7 / 33
Episode 7 ジャン視点
しおりを挟む翼麟を、アンドリュー王子が持っていると言われてみれば、確かに納得だった。
エルバーン国の軍隊の総司令官は、アンドリュー将軍だからだ。
取り返すなら、あの男と戦う必要があるわけで、それは、国と戦うということだ。
“竜の使い”を送ったことが、バレた。
さて、相手の出方を見るのも良いが、ルナの為にも前進することにする。
私自身が天界に帰ることで、ルナベルは安心して戻って来るだろう。そうすれば、ルナは元の世界に戻れる。
・・・しかし、私が居なくなった後、ルナが上手く異世界に戻ったかどうか、確かめる事が出来ない。それが少し不安だと思った。
とにかく、翼麟を取り返そうと、城に行く準備をしていると、ルナが女性とは思えない早さで支度を先に終えて言った。
「私も一緒にお城に行く!!」
「・・・おまえは来るな」
「言ったでしょ?私も手伝うって!1人より2人の方が、絶対いいよ!それに、恐れられてる竜よりも、私の方が情報収集できるかもしれないじゃない?」
城に行って、ルナベルに危険が及ぶとは思えない。しかし・・・。
ポールが支度を手伝いながら、言った。
「良いではないですか?旦那様が第2王子と話をしている間に、ルナ様に城内の情報収集をして頂きましょう。ルナベル様は、クレメント伯爵の親族ですから、王宮図書館への出入りが許可されています。図書館へ行くという名目で行かれては?」
ポールの言葉に、ルナが親指を立てて満面の笑みで答える。
「それ良い!上手くできるかは別として、ルナベルの立場を利用しなきゃ!ね?ね?そうしようよ!」
ダメだと言っても、一向に意見を聞かない様子を見て、早々に折れる。
翼麟の在り処を誰が聞き出したのか?などと言われてしまえば、まぁ、実績として認めるしかない。
それにもう。これ以上、人間の言いなりになるつもりはない。
いざとなれば、ひと暴れしてやってもいい。
そんな事を、らしくも無く考えてしまった自分に苦笑する。
こんな気持ちになったのも全部、ルナ、おまえのせいだ。
◇◇◇◇
城の一室に案内される。
程なくして現れたのはアンドリュー王子だった。
「待たせたな。シュバリエ公爵。」
王子が席に着くなり、ジャンは口を開いた。
「来た意味は、わかっているだろう?」
この王子と、2人だけで対面で話すのは初めてだ。
わざわざ城にやってきてまで、話があると呼んだので、王子も警戒している様子だ。
「こちらに来た虫なら、叩きのめしておいたが?」
睨みつけるアンドリュー王子の目の下には、クマが出来ていた。眠れていないのだろう。
常に自信に満ち溢れていて、虎か獅子のような雄々しさも、王子らしい爽やかさの微塵も無い。
その姿に、同情する気は無い。
一気に、この男を仕留めないとならない。
ジャンは言った。
「理由も、わかっているだろう?」
その言葉には、王子は少しの間、黙った。そして、答えた。
「竜らしくもなく、回りくどい言い方だな?」
・・・簡単には、翼麟を持っているとは言わないか。嫌な男だ。
この男が、竜と呼ぶときは、私に攻撃する時だ。
「意地汚い人間と話をするのには、ちょうど良い話し方だろう?大切なものを奪われて、可愛そうに思って遠慮してやっているのだがな。」
けしかけるように言うと、王子は、憎悪に満ちた目で睨みつけた。
「陛下の命令さえなければ、今すぐにでも貴様を殺してやる所だ!」
余裕のない相手を見て、望んだ答えでは無いので、挑発してトドメを刺してやる。
「立場は逆転したようだな?今後は、おまえが私の言う事を聞け!」
ジャンは、勝ち誇ったように言った。
しかし、王子はジャンの望む言葉を言わない。さすがは軍人だと思う。仕方がないので、こちらから言う。
「ルナベルを返してもらいたいか?」
ジャンの言葉に、アンドリュー王子は顔を上げて眉間に皺を寄せる。
「私と取引をする気か?」
「そうだ。」
その途端に、ぷつんと切れてしまったように、王子が叫んだ。
「何が望みだ?これ以上、私から何を奪いたい?!今までの復讐か?!貴様の望みは、翼麟だろう?!さっさと、この国から出ていけ!!」
この第2王子にとって、ルナベルが我を忘れて取り乱してしまうほどに、よほど大事な女なのだろう。
竜は、番に対する思いが、人間よりも重く強い。だから、誰かの女を奪うなんて汚い手は、本来決してしない。
もう充分だ。
そもそも、そんなつもりは無かったが、復習は終わりだ。
「いいだろう。翼麟を今すぐに返せ。即座にここから立ち去ってやる。」
ジャンの言葉に、アンドリュー王子は、驚いてポカンとした。
「・・・え?・・・」
その様子を見て、ジャンも驚く。
ん?何だ?
何故、そんなに驚く??
どうゆうことだ?この王子が持っているのではないのか?
その時だった。
ドアを叩く音と一緒に、声がした。
「殿下!!火急の要件にて、陛下がお呼びでございます!」
その声に、平常の顔に戻った王子が、部屋に入る許可を出すと、騎士が入って来た。
騎士は入ってくるなり、ジャンに一礼する。
「お話し中、失礼いたします!」
アンドリュー王子の前で、騎士の礼をとると言った。
「至急、執務室へお越しください!国王陛下がお呼びでございます!」
「何があった?」
「隣国のトルテリア国が、侵攻してきました!」
王子が立ち上がる。
「なんだと?!」
「現在、イトラスの砦を超えて、イーダ街道を南下しているとの事。首都を目指しているようです!」
また戦争か・・・ジャンは、きな臭さに嫌気がさす。
アンドリュー王子は、ジャンの方を向いて言った。
「この話は後だ。だが・・・戦には出てもらう!」
「何故、私が、おまえたちの命令を聞く必要がある?」
強く睨むと、王子は口の端で笑う。
「翼麟が欲しいんだろう?」
・・・本当に嫌な男だ。
何度、噛み殺してやりたいと思ったことか。
しかし、どうゆうことだ?翼麟はこの男の所では無いのか?
0
あなたにおすすめの小説
番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは振り返る。
夫と婚姻してから三年という長い時間。
その間に夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
落ちこぼれ村娘、拾った王子に溺愛される。
いっぺいちゃん
恋愛
辺境の村で育った元気娘 ミレイ。
ある日、森で倒れていた金髪の青年を助けるが、
実は彼は国一の人気者 完璧王子レオン だった。
だがレオンは外に出ると人格がゆるみ、
王宮で見せる完璧さは作ったキャラだった。
ミレイにだけ本音を見せるようになり、
彼は彼女に依存気味に溺愛してくる。
しかしレオンの完璧さには、
王宫の闇に関わる秘密があって——
ミレイはレオンの仮面を剥がしながら、
彼を救う本当の王子に導いていく。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
※この作品は「小説家になろう」でも同時投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
追放された王女は、冷徹公爵に甘く囲われる
vllam40591
恋愛
第三王女エリシアは、魔力も才覚もない「出来損ない」として、
婚約破棄と同時に国外追放を言い渡された。
王家に不要とされ、すべてを失った彼女を保護したのは、
王家と距離を置く冷徹無比の公爵――ルシアン・ヴァルグレイヴ。
「返すつもりだった。最初は」
そう告げられながら、公爵邸で始まったのは
優しいが自由のない、“保護”という名の生活だった。
外出は許可制。
面会も制限され、
夜ごと注がれるのは、触れない視線と逃げ場のない距離。
一方、エリシアを追放した王家は、
彼女の価値に気づき始め、奪い返そうと動き出す。
――出来損ないだったはずの王女を、
誰よりも手放せなくなったのは、冷徹公爵だった。
これは、捨てられた王女が
檻ごと選ばれ、甘く囲われていく物語。
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる