転生勇者二世の苦悩

曇戸晴維

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第一章 少年は旅立つ

幕間 レヴィ・マティウス2

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 その子どもはどこか見覚えがあった。
 しかし今はそんな場合ではない。
 何故か少年の周りには複数の魔物が集まっていた。
 今にも襲いかかりそうな雰囲気で囲んでいる。

 だというのに、あの少年は震えるばかりで動かない。
 それも仕方ないことなのだろう。
 だってまだ子どもじゃないか。
 隊の連中を見てみろ。
 大の大人ですらこの有様だ。
 必死で恐怖を隠している。

 バカバカしい。
 死ぬときは死ぬ。
 私は死なぬ。
 まだ死なぬ。
 研究がしたいからね。

 それなのに私は苦虫を噛み潰したような顔で走りだす。

「おい!五人付いてこい!」
「了解!」

 いらいらする。
 この惨状も状況も。
 らしくない私も、何もかもすべて。

「疾く。すべてを置き去りにしろ」

 短く、呪文を呟く。
 この距離ならこれで十分なはず。
 あっという間に少年の元へ辿り着く。

 少年は震えていた。
 無理もない。
 だが、その瞳は物語っていた。
 自分がまもなく死ぬことを理解していた。
 その上で、死にたくないと語っていた。

 ああ、なんだ。
 いい目をするじゃあないか。
 まるで私の兄弟弟子たちのようだ。
 
 途端に私は落ち着いて、彼を抱きしめながら気付けをする。
 育ちが良さそうだから、こういう奴には少しばかし強く、はっきりと言うほうがいい。

「少年!立て!こちらに来るんだ!」

 はっと気付いて、彼は私の腕にしがみつく。
 よしよし、お姉さんが連れて行ってあげよう。
 ――なんて、お姉さんって歳でもないか。
 そんなことを考えていたら、魔物の奴ら、我慢できなくなって飛びかかってきやがる。
 さすがに私でも少年を抱えながら避け続けるのは難しい。
 もう少し強い呪文を唱えておけばよかった。

 カチンッ

 ほら、今のは危なかった。
 目の前で歯が噛み合った。
 バックステップで華麗に避けるが、私は研究者だ。
 自慢じゃないがインドア派なんだ。
 
 とかなんとか言っているうちに、よく見れば連れてきた五人はしっかりと構えているじゃないか。
 なんだ。
 なかなかに仕事のできる奴らだ。
 
 よし、いい位置。
 線上にきっちり立っている。
 風もない。
 遮蔽物もない。

 ニヤリと笑みが漏れる。

 さて、お立会い。

「マスケッティア隊!撃て!」

 合図と共に、自分の耳を塞ぐ。
 少年の頭は抱きかかえるように胸に押し付け、間違っても跳弾や誤射が当たらないようにする。

 瞬間。
 轟音。
 そして、炸裂する魔物。
 まるで中から爆発したようにえぐられた傷跡。
 どくどくと流れ出る血。
 声もなく魔物はどさりと倒れ込んだ。
 
 それを見て、私は思わず叫んだ。
 
「ひゃっはああああああ!成功!成功!私ってば天才じゃん!?」
「総員次弾装填!構え!……マティウス卿!まだいるんですから、下がってください!当たりますよ!」

 なんだかごつい奴がなんか言ってる。
 そんなこと知ったこっちゃないと思いつつ、言う通りに下がっていく。
 無論、少年を抱えながら。
 少年はなにが起こったのかわからないようで、目をぱちくりさせながら倒れていく魔物たちを見ていた。
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