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アノン
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「中央の施設――いや、地下の施設なら、頑張れば情報を集められるけど、地上がどうなっているのかなんて、分からないんだから。地上の施設や、その周りがどうなっているか知らなきゃならない」
「そんなの出てから考えればいい!」
シェルビーが考えを吹っ飛ばしてそう言うと、アライアは冷たい視線を向けてきた。
「もし周りが高い柵や壁で覆われていたら?」
「逃げ出す方法を隠れながら考えて――」
「――隠れる場所がなかったら?」
シェルビーはまごつき、麗土の背に隠れる。
「そ、そんなこと考えてたら一生出られないだろ!」
バカだな~……と麗土は思った。
「お前達はさっき死にかけたんだぞ、だから情報を集めて考えてから行動しろと言ってるんだ!」
「うぐ」
「逃げられない、諦めろと言ってやってもいいんだぞ。断言できない訳じゃないんだ。断言できるほど逃げ出すことは困難なんだ。ここから逃げ出したい気持ちはわかるし、何より、俺も逃げ出そうと思って色々考えたり調べたりしているわけだから。良ければ仲間に入れて欲しい」
一拍置いて。
「はあああ!?」
とみんなで一斉に驚くが、それをさせた本人は冷静に、独り言のように、呟く。
「逃げ出す人数は多くない方がいいのかもしれないけど、人数が多い方が楽に進める道もある。情報だって手に入れやすいし、自分にはできないことが他の人にはできるかもしれない、補い合い、支え合える。俺はずっと一人だったから、君達を見付けられてうれしかったし、いなくなってほしくなかったから、助けた。いらなかったら見殺しにしてたかもな」
「こいつ絶対仲間にしたくねえんだけど!?」
麗土が叫べば、アライアはむっとして言う。
「て言うか、そもそも、水の中でどうやって息をするつもりだったんだ? 地下から伸びてるならポンプの長さは短くても500m以上ある筈だ」
「うぐ」
「酸素が薄い場所だってあるだろうし。ここがろ過施設であったとしても、そうでなくてもろ過後に水質検査をする人もいる、普通に気付かれる。無茶すぎる」
あの大人達は水の様子を見ていたのか……とシェルビーは思う。他にも機材の点検、様子の確認をしている大人もいたのだろう。
「だ、だから気付かれないように飛び込んで――」
「――そもそもポンプの中に侵入したら水力タービンに巻き込まれるか高圧真空で意識飛ぶか、そのまま死ぬか――いや、水を吸い上げるためにもタービンは止められないしどう考えても無理だ。人が入れるほどの隙間があるとも思えない。いやいや待て待て確か俺の記憶だと、こことは別の場所にある施設ではろ過した水も蒸発させてエンジンやら発電やらのエネルギー源にされることになったらしいから何年か前に吸い上げポンプは無くなったんだった。ああ、そうだ、確かにゴミも泥とは別に焼却炉で燃やしているかもしれない。エネルギーになるし、灰にしてから運び出しているのかも。となるとエレベーターの線か」
「も、もう分かったから……お前が仲間になるかは置いておいて……反省してますから」
麗土がそう言うと。
「まあ、確かに行き当たりばったりでいこうとしてたことは認める」
と、シェルビーが頭を掻く。アライアはにっこりと笑った。決して自然な笑みではなかったが、シェルビーは「うぐ」と後退して顔を赤く染め上げた。
真顔でも女性と見間違うほど綺麗な顔をしているアライア。その癖吊り上がった眼や低めの声は男前だ。とにかくキラキラと輝いて見える彼の笑顔は心臓に悪い。
「にしてもいつから俺達の話聞いてたんだ?」
と麗土が尋ねると、アライアはシェルビー達の後方に指を指して「空き家で使えそうなものを集めていたら君達が来た」と言う。
「シェルビーが中に入ったけど」
「隠れていたら気付かず出て行った」
「シェえルビいいいいい?」
ホラー映画に出てきそうなお化けのごとくギギギと振り向いてくる麗土の頭を、シェルビーは両手で掴んで元の方向へ戻す。
「何すんじゃアホ!! お前のせいだぞバカが!!」
「俺が気付いてたらもっと早くに止められてただけの話だろ」
「そう言えば、なんで侵入する前に止めなかったんだ?」
アライアは少し寂しそうにしながら言った。
「君達が本気かどうか知りたかったんだ」
「お前、仲間いないの?」
麗土が聞けば、アライアは頷く。
「この地下都市で俺以外に外へ出たがる人がいるなんて考えたこともなかった」
「…………」
麗土は少し考えてから、シェルビーの顔を見る。シェルビーは首を傾げた。
「よし!」
と言って、麗土はアライアに向き直る。
「お前、今日から仲間な!」
「え?」
「はああああああ!?」
驚くアライアに対し、数倍以上で驚く一同。アライアに麗土の言葉を撤回しようと振り向いたシェルビーは、アライアの嬉しそうな笑顔を見て、それがどうしてもできなくなる。
麗土がそんなシェルビーと肩を組んで耳打ちしてくる。
「お前、アライアのこと気に入ってるだろ?」
目を見開いた後、麗土を睨みつけてから耳打ちする。
「俺はお前が好きだ」
「へ!?」
「あっはっは、冗談だ」
「やめろ心臓に悪い!!」
麗土は何となく、何となくシェルビーからの好意を感じていたので、半分ほど冗談ではないのだろうと思ったが、口にはしない。にしたって、長年の付き合いが美少年の顔だけに負けるとは許せん。
「お前はラヴィラが好きなんだもんな」
「俺は好きな奴たくさんいるぞ。お前のこともまあいっときは……」
「ん?」
「これは知らない方がいいか……」
「おい途中まで言っといてやめるなよ。気になる……俺のことがなんだって?」
麗土は顔を赤くしてシェルビーから背ける。
「お前アライアのこと気に入ってんだろ。俺もラヴィラを気に入ってるよ」
「俺は……お前のことを気に入ってた。なんてな。確かにアライアは……き、綺麗だけど性格がな」
「俺達を心配してこそだろ?」
シェルビーはそれを聞いて拗ねたように言った。
「お前はいいのかよ」
「あ?」
「俺のこと諦めても」
「へ!?」
「あはははは! 冗談だって」
「こ、この野郎……次やったらぶっ飛ばすぞ」
これは冗談だな、と麗土は思う。いっときの好意を口にしたことなんてなかったし、他の誰かに隠すような関係になったこともなかったからだ。
――その後、アライアも含めた一同は基地――水路の橋の下に向かっていた。
「そんなの出てから考えればいい!」
シェルビーが考えを吹っ飛ばしてそう言うと、アライアは冷たい視線を向けてきた。
「もし周りが高い柵や壁で覆われていたら?」
「逃げ出す方法を隠れながら考えて――」
「――隠れる場所がなかったら?」
シェルビーはまごつき、麗土の背に隠れる。
「そ、そんなこと考えてたら一生出られないだろ!」
バカだな~……と麗土は思った。
「お前達はさっき死にかけたんだぞ、だから情報を集めて考えてから行動しろと言ってるんだ!」
「うぐ」
「逃げられない、諦めろと言ってやってもいいんだぞ。断言できない訳じゃないんだ。断言できるほど逃げ出すことは困難なんだ。ここから逃げ出したい気持ちはわかるし、何より、俺も逃げ出そうと思って色々考えたり調べたりしているわけだから。良ければ仲間に入れて欲しい」
一拍置いて。
「はあああ!?」
とみんなで一斉に驚くが、それをさせた本人は冷静に、独り言のように、呟く。
「逃げ出す人数は多くない方がいいのかもしれないけど、人数が多い方が楽に進める道もある。情報だって手に入れやすいし、自分にはできないことが他の人にはできるかもしれない、補い合い、支え合える。俺はずっと一人だったから、君達を見付けられてうれしかったし、いなくなってほしくなかったから、助けた。いらなかったら見殺しにしてたかもな」
「こいつ絶対仲間にしたくねえんだけど!?」
麗土が叫べば、アライアはむっとして言う。
「て言うか、そもそも、水の中でどうやって息をするつもりだったんだ? 地下から伸びてるならポンプの長さは短くても500m以上ある筈だ」
「うぐ」
「酸素が薄い場所だってあるだろうし。ここがろ過施設であったとしても、そうでなくてもろ過後に水質検査をする人もいる、普通に気付かれる。無茶すぎる」
あの大人達は水の様子を見ていたのか……とシェルビーは思う。他にも機材の点検、様子の確認をしている大人もいたのだろう。
「だ、だから気付かれないように飛び込んで――」
「――そもそもポンプの中に侵入したら水力タービンに巻き込まれるか高圧真空で意識飛ぶか、そのまま死ぬか――いや、水を吸い上げるためにもタービンは止められないしどう考えても無理だ。人が入れるほどの隙間があるとも思えない。いやいや待て待て確か俺の記憶だと、こことは別の場所にある施設ではろ過した水も蒸発させてエンジンやら発電やらのエネルギー源にされることになったらしいから何年か前に吸い上げポンプは無くなったんだった。ああ、そうだ、確かにゴミも泥とは別に焼却炉で燃やしているかもしれない。エネルギーになるし、灰にしてから運び出しているのかも。となるとエレベーターの線か」
「も、もう分かったから……お前が仲間になるかは置いておいて……反省してますから」
麗土がそう言うと。
「まあ、確かに行き当たりばったりでいこうとしてたことは認める」
と、シェルビーが頭を掻く。アライアはにっこりと笑った。決して自然な笑みではなかったが、シェルビーは「うぐ」と後退して顔を赤く染め上げた。
真顔でも女性と見間違うほど綺麗な顔をしているアライア。その癖吊り上がった眼や低めの声は男前だ。とにかくキラキラと輝いて見える彼の笑顔は心臓に悪い。
「にしてもいつから俺達の話聞いてたんだ?」
と麗土が尋ねると、アライアはシェルビー達の後方に指を指して「空き家で使えそうなものを集めていたら君達が来た」と言う。
「シェルビーが中に入ったけど」
「隠れていたら気付かず出て行った」
「シェえルビいいいいい?」
ホラー映画に出てきそうなお化けのごとくギギギと振り向いてくる麗土の頭を、シェルビーは両手で掴んで元の方向へ戻す。
「何すんじゃアホ!! お前のせいだぞバカが!!」
「俺が気付いてたらもっと早くに止められてただけの話だろ」
「そう言えば、なんで侵入する前に止めなかったんだ?」
アライアは少し寂しそうにしながら言った。
「君達が本気かどうか知りたかったんだ」
「お前、仲間いないの?」
麗土が聞けば、アライアは頷く。
「この地下都市で俺以外に外へ出たがる人がいるなんて考えたこともなかった」
「…………」
麗土は少し考えてから、シェルビーの顔を見る。シェルビーは首を傾げた。
「よし!」
と言って、麗土はアライアに向き直る。
「お前、今日から仲間な!」
「え?」
「はああああああ!?」
驚くアライアに対し、数倍以上で驚く一同。アライアに麗土の言葉を撤回しようと振り向いたシェルビーは、アライアの嬉しそうな笑顔を見て、それがどうしてもできなくなる。
麗土がそんなシェルビーと肩を組んで耳打ちしてくる。
「お前、アライアのこと気に入ってるだろ?」
目を見開いた後、麗土を睨みつけてから耳打ちする。
「俺はお前が好きだ」
「へ!?」
「あっはっは、冗談だ」
「やめろ心臓に悪い!!」
麗土は何となく、何となくシェルビーからの好意を感じていたので、半分ほど冗談ではないのだろうと思ったが、口にはしない。にしたって、長年の付き合いが美少年の顔だけに負けるとは許せん。
「お前はラヴィラが好きなんだもんな」
「俺は好きな奴たくさんいるぞ。お前のこともまあいっときは……」
「ん?」
「これは知らない方がいいか……」
「おい途中まで言っといてやめるなよ。気になる……俺のことがなんだって?」
麗土は顔を赤くしてシェルビーから背ける。
「お前アライアのこと気に入ってんだろ。俺もラヴィラを気に入ってるよ」
「俺は……お前のことを気に入ってた。なんてな。確かにアライアは……き、綺麗だけど性格がな」
「俺達を心配してこそだろ?」
シェルビーはそれを聞いて拗ねたように言った。
「お前はいいのかよ」
「あ?」
「俺のこと諦めても」
「へ!?」
「あはははは! 冗談だって」
「こ、この野郎……次やったらぶっ飛ばすぞ」
これは冗談だな、と麗土は思う。いっときの好意を口にしたことなんてなかったし、他の誰かに隠すような関係になったこともなかったからだ。
――その後、アライアも含めた一同は基地――水路の橋の下に向かっていた。
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