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第三章 恋人ごっこをするなら、自覚しないと...
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「なんで、こんなに早く帰ってきたの?」
リナは桂がベッドに入るとすぐにそう聞いてきた。
桂は毛布を胸まで引っ張り上げると、床に蒲団を敷いて寝ているリナの姿を見下ろすように身体を横に向けた。
「…んー…なんでかな…?」
煮え切らない、口調で答える。なぜこんなに早く帰って来たのか…自分でも分からなかった。
「早く目が覚めちゃってさ…。彼…まだ寝ていたし…。起こすのも悪いと思って…」
それを聞いてリナがビックリしたような顔を見せた。
「嘘…それじゃ、アイツに何も言わずに帰って来ちゃったの?」
うん…そう…桂が少し眠気をもよおしたような声音で答える。
リナがあぁーあと大仰な嘆息を上げる。
「なんだよ。お前…俺…いけない事でもしたかよ」
だって…とリナが少し桂を睨む。
「初デートでしょ。普通恋人と一緒に朝を迎えたいでしょ。彼…きっと怒っているわよ。一人置き去りにされて」
リナがなぜか桂を責めるような口調で言うのを聞いて、桂が苦笑いを浮かべた。
「お前…誰の味方してんだよ…」
違う…リナが心持声を荒げた。
「味方とか敵とかそう言う問題じゃない。自覚の事を言っているの。かっちゃんは彼の恋人でしょ。自覚を持たなきゃ。恋人らしく振舞わないと…」
「そう言うもんかな…?」
リナの言っている事が分かるような…分からないような…頼りない気分で桂は答えた。
今朝…行為の充足感に包まれて彼の胸の中で過ごした。彼の無防備に眠る顔を見て、愛しさばかりが募ってしまっていた。これ以上、そばにいるのが恐くなってしまっていたのだ。
片思いの相手と夢のようなデートをし、甘美な夜を過ごす。
有頂天になってしまっていた。
でも…恐かったのだ。
彼の事を知れば知るほど…彼に触れられれば触れられるほど…気持が彼に傾いていってしまう。
考えに耽る桂に、リナが優しい…でも諭すような口調で続けた。
「自覚しないと…かっちゃん…辛いでしょ。だから…今朝も帰って来ちゃったんでしょ。ね…だから…自覚しないと…」
「リナ…お前…。」
自分の胸の内を見透かしたリナの言葉に桂は驚いて、リナを見詰めた。
リナはニッコリ微笑むと、おやすみと言って布団の中にくるまり寝入ってしまう。取り残された桂は呆然としながら亮の事を考えていた。
そう…辛くなってしまったんだ。このまま…亮の要求するドライでライトな関係を続けていく自信が無くて…。
彼が愛しくなって…好きという気持を改めて確認してしまって…。
彼に愛してもらいたくて…。そう願ってしまいそうになる…自分が恐くなってしまった。
だから…逃げてきた。
桂はベッドの中で丸くなりながら、溜息を吐いた。
リナはすべて分かっている。俺が割り切れないだろうと言う事を…。
だから…。
夢を見るんだ…そう思って始めた…。始めた先にあるのが…こんな苦しさだったなんて…。
「自覚しないと…」
リナの言葉が頭の中で繰り返される。
「そう…自覚しないと。これは…ごっこなんだから…」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
ほら…電話。
リナは悪戯っぽい笑みを浮かべて、桂にスマートフォンを差し出した。
ディスプレイに映る亮の名前を見て桂は逡巡する。やかましく鳴り響く着信音。
「かっちゃん。…早く出てあげないと…」
リナが優しく急かす。
桂の迷う気持などお見通しなのだ。
店に行く身支度をバッチリしたリナは、美容院に行くから、もう出るわ…まだ鳴り響くそれを呆けたように見つめる桂に、そう言い置いて部屋を出て行った。
しつこく鳴り続けるスマホに桂は渋々出る。亮とどんな話しをしたら良いのか…ぜんぜん分からなかった。
「俺だけど…」
凄く不機嫌そうな亮の声が桂の耳に聞こえくる。
「はい…おはようございます…」
亮の不機嫌そうな声に動揺した桂は、もう昼過ぎだと言うのにバカな挨拶をしてしまう。
すげぇ…怒っているかも…。
でも…なんで…?
俺が…勝手に…帰ったから…?
頭の中で亮の不機嫌の原因をあれこれ考えてみる。電話ごしでも充分彼の不機嫌さが伝わってきた。
「………」
亮の返事はない。
「…あ…あの…」
おどおどしながら桂が声を出す。
一応俺が謝った方がいいのかな…???
「…こいよ…」
亮が唸るようにその言葉を絞り出す。
「…え…?」
亮の言っている意味が分からず訊ね返す。
「だから…俺の部屋にこいよ」
明らかに苛ついた亮の声。
「…い…今…から…ですか…?」
なんで…どうして…?デートは…終わりだろ…?
食事もしたし…話もした…それに…セックスだって…ちゃんとした…?
今週のノルマは…終わりな筈じゃ…。
「そう…今から…俺の部屋にこいよ!帰れたんだから…一人で来れるだろ!」
亮はキレたようにそう言うと、桂の返事を待たず通話をブツッと切ってしまった。
リナは桂がベッドに入るとすぐにそう聞いてきた。
桂は毛布を胸まで引っ張り上げると、床に蒲団を敷いて寝ているリナの姿を見下ろすように身体を横に向けた。
「…んー…なんでかな…?」
煮え切らない、口調で答える。なぜこんなに早く帰って来たのか…自分でも分からなかった。
「早く目が覚めちゃってさ…。彼…まだ寝ていたし…。起こすのも悪いと思って…」
それを聞いてリナがビックリしたような顔を見せた。
「嘘…それじゃ、アイツに何も言わずに帰って来ちゃったの?」
うん…そう…桂が少し眠気をもよおしたような声音で答える。
リナがあぁーあと大仰な嘆息を上げる。
「なんだよ。お前…俺…いけない事でもしたかよ」
だって…とリナが少し桂を睨む。
「初デートでしょ。普通恋人と一緒に朝を迎えたいでしょ。彼…きっと怒っているわよ。一人置き去りにされて」
リナがなぜか桂を責めるような口調で言うのを聞いて、桂が苦笑いを浮かべた。
「お前…誰の味方してんだよ…」
違う…リナが心持声を荒げた。
「味方とか敵とかそう言う問題じゃない。自覚の事を言っているの。かっちゃんは彼の恋人でしょ。自覚を持たなきゃ。恋人らしく振舞わないと…」
「そう言うもんかな…?」
リナの言っている事が分かるような…分からないような…頼りない気分で桂は答えた。
今朝…行為の充足感に包まれて彼の胸の中で過ごした。彼の無防備に眠る顔を見て、愛しさばかりが募ってしまっていた。これ以上、そばにいるのが恐くなってしまっていたのだ。
片思いの相手と夢のようなデートをし、甘美な夜を過ごす。
有頂天になってしまっていた。
でも…恐かったのだ。
彼の事を知れば知るほど…彼に触れられれば触れられるほど…気持が彼に傾いていってしまう。
考えに耽る桂に、リナが優しい…でも諭すような口調で続けた。
「自覚しないと…かっちゃん…辛いでしょ。だから…今朝も帰って来ちゃったんでしょ。ね…だから…自覚しないと…」
「リナ…お前…。」
自分の胸の内を見透かしたリナの言葉に桂は驚いて、リナを見詰めた。
リナはニッコリ微笑むと、おやすみと言って布団の中にくるまり寝入ってしまう。取り残された桂は呆然としながら亮の事を考えていた。
そう…辛くなってしまったんだ。このまま…亮の要求するドライでライトな関係を続けていく自信が無くて…。
彼が愛しくなって…好きという気持を改めて確認してしまって…。
彼に愛してもらいたくて…。そう願ってしまいそうになる…自分が恐くなってしまった。
だから…逃げてきた。
桂はベッドの中で丸くなりながら、溜息を吐いた。
リナはすべて分かっている。俺が割り切れないだろうと言う事を…。
だから…。
夢を見るんだ…そう思って始めた…。始めた先にあるのが…こんな苦しさだったなんて…。
「自覚しないと…」
リナの言葉が頭の中で繰り返される。
「そう…自覚しないと。これは…ごっこなんだから…」
✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎
ほら…電話。
リナは悪戯っぽい笑みを浮かべて、桂にスマートフォンを差し出した。
ディスプレイに映る亮の名前を見て桂は逡巡する。やかましく鳴り響く着信音。
「かっちゃん。…早く出てあげないと…」
リナが優しく急かす。
桂の迷う気持などお見通しなのだ。
店に行く身支度をバッチリしたリナは、美容院に行くから、もう出るわ…まだ鳴り響くそれを呆けたように見つめる桂に、そう言い置いて部屋を出て行った。
しつこく鳴り続けるスマホに桂は渋々出る。亮とどんな話しをしたら良いのか…ぜんぜん分からなかった。
「俺だけど…」
凄く不機嫌そうな亮の声が桂の耳に聞こえくる。
「はい…おはようございます…」
亮の不機嫌そうな声に動揺した桂は、もう昼過ぎだと言うのにバカな挨拶をしてしまう。
すげぇ…怒っているかも…。
でも…なんで…?
俺が…勝手に…帰ったから…?
頭の中で亮の不機嫌の原因をあれこれ考えてみる。電話ごしでも充分彼の不機嫌さが伝わってきた。
「………」
亮の返事はない。
「…あ…あの…」
おどおどしながら桂が声を出す。
一応俺が謝った方がいいのかな…???
「…こいよ…」
亮が唸るようにその言葉を絞り出す。
「…え…?」
亮の言っている意味が分からず訊ね返す。
「だから…俺の部屋にこいよ」
明らかに苛ついた亮の声。
「…い…今…から…ですか…?」
なんで…どうして…?デートは…終わりだろ…?
食事もしたし…話もした…それに…セックスだって…ちゃんとした…?
今週のノルマは…終わりな筈じゃ…。
「そう…今から…俺の部屋にこいよ!帰れたんだから…一人で来れるだろ!」
亮はキレたようにそう言うと、桂の返事を待たず通話をブツッと切ってしまった。
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