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第一章 少年は旅立つ
20.正気と狂気3
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本隊は魔物との激戦の最中にあった。
魔物の数は十や二十では済まない。
轟音の儀仗を持った兵士はほとんどいない。せいぜい一五人だろうか。
前線を支える剣を持った兵士たちは食われ、嬲られ、殺されていく。
そんな状況だったのだろう。
儀仗を持った兵士たちは円形に陣を敷き、それを守るように剣を持つ兵士が盾になる。
なにも遮蔽物のない広い通りでだ。
隙間を縫って、軽装の兵士が四人一組で怪我人を運び入れる。
円形の陣の中心には生き延びた里の人々が集まっている。
兵士たちは応急処置をして、また飛び出る。
里の入り口から大通り沿いにずっとこうやって少しづつ移動してきたのだろう。
陣を敷きながら。
それは当初、救出作戦としては理にかなっていたのかもしれない。
だが、問題は敵の数だ。
魔物の数が多すぎる。
兵士たちの中には自暴自棄になって鬨の声をあげながら突撃するものもいる。
焦りを通り越して、恐怖に駆られている。
それが、僕の目から見ても明らかだった。
「えっと、君、名前はなんだっけ」
レヴィさんは、大きく深呼吸すると大柄な兵士に声をかける。
その間も魔物たちはどんどん本隊に集中していく。
「ギュンターといいます」
「ふむ、ギュンター。合流後、指揮を君に任せる。私は隊の士気を上げる。いいね?」
そう言って、レヴィさんはまた僕の頭を撫でた。
「ははあ、なるほど。拝命いたしました」
大柄な兵士――ギュンターさんは言いながら自らのもじゃもじゃの顎髭を撫でた。
「賢い人は好きだよ」
「卿のお気に入りは大変そうですのでごめんですなあ」
ニコリと優しく微笑むレヴィさんと軽口で返すギュンターさん。
わからないけれど、二人で何かが通じ合ったのだろう。
「ウェダ、君は隊の中心まで私と一緒に走る。合流したら、さっき言った通り、君の名前と立場を借りる。転ばないでくれよ?」
「はい!」
返事にうんうんと頷くと、レヴィさんは僕の手を取り走り出す。
「総員!!援護!!」
レヴィさんのハスキーボイスが響き渡る。
彼女の聴き取りやすい声は、きっちりと本隊にも届いたようだ。
同時に魔物たちにも届いたようで、注目ば僕たちに集まる。
それを知ってか知らずか僕たちは走り出す。
轟音がいたるところから鳴り響く。
僕たちと本隊の間に入った魔物を、剣の兵士たちが無理やりどかす。
そしてすぐに僕たちは本隊と合流できた。
「陣形そのまま!貴様ら、よくやった!今から指揮はこのギュンター・ファルネスが取る!」
ギュンターさんが声を張る。
彼の低い腹に響く声は、なんとなく周囲を落ち着かせているようだった。
そのまま陣形の中心へと進む。
陣形の中心では怪我人や老人が集まり、腕や足がない人や、もう意識がない人で溢れていた。
見知った里の人もたくさんいて、一様にこの中性的で美形な女性に手を引かれついていく僕を見ていた。
その視線が怖くて、僕はただ俯いて黙っていた。
魔物の数は十や二十では済まない。
轟音の儀仗を持った兵士はほとんどいない。せいぜい一五人だろうか。
前線を支える剣を持った兵士たちは食われ、嬲られ、殺されていく。
そんな状況だったのだろう。
儀仗を持った兵士たちは円形に陣を敷き、それを守るように剣を持つ兵士が盾になる。
なにも遮蔽物のない広い通りでだ。
隙間を縫って、軽装の兵士が四人一組で怪我人を運び入れる。
円形の陣の中心には生き延びた里の人々が集まっている。
兵士たちは応急処置をして、また飛び出る。
里の入り口から大通り沿いにずっとこうやって少しづつ移動してきたのだろう。
陣を敷きながら。
それは当初、救出作戦としては理にかなっていたのかもしれない。
だが、問題は敵の数だ。
魔物の数が多すぎる。
兵士たちの中には自暴自棄になって鬨の声をあげながら突撃するものもいる。
焦りを通り越して、恐怖に駆られている。
それが、僕の目から見ても明らかだった。
「えっと、君、名前はなんだっけ」
レヴィさんは、大きく深呼吸すると大柄な兵士に声をかける。
その間も魔物たちはどんどん本隊に集中していく。
「ギュンターといいます」
「ふむ、ギュンター。合流後、指揮を君に任せる。私は隊の士気を上げる。いいね?」
そう言って、レヴィさんはまた僕の頭を撫でた。
「ははあ、なるほど。拝命いたしました」
大柄な兵士――ギュンターさんは言いながら自らのもじゃもじゃの顎髭を撫でた。
「賢い人は好きだよ」
「卿のお気に入りは大変そうですのでごめんですなあ」
ニコリと優しく微笑むレヴィさんと軽口で返すギュンターさん。
わからないけれど、二人で何かが通じ合ったのだろう。
「ウェダ、君は隊の中心まで私と一緒に走る。合流したら、さっき言った通り、君の名前と立場を借りる。転ばないでくれよ?」
「はい!」
返事にうんうんと頷くと、レヴィさんは僕の手を取り走り出す。
「総員!!援護!!」
レヴィさんのハスキーボイスが響き渡る。
彼女の聴き取りやすい声は、きっちりと本隊にも届いたようだ。
同時に魔物たちにも届いたようで、注目ば僕たちに集まる。
それを知ってか知らずか僕たちは走り出す。
轟音がいたるところから鳴り響く。
僕たちと本隊の間に入った魔物を、剣の兵士たちが無理やりどかす。
そしてすぐに僕たちは本隊と合流できた。
「陣形そのまま!貴様ら、よくやった!今から指揮はこのギュンター・ファルネスが取る!」
ギュンターさんが声を張る。
彼の低い腹に響く声は、なんとなく周囲を落ち着かせているようだった。
そのまま陣形の中心へと進む。
陣形の中心では怪我人や老人が集まり、腕や足がない人や、もう意識がない人で溢れていた。
見知った里の人もたくさんいて、一様にこの中性的で美形な女性に手を引かれついていく僕を見ていた。
その視線が怖くて、僕はただ俯いて黙っていた。
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