜だけでない。意識がない中で、かすかに、声が、出始めていた。

「ん゛ん……」

 間宮は霧野を仰向けにさせ、むっちりした両太ももを肩で固定かかえあげるようにし、ずぼっと頭をその隙間にいれた。そのまま舌を、裂け目の奥へ差し込んでいく。「ぁ……っ」間宮の視界はほとんど暗闇であったが、向こう側からほんのかすかに、霧野の甘い声がした気がした。おそらくまだ意識がないから出る声質だ。普段ならもっと野太く喧嘩腰なんだから。舌先をとがらせ、開発された快楽機関の中へ、中へ、蛇のように滑り込ませ入っていく。声の代わりに、肉筒の中がふるふる、震え、間宮の舌を時々強く引きちぎらんばかりに、抱いた。声が上がる。

「ぁ゛……っ、ん」

 抑制の効かない雄犬のペニスによる強制的結合から先刻解放されたばかりで、まだ締まり切っていない肉壺は間宮の舌にからみついて、存分に、甘え始めた。

 そうか、わかった、奥、もっと奥なんだな。いいよ。間宮の肩の上にのった霧野の膣の延長、太ももの筋が弓のように張って震えていた。びくんびくんと時々間宮の体を揺らすようにはね、踵が思い切り、間宮の背筋に振り下ろされた。どむっ!!!!と鈍い音がする。あまりの衝撃に痛さより先に肺がつぶれるかと思った。後から痛みがじんじんくる……が、それほど、イイってことかい。俺の舌、そして、お前の雄マンコの中がね、ね、霧野さん、いいんだろ。本当は。俺にマンコ責められるのが。たまらんのだろ。今のうちに甘えておきな。どうせ意識が戻ったらこうはならないんだからお前ってさ。

 舌先が、奥の肉のわずかに隆起した箇所を探り当てると、霧野の太ももが急激に引き締まって、玉のような汗が噴き出、筋を作り流れた。間宮は太ももに挟まれ潰される、そのすんでのところで腕を彼の尻と太ももにばちん!と食い込ませ、頚椎、首を絞められ、キめらるのを防いだ。指が肉に、埋もれた。

 ほほぉ、そんなにイイかよ。え?俺の腕力の限界が先に来るか、お前が先にイクのかの勝負だ。この淫マンが!意識がないからって遠慮なくハチャメチャしやがって、俺じゃなかったら下手したら死んでるぞ!この馬鹿。まったく。どうしてこんなに人に気を使えない人間がいままで存在できていたのだろうか?死んで当然?

 舌先で探り当てた桃色の濡肉の隆起を執拗に嬲る、あえぐ、あえぐ!引き締まる!互いに力も強くなる、互いの息が上がり、室内の温度と湿度はさらに上昇、間宮は汗に濡れた。霧野がそうであることは言うまでもない。

 間宮が霧野の陰部に唇をつけ、吸い上げるようにしながら中を責める、と、一層大きくその巨体が跳ねたと思うと、霧野の良い香りが部屋一面に、花咲くように充満した。

 そのまま続いて苦い香りがじわじわ広がる、失禁したらしい、間宮の中に一瞬理性が戻ってくる、掃除しろって話だったのに、余計に汚してしまったじゃないか、まずい、これは任務失敗なのではなかろうか。……でも、組長が何も言ってこないってことは、いいってことか?じゃあ、続行だ、続行。いくとこまで、イク!向こう側まで……。

 間宮はそのあともしばらく霧野の肉の園を舌でめちゃくちゃに土足で蹂躙するがごとくこね、歩き回り、痙攣させしめ、イカせ、ようやく頭を上げたかと思うと、跳ねる身体に上からまたがり、自らも太ももを絞め、そのに肉体を押さえつけ、自分の衣服を器用にすばやく脱ぎ去り、霧野の体に再び覆いかぶさった。目の前に霧野のもう充血して、さっきまでもさんざん出したくせにまだ元気いっぱい、やんちゃ雄が青筋ビキビキにになって悦んでいるのが見える。軽くピアスをはじくと尻の下で肉が跳ねた。そういうアトラクションみたいだね。

 ううう、とうなり声がする。間宮がマウントしたまま霧野の頭のほうを覗き込むと、紅潮した顔の中で瞼が痙攣している。もう少しで起きるかもしれない。そうすれば気付け薬なんかも不要だろうな。

 はぁはぁはぁはぁ……犬のあえぐような息遣い、横目でノアのほうを見て確認した。ノアはおとなしく川名の横に臥せってこちらを見ながらしっぽを振っているだけだ。じゃあこれは?間宮は再び自分のケツのある側、霧野の頭を見る、舌を噛み噛み、犬のような獣じみた呼吸をしている。犬!!なるほど、これじゃあ、まぁ本格的に犬扱いされている意味もわかるかもしれない。そんなに口がさみしいか。じゃあ、俺のもやるよ。互いに互いのを掃除しようぜ。な。俺も濡れてきちゃったから……。

 間宮はいつのまにか高まっている自分を、感じていた。その巨雄をねじ込むようにして霧野の薄くよだれを垂らしながら開いていた唇の隙間にぬちぬちとこすりつけながら、気持ちよさを感じ、自分の口では、霧野の雄の先端をらせんのように舐め、味を確認して、それから、体が下から浮かないように胸と腹まで霧野のその肉体に寸分の隙間もないほどにぴったりと密着し、潤滑油の代わりに汗がくち口音を立てる。がっちり強く強く動けぬようにホールドしながら、自身の喉ホールの奥まで、挿れた。

「んん゛……ん」

 喉の奥が開いていく、気持ちがいい。それにさっきまでよりさらに濃い、味がする。霧野さんの、味がする。思い切り吸い上げてあげる。間宮の興奮に見開かれていた眼が、とろんとして、伏し目がちになってくる。

 そして、霧野のついに開き始めた口マンコの中へ、萌芽しつつある自らの雄を、欲望の限り、肉欲の、その、沼の底の底まで、自分の口の中に入っているのと同じように肉の、喉のその終わりない奥まで、沈めていくのだった。このまま、堕ちていけばいい。安心する。すごく。
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