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第一章 少年は旅立つ
6.狩るものと狩られるもの1
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ドリーとアンを追い抜いて走る。
ただひたすらに、走る。
走る。走る。
木々の隙間を抜け、できるだけ足元に気を配る。
二人が歩きやすいように道を選び、その土を踏みしめるように蹴り出す。
少しでも土が固まれば二人が走りやすいはずだ。
頭上や眼前にまで気を配る余裕は、ない。
だから枝や蔦は全力で腕を振るって砕く。
前に、父さんに連れられて狩りに行ったことがあった。
それも授業の一貫だったけれど、僕は体を動かすほうが好きだから楽しかった。
痕跡を見つけ、静かに、ゆっくりと追い詰める。
そうやってウサギを二羽仕留めた。
矢で射られたウサギはまだ息があって、その目は諦念のような失意のようなものが感じられた。
父さんに、
「生きるということは命をいただくということだ」
と言われた。
動物も草花も、生きている。
それらを食べて、僕らも生きる。
その日、僕は初めて自分で仕留めたウサギを解体してシチューにして食べた。
とても美味しかった。
それと同時に狩りの楽しさと命を奪うこと、生きることを知った。
僕は今、その時のウサギの気分だ。
ウサギも、きっとこういう気分だったんだ。
走り出してすぐに冒険者の鬨の声が聞こえた。
それ以降、彼の声は聞こえない。
いや聞かないようにした。
彼は、きっとおそらく、彼は。
僕はその事実にがちがちと歯を震わせたけれど、今はそれどころじゃない。
走りながら二人の息遣いに集中する。
大丈夫、ちゃんとついてきている。
僕が二人を連れいかないと。
そう思っているとドリーが叫んだ。
「おい!ウェダ、もっとスピード上げろよ!余裕過ぎてつまんないぞ!」
ちらりと振り向くと、ドリーの顔がすぐ後ろにある。
ドリーは今にも泣きそうな顔をしながら口元は笑みを浮かべていた。
こんなときでも発破を掛けようとしてくれるドリー。
アンも、ドリーの声に安心したのか、心なしか足取りが軽くなっているようだ。
「もうすぐ里林だ!二人とも、ちゃんとついてきてよ!置いてくぞ!」
少しだけ速度を上げる。
ドリーのおかげで冷静になった僕の視界は澄んでいた。
道が、頭上が、目前がクリアに見える。
さっきより強く土を踏みしめ、枝を折る。
その時だ。
「くるるるるるる……」
後ろのほうで、そんな声が聞こえた。
その唸るような鳴き声にアンが、短い悲鳴をあげる。
「聞くな!走れ!」
それを叱咤するように叫ぶドリー。
そして僕は気付いてしまった。
くるるる……
くるくるるるる……
一匹ではない。
くそっ。
悪態をつきながらひたすらに、走る。
周囲の茂みががさがさと音を立てる。
もう奴らは隠そうともしない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
思えば思うほどに、土を蹴る力は強くなる。
アンもドリーも必死に僕についてきている。
そしてやっと、僕たちは里林に出られたのだった。
ただひたすらに、走る。
走る。走る。
木々の隙間を抜け、できるだけ足元に気を配る。
二人が歩きやすいように道を選び、その土を踏みしめるように蹴り出す。
少しでも土が固まれば二人が走りやすいはずだ。
頭上や眼前にまで気を配る余裕は、ない。
だから枝や蔦は全力で腕を振るって砕く。
前に、父さんに連れられて狩りに行ったことがあった。
それも授業の一貫だったけれど、僕は体を動かすほうが好きだから楽しかった。
痕跡を見つけ、静かに、ゆっくりと追い詰める。
そうやってウサギを二羽仕留めた。
矢で射られたウサギはまだ息があって、その目は諦念のような失意のようなものが感じられた。
父さんに、
「生きるということは命をいただくということだ」
と言われた。
動物も草花も、生きている。
それらを食べて、僕らも生きる。
その日、僕は初めて自分で仕留めたウサギを解体してシチューにして食べた。
とても美味しかった。
それと同時に狩りの楽しさと命を奪うこと、生きることを知った。
僕は今、その時のウサギの気分だ。
ウサギも、きっとこういう気分だったんだ。
走り出してすぐに冒険者の鬨の声が聞こえた。
それ以降、彼の声は聞こえない。
いや聞かないようにした。
彼は、きっとおそらく、彼は。
僕はその事実にがちがちと歯を震わせたけれど、今はそれどころじゃない。
走りながら二人の息遣いに集中する。
大丈夫、ちゃんとついてきている。
僕が二人を連れいかないと。
そう思っているとドリーが叫んだ。
「おい!ウェダ、もっとスピード上げろよ!余裕過ぎてつまんないぞ!」
ちらりと振り向くと、ドリーの顔がすぐ後ろにある。
ドリーは今にも泣きそうな顔をしながら口元は笑みを浮かべていた。
こんなときでも発破を掛けようとしてくれるドリー。
アンも、ドリーの声に安心したのか、心なしか足取りが軽くなっているようだ。
「もうすぐ里林だ!二人とも、ちゃんとついてきてよ!置いてくぞ!」
少しだけ速度を上げる。
ドリーのおかげで冷静になった僕の視界は澄んでいた。
道が、頭上が、目前がクリアに見える。
さっきより強く土を踏みしめ、枝を折る。
その時だ。
「くるるるるるる……」
後ろのほうで、そんな声が聞こえた。
その唸るような鳴き声にアンが、短い悲鳴をあげる。
「聞くな!走れ!」
それを叱咤するように叫ぶドリー。
そして僕は気付いてしまった。
くるるる……
くるくるるるる……
一匹ではない。
くそっ。
悪態をつきながらひたすらに、走る。
周囲の茂みががさがさと音を立てる。
もう奴らは隠そうともしない。
死にたくない。
死にたくない。
死にたくない。
思えば思うほどに、土を蹴る力は強くなる。
アンもドリーも必死に僕についてきている。
そしてやっと、僕たちは里林に出られたのだった。
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