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Episode 24 好きだから
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ジャンは、“雲を操る竜”
ガイアは、“時を駆ける竜”
時を駆けて、過去に戻ったり、未来に行く事ができる。
ガイアは言った。
「過去に戻って、翼麟を取り返して来る。そうすれば、天界に帰れる!ルナちゃんは、元の世界に帰れるように、鏡が割れる直前に戻って、鏡をここまで持って来てやる。そして、もう1度ルナベルを呼び出せ。」
つまり、私達は、お別れするってことだ。
「2人とも、これで元通りってわけだ。完璧だろう?」
エッヘン!とガイアは胸を張って言う。
その提案を黙って聞いていたジャンは、私の方を見て、真剣な顔で聞く。
「ルナ。ガイアの言う通りにすれば、おまえは元の世界に帰れる。どうしたい?」
そんな質問をしてくるジャンを見上げて、恨めしそうに見る。
・・・ずるいよ。
私に決めさせるんだ。一緒にいるって言ったのに。傍に居るって言ったのに。状況が変わって、そんなふうに聞いて来るなんて。でも・・・ううん。これは彼の優しさなんだろう。私に未来を決めさせてくれる。私の決めたことに、同意しようと思っているんだ。
ジャンは、どっち?以前の私は、帰りたくない気持ちと帰りたい気持ちと、半分ずつあって、心が分裂しそうだったよ。だけど、今は違う。
ルナベルに申し訳ないけど、ジャンが好き。一緒にいたい。だけど…。
このまま、一緒にいたら、ジャンはいつか殺されるんだ。私は、ジャンを置いて、年老いて先に死ぬ。長い年月を、この地上に彼を置き去りにして。
そんなの…そんなのダメだ。
「・・・帰る。私、帰れるなら帰りたい。」
大好きなのに、ずっと一緒にいたいのに。
だけど、私は、この先、長い年月を生きていくあなたの、ほんの一時しか一緒に居てあげられないんだもの。それなのに、一緒に居たいとか、愛して欲しいなんて、もう言えない。
本当は一緒に居たいよ。傍にいたいよ。だけど、だけど、あなたをまた一人にしてしまうくらいなら。
「よし!決まりだな!早速、過去に戻って来る!」
ガイアは立ち上がって、満面の笑みを浮かべる。そんなガイアに目もくれずに、ジャンは私を見つめて、探るような目で覗き込んでくる。
私は、もう我慢できなくて、泣き出しそうになって、部屋を飛び出した。
勢いよく、部屋を飛び出していったルナを、追いかけようとして、ジャンは立ち上がったまま、立ち尽くす。
ルナの居なくなった部屋で、ジャンは拳を握りしめて言う。
「ガイア。数日間だけで良いんだ。待ってくれないか?」
「待つ?」
しっかりと、ガイアを見つめる。
「時間が欲しい。ルナとの思い出が欲しいんだ。産まれて初めて、愛おしいと思ったんだ。何があっても、どんな地獄でも、あいつとなら、生きていけると思った。たとえ・・・」
眉間に皺を寄せて、グッと歯を食いしばる。一度、目を閉じてから、何かを振り切るように顔を上げて言った。
「たとえ、数十年という一瞬の時間だったとしても、あいつが先に死ぬのだとしても、それでも一緒にいたかった!」
ドサッと、ソファーに座り込んで、ジャンは顔を覆った。
「今まで生きてきて、この数か月間が何十倍も楽しかった。今までだって、何度も見て来た景色でさえも、あいつと一緒なら違って見えた。千年生きるよりも、あいつとの一瞬の為に生きていたかったんだ。」
「ジャンクロード・・・」
ジャンの言葉を聞いて、ガイアは戸惑った。
竜は一途なのだ。それは300年も生きてきたガイアが、よく理解している。けれど、産まれた時から弟のように可愛がってきたジャンクロードが、悲恋に片足を突っ込んでいることに、黙って見ていることが出来なかった。
番いの死を、受け入れるというのは、竜には難しいのだ。殆どの竜たちは、片方が死ぬと後を追う。寿命は千年だが、そういった理由で、自死する者も少なくはない。まだ若いジャンクロードが、100年も生きずに、というのは、黙って見ていることが出来なかった。しかし・・・。
「解った。1ヵ月やるよ。1ヵ月後には戻って来る。ただ、1つだけ約束してくれないか?絶対に、あの子を抱くな。番いにしてしまえば、取り返しがつかない!分ってるな?!」
そう言い残して、ガイアは消えた。
リビングで一人になり、ジャンは、暫くボウっとした。
ルナは、帰れるなら、本当は帰りたいのではないか?その考えは、ずっと心の中に残っていたんだ。
ずっと傍にいたい。でも、縛りつけたくない。あいつの笑顔が好きだから。守りたいから。あいつが望むなら、何でも叶えてやりたい。
『帰りたい』
さっき、そう言ったルナの目は、苦痛に歪んで、床を見つめたままだった。
「・・・」
ジャンは、スタスタと、ベッドルームに向かった。
扉が少し空いていて、中を覗いてみる。
ルナはベッドに突っ伏したままで、動かなかった。だから、寝てしまったのかと思って、そうっと部屋の中に入る。すると、彼女の体がピクリと動いて、鼻をすする音がした。
「ルナ」
名を呼んでも、彼女はこちらを向かずに、背中を向けたままで起き上がり、ベッドにペタンと座ったままで返事をした。
「なに?ガイアさんは、もう過去に探しに行ったの?」
その声が、くぐもっていた。泣いていたのだと気がついて、ベッドの近くまで歩いて行くと、その気配に気がついて、慌てたように、そっぽを向いてしまう。
「ルナ。話がしたいんだ。こっちを向いてくれ。」
「やだ。」
ジャンは、ベッドの上に片膝をついて、少し強引にルナの肩を掴んで、自分の方に顔を向けさせようとする。それに気がついて、ルナは必死に抵抗した。
「やだっ!やめてよ!見ないで!」
顔を隠そうとする両腕を掴んで、ベッドの上に組み敷く。
ルナの目は、真っ赤になって、涙が溢れていた。辛そうに眉をひそめて、大粒の涙が頬を伝う。その顔を見て、ジャンの心は息が出来なくなるほどに締め付けられた。
しゃくり上げるように、はふっと息をしながら、ルナは言った。
「好きなの・・・!ジャンが好きだから、離れたくない!」
子供のように、泣きながら叫んで、その姿がジャンには可愛らしく映った。つい、微笑んで、誘うように言う。
「ならば、ここで暮らそう?一緒に、ずっと。」
「嫌だよ!ここに居たら、ずっと追われて生きて行かなきゃいけないんだよ?いつかジャンは独りぼっちになって、長い年月を人間に追われて、1人で生きていくんだよ?」
「いいよ。」
「良くないよ!そんなの、私が嫌だ!」
「生きる長さは、長くなくてはダメか?私が望むのは、おまえだ。愛する者と一緒に生きて、一緒に死ぬ。それが竜の生き方だ。それが長くても短くても、愛する者と番いになって一緒にいられるなら、幸せだ。」
ジャンの言葉に、ルナの心は、ぎゅうっと鷲掴みにされてしまう。
だけれど、自分の気持ちと、それで、本当にジャンが後悔しないのか?本当にそれが正解なのか?それが幸せなのか?解らなくなっていた。
「大丈夫だ。ここで、ガイアに会えたからな。おまえが生涯を終えるまで一緒に居て、その後は、ガイアに頼んで、翼麟を取り戻す。天界に帰るよ。」
それを聞いて、ルナは「あ!そうか!」と素晴らしい考えに賞賛するように、目を輝かせて、満面の笑みを浮かべる。
ルナの頬に涙が残っているのを、ジャンは唇で吸い取って、微笑み、頷いて見せる。
「ルナ。好きだ。」
耳元で囁く。
そのまま耳たぶを、甘噛みした。
「おまえが好きだ。」
落ち着いたしっかりした声で囁き、耳にキスをして、また耳元で囁く。
「おまえと、結ばれたい。」
誘うように囁いて、首元を愛撫をする。
「好きなんだ。」
指と指を絡めて、体を密着させ、すりすりと優しく撫でる。
「ルナ、好きだ。一つになりたい。」
切羽詰まったような声に、掻き立てられて、堪らなくなり、ジャンの背中に腕を回す。
「ジャン・・・!」
その夜。
ジャンは、何度も何度も、愛の言葉を囁きながら私を抱いた。
その声と愛撫に酔いしれて、何も考えられず、愛に溺れた。
ガイアは、“時を駆ける竜”
時を駆けて、過去に戻ったり、未来に行く事ができる。
ガイアは言った。
「過去に戻って、翼麟を取り返して来る。そうすれば、天界に帰れる!ルナちゃんは、元の世界に帰れるように、鏡が割れる直前に戻って、鏡をここまで持って来てやる。そして、もう1度ルナベルを呼び出せ。」
つまり、私達は、お別れするってことだ。
「2人とも、これで元通りってわけだ。完璧だろう?」
エッヘン!とガイアは胸を張って言う。
その提案を黙って聞いていたジャンは、私の方を見て、真剣な顔で聞く。
「ルナ。ガイアの言う通りにすれば、おまえは元の世界に帰れる。どうしたい?」
そんな質問をしてくるジャンを見上げて、恨めしそうに見る。
・・・ずるいよ。
私に決めさせるんだ。一緒にいるって言ったのに。傍に居るって言ったのに。状況が変わって、そんなふうに聞いて来るなんて。でも・・・ううん。これは彼の優しさなんだろう。私に未来を決めさせてくれる。私の決めたことに、同意しようと思っているんだ。
ジャンは、どっち?以前の私は、帰りたくない気持ちと帰りたい気持ちと、半分ずつあって、心が分裂しそうだったよ。だけど、今は違う。
ルナベルに申し訳ないけど、ジャンが好き。一緒にいたい。だけど…。
このまま、一緒にいたら、ジャンはいつか殺されるんだ。私は、ジャンを置いて、年老いて先に死ぬ。長い年月を、この地上に彼を置き去りにして。
そんなの…そんなのダメだ。
「・・・帰る。私、帰れるなら帰りたい。」
大好きなのに、ずっと一緒にいたいのに。
だけど、私は、この先、長い年月を生きていくあなたの、ほんの一時しか一緒に居てあげられないんだもの。それなのに、一緒に居たいとか、愛して欲しいなんて、もう言えない。
本当は一緒に居たいよ。傍にいたいよ。だけど、だけど、あなたをまた一人にしてしまうくらいなら。
「よし!決まりだな!早速、過去に戻って来る!」
ガイアは立ち上がって、満面の笑みを浮かべる。そんなガイアに目もくれずに、ジャンは私を見つめて、探るような目で覗き込んでくる。
私は、もう我慢できなくて、泣き出しそうになって、部屋を飛び出した。
勢いよく、部屋を飛び出していったルナを、追いかけようとして、ジャンは立ち上がったまま、立ち尽くす。
ルナの居なくなった部屋で、ジャンは拳を握りしめて言う。
「ガイア。数日間だけで良いんだ。待ってくれないか?」
「待つ?」
しっかりと、ガイアを見つめる。
「時間が欲しい。ルナとの思い出が欲しいんだ。産まれて初めて、愛おしいと思ったんだ。何があっても、どんな地獄でも、あいつとなら、生きていけると思った。たとえ・・・」
眉間に皺を寄せて、グッと歯を食いしばる。一度、目を閉じてから、何かを振り切るように顔を上げて言った。
「たとえ、数十年という一瞬の時間だったとしても、あいつが先に死ぬのだとしても、それでも一緒にいたかった!」
ドサッと、ソファーに座り込んで、ジャンは顔を覆った。
「今まで生きてきて、この数か月間が何十倍も楽しかった。今までだって、何度も見て来た景色でさえも、あいつと一緒なら違って見えた。千年生きるよりも、あいつとの一瞬の為に生きていたかったんだ。」
「ジャンクロード・・・」
ジャンの言葉を聞いて、ガイアは戸惑った。
竜は一途なのだ。それは300年も生きてきたガイアが、よく理解している。けれど、産まれた時から弟のように可愛がってきたジャンクロードが、悲恋に片足を突っ込んでいることに、黙って見ていることが出来なかった。
番いの死を、受け入れるというのは、竜には難しいのだ。殆どの竜たちは、片方が死ぬと後を追う。寿命は千年だが、そういった理由で、自死する者も少なくはない。まだ若いジャンクロードが、100年も生きずに、というのは、黙って見ていることが出来なかった。しかし・・・。
「解った。1ヵ月やるよ。1ヵ月後には戻って来る。ただ、1つだけ約束してくれないか?絶対に、あの子を抱くな。番いにしてしまえば、取り返しがつかない!分ってるな?!」
そう言い残して、ガイアは消えた。
リビングで一人になり、ジャンは、暫くボウっとした。
ルナは、帰れるなら、本当は帰りたいのではないか?その考えは、ずっと心の中に残っていたんだ。
ずっと傍にいたい。でも、縛りつけたくない。あいつの笑顔が好きだから。守りたいから。あいつが望むなら、何でも叶えてやりたい。
『帰りたい』
さっき、そう言ったルナの目は、苦痛に歪んで、床を見つめたままだった。
「・・・」
ジャンは、スタスタと、ベッドルームに向かった。
扉が少し空いていて、中を覗いてみる。
ルナはベッドに突っ伏したままで、動かなかった。だから、寝てしまったのかと思って、そうっと部屋の中に入る。すると、彼女の体がピクリと動いて、鼻をすする音がした。
「ルナ」
名を呼んでも、彼女はこちらを向かずに、背中を向けたままで起き上がり、ベッドにペタンと座ったままで返事をした。
「なに?ガイアさんは、もう過去に探しに行ったの?」
その声が、くぐもっていた。泣いていたのだと気がついて、ベッドの近くまで歩いて行くと、その気配に気がついて、慌てたように、そっぽを向いてしまう。
「ルナ。話がしたいんだ。こっちを向いてくれ。」
「やだ。」
ジャンは、ベッドの上に片膝をついて、少し強引にルナの肩を掴んで、自分の方に顔を向けさせようとする。それに気がついて、ルナは必死に抵抗した。
「やだっ!やめてよ!見ないで!」
顔を隠そうとする両腕を掴んで、ベッドの上に組み敷く。
ルナの目は、真っ赤になって、涙が溢れていた。辛そうに眉をひそめて、大粒の涙が頬を伝う。その顔を見て、ジャンの心は息が出来なくなるほどに締め付けられた。
しゃくり上げるように、はふっと息をしながら、ルナは言った。
「好きなの・・・!ジャンが好きだから、離れたくない!」
子供のように、泣きながら叫んで、その姿がジャンには可愛らしく映った。つい、微笑んで、誘うように言う。
「ならば、ここで暮らそう?一緒に、ずっと。」
「嫌だよ!ここに居たら、ずっと追われて生きて行かなきゃいけないんだよ?いつかジャンは独りぼっちになって、長い年月を人間に追われて、1人で生きていくんだよ?」
「いいよ。」
「良くないよ!そんなの、私が嫌だ!」
「生きる長さは、長くなくてはダメか?私が望むのは、おまえだ。愛する者と一緒に生きて、一緒に死ぬ。それが竜の生き方だ。それが長くても短くても、愛する者と番いになって一緒にいられるなら、幸せだ。」
ジャンの言葉に、ルナの心は、ぎゅうっと鷲掴みにされてしまう。
だけれど、自分の気持ちと、それで、本当にジャンが後悔しないのか?本当にそれが正解なのか?それが幸せなのか?解らなくなっていた。
「大丈夫だ。ここで、ガイアに会えたからな。おまえが生涯を終えるまで一緒に居て、その後は、ガイアに頼んで、翼麟を取り戻す。天界に帰るよ。」
それを聞いて、ルナは「あ!そうか!」と素晴らしい考えに賞賛するように、目を輝かせて、満面の笑みを浮かべる。
ルナの頬に涙が残っているのを、ジャンは唇で吸い取って、微笑み、頷いて見せる。
「ルナ。好きだ。」
耳元で囁く。
そのまま耳たぶを、甘噛みした。
「おまえが好きだ。」
落ち着いたしっかりした声で囁き、耳にキスをして、また耳元で囁く。
「おまえと、結ばれたい。」
誘うように囁いて、首元を愛撫をする。
「好きなんだ。」
指と指を絡めて、体を密着させ、すりすりと優しく撫でる。
「ルナ、好きだ。一つになりたい。」
切羽詰まったような声に、掻き立てられて、堪らなくなり、ジャンの背中に腕を回す。
「ジャン・・・!」
その夜。
ジャンは、何度も何度も、愛の言葉を囁きながら私を抱いた。
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