雲は竜に従い、風は愛に従う

月野さと

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Episode 25 番い

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「ルナ・・・ルナ・・・・ルナ・・・」

 私の名前を何度も何度も口にして、止まない愛撫。
 まどろみの中、額に唇の感覚。それから、鼻の先。ほっぺ。首筋を伝ってから、唇にキスの感覚。
 目が覚めては抱き合って、愛し合う。その繰り返しで、甘くトロトロに愛されて、全身に力が入らない。
 
 もう、何時だろう?

 部屋の中に差し込む、太陽の陽射し。だいぶ前から感じているから、もう朝では無いのかもしれない。そう思って、うっすらと目を開ける。
 目の前には、美しい彫刻のように整ったジャンの顔があって、スヤスヤと寝息を立てていた。昨晩から、目を開ける度に、体を求められたのでクタクタだった。今は、寝ている姿を見て、少しホッとする。
 
 その美しい顔に見惚れながら、不思議な感覚にとらわれていた。
 なんでだろう?男女の関係を持ったせいなんだろうか?髪の毛一本さえも輝いて、愛おしく感じてしまう。とても不思議な感覚。

 誰かを好きになるって、こうゆうことなんだって実感する。
 
 そうっと、ジャンの髪の束をつまんで、耳の後ろに持って行く。柔らかい髪だなぁ。なんて、思ってたら、ジャンの目が、ゆっくりと開いた。
 そのままジッと見ていると、彼は顔をほころばせて微笑む。
 大きな腕で抱きしめられて、肌と肌の感覚が心地良い。
「おはよう。ジャン。」

「ん・・・まだ、起きたくはない。」 
 そんなことを言いながら、体を密着させて、キスをしてくる。
「ん~・・・。ダメだよジャン。起きよう?私、お腹空いちゃったもの。」
 ジャンの口に手をやって、キスの終了を告げると、その手首を掴んで、そのまま手の甲にキスをされる。物欲しそうに、目だけで何かを訴えかけてくる。
 心臓がドクン、ドクンと鳴り始めるけれど・・・だけど、ダメ。本当におなか減ったよぉ~。
「・・・もう起きよう?今、何時だろう?」
 そう言って、壁に掛けてある時計を確認する。
「うわっ!もう12:30?お昼になってる!」
 どおりで、お腹の虫が騒ぐわけだ。朝ごはん食べ損ねた! 
 私の声が大きかったのか、部屋のドアがノックされて、外からポールの声が響く。
「お目覚めでしょうか?軽くサンドイッチを作りましたので、お持ちしますか?」
 ポール♪さすが、気が利く♪
「うん!ありがとうポール!今、着替えてからリビングに行くね!」
 私は、大きな声で答える。
 ジャンは、仕方ないなという表情をしながらも、私にガウンを羽織らせてくれた。 
  
 その後は、遅い昼食をとってから、川へ釣りに行こうという話になって、納屋に入っていた釣り道具を取り出して、3人で釣りに出掛けた。

 川に釣り糸を垂らした瞬間から、ポールが1匹GETして、その後すぐにジャンの竿に魚がかかった。私もその後に魚がかかったけれども、上手く釣る事が出来ずに逃げられた。

「うまく釣れない~~」
「よし、ルナ。次に魚がかかったら、手伝ってやる。あっ!待て、また魚がかかった!」
 ジャンは、次々と魚を釣り上げる。ポールも忙しそうにしていた。
「もぉ~~!なんで、私のはダメなのかなぁ~?」
 釣りをするポジションが悪いのかなぁ?と、川の下流の方に移動する。

 少し広い所に出て、川岸に草原が広がっている場所を見つけた。

「わぁ~。なんか綺麗。」
 その奥の木には、何か実がなっているので、持って来ていた図鑑を取り出す。女将さんから頂いたバッグの中に、山菜や野草、薬草などの図鑑が入れられてあった。それを持ってきたので、観察していく。

 その時、川の反対側に、黒い人影があった。
 私はその事に全く気がつかない。

 真剣に図鑑と植物を見比べて、歓喜の声を上げる。
「これ、食べられるやつだ♪こっちの草は薬草みたい!!やったぁ~♬」

 黒い人影は、草陰から出て来た時だった。

「ルナ!ルナ!どこだ?!」
 上流の方から、ジャンの呼ぶ声がする。
 その声を聞いて、黒い人影は音もなく岩陰に隠れた。

「ジャン!こっちこっちー!」
 すぐにジャンがやってきて、傍に駆け寄る。
「勝手に1人で行くな!心配するだろう?」
「大丈夫だよ!川沿いに歩いてるし。ねぇ、それよりもこれ見て!」
 私はすっかりテンションが上がってしまって、夢中になって発見したものを報告する。


 そんな中、黒い人影は、そうっと山を降りて行った。


 男は、山を下りると、一軒の古い宿屋に入って行く。狭い部屋に入り、部屋の鍵をかけた。そして、何かメモ書きをすると、鳩の足に括り付ける。
 鳩は、手紙を足につけて、飛び立って行った。


 手紙を括り付けた鳩は、とある大きな館に入って行く。
 その館に居たのは、エルバーン国の王子、アンドリューだった。
 鳩が窓辺に降り立つと、アンドリュー王子は手紙を受け取る。部屋の真ん中で、何やら話しているヒョロヒョロの男はお構いなしで言った。

「なるほど、なるほど、エルバーン国からわざわざ、視察に来られたのですから、ごゆるりとお寛ぎを。殿下。それとですね。我が娘、昨晩はパーティーで踊っていた娘ですよ。はい。美しいでしょう?いかかでしょう?」
 アンドリュー王子は、手紙を読み終えると、暖炉の中に放り込んだ。そして、ヒョロヒョロの男に向きなおる。
「卿。世話になったな。例を言う。先を急ぐのでな。今すぐここを出る。」
「え?・・・・今から?!」

 アンドリュー王子は、エルバーン国王から、“竜を捕まえて来い”という命令を受けた。しかし、アンドリュー王子自信、そんなことはどうでも良くて二の次だ。

「ルナベル・・・!必ず、おまえを助け出してみせる。」
 彼は、ルナベルを取り戻すために、遠路を突き進んでいた。

 
 場所を知られてしまったとは気がついていない、ルナとジャンは、その日。川魚のパーティーをしていた。
「やっぱり、川魚は刺身では食べれないわね。揚げ物とか、塩焼きとか、煮物とかよ!」
 やる気満々の私の隣で、桶に入った魚を眺めながら、ジャンが言う。
「・・・・なんというか、鱗がある生き物を調理するのは・・・アレだな。」
 複雑そうなジャンを見て、私は笑った。
「確かに!なんか共食いしてるみたいだよね?」
 ポールも、少し嫌そうに魚を眺める。
「えぇ、まぁ、私も・・・鱗を剥ぐ・・・というのがちょっとですね・・・・」
 そう言われてみると、確かにねぇ~。
「よし!今日は私が調理担当ね!2人は座ってて♪」
 腕まくりをして、私は魚の南蛮漬け、ムニエル、塩焼き、などを作っていく。魚のさばき方は母に教わっていて良かったぁ。なんて、しみじみ思う。
 ジャンは、複雑な顔をして戸惑っていたけれども、キッチンから出て行くことは無く、調理を遠くから眺めていた。お皿を出してくれたりしながら、明日は何しようか?とか、好きな食べ物とか、今後の話なんかをしていた。
 
 私たちは、とても幸せだった。
 
 

 
 
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