6 / 33
Episode 6 ジャン視点
しおりを挟む
ジャンは、思った。
人間なんて、身勝手で欲深くて残酷で愚かで汚くて、信頼に値しない。
竜たちが住む、天界に帰りたい。早く帰りたいと願う一方で、竜として気高くあることへのプライドがあった。
怒りに身を任せて、国中を火の海にしてやって、復習してやろうと思わなかったわけでは無い。
「世界制覇に協力さえして頂ければ、必ず翼麟をお返しいたします。それまでは、どうか、どうか留まってください。」
国王はそう言った。
何を提示されても、不満そうな私に、人間どもは怯えていた。金銀財宝、大きな家、大きな土地、何を送られても、そんなものはどうでも良かった。
何度も言った。
「翼麟を返せ。」
「・・・どうか、地上にお留まりください。我が国にはあなたが必要だ。お願い致します。地上の平和の為なのです!」
「知ったことか!私には関係ない事だ。これ以上、翼麟を返さないつもりなら、私にも考えがある。」
とは言ったものの、人間を殺して自分が汚れるのは嫌だった。もしも、そんな事をして天界に帰ったとしても、この身は汚れたままで、生臭さが一生消えないだろう。神聖な竜ではなくなってしまう。
しかし、怯えた国王が言い出した。
「この国で1番美しい女性を、献上いたします!あ・・・あそこにいる娘はいかがでしょうか?!」
国王が指差す方向には、第2王子の隣にいる女性だった。
アンドリュー第2王子の隣には、彼の婚約者であるルナベル・クレメントがいた。
国王の言葉に、ルナベルは目を見開いて怯えた。
アンドリュー王子は、ルナベルを隠すように前に1歩出て、叫んだ。
「陛下!!何を仰います?! 彼女は私の・・・」
「黙れ!!竜神様の御前だぞ!!」
アンドリュー第2王子。この男は、特別嫌いだった。
国王は、『戦場で竜の姿で現れてくれるだけで良い。そうすれば敵国の兵士たちは逃げて行く。戦意喪失が目的だ』と言いながら、戦場で、この王子は、私に攻撃をするように命令してきたことがあった。
「翼麟を取られた間抜けな竜!!図体ばかりでかくて飛べもしない、戦えもしない、張りぼてか?!火を吐け!敵兵を倒せ!!戦え!!」
たくさんの人間を殺し、英雄と言われ、将軍だか何だか知らんが、私を顎で使おうとした。
あの時、こいつを殺してやろうかと思った。
ジャンクロードは、空を見上げた。
私は、気高い竜だ。例え飛べなくなったとしても、そのプライドを捨てるわけにはいかない!
「私は竜だ。貴様の命令を聞く気も無い。お前達が勝とうと負けようと知ったことか。勝手に戦って勝手に死ねばいい。私に頼るな。」
しかし、早く戦争を終わらせたかったジャンは、空に向かって火を吐いて見せた。
恐れをなした敵軍が退避していった。
前々から、ずっと嫌いだった。
いつも、私を戦で利用しようとしてくる。王子が!
人間の女など興味も無いし、傍に人間がいる生活なんて、耐えられない。考えただけで吐きそうだ。
しかし、アンドリュー王子のあの顔。はじめて見る。
顔を青くして、焦り、悔しそうに震えているのか?
面白い!
「いいだろう。その娘を貰ってやる。」
そう言ったのには、嫌がらせのつもりも有ったが、もう1つ。
「これからは、戦場で私に命令するのをやめろ!今度命令したら、その娘を喰ってやる。それから、国王。世界制覇とやらができたら、約束通り、翼麟を返してもらう!」
もう、この地上に5年。
これ以上の我慢が出来ない。
この位なら、許されるだろう?
やたらと、怯えている女を見て、心の中で思う。
すまん・・・許してくれ。翼麟が返却されるまでの辛抱だ。何もしないと誓う。
いや、むしろ人間の匂いは嫌いだから、広すぎる屋敷に、この女を住まわせて、私は、敷地内に小さな家を別に建てて、そこで生活しよう。
使用人であっても、人間と一緒に住むのは落ち着かない。
広い館はどうしても使用人が必要だったから、我慢していたが、ちょうど良い。
そう思っていたのに。
結婚式の当日。
一目見て思ったんだ。
この娘は、本当に、あの時の娘か?
純白のドレスに身を包み、オーラが違う。
まじまじと私を見つめてくる瞳が、煌めく。
緊張はしている様子だが・・・何を考えているのか?何やら真剣な顔で、前を見据え始める、その姿。
どうゆうことだ?
階段で足を踏み外したので、抱きとめて感じる。
・・・この匂い!
懐かしい、雲の匂いに似ている。
空を駆けて遊んで、喉が渇いた時に、雲に口を付けて口元を潤した。あの時の、雲の匂い。
もっと、嗅いでいたくなって、抱き上げる。
あぁ、雲の匂いのわけないか。
海辺の潮風というところか。
いずれにしても、他の人間とは違う。嫌いな匂いでは無かった。
あの日。
異世界から来たと言われて、そうかもしれないと思った。
この国では嗅いだ事の無い、優しい匂い。
「帰りたい」と泣いたおまえの涙は、怖いほどに綺麗だった。
邪念の無い涙は、美しいものだ。
始めて見る。
心の綺麗な娘。
忘れかけていた雲の匂い。
失いかけていた風の感触。
自分の、大事なものを思い出させた。
小さい声でつぶやいた言葉。
おまえの、それは、信じる力。
こんな世界に身を落としてしまった私を、照らし導く光。
未来を生み出し、突き動かす力。
その力を、この時に、私は、おまえから貰ったんだ。
だから、おまえを助けてやりたい。
守ってやりたい、そう思った。
人間なんて、身勝手で欲深くて残酷で愚かで汚くて、信頼に値しない。
竜たちが住む、天界に帰りたい。早く帰りたいと願う一方で、竜として気高くあることへのプライドがあった。
怒りに身を任せて、国中を火の海にしてやって、復習してやろうと思わなかったわけでは無い。
「世界制覇に協力さえして頂ければ、必ず翼麟をお返しいたします。それまでは、どうか、どうか留まってください。」
国王はそう言った。
何を提示されても、不満そうな私に、人間どもは怯えていた。金銀財宝、大きな家、大きな土地、何を送られても、そんなものはどうでも良かった。
何度も言った。
「翼麟を返せ。」
「・・・どうか、地上にお留まりください。我が国にはあなたが必要だ。お願い致します。地上の平和の為なのです!」
「知ったことか!私には関係ない事だ。これ以上、翼麟を返さないつもりなら、私にも考えがある。」
とは言ったものの、人間を殺して自分が汚れるのは嫌だった。もしも、そんな事をして天界に帰ったとしても、この身は汚れたままで、生臭さが一生消えないだろう。神聖な竜ではなくなってしまう。
しかし、怯えた国王が言い出した。
「この国で1番美しい女性を、献上いたします!あ・・・あそこにいる娘はいかがでしょうか?!」
国王が指差す方向には、第2王子の隣にいる女性だった。
アンドリュー第2王子の隣には、彼の婚約者であるルナベル・クレメントがいた。
国王の言葉に、ルナベルは目を見開いて怯えた。
アンドリュー王子は、ルナベルを隠すように前に1歩出て、叫んだ。
「陛下!!何を仰います?! 彼女は私の・・・」
「黙れ!!竜神様の御前だぞ!!」
アンドリュー第2王子。この男は、特別嫌いだった。
国王は、『戦場で竜の姿で現れてくれるだけで良い。そうすれば敵国の兵士たちは逃げて行く。戦意喪失が目的だ』と言いながら、戦場で、この王子は、私に攻撃をするように命令してきたことがあった。
「翼麟を取られた間抜けな竜!!図体ばかりでかくて飛べもしない、戦えもしない、張りぼてか?!火を吐け!敵兵を倒せ!!戦え!!」
たくさんの人間を殺し、英雄と言われ、将軍だか何だか知らんが、私を顎で使おうとした。
あの時、こいつを殺してやろうかと思った。
ジャンクロードは、空を見上げた。
私は、気高い竜だ。例え飛べなくなったとしても、そのプライドを捨てるわけにはいかない!
「私は竜だ。貴様の命令を聞く気も無い。お前達が勝とうと負けようと知ったことか。勝手に戦って勝手に死ねばいい。私に頼るな。」
しかし、早く戦争を終わらせたかったジャンは、空に向かって火を吐いて見せた。
恐れをなした敵軍が退避していった。
前々から、ずっと嫌いだった。
いつも、私を戦で利用しようとしてくる。王子が!
人間の女など興味も無いし、傍に人間がいる生活なんて、耐えられない。考えただけで吐きそうだ。
しかし、アンドリュー王子のあの顔。はじめて見る。
顔を青くして、焦り、悔しそうに震えているのか?
面白い!
「いいだろう。その娘を貰ってやる。」
そう言ったのには、嫌がらせのつもりも有ったが、もう1つ。
「これからは、戦場で私に命令するのをやめろ!今度命令したら、その娘を喰ってやる。それから、国王。世界制覇とやらができたら、約束通り、翼麟を返してもらう!」
もう、この地上に5年。
これ以上の我慢が出来ない。
この位なら、許されるだろう?
やたらと、怯えている女を見て、心の中で思う。
すまん・・・許してくれ。翼麟が返却されるまでの辛抱だ。何もしないと誓う。
いや、むしろ人間の匂いは嫌いだから、広すぎる屋敷に、この女を住まわせて、私は、敷地内に小さな家を別に建てて、そこで生活しよう。
使用人であっても、人間と一緒に住むのは落ち着かない。
広い館はどうしても使用人が必要だったから、我慢していたが、ちょうど良い。
そう思っていたのに。
結婚式の当日。
一目見て思ったんだ。
この娘は、本当に、あの時の娘か?
純白のドレスに身を包み、オーラが違う。
まじまじと私を見つめてくる瞳が、煌めく。
緊張はしている様子だが・・・何を考えているのか?何やら真剣な顔で、前を見据え始める、その姿。
どうゆうことだ?
階段で足を踏み外したので、抱きとめて感じる。
・・・この匂い!
懐かしい、雲の匂いに似ている。
空を駆けて遊んで、喉が渇いた時に、雲に口を付けて口元を潤した。あの時の、雲の匂い。
もっと、嗅いでいたくなって、抱き上げる。
あぁ、雲の匂いのわけないか。
海辺の潮風というところか。
いずれにしても、他の人間とは違う。嫌いな匂いでは無かった。
あの日。
異世界から来たと言われて、そうかもしれないと思った。
この国では嗅いだ事の無い、優しい匂い。
「帰りたい」と泣いたおまえの涙は、怖いほどに綺麗だった。
邪念の無い涙は、美しいものだ。
始めて見る。
心の綺麗な娘。
忘れかけていた雲の匂い。
失いかけていた風の感触。
自分の、大事なものを思い出させた。
小さい声でつぶやいた言葉。
おまえの、それは、信じる力。
こんな世界に身を落としてしまった私を、照らし導く光。
未来を生み出し、突き動かす力。
その力を、この時に、私は、おまえから貰ったんだ。
だから、おまえを助けてやりたい。
守ってやりたい、そう思った。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る
家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。
しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。
仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。
そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる