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第一章 少年は旅立つ
21.正気と狂気4
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「総員、マティウス卿の言葉を聞け!戦闘中のものには後ろから声を掛けよ!教えてやれ!協力を忘れるな!貴様らは一人ではない!」
ギュンターさんの声に、レヴィさんに注目が集まる。
どこから持ってきたのか大きな木箱が用意され、そこにレヴィさんがあがる。
そして、僕の手をひっぱり強引に隣に立たせ、うやうやしく頭を下げる。
貴族の礼だ。
「レヴィさん!?」
「いいから、そのまま」
棒立ちで驚く僕を静止して、レヴィさんは綺麗で優雅な礼をしっかりたっぷりと十秒はかけて行う。
腰を落とし、右手は胸に。
左手でローブを摘み、広げる。
目は優しく閉じて、口元には笑みを浮かべる。
その所作は、レヴィ・マティウスという人間を知らないものから見ても、その人が高貴な存在であることをわからせた。
周囲はそれを息を呑んで見守っていた。
その間も、轟音と剣戟は絶えない。
ゆっくりとひとりひとりの顔を見渡すように、レヴィさんは辺りを見渡す。
落ち着いたその柔らかな微笑みに、皆一様に息を呑む。
そして、レヴィさんの演説が始まった。
「諸君、よく戦いに耐えている。これだけの村民を守り、救った。私は君たちが誇らしい」
風の魔法だ。
いつの間に唱えたのか、レヴィさんの声は風に乗って耳元でしっかりと心に染み渡るように響く。
「村民の諸君!よくぞ生き残った。その命は我々が守る。と、いっても見たように諸君ら、戦いの素人が見てもわかるように我々は劣勢だ」
ざわざわと騒ぎ立つ。
「しかし!彼を見てほしい!」
レヴィさんは僕の肩を抱く。
「彼はかの有名な英雄。勇者。ジェダ・イスカリオテの息子、ウェダ・イスカリオテである!我々はかの英雄の子息を救うことに成功した!」
ざわめきが強くなる。
僕は、ただ怯えていた。
兵士たちは少し色めきだったようだった。
里の人は、だからどうした、という目で僕を見ていた。
「彼は、いまだ未熟な子どもだ!しかし、安心してほしい。彼の能力はあの勇者、ジェダ・イスカリオテに匹敵する!この私、勇者の友人であるレヴィ・マティウスが保証しよう!なぜなら、我々が子息、ウェダを救ったといったが事実、私たちは彼に救われたのだ!」
レヴィさんは、なにを言っているんだ。
僕は救ってなんかいない。
ただ怯えて、絶望していただけだ。
「今、まさに、諸君らにその力を分け与える!ウェダ・イスカリオテが示す奇跡を見よ!」
注目が僕に集まる。
僕にはなにもできない。
レヴィさんは一体、なにを――
「言葉の通りに繰り返して」
耳元でレヴィさんの声が聞こえた。
顔を見上げると、レヴィさんは微笑み、ゆっくりと頷いた。
「できるだけ落ち着いて、まあ叫んじゃってもいいけど」
風の魔法だ。
僕にだけ聞こえるように操っているらしい。
僕は、こくりと頷いた。
ギュンターさんの声に、レヴィさんに注目が集まる。
どこから持ってきたのか大きな木箱が用意され、そこにレヴィさんがあがる。
そして、僕の手をひっぱり強引に隣に立たせ、うやうやしく頭を下げる。
貴族の礼だ。
「レヴィさん!?」
「いいから、そのまま」
棒立ちで驚く僕を静止して、レヴィさんは綺麗で優雅な礼をしっかりたっぷりと十秒はかけて行う。
腰を落とし、右手は胸に。
左手でローブを摘み、広げる。
目は優しく閉じて、口元には笑みを浮かべる。
その所作は、レヴィ・マティウスという人間を知らないものから見ても、その人が高貴な存在であることをわからせた。
周囲はそれを息を呑んで見守っていた。
その間も、轟音と剣戟は絶えない。
ゆっくりとひとりひとりの顔を見渡すように、レヴィさんは辺りを見渡す。
落ち着いたその柔らかな微笑みに、皆一様に息を呑む。
そして、レヴィさんの演説が始まった。
「諸君、よく戦いに耐えている。これだけの村民を守り、救った。私は君たちが誇らしい」
風の魔法だ。
いつの間に唱えたのか、レヴィさんの声は風に乗って耳元でしっかりと心に染み渡るように響く。
「村民の諸君!よくぞ生き残った。その命は我々が守る。と、いっても見たように諸君ら、戦いの素人が見てもわかるように我々は劣勢だ」
ざわざわと騒ぎ立つ。
「しかし!彼を見てほしい!」
レヴィさんは僕の肩を抱く。
「彼はかの有名な英雄。勇者。ジェダ・イスカリオテの息子、ウェダ・イスカリオテである!我々はかの英雄の子息を救うことに成功した!」
ざわめきが強くなる。
僕は、ただ怯えていた。
兵士たちは少し色めきだったようだった。
里の人は、だからどうした、という目で僕を見ていた。
「彼は、いまだ未熟な子どもだ!しかし、安心してほしい。彼の能力はあの勇者、ジェダ・イスカリオテに匹敵する!この私、勇者の友人であるレヴィ・マティウスが保証しよう!なぜなら、我々が子息、ウェダを救ったといったが事実、私たちは彼に救われたのだ!」
レヴィさんは、なにを言っているんだ。
僕は救ってなんかいない。
ただ怯えて、絶望していただけだ。
「今、まさに、諸君らにその力を分け与える!ウェダ・イスカリオテが示す奇跡を見よ!」
注目が僕に集まる。
僕にはなにもできない。
レヴィさんは一体、なにを――
「言葉の通りに繰り返して」
耳元でレヴィさんの声が聞こえた。
顔を見上げると、レヴィさんは微笑み、ゆっくりと頷いた。
「できるだけ落ち着いて、まあ叫んじゃってもいいけど」
風の魔法だ。
僕にだけ聞こえるように操っているらしい。
僕は、こくりと頷いた。
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