英雄は星空の瞳に優しく囚われ英雄になる ~訳アリの年下魔術師を溺愛したら英雄になった俺の話~

べあふら

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2.5 セフィリオの恋と愛 (セフィリオ視点)

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僕は毎日、同じ時間に同じ手順で屋敷の魔素計の観測室で、魔素濃度をチェックしている。

 計器の故障や、魔素濃度の数値に異常があった際が問題なので、いつも決まった時間に、決まった方法で評価をすることが重要なのだ。


 ………と、えらそうなことを言ったのだけど。

 今日、僕はいつもより遅く目を覚ました。
 簡単に言わなくても、寝坊だ。


 魔素計のチェックは継続して紙に転写されているので、計測が出来ていないことは無いのだけど……前述のような理由でもって、好ましいことでは無い。


 前日の寝不足と、久しぶりの外出、さらにその後の睦み合いで、僕はぐっすりと朝まで一度も起きることなく、眠ってしまった。

 というか昨晩、いつ眠ったのか記憶にない。
 いつ眠ったどころか、途中から記憶が無い。

 僕はちゃんと清拭されて、さらに夜着をきちんと着ていて、ベッドも気持ち良く整えられている。

 僕が眠ってしまった後、アレクが整えてくれた以外、考えられない。
 それ以外なら大問題だ。

 いや、そうであっても大問題だ。
 自分の晒したであろう醜態を思うと、恥ずかしくもあり、情けなくもあり。

 けれど、同時に嬉しくもあり。


 そして、アレクはいつも通りに起床したらしい。

 というのも、アレクの机の下に置いてある、剣の手入れをする道具、これが少し動かされた形跡があって、今日既に使ったことを示している。

 さらに、いつものように芳しい匂い食欲をそそる香りが屋敷中に漂っている。
 その香りにお腹がぐうと音を立てた。

 ああ、そう言えば昨日は帰宅後すぐにベッドに直行したから、夕食を食べていないな。


 ………僕、もうすでにダメになっているんじゃないかな。



 魔素計の観測器を一通り確認して、居間へと降りる。

 いつものように、いつものアレクがいて、朝から全開でアレクな彼は、やはり爽やかに微笑んで、「おはよう」と言った。

 むしろ、いつもよりも、甘さが増しているような気すらする。
 ……昨夜は、僕、迷惑をかけたような気がするけど……どういうことだろう。


 食事の配膳も済んでいて、もう僕が席に着くばかりだ。
 きっと、僕の活動し出す気配を感じて、タイミングよく食事の準備をしてくれたのだろう。

 僕が食卓に近づくと、さっと椅子をひいてくれて、僕はそのまま席に着いた。

 アレクは、「体調は、大丈夫か?」と後ろから頬に口づけつつ、僕に尋ねる。

「うん。大丈夫だよ」

 僕も、アレクほどでは無いにしても、魔力が多いせいか、身体は丈夫な方だ。

 今日の朝食はスープと、パンと、昨日森で採った果物が並んでいた。

 温かな湯気と共に香る、琥珀色の澄んだスープをすくうと、昨日のキノコが入っていた。口に含むと、キノコの香りが口いっぱいに広がって、しゃきしゃきと心地いい歯ごたえがする。

 スープの塩気も丁度良く、身体がぽかぽか温まってくる。
 今日の料理もとても美味しい。


 アレクって、出来過ぎじゃないかな。
 というか、僕ダメ過ぎなのかも。


「僕………アレクの役に、立てるのかな」

 不安とも呼べない、もやもやとした思いが浮かんでくる。

 僕の言葉に、アレクはきょとん、と目を丸くして千切ったパンを片手に固まった。

 次の瞬間には、破顔して、

「セフィリオはおかしなことを、言うんだな」

 と、くすくすと笑った。

「役に立つとか、立たないとか、別にどうでもいい。
 セフィリオがいるだけで、俺はいいんだから」

 そんなことを言う。

「………でも」
「そもそも、セフィリオや……レイチェルさんもそうだけど、自分で家のことする身分じゃないだろ?
 俺がいなかったら、別の誰かにしてもらうのが当然なんだから、気にする必要ない」

 ……そうなのかな。
 いや、そんなことないよね。

「それとこれとは、違うんじゃないかな。
 僕だって、アレクのために何かしたい」

 喜ばせたいし、楽しい気持ちにしてあげたい。
 アレクが、僕にしてくれるみたいに。


「うーん………俺が、家のこと……というかセフィリオのことをするのは、別にセフィリオのため、ていうよりもさ。
 単純に、他の奴にセフィリオの世話をさせたくない、てだけなんだよな」

 アレクの言うことは、やっぱり迷いも、何も無くて。

「身の回りのことだって、食事だって、他の奴にやらせるくらいなら、俺が全部したい」

 と、きっぱりと僕に言って、

「ただそれだけだよ」

 と付け加えた。

 ただそれだけ、って……。

「だから、むしろ、嫌だったら言って欲しい。
 全部やめろ、って言われたら無理だけど、セフィリオがして欲しくないことは、したくない。
 セフィリオは、俺がすること、何でも受け入れてくれるから……つい、もっともっと、てなってしまう」

 そんなの。こっちの台詞だ。

 アレクこそ、僕のすること、受け入れて過ぎだよ。

「僕は、アレクにしてもらって、嫌なことなんて無いよ」

 といって、ふと、昨日の昼間のことを思い出す。

「でも昨日の、アレはダメ」

 一つ、あった。
 昨日の、昼の。あの、訳の分からない、こわいやつ。

「アレ……………ああ、アレか」

 アレクは少し考えて、表情を緩めて呟いた。
 昨日の光景を思い出しているらしい。

「アレは、ダメ」
「絶対に?」
「うん」
「本当に?」
「………う…ん」

 食い下がられて、本当に嫌なのか、自信が無くなってくる。
 あの時は、絶対に嫌だと思ったけど……。

「夜の方が、よっぽどすごいこと、してないか?」

 重ねて、言われてしまうと。
 確かに、そのような気がしてきて。

「じゃあ、時と場合による、ということで」
「う……うん」
「こわくしないなら、いいんだろ?」

 そう、なのかな?

 自分の判断があっているのか自信は無いものの、アレクが何だかとても嬉しそうにしていたから、僕はいいかな、なんて思ってしまった。



 朝食を食べ終えると、一緒に食器を下げて、片付ける。

 アレクがお茶を淹れてくれて、香ってくる芳香でシュミナの花のお茶だと分かる。
 二人でお茶を飲みながら、僕は口を開いた。

「あのね」
「あのさ」

 と、アレクの声と重なった。

「セフィリオ、先にいいぞ」

 促されて、

「もうすぐ、【スタンピード】が起こるのを、アレクは分かってるんじゃない?
 ここから南にある、先日、魔素計を設置しに行った冒険者ギルドの管轄内で」
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