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プロローグ
悪魔サマエルが蘇る時…
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注:この小説に登場する悪魔の記述については一部、筆者の憶測の域を出ておりません。
小宮健斗君は公立高校の2年生だ。身長165センチでやせ型、人見知りがひどく、話をする時に少しどもる癖がある。いつもどこか怯えた表情を浮かべ、困るとすぐに愛想笑いを浮かべる。他の生徒見ると、頼りない人間の見本だ。
だからなのか、昔から、からかわれたり、イジメの対象にされている。そうされても怒らずにヘラヘラと愛想笑いを浮かべるから余計にイジメられる。
ある日、下校途中の小宮君に、待ち伏せしていた同じクラスの3人の男子がニタニタ笑いながら声を掛けてきた。
「おい、小宮!こっちこいよ!」
それはいつも小宮君をイジメている連中だ。学校でもイジメているが、助けるクラスメイトはいない。みんな、自分が次のターゲーットにされるのを恐れているせいだ。
校外で声を掛けられたのは初めてだ。
小宮君は嫌な予感がした。
「かっ、帰るよ」
慌てて逃げようとしても腕を強引につかまれ、両脇を抱えられるよにして、近くの工場の跡地に連れて行かれた。乱雑に缶や瓶が捨てられている。乱暴に歩く音が嫌な音で反響している。
一人が小宮にグローブを投げつけた。それは総合格闘技などで使用されているオープンフィンガーグローブだった。
「それをつけろよ。格闘技の練習しようぜ。学校じゃ、先生にチクられたら困るからよ。言っとくけどこれはイジメじゃないからな。お前が弱いから鍛えてやるんだ。ありがたく思えよ」
イジメの常套文句だ。後はご想像通り、30分以上も殴られ、蹴られ続けられた。時には3人がかりで…もしかした顔の骨やあばら骨が折れているかもしれない。お腹を押さえながら横たわったまま立ち上がれない…・
(殺されるぅ…)
一瞬、そう思っても仕方ないくらいの状況だ。
「誰か助けて下さい!誰でもいいです!お願いします!…」
横たわりながらも、心の底から大声で精一杯に叫んだ。
「ハハハ、バカだな。ここは廃工場だから防音もしっかりしているし、誰も来やしないさ。ホラ、もっと鍛えてやるから早く立てよ」
倒れている小宮君を3人は見下すように笑いながら見ている。一人が倒れている小宮君を蹴ろうとしたその時だった…
『誰だ…我を呼んだのは…』
それは声というよりは廃工場内を覆うような重厚な響きだった。
3人は驚き上下左右と辺りを見回した。小宮君も横たわりながらも見回してみた。だが誰の姿もない。ただ、寒気がするような異様な硬い雰囲気が、辺りを包んでいる事を全員が感じた。それはさっきまではとは全く違う異質な気配だ…
『もう一度問う…我を呼び出したのは誰だ…たかが人間ごときが…』
「…」
『このサマエル様を呼び出しておいて、誰もいないとは言わさんぞ…』
「…」
『…なら仕方あるまい…我を呼び出した罪は重い…命だけは助けてやるが、その罪を償うがいい…』
逃げようにも足が竦んで誰も動けない。
突然、真っ赤な龍にも似た大きな蛇のような物体が3人の頭上に姿を現した。それは明らかにこの世のモノではない。そして小宮君も含めた全員にその物体が絡めついた。鋼のようなウロコが全員の身体に食い込んでいく。全身から出血し、小宮君を除く3人はもだえ苦しんでいる。皮膚の色が蛇のようにまだら模様になったかと思うと、次第にボロボロと崩れ落ちた。死んではいないが、皮膚が焼けているような臭いがする。だが、横たわっている小宮君だけは殆どウロコに反応しない。
『お前か…我を呼び出したのは…なぜお前ごときに我を呼び出せる…』
小宮君は恐怖で声も出ない。
(なっ、なんでこんなバケモノみたいなモノのが出て来るんだよぉ~)
その生き物は小宮君の頭上をグルグルと回り、何か気配を感じとっているようだった。
『なるほど…我としたことが忘れていたか…
よかろう…我が名はサマエル…毒を支配する盲目の蛇の化身だ。お前を主として認めてやろう…必要とあれば又呼び出すが良い…お主のその傷も我が力で治しておいてやろう…』
そう言うとサマエルと名乗る物体は、小宮君に巻き付いているウロコから何やら液体のようなものを染み出すと、小宮君から離れ、そして渦を巻くようにしながら空中から消えていなくなった。
小宮君の傷は一瞬にして完治した。残りの3人の皮膚は赤く焼きただれぐったりと倒れている。しかしそれは肉体的な傷よりも、恐怖によって歪んだ精神の崩壊のせいだった。
プロローグ 完
小宮健斗君は公立高校の2年生だ。身長165センチでやせ型、人見知りがひどく、話をする時に少しどもる癖がある。いつもどこか怯えた表情を浮かべ、困るとすぐに愛想笑いを浮かべる。他の生徒見ると、頼りない人間の見本だ。
だからなのか、昔から、からかわれたり、イジメの対象にされている。そうされても怒らずにヘラヘラと愛想笑いを浮かべるから余計にイジメられる。
ある日、下校途中の小宮君に、待ち伏せしていた同じクラスの3人の男子がニタニタ笑いながら声を掛けてきた。
「おい、小宮!こっちこいよ!」
それはいつも小宮君をイジメている連中だ。学校でもイジメているが、助けるクラスメイトはいない。みんな、自分が次のターゲーットにされるのを恐れているせいだ。
校外で声を掛けられたのは初めてだ。
小宮君は嫌な予感がした。
「かっ、帰るよ」
慌てて逃げようとしても腕を強引につかまれ、両脇を抱えられるよにして、近くの工場の跡地に連れて行かれた。乱雑に缶や瓶が捨てられている。乱暴に歩く音が嫌な音で反響している。
一人が小宮にグローブを投げつけた。それは総合格闘技などで使用されているオープンフィンガーグローブだった。
「それをつけろよ。格闘技の練習しようぜ。学校じゃ、先生にチクられたら困るからよ。言っとくけどこれはイジメじゃないからな。お前が弱いから鍛えてやるんだ。ありがたく思えよ」
イジメの常套文句だ。後はご想像通り、30分以上も殴られ、蹴られ続けられた。時には3人がかりで…もしかした顔の骨やあばら骨が折れているかもしれない。お腹を押さえながら横たわったまま立ち上がれない…・
(殺されるぅ…)
一瞬、そう思っても仕方ないくらいの状況だ。
「誰か助けて下さい!誰でもいいです!お願いします!…」
横たわりながらも、心の底から大声で精一杯に叫んだ。
「ハハハ、バカだな。ここは廃工場だから防音もしっかりしているし、誰も来やしないさ。ホラ、もっと鍛えてやるから早く立てよ」
倒れている小宮君を3人は見下すように笑いながら見ている。一人が倒れている小宮君を蹴ろうとしたその時だった…
『誰だ…我を呼んだのは…』
それは声というよりは廃工場内を覆うような重厚な響きだった。
3人は驚き上下左右と辺りを見回した。小宮君も横たわりながらも見回してみた。だが誰の姿もない。ただ、寒気がするような異様な硬い雰囲気が、辺りを包んでいる事を全員が感じた。それはさっきまではとは全く違う異質な気配だ…
『もう一度問う…我を呼び出したのは誰だ…たかが人間ごときが…』
「…」
『このサマエル様を呼び出しておいて、誰もいないとは言わさんぞ…』
「…」
『…なら仕方あるまい…我を呼び出した罪は重い…命だけは助けてやるが、その罪を償うがいい…』
逃げようにも足が竦んで誰も動けない。
突然、真っ赤な龍にも似た大きな蛇のような物体が3人の頭上に姿を現した。それは明らかにこの世のモノではない。そして小宮君も含めた全員にその物体が絡めついた。鋼のようなウロコが全員の身体に食い込んでいく。全身から出血し、小宮君を除く3人はもだえ苦しんでいる。皮膚の色が蛇のようにまだら模様になったかと思うと、次第にボロボロと崩れ落ちた。死んではいないが、皮膚が焼けているような臭いがする。だが、横たわっている小宮君だけは殆どウロコに反応しない。
『お前か…我を呼び出したのは…なぜお前ごときに我を呼び出せる…』
小宮君は恐怖で声も出ない。
(なっ、なんでこんなバケモノみたいなモノのが出て来るんだよぉ~)
その生き物は小宮君の頭上をグルグルと回り、何か気配を感じとっているようだった。
『なるほど…我としたことが忘れていたか…
よかろう…我が名はサマエル…毒を支配する盲目の蛇の化身だ。お前を主として認めてやろう…必要とあれば又呼び出すが良い…お主のその傷も我が力で治しておいてやろう…』
そう言うとサマエルと名乗る物体は、小宮君に巻き付いているウロコから何やら液体のようなものを染み出すと、小宮君から離れ、そして渦を巻くようにしながら空中から消えていなくなった。
小宮君の傷は一瞬にして完治した。残りの3人の皮膚は赤く焼きただれぐったりと倒れている。しかしそれは肉体的な傷よりも、恐怖によって歪んだ精神の崩壊のせいだった。
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