69 / 95
第十一章 ― お前はただ一言「終り」と言えば良いんだ。そうすれば俺は…お前の前から消える…
4
しおりを挟む
その日を境に亮は本当に桂の体に触れることをしなくなった。
もちろん抱きしめるし、頬や額へのキスもする。ベッドに入れば桂の体を胸の中に閉じ込めるし首筋にキスマークも付けたりする。
スキンシップのような行為はするのだ…。ただ、そこから先に進む事は無かった。今までのような桂の体を苛むようなセックスが無くなっていたのだ…。
亮が自分の体に飽きたのだろうか…その不安はいつも桂に付きまとっていた。
それでも亮が時折見せる明らかに欲情したような表情を見る度桂の気持ちは乱れて混乱していた。
亮が一体どうしてこんな事を辛抱強く続けるのか桂には一向に理解出来なかった。
デートももちろんする。最近の亮は外出を好まなくなっていた。桂と二人で部屋でゆっくり食事をしたり、話しをしたりする事を望む様になっていた。
桂だって亮と二人っきりで過ごす方が嬉しいし、彼が料理を美味しいと言って喜んで口にするのを見るのが幸せだったから特に異議を言ったりする事は無かったのだが…。
外出はしないと言っても、亮は相変わらず桂を楽しませる事には一生懸命で、ゲームをした事が無いと言う桂の為に流行りのゲーム機を買って遊んだり…と言う事をするようになっていた。
ゲーム以外にも映画を見たり気に入った音楽を聞いたり、話しをしてジャレあったり…セックスが抜け落ちた以外は本当の恋人のように亮は桂に接していた。
その日も、二人でゆっくり過ごした後いつもどおりベッドに入った。
亮は当たり前のように、自分の隣に横たわる桂をぎゅっと抱きしめる。この瞬間が桂は一番いたたまれなかった。
パジャマごしに感じる亮の熱い昂ぶり…。確かに自分に欲情をしているのに、それでも絶対に桂を抱こうとはしない。
桂だって辛いのだ…。亮がこんな風になっているのに、なぜ自分を抱かないのか…。自分を抱くのが嫌なのか…。考える思いは乱れるばかりで…。
そして、何よりも桂も亮に抱かれたかった…。
桂はたまらず顔を赤らめながら、亮を見詰めると声を掛けた。
「あ…あの…」
ん?と亮が桂の体を優しく撫でながら、笑みを浮かべて桂を見た。
桂は恥かしさにますます顔を赤らめながらそれでも亮のパジャマの胸元を弄りながら囁くように呟いた。
「や…山本が…嫌なら…俺がしようか…?」
桂の訳の分からない言い方に亮が微かに眉を寄せて、訊ねた。
「何を…するんだ…?桂」
ますます桂は顔を真っ赤に染めると、だから…と小さい声で言うと、思いきって亮のパジャマのズボンに手を掛けた。
「うわっ…桂!待てっ!ダメだって!」
桂の意図に気付いた亮が慌てて桂の腕を押し止める。
なんだ…やっぱり俺を抱きたくないんだ…。亮の拒絶に桂がヒクッと体を震わせて涙を浮かべた。
「バカ…頼むから…俺を煽るな…」
亮はそんな桂の体を、態勢を入れ替えて組み敷くと、桂の涙の滲んだ目元を指で拭いながら低い欲望の翳った声で言った。
「…桂はそんな事しなくていいから…」
桂の頬を優しく撫でながら告げる。
「でも…どうして…。俺達…」
セックス・フレンドじゃ…と言う言葉を桂は言う事が出来なかった。
亮は桂の言おうとしたことに気づいたのか、あやすように瞼にキスを落とすと、そのまま唇を這わせながら首筋に吸いついた。きつく吸い上げて痕を付けていく。
体をずらして桂の顔を覗きこむと、珍しく真剣な口調で言い聞かせるように告げた。
「俺も桂が…欲しい…。でも今はしない…。したくないじゃなくて、ただ…しない。それだけだ。いいか…?桂の体が良くなったら…その時は…」
しゃくりあげる桂の体を、もう一度胸の中に引き寄せると大切に抱きしめる。静かな声で亮は桂の耳元に唇を寄せて呟いた。
「その時は…俺…我慢しないから…」
切なさの滲んだ亮の声を聞きながら桂は自分と亮の関係がどうなっていくのか分からず、ただ混乱したままコクッと頷いていた。
もちろん抱きしめるし、頬や額へのキスもする。ベッドに入れば桂の体を胸の中に閉じ込めるし首筋にキスマークも付けたりする。
スキンシップのような行為はするのだ…。ただ、そこから先に進む事は無かった。今までのような桂の体を苛むようなセックスが無くなっていたのだ…。
亮が自分の体に飽きたのだろうか…その不安はいつも桂に付きまとっていた。
それでも亮が時折見せる明らかに欲情したような表情を見る度桂の気持ちは乱れて混乱していた。
亮が一体どうしてこんな事を辛抱強く続けるのか桂には一向に理解出来なかった。
デートももちろんする。最近の亮は外出を好まなくなっていた。桂と二人で部屋でゆっくり食事をしたり、話しをしたりする事を望む様になっていた。
桂だって亮と二人っきりで過ごす方が嬉しいし、彼が料理を美味しいと言って喜んで口にするのを見るのが幸せだったから特に異議を言ったりする事は無かったのだが…。
外出はしないと言っても、亮は相変わらず桂を楽しませる事には一生懸命で、ゲームをした事が無いと言う桂の為に流行りのゲーム機を買って遊んだり…と言う事をするようになっていた。
ゲーム以外にも映画を見たり気に入った音楽を聞いたり、話しをしてジャレあったり…セックスが抜け落ちた以外は本当の恋人のように亮は桂に接していた。
その日も、二人でゆっくり過ごした後いつもどおりベッドに入った。
亮は当たり前のように、自分の隣に横たわる桂をぎゅっと抱きしめる。この瞬間が桂は一番いたたまれなかった。
パジャマごしに感じる亮の熱い昂ぶり…。確かに自分に欲情をしているのに、それでも絶対に桂を抱こうとはしない。
桂だって辛いのだ…。亮がこんな風になっているのに、なぜ自分を抱かないのか…。自分を抱くのが嫌なのか…。考える思いは乱れるばかりで…。
そして、何よりも桂も亮に抱かれたかった…。
桂はたまらず顔を赤らめながら、亮を見詰めると声を掛けた。
「あ…あの…」
ん?と亮が桂の体を優しく撫でながら、笑みを浮かべて桂を見た。
桂は恥かしさにますます顔を赤らめながらそれでも亮のパジャマの胸元を弄りながら囁くように呟いた。
「や…山本が…嫌なら…俺がしようか…?」
桂の訳の分からない言い方に亮が微かに眉を寄せて、訊ねた。
「何を…するんだ…?桂」
ますます桂は顔を真っ赤に染めると、だから…と小さい声で言うと、思いきって亮のパジャマのズボンに手を掛けた。
「うわっ…桂!待てっ!ダメだって!」
桂の意図に気付いた亮が慌てて桂の腕を押し止める。
なんだ…やっぱり俺を抱きたくないんだ…。亮の拒絶に桂がヒクッと体を震わせて涙を浮かべた。
「バカ…頼むから…俺を煽るな…」
亮はそんな桂の体を、態勢を入れ替えて組み敷くと、桂の涙の滲んだ目元を指で拭いながら低い欲望の翳った声で言った。
「…桂はそんな事しなくていいから…」
桂の頬を優しく撫でながら告げる。
「でも…どうして…。俺達…」
セックス・フレンドじゃ…と言う言葉を桂は言う事が出来なかった。
亮は桂の言おうとしたことに気づいたのか、あやすように瞼にキスを落とすと、そのまま唇を這わせながら首筋に吸いついた。きつく吸い上げて痕を付けていく。
体をずらして桂の顔を覗きこむと、珍しく真剣な口調で言い聞かせるように告げた。
「俺も桂が…欲しい…。でも今はしない…。したくないじゃなくて、ただ…しない。それだけだ。いいか…?桂の体が良くなったら…その時は…」
しゃくりあげる桂の体を、もう一度胸の中に引き寄せると大切に抱きしめる。静かな声で亮は桂の耳元に唇を寄せて呟いた。
「その時は…俺…我慢しないから…」
切なさの滲んだ亮の声を聞きながら桂は自分と亮の関係がどうなっていくのか分からず、ただ混乱したままコクッと頷いていた。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
僕の幸せは
春夏
BL
【完結しました】
【エールいただきました。ありがとうございます】
【たくさんの“いいね”ありがとうございます】
【たくさんの方々に読んでいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます!】
恋人に捨てられた悠の心情。
話は別れから始まります。全編が悠の視点です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる