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23話
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陛下は、まだ信じられないという顔をしていた。
少し不安そうに、私の目を見て確認するように聞く。
「ソフィア。隠さないで教えてくれ。おまえには、心に秘めている男が居るのではないのか?」
「え?」
心に秘める・・?なんのことか、必死で考える。
「留学中に、王子にプロポーズされたと聞いた。おまえは迷っていたと。」
なっ、何故それを?!
「!?違います!た、確かに、そうだけど、違います!!私は彼らを兄のように慕っていました。だから、心配もします。でも恋愛感情は全く無くて!それに、迷っていたのではなくて!友人のままで居たくて、困惑していただけです!」
勘違いされたくなくて、必死の説明が、どこか言い訳っぽい気がして、もう1度陛下に気持ちを伝える。
「私は、陛下が好きです!」
ちょっと息切れ気味で言い切ったら、陛下は少しの間の後、目を細めて微笑んだ。
腕枕をしたままで肩を抱き、もう片方の手で頭を撫でられる。
「そうか・・。では勘違いだったのだな。」
いつもの優しい瞳に、優しい大きな手が、私を優しく撫でる。
あぁ、いつもの陛下だ。
ホッとして、その腕に身を任せる。
額から後ろに髪をとかすように撫でて、時折、優しく頬を撫でてくれる。
安心した瞬間に、ポロポロと涙がこぼれてきた。
「うっ・・・うぅ・・・。」
「・・・どうした?」
優しい声が、心に沁みていく。
「ひぃっく、・・・だっ、て。うぅっ・・陛下が、ひぃっ・・く!怖かったっ・・陛下じゃないみたいで、ぅっく、・・凄く、怖かった!」
陛下は、ふわりと包み込むように私を抱きしめて、額にキスをして言った。
「ごめん!もうあんな抱き方はしないと約束する。許してくれ。」
何度も誤って、私の肩をさする様に撫でて、頭も撫でてくれた。
さっきまでは、辛くて悲しくて泣いていたのに、今度は安心して涙が出る。ずっと、ずっと泣いていたせいなのか、安心したせいなのか、頭がボウっとしてくる。
そう言えば、昨日は陛下の部屋から女性の声を聞いてしまったせいで、悲しみと苛立ちで、眠ることが出来ず、寝不足だったかもしれない・・・。
温かい陛下の腕の中で、優しい声で謝る声を聞きながら、意識が朦朧としてきて、ぷつん。と途切れた。
ソフィアは、ヴィンセントの腕の中で、泣きながら眠ってしまっていた。
◇◇◇◇
ソフィアが、静かになって、眠ってしまったのだと気がつく。
最後にもう1度と、頭を撫でてから、布団をかける。
ベッドから降りて、服を整え、時計を見るとお昼を過ぎていた。午後の仕事には間に合いそうだ。早く行かなければ・・・・そう思いつつも、ベッドに横になっているソフィアに目を落とす。
そうっと、髪をかき分けると、その背中には王家の紋章がくっきりと現れていた。
胸をギュウと締め付けられ、嬉しさに涙が出そうになる。我慢しきれずに、そうっと、その背中にキスをした。
全ての蟠りから解放されて、心が軽くなる。
部屋を出て、執務室へ向かいながら、ヴィンセントは思った。
しかし、1つだけ気になる事は、ある。
『そうだけど、違います』と彼女は言った。つまりそれは、プロポーズはされていたという事だろう。
「・・・」
ヴィンセントは首を振る。
いやいや、落ち着け。彼女は私を好きだと言ってくれたのだ。あの王子には、会わせないようにしようなどと、小さいことを考えるな!
執務室の前まできて、深呼吸をする。
切り替えよう。
ガチャリと扉を開けると、執務室には、アデルとグレイとノアが、仕事をしていた。
「すまなかったな。職務に戻る。」
デスクに座り、書類に目を通すと、ノアが言った。
「昼食がまだですよね?軽く食べられるものを用意させましょうか?」
「あぁ、そうだな。頼む。・・・・それと、女官に、もう少ししたらソフィアにも何か持って行ってやってくれと頼んでおいてくれ。」
「はい。かしこまりました。」
ノアがニコニコ微笑みながら、部屋を出て行く。
視線を移すと、グレイとアデルも、ニコニコ・・・・いや、こいつらはニヤニヤしていた。
グレイが言う。
「陛下。ソフィア嬢とは、仲直りされましたか?」
「・・・まぁな。」
「では、背中の紋章のことも、聞けたんですね?」
「あぁ、それで、彼女を砦まで連れて来たのか。」
ヴィンセントが気がつくと、嬉しそうに2人が話し出す。
「いやぁ、私がサプライズを提案したんですよ!」
「騎士団長が城を離れるわけにいかずに、私が連れて行ったわけですが、いやぁ、散々でしたね。サプライズなんてするもんじゃありあせん。トラブルわ、拗れるわ、喧嘩になるわ、陛下は嫉妬でブチギレるわで、午前中の仕事はすっぽかされるわ。」
「まぁまぁ、アデル。陛下は22歳で、やっと初恋を経験しているんだ。多めに見てやれ。」
「まぁ、確かに・・・初恋か。みんな最初は、上手く行かないものです。自分の感情を抑えられなかったり。そうですね、陛下、多めに見ます。」
グレイは少し思い出したように言う。
「しかし、ソフィア嬢も18歳のわりには、男女の関係に疎くて少女のようですしね。お互いに初恋同士だったとしたら!なるほど。上手く行かずに、こじらせちゃうわけです。」
アデルも、思いついたように言う。
「そうですねぇ。そもそも、ヘンドリック宰相が陛下に強いた、愛人作りが悪かったのでは?かえって、恋をこじらせた原因かもしれまんせんよ。」
グレイもアデルも、ヴィンセントが幼い頃からの付き合いで、2人は兄のようにして育った。そのせいか、2人は遠慮が無かった。
「おまえら~~~!!いい加減にしないと、地方に飛ばすぞ?」
2人とも、ケラケラ笑いながら、ひぇ~っ!などと怯えて見せる。
確かに・・・。
自分が、こんなに嫉妬深いとは思いもしなかった。
そして今も。
互いに気持ちが同じだったと知り、早くソフィアの側に行きたいと思っている。
そんなことを考えていると、アデルが言った。
「今日は早めに仕事を終わらせましょう。幸い国内では問題が起きてませんし、せっかく思いが通じ合ったんです。早く一緒にいたいでしょうから。」
・・・・完全に心を読まれていた。
少し不安そうに、私の目を見て確認するように聞く。
「ソフィア。隠さないで教えてくれ。おまえには、心に秘めている男が居るのではないのか?」
「え?」
心に秘める・・?なんのことか、必死で考える。
「留学中に、王子にプロポーズされたと聞いた。おまえは迷っていたと。」
なっ、何故それを?!
「!?違います!た、確かに、そうだけど、違います!!私は彼らを兄のように慕っていました。だから、心配もします。でも恋愛感情は全く無くて!それに、迷っていたのではなくて!友人のままで居たくて、困惑していただけです!」
勘違いされたくなくて、必死の説明が、どこか言い訳っぽい気がして、もう1度陛下に気持ちを伝える。
「私は、陛下が好きです!」
ちょっと息切れ気味で言い切ったら、陛下は少しの間の後、目を細めて微笑んだ。
腕枕をしたままで肩を抱き、もう片方の手で頭を撫でられる。
「そうか・・。では勘違いだったのだな。」
いつもの優しい瞳に、優しい大きな手が、私を優しく撫でる。
あぁ、いつもの陛下だ。
ホッとして、その腕に身を任せる。
額から後ろに髪をとかすように撫でて、時折、優しく頬を撫でてくれる。
安心した瞬間に、ポロポロと涙がこぼれてきた。
「うっ・・・うぅ・・・。」
「・・・どうした?」
優しい声が、心に沁みていく。
「ひぃっく、・・・だっ、て。うぅっ・・陛下が、ひぃっ・・く!怖かったっ・・陛下じゃないみたいで、ぅっく、・・凄く、怖かった!」
陛下は、ふわりと包み込むように私を抱きしめて、額にキスをして言った。
「ごめん!もうあんな抱き方はしないと約束する。許してくれ。」
何度も誤って、私の肩をさする様に撫でて、頭も撫でてくれた。
さっきまでは、辛くて悲しくて泣いていたのに、今度は安心して涙が出る。ずっと、ずっと泣いていたせいなのか、安心したせいなのか、頭がボウっとしてくる。
そう言えば、昨日は陛下の部屋から女性の声を聞いてしまったせいで、悲しみと苛立ちで、眠ることが出来ず、寝不足だったかもしれない・・・。
温かい陛下の腕の中で、優しい声で謝る声を聞きながら、意識が朦朧としてきて、ぷつん。と途切れた。
ソフィアは、ヴィンセントの腕の中で、泣きながら眠ってしまっていた。
◇◇◇◇
ソフィアが、静かになって、眠ってしまったのだと気がつく。
最後にもう1度と、頭を撫でてから、布団をかける。
ベッドから降りて、服を整え、時計を見るとお昼を過ぎていた。午後の仕事には間に合いそうだ。早く行かなければ・・・・そう思いつつも、ベッドに横になっているソフィアに目を落とす。
そうっと、髪をかき分けると、その背中には王家の紋章がくっきりと現れていた。
胸をギュウと締め付けられ、嬉しさに涙が出そうになる。我慢しきれずに、そうっと、その背中にキスをした。
全ての蟠りから解放されて、心が軽くなる。
部屋を出て、執務室へ向かいながら、ヴィンセントは思った。
しかし、1つだけ気になる事は、ある。
『そうだけど、違います』と彼女は言った。つまりそれは、プロポーズはされていたという事だろう。
「・・・」
ヴィンセントは首を振る。
いやいや、落ち着け。彼女は私を好きだと言ってくれたのだ。あの王子には、会わせないようにしようなどと、小さいことを考えるな!
執務室の前まできて、深呼吸をする。
切り替えよう。
ガチャリと扉を開けると、執務室には、アデルとグレイとノアが、仕事をしていた。
「すまなかったな。職務に戻る。」
デスクに座り、書類に目を通すと、ノアが言った。
「昼食がまだですよね?軽く食べられるものを用意させましょうか?」
「あぁ、そうだな。頼む。・・・・それと、女官に、もう少ししたらソフィアにも何か持って行ってやってくれと頼んでおいてくれ。」
「はい。かしこまりました。」
ノアがニコニコ微笑みながら、部屋を出て行く。
視線を移すと、グレイとアデルも、ニコニコ・・・・いや、こいつらはニヤニヤしていた。
グレイが言う。
「陛下。ソフィア嬢とは、仲直りされましたか?」
「・・・まぁな。」
「では、背中の紋章のことも、聞けたんですね?」
「あぁ、それで、彼女を砦まで連れて来たのか。」
ヴィンセントが気がつくと、嬉しそうに2人が話し出す。
「いやぁ、私がサプライズを提案したんですよ!」
「騎士団長が城を離れるわけにいかずに、私が連れて行ったわけですが、いやぁ、散々でしたね。サプライズなんてするもんじゃありあせん。トラブルわ、拗れるわ、喧嘩になるわ、陛下は嫉妬でブチギレるわで、午前中の仕事はすっぽかされるわ。」
「まぁまぁ、アデル。陛下は22歳で、やっと初恋を経験しているんだ。多めに見てやれ。」
「まぁ、確かに・・・初恋か。みんな最初は、上手く行かないものです。自分の感情を抑えられなかったり。そうですね、陛下、多めに見ます。」
グレイは少し思い出したように言う。
「しかし、ソフィア嬢も18歳のわりには、男女の関係に疎くて少女のようですしね。お互いに初恋同士だったとしたら!なるほど。上手く行かずに、こじらせちゃうわけです。」
アデルも、思いついたように言う。
「そうですねぇ。そもそも、ヘンドリック宰相が陛下に強いた、愛人作りが悪かったのでは?かえって、恋をこじらせた原因かもしれまんせんよ。」
グレイもアデルも、ヴィンセントが幼い頃からの付き合いで、2人は兄のようにして育った。そのせいか、2人は遠慮が無かった。
「おまえら~~~!!いい加減にしないと、地方に飛ばすぞ?」
2人とも、ケラケラ笑いながら、ひぇ~っ!などと怯えて見せる。
確かに・・・。
自分が、こんなに嫉妬深いとは思いもしなかった。
そして今も。
互いに気持ちが同じだったと知り、早くソフィアの側に行きたいと思っている。
そんなことを考えていると、アデルが言った。
「今日は早めに仕事を終わらせましょう。幸い国内では問題が起きてませんし、せっかく思いが通じ合ったんです。早く一緒にいたいでしょうから。」
・・・・完全に心を読まれていた。
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