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第一章 少年は旅立つ
19.正気と狂気2
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「あ、あの、宿屋の裏手側にある物置小屋に逃げ延びた人がいます。友達もそこに……」
レヴィさんの言っていることに理解が追いつかない。
けれど、なんとなくここで言って置かなければいけない気がした。
おどおどとして言う僕をレヴィさんは優しく撫でる。
レヴィさんに蹴られて派手にすっ転んでいた大柄な兵士がすぐに地図を取り出す。
「宿屋の裏手側、ここか。なるほど。うん、これは、やりやすいな」
「卿、とりあえず下がりましょう。もう無理です。」
「ああ。ウェダ、一度後ろに下がって本隊と合流するよ」
「は、はい」
気付けば、瓦礫を盾に牽制を行っている兵士たちに疲弊が見える。
あの大きな儀仗のようなものは連続では使えないようで、一度轟音を轟かせると、中折棒のように折り曲げて何かを排出しては詰めていた。
そのときの兵士たちの目は鬼の形相で、いかにもあの瞬間は無防備だと言っているようなものだった。
「斉射の後、後退!……構え、撃て!」
大柄な兵士の号令で、一様に轟音を轟かせる。
そしてレヴィさんは僕の手を引き、先頭を走る。
少し通りを進むと、すぐに本隊と合流できた。
僕は、これでみんな助かると思っていた。
僕の知る限り、このレヴィ・マティウスという女性は王宮努めの偉い人だからだ。
父の友人――というとレヴィさんはすごく怒るけど、父のことを訪ねてくる友人の中では一番レヴィさんが気安くて、父はそれを鬱陶しそうにするけれど、レヴィさんが来た日は決まって滅多に飲まないお酒を二人で飲んでいた。
あの勇者、ジェダ・イスカリオテと二人きりで酒が飲める関係、というのはいくら僕でもレヴィさんが只者ではないことに気づかせてくれた。
僕に魔法の基礎を叩き込んでくれたのもレヴィさんだ。
――魔法の呪文を構成する言葉には意味がある。
集中するため、その効果を定めるため、それぞれが一言一句意味がある。
言葉を読み解くことが第一段階。
言葉の通りに持っていくことが第二段階。
レヴィさんのこの言葉のおかげで、僕は魔法を使えるようになった。
日頃から言葉を読み解くことをするようになった。
父が僕に授業をすること、それが特別で、父が人にとって特別な存在なのならば、レヴィ・マティウスだってまた人にとって特別な存在。
だから、僕は安心仕切っていた。
もう大丈夫。
彼女が来てくれたなら、もう大丈夫。
隠れているドリーたちも助かる。
いっぱい人が死んだけど、これ以上はもう死なない。
さっきの轟音の儀仗だってある。
きっと、大丈夫。
そんな期待と安心は通りを抜けて、本隊の様子をいち早く観察したレヴィさんの一言に寄って崩された。
「ははは、こりゃあ……いよいよまずいなあ」
苦笑いをしながら言うレヴィさんの目はまだ諦めてはいない。
レヴィさんの言っていることに理解が追いつかない。
けれど、なんとなくここで言って置かなければいけない気がした。
おどおどとして言う僕をレヴィさんは優しく撫でる。
レヴィさんに蹴られて派手にすっ転んでいた大柄な兵士がすぐに地図を取り出す。
「宿屋の裏手側、ここか。なるほど。うん、これは、やりやすいな」
「卿、とりあえず下がりましょう。もう無理です。」
「ああ。ウェダ、一度後ろに下がって本隊と合流するよ」
「は、はい」
気付けば、瓦礫を盾に牽制を行っている兵士たちに疲弊が見える。
あの大きな儀仗のようなものは連続では使えないようで、一度轟音を轟かせると、中折棒のように折り曲げて何かを排出しては詰めていた。
そのときの兵士たちの目は鬼の形相で、いかにもあの瞬間は無防備だと言っているようなものだった。
「斉射の後、後退!……構え、撃て!」
大柄な兵士の号令で、一様に轟音を轟かせる。
そしてレヴィさんは僕の手を引き、先頭を走る。
少し通りを進むと、すぐに本隊と合流できた。
僕は、これでみんな助かると思っていた。
僕の知る限り、このレヴィ・マティウスという女性は王宮努めの偉い人だからだ。
父の友人――というとレヴィさんはすごく怒るけど、父のことを訪ねてくる友人の中では一番レヴィさんが気安くて、父はそれを鬱陶しそうにするけれど、レヴィさんが来た日は決まって滅多に飲まないお酒を二人で飲んでいた。
あの勇者、ジェダ・イスカリオテと二人きりで酒が飲める関係、というのはいくら僕でもレヴィさんが只者ではないことに気づかせてくれた。
僕に魔法の基礎を叩き込んでくれたのもレヴィさんだ。
――魔法の呪文を構成する言葉には意味がある。
集中するため、その効果を定めるため、それぞれが一言一句意味がある。
言葉を読み解くことが第一段階。
言葉の通りに持っていくことが第二段階。
レヴィさんのこの言葉のおかげで、僕は魔法を使えるようになった。
日頃から言葉を読み解くことをするようになった。
父が僕に授業をすること、それが特別で、父が人にとって特別な存在なのならば、レヴィ・マティウスだってまた人にとって特別な存在。
だから、僕は安心仕切っていた。
もう大丈夫。
彼女が来てくれたなら、もう大丈夫。
隠れているドリーたちも助かる。
いっぱい人が死んだけど、これ以上はもう死なない。
さっきの轟音の儀仗だってある。
きっと、大丈夫。
そんな期待と安心は通りを抜けて、本隊の様子をいち早く観察したレヴィさんの一言に寄って崩された。
「ははは、こりゃあ……いよいよまずいなあ」
苦笑いをしながら言うレヴィさんの目はまだ諦めてはいない。
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