王様の愛人

月野さと

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1話

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 ラトニア王国、王宮の1室。
 天蓋付きの大きなベッドの上で、王様と女性がまぐわっていた。

「あぁ!!陛下、あぁっ、気持ちいい!」
 長い髪を振り乱して、王様の上に乗り、腰を激しく振る。
「あぁっ、イイ!陛下!子種を!あぁ~っ気持ちいい!私の中に子種を~!」
 王様は下から激しく突き上げてやると、女は叫びながらイってしまう。体をビクビクと激しく痙攣させて、ベッドに倒れこんだ。
 無表情で、巨根を女から抜きとると、もう一人、隣で自慰行為をし、胸を自分で揉んでいた女の方を見る。トロンとした目を王様に向けて、這いつくばるようにして王様に近付くと、キスをする。
「陛下のが欲しいです。チュッ、んむ。」
 女は物欲しそうに王様を見つめて、フェラを始める。頬にくぼみができるほど、強く吸い上げてしごく。ペロペロとカリを舐めまわし、ジュルジュルと唾液をつけてシゴキ吸う。
「んっんっんっんっ!おっきい。美味しいっ。あぁ、ちゅばっ!ちゅばっ!ちゅう。」
 卑猥な音をたてて、 グチャグチャに舐める。王様は静かに見守りながら10分くらい、そのままにして、女性の胸を揉んで、乳首を摘まむ。
「欲しいか?」
 王様が言うと、女は嬉しそうに頷く。
「はい。陛下のりっぱなモノを、私の奥深くに埋め込んで出し入れしてくださいまし!」
 女はすぐさま、王様の上にまたがって、自分から挿入した。
「あぁ!あぁ!あぁ!気持ちい~!イッちゃう!イイ!イク!」
 グチュングチュンと粘着質な音をたてて、腰を振っていたかと思うと、「もっと~。もっと欲しい!」と涎を垂らしながら強請るので、女性の上に乗り腰を激しく振り始めた。そのまま1時間ほどまぐわい、2人目の女も泡を吹きながら倒れた。

 王様は、2人が気絶しているのを見ると、布団をかけてやり、服を着た。

「・・・はぁ。終わったか。」
 誰か他に人が居たとしても、誰にも聞こえないほどの小さい独り言をつぶやいて、部屋を出た。

 部屋を出ると、扉の前には88歳になる家臣が立っていた。
 白髪に眼鏡をかけて、文官らしい服をしっかりと着こみ、超絶真面目な顔で言った。
「射精しましたか?また、ダメじゃったか?」

 王様は、表情1つ変えずに言い返す。
「・・・下品なこと言うな。もう諦めたらどうなんだ?」
 スタスタと、速足で歩き出す王様に、その家臣はついていく。
「何を仰っておいでか。これはこの国にとって重要な案件なのですぞ!」
 はぁ、と大きな溜息を、これ見よがしについてから言う。
「私はもう諦めている。こんなことは、もう金輪際ごめんだ!もう何人と関係を持ったと思っているんだ?」
「娼婦も町娘も踊り子も入れて100人ですじゃ。」
 年老いた臣下は、サラリと答える。

 そうなのである。
 この国、ラトニア国の王、ヴィンセント王にはセフレ(愛人)が数えきれないほど居た。というか、我こそは妃にと望む女性が、次々と名乗りを上げて、王のベッドに上がった。
 王になって4年目。ヴィンセントは今年で22歳になり、現在も妃がいない。
 ラトニア国では、妃と認められる資格・条件がある。王とセックスをして、背中に王家の紋章を授かった者のみが、妃と認められるのだ。その王家の紋章を背中に授かるには、王の性を受けなければならない。

「100人とやって、イッたことが無いのだから、もう諦めろ。」
「いいえ!私は諦めませぬぞ!こうなったら、1度に5人、いや10人とまぐわって頂き、そこまでやったら、どなたかには射精できるかもしれませぬ!」
「もう勘弁してくれ!!」
 ヴィンセントは、本気でキレた。
「私はもう、諦めた!妃には理解ある者を立てて、皇太子には血の繋がりではなく、優秀な人材にすればよい!もう王家の血など諦めろ。」
「な!何を言うのですか!このラトニア王家の歴史は、古代からと言われておりっ!王家の血はっ」
「あぁ、うるさいぞ!もう聞き飽きた!ノア!ノアは何処に行った?」
 王様が自室の扉を開けながら叫ぶと、廊下の角から10代の若い男の子が飛んで来た。
「はい!陛下。お呼びでしょうか?」
「ノア。私は少し自室で休む。この煩いジジイを送ってやれ。」
「陛下!わしは、このままじゃ、死ぬに死に切れませぬ!この命に代えても、必ず、王家の血を受け継がせますぞ!」
  
 バタン!!
 ヴィンセントは、部屋の扉を閉めた。

「はぁ。」
 戦場を駆け回るよりも、敵国と会談をする時よりも、はるかに疲労する。

 女が嫌いなのではない。セックスも嫌いではない。いや、むしろ何時間でもセックスできるし、普通に快感もある。毎回、女をイかせることは出来る。しかし、何人とやっても、何時間かけて抱いてみても、女性の中でイクことが出来ない。様々なタイプの女性と寝た。様々な趣向でやった。でも、ダメだった。その苦しさ。辛さ。

 自分で、この長く続いた王家を途絶えさせてしまうという、責任。

 ヴィンセントは、自分のベッドに横になり、顔を覆う。

「はぁ。どうしたらいいんだ。」
 

 
◇◇◇◇◇


 
 お城の廊下を、老人と若者が歩いて行く。 
「宰相様、しばらくは、陛下をそっとしておいては頂けませんか?」
 ノアが言うと、長い髭を撫でながら歩いていた宰相が、カッと目を見開いた。
「そっとしておいて、子供が出来るのか?!良いか?ノアよ。陛下の従者として5年!毎日毎日、陛下の側におって、何か解る事はないのか?女性の好みや足りない何かじゃ!!」
 宰相は88歳のわりに、かなり元気でよくしゃべる。ノアは、心の中で「血圧高そう」と思う。
「しかし、陛下は聡明な方です。周囲から何かせずとも・・・」
「甘い!こうゆう事はな、周囲がけしかけんと、いかんのじゃ!!」
 長い廊下の端から端まで響き渡ったであろう、その声がこだました時だった。階段を上ってきた騎士が、にこにこと挨拶をした。
「深夜までお疲れ様です。ヘンドリック宰相、そんなに叫んでいたら血圧が上がってしまいますよ。」
 階段を上がって来た騎士は、見るからに屈強そうな体の持ち主の、騎士団長だった。
「グレイ騎士団長か。こんな時間までご苦労じゃな。」
 ヘンドリックは、騎士団長を見るなり思いつく。
「そうじゃ、グレイ騎士団長の知り合いで、陛下にピッタリの女性はおらぬか?」
「は?・・・え~と、そうですねぇ。陛下にピッタリ、ですか?」
「そうじゃ、もうこの際じゃ。身分は問わん。」
「そうですねぇ~。」
 その時、グレイ騎士団長の後ろに居た、青年騎士が言った。
「そういえば、ヘンドリック宰相様には、お孫様がいらっしゃいますよね?ほら、ちょうど陛下とも年齢が近い。」
 その言葉に、グレイ騎士団長も、あ~、と思い出す。
「確か、ソフィア嬢でしたっけ?留学されているんでしたっけ?」
「あれはダメじゃ!!」
 ヘンドリックは、ワナワナと怒り出した。
「あやつは、先月、留学先から帰国したが、はねっかえりで、どうも可愛げが無い!出来損ないじゃ!とても陛下の前には出せん!」
 グレイ騎士団長と、青年騎士は、たじろぎながら歩きだす。
「えーと、確か、ヘンドリック様のご長男、亡きフレドリック様の1人娘でしたね。」
 ヘンドリックは、急に静かになり、肩を落とした。そして、溜め息をつきながら言った。
「そうじゃ。あの子はな、わしの自慢の息子の、唯一の子だ。それなのに・・・」

 暫しの沈黙が流れる。
 しかし、そう長くは無かった。

「あの子はダメじゃ!」


 
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