今日もダンジョンでレベルアップ!貧乏無課金でも金持ちを蹴散らし、ざまぁ復讐そしてハーレムを作る!?

まめたろう

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14章「新たな仲間と思惑」

第140話「権力と利害」

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#第140話「権力と利害」

 定期報告が終わった直後、静まり返ったオフィスでエリナが口を開いた。
「……とんだ茶番ね。呆れたものだわ」

 デスクに残っていた書類に目を通していた朝倉が、わずかに笑う。
「茶番とはひどいな」

「どうせ、あなたのことだから。ルナをこちら側に引き入れたかっただけでしょう?」

「まあ、ルナを我々の側に置きたかったのは事実だな。それは認めよう。ルナは相当な戦力だ。しかも話題性もある。引き入れることができれば様々なメリットがあるのは事実だ」

 エリナはため息をつき、腕を組んだ。
「そのためにレンを利用したの?薄汚いわね」

「いやいや、利害の一致と言ってくれよ。レンもルナも合同討伐を望んでいた。その意思を尊重しただけだよ」

「ふん、口ではなんとでも言えるわね。あれだけ誘導しておいてたいしたものだわ」

「そう言うな、君も事情はよく知っているだろう?」

 朝倉の穏やかな声に、エリナは返す言葉を飲み込んだ。
 朝倉の言う“事情”――それは、エリナ自身もよく分かっていることだった。自分もそれに絡んでいるのだ。

 ハンター協会は決して一枚岩ではない。
 内部では、朝倉のような公務員側と、民間の影響を受けた企業側が常に対立していた。
 近年、金にものを言わせた企業系クランの台頭によって企業側が勢力を拡大し、その発言力は日に日に強くなっている。
 政府・公務員側としては、ダンジョン関連の規制を現状のままで維持したいが企業側はそれを「活性化」と称して緩和を求めていた。

 「ダンジョン関連の全ての税を軽くし規制を緩め、経済を回す。ダンジョンの討伐も進み安全。それが国のためになる。日本は規制ばかりで他国に遅れている」という名目で、企業はクラン活動の自由化を進めようとする。
 ダンジョン活動をするには年齢制限を始めとして様々な規制があるがそれを緩めようとするのが企業側となる。極論を言えば「誰もがハンターになることができて、その人達には税金がかからないようにする。武器の製造なども規制を無くし積極的に進める」というのが企業側の言い分。当然のことながら国のためと言いながら現実には自企業の利益が一番の目的だ。
 一方、公務員側は「安全と国益を守るための枠組み、そして適切な納税は必要」と現状維持を主張し、対立は激しさを増していた。
 どちらの主張も嘘ではない。そして間違いでもない。しかし戦いは資本主義の世の中で本音と建前で動いていく。

 本来すべき議論はそこに政治家や企業、NPO団体、市民団体などの利権団体が複雑に絡みいつも混迷する。
 理想を掲げた政策の裏で、利権が動き票も動く。政治家を取り込むことによって不用な法案や条例までもが生まれ無駄な補助金が出てそこに様々な企業や団体がむらがる。
 綺麗ごとと打算が入り混じる――それがこの国の“現実”だった。

 朝倉もまた、その渦の中にいた。
 公務員側の立場で動きながらも、心のどこかで問い続けていた。
 ――本当に、これが正義なのか?国によって良い方向性とは?

 エリナも似たような想いを抱えている。
 かつて彼女が所属していた『暁の牙』は草クランであり公務員側とも企業側とも言えないクランだった。
 しかし、彼女はそこを離れ、独立した。
 理由はただ一つ――安全より利益を優先する企業側の主張に我慢ならなかったからだ。
 一定の規制緩和によって怪我人が増えた。最悪、死に至る人も。企業側の言うことも一理ある、国としての成長も必要だ。だがそれが多くの犠牲の上に成り立っているのでは意味がないというのが彼女の信念だ。

 以来、彼女は“公務員側”に近い立場で活動し、ハンターの倫理と秩序を守ろうとしている。
 それは当然のことながら朝倉だけでなく『暁の牙』の黒澤も知っている。黒澤は企業側にも公務員側にも付かない立場を貫いているがエリナのいうことも、もっともだと感じ快く新しいクラン立ち上げに賛同し送り出したのだ。

 そして今。
 レンという存在がもしかしたら企業側と公務員側の対立の均衡を揺るがすかもしれない。これまでの概念を覆す金の力に依存しない、レベリング無しでの成長。
 彼の能力、そして更にはルナとの関係もある――それは、企業側にも公務員側にも無視できない要素になるかもしれない。

「……あなた、大人の薄汚い世界にレンを巻き込む気?」

「巻き込むつもりはない。彼が持つ力を、正しい方向で生かしたいだけだ。おそらく彼もそれを望むことだろう。正義感の強い人間だからな」

 エリナは冷たい視線を向けた。
「ふん、ものは言いようね。もし彼らを裏切るようなことがあれば――私も考えるからね」

「それは怖い。しっかり胸に刻んでおくよ」

 朝倉は軽く笑って受け流したが、その笑みの裏にわずかな緊張があった。それはそうだ。エリナの圧はとてつもなく強い。
 そして現時点では公務員側に味方するエリナがいなくなるのは業界のパワーバランスが大きく崩れる可能性があり非常に厳しい。レンたちに関する動きは慎重にする必要があった。

 大人の世界は、綺麗ごとでは済まない。
 理想と権力、義務と欲望――そのすべてが複雑に絡み合う。正しいことを言っているようで実は自らの利益、権力欲で動いている政治家がほとんど。
 いや、政治家だけでなく利権に絡む企業もNPO団体も市民団体も同じこと。その多くは国のため、国民のためといいながらそれぞれが自らの利益のために発言し動いていく。国民が汗水働いて収めた税金を財布のように扱う人間たちもいる。

 そんな中で、大人の事情など知らないまだ純粋な理想を持つ青年・レン、そしてルナは、知らず知らずのうちにその渦へと足を踏み入れていた。

 朝倉もエリナも、今はまだその行く末を知らない。
 だが、彼らがこの世界をどう“解いていく”のか――それが、やがて大きな意味を持つかもしれないと考えていた。
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