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第九章
騎士団、強襲 1
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カルディナの街からの帰路、何度か叔父に電話してみたが、やはり繋がらない。
帰宅予定は明日。さすがにまだ通話圏内へは至っていないようだ。
普段より2割増しくらいの速度で、疾風丸を疾走させる。
視界に怪しい影はないが、尾行の用心のためだ。当然、普段とは通るルートも変えている。
ただ今の時速は80キロ。
瞬発的な速度ならまだしも、十数キロもの道のりで、しかも悪路だけに、この速度を維持して追走できる馬もいないだろう。
あのベルデン騎士団の副団長が、なんの目的を持って勇者である叔父に接触しようとしているのかわからない。
叔父に危害――は不可能だろう。だが、家族に手を出す危険性は否めない。
そしそうなったら、考えるだけで恐ろしい。
連中は、叔父の深すぎる家族愛など露ほども知らないはず。
自衛できるリィズさんはともかく、リオちゃんに傷でも負わせようものなら――血の雨が降る。
言葉の綾ではなく、文字通り現実に。
緊張しながら帰宅したが、拍子抜けするほど呆気なく、家に着いてしまった。
叔父はまだ帰っていなかったが、出迎えてくれたリィズさんとリオちゃんの様子も至って普通で、危険のきの字もなかった。
以前に叔父から聞いた話だが、リィズさんの獣人としての危機察知能力は同族の中でも折り紙付きで、音や気配――特に悪意や敵意の類は、仮に数キロの距離を隔てていても敏感に察せるらしい。
むしろ、遭遇戦の頻発する戦時下では、そんな能力がないと生き残るのは難しかったとか。
かつての獣人隊では高い戦闘力の他にもその秀逸な能力を買われて、小隊長に抜擢されていたという。
そのリィズさんがリラックスしているということは、平穏の証でもある。
俺も昼間から張りっ放しだった気を、ようやく緩めることができた。
その夜はいつも通りにリィズさんの夕飯を食べ、遅くまでリオちゃんと遊んだ。
念のため、叔父のスマホには、返信機能つきのメールを送っている。
叔父が神域の森に近づいてスマホが電波を拾えば、そのメールを受信した確認の自動メールが返信されてくる仕組みだ。
その着信音で、いち早く叔父の帰宅を知ることができる。
電波の受信許容距離は、神域の森を中心に電話で2キロ、メールでどうにか4キロといったところだ。
送受信量の少ないテキストが遠くまで届くのは、以前に春香と試して実証済。
4キロの距離は、叔父の足で徒歩で30分ほど。たった30分でも、この状況なら早いに越したことはない。
深夜まで起きてはいたが、残念ながらその夜はスマホが鳴ることはなかった。
俺は枕元にスマホを置いて、床に着くことにした。
翌朝。いつもの目覚ましとは違う電子音で目が覚めた。
「うう~ん、メール……? …………あっ、メール!」
寝ぼけた頭に活を入れる。
急いで枕元のスマホを見ると時刻は6:40。
メール着信1件となっていた。
送信先は、叔父の持つスマホからの自動返信メールで間違いない。
7時過ぎ頃には、ようやく叔父が帰ってくる。
今から起きて、朝の用意をすれば時間的にはちょうどいいだろう。
何事もなく朝を迎えることができた。これでまずは一安心。
手早く寝巻きを脱ぎ、着替えを終えたちょうどそのとき。
とんとんっ。
ドアがノックされた。
今この家の中でノックをするのは、リィズさんしかいない。
いつもならリィズさんが起きて、朝食の支度を始めようかとする時間帯だ。
台所は俺の部屋とは反対側だけに、普段このタイミングで部屋を訪れられたことはない。
(もしかして、朝っぱらからのメールの電子音がうるさかったかな?)
特に深くは考えずに部屋のドアに近づくと、開けるのを待たずに、リィズさんの声が聞こえてきた。
「起きてますね? アキトさん。街の方角から、100近い多数の足音が近づいてきています。速度的にも馬でしょう。もう10分もすると、ここまでやって来ます。わたしは先に出ていますから、アキトさんもリオを連れて玄関外に」
緊迫した声で手短に告げられ、リィズさんの気配がドアの向こうから消えた。
額から、どっと汗が吹きでる。
現状で馬を駆る集団となると、ベルデン騎士団以外ありえない。
叔父が近くまで戻っているのが救いだが、30分-10分=20分だ。
叔父が戻るまでの20分もあれば、なにが起こってもおかしくない。
昨夜までは、『たった』30分。今では20分『も』だ。なんて皮肉なのだろう。
慌てて部屋から出ると、廊下をピンク色のパジャマ姿のままで、リオちゃんがよたよたと歩いていた。
おやすみの友のぬいぐるみを引きずりながら、寝ぼけ眼をこすり、大欠伸をしている。
「あ~……にーたん、おあよ~……」
おそらく、今の今まで寝ていたところをリィズさんに起こされた直後だろう。
毛並みは獣人の命らしく、いつも寝起きには真っ先にリィズさんが整えているのだが、今のリオちゃんの髪は寝癖だらけで獣耳もはねる髪に埋もれており、尻尾に至っては寝癖で体積が3倍増くらいになっている。
ただ今は、悠長にしている暇もなく――俺は多少強引ながらもリオちゃんを小脇に抱え、玄関向けて走り出した。
帰宅予定は明日。さすがにまだ通話圏内へは至っていないようだ。
普段より2割増しくらいの速度で、疾風丸を疾走させる。
視界に怪しい影はないが、尾行の用心のためだ。当然、普段とは通るルートも変えている。
ただ今の時速は80キロ。
瞬発的な速度ならまだしも、十数キロもの道のりで、しかも悪路だけに、この速度を維持して追走できる馬もいないだろう。
あのベルデン騎士団の副団長が、なんの目的を持って勇者である叔父に接触しようとしているのかわからない。
叔父に危害――は不可能だろう。だが、家族に手を出す危険性は否めない。
そしそうなったら、考えるだけで恐ろしい。
連中は、叔父の深すぎる家族愛など露ほども知らないはず。
自衛できるリィズさんはともかく、リオちゃんに傷でも負わせようものなら――血の雨が降る。
言葉の綾ではなく、文字通り現実に。
緊張しながら帰宅したが、拍子抜けするほど呆気なく、家に着いてしまった。
叔父はまだ帰っていなかったが、出迎えてくれたリィズさんとリオちゃんの様子も至って普通で、危険のきの字もなかった。
以前に叔父から聞いた話だが、リィズさんの獣人としての危機察知能力は同族の中でも折り紙付きで、音や気配――特に悪意や敵意の類は、仮に数キロの距離を隔てていても敏感に察せるらしい。
むしろ、遭遇戦の頻発する戦時下では、そんな能力がないと生き残るのは難しかったとか。
かつての獣人隊では高い戦闘力の他にもその秀逸な能力を買われて、小隊長に抜擢されていたという。
そのリィズさんがリラックスしているということは、平穏の証でもある。
俺も昼間から張りっ放しだった気を、ようやく緩めることができた。
その夜はいつも通りにリィズさんの夕飯を食べ、遅くまでリオちゃんと遊んだ。
念のため、叔父のスマホには、返信機能つきのメールを送っている。
叔父が神域の森に近づいてスマホが電波を拾えば、そのメールを受信した確認の自動メールが返信されてくる仕組みだ。
その着信音で、いち早く叔父の帰宅を知ることができる。
電波の受信許容距離は、神域の森を中心に電話で2キロ、メールでどうにか4キロといったところだ。
送受信量の少ないテキストが遠くまで届くのは、以前に春香と試して実証済。
4キロの距離は、叔父の足で徒歩で30分ほど。たった30分でも、この状況なら早いに越したことはない。
深夜まで起きてはいたが、残念ながらその夜はスマホが鳴ることはなかった。
俺は枕元にスマホを置いて、床に着くことにした。
翌朝。いつもの目覚ましとは違う電子音で目が覚めた。
「うう~ん、メール……? …………あっ、メール!」
寝ぼけた頭に活を入れる。
急いで枕元のスマホを見ると時刻は6:40。
メール着信1件となっていた。
送信先は、叔父の持つスマホからの自動返信メールで間違いない。
7時過ぎ頃には、ようやく叔父が帰ってくる。
今から起きて、朝の用意をすれば時間的にはちょうどいいだろう。
何事もなく朝を迎えることができた。これでまずは一安心。
手早く寝巻きを脱ぎ、着替えを終えたちょうどそのとき。
とんとんっ。
ドアがノックされた。
今この家の中でノックをするのは、リィズさんしかいない。
いつもならリィズさんが起きて、朝食の支度を始めようかとする時間帯だ。
台所は俺の部屋とは反対側だけに、普段このタイミングで部屋を訪れられたことはない。
(もしかして、朝っぱらからのメールの電子音がうるさかったかな?)
特に深くは考えずに部屋のドアに近づくと、開けるのを待たずに、リィズさんの声が聞こえてきた。
「起きてますね? アキトさん。街の方角から、100近い多数の足音が近づいてきています。速度的にも馬でしょう。もう10分もすると、ここまでやって来ます。わたしは先に出ていますから、アキトさんもリオを連れて玄関外に」
緊迫した声で手短に告げられ、リィズさんの気配がドアの向こうから消えた。
額から、どっと汗が吹きでる。
現状で馬を駆る集団となると、ベルデン騎士団以外ありえない。
叔父が近くまで戻っているのが救いだが、30分-10分=20分だ。
叔父が戻るまでの20分もあれば、なにが起こってもおかしくない。
昨夜までは、『たった』30分。今では20分『も』だ。なんて皮肉なのだろう。
慌てて部屋から出ると、廊下をピンク色のパジャマ姿のままで、リオちゃんがよたよたと歩いていた。
おやすみの友のぬいぐるみを引きずりながら、寝ぼけ眼をこすり、大欠伸をしている。
「あ~……にーたん、おあよ~……」
おそらく、今の今まで寝ていたところをリィズさんに起こされた直後だろう。
毛並みは獣人の命らしく、いつも寝起きには真っ先にリィズさんが整えているのだが、今のリオちゃんの髪は寝癖だらけで獣耳もはねる髪に埋もれており、尻尾に至っては寝癖で体積が3倍増くらいになっている。
ただ今は、悠長にしている暇もなく――俺は多少強引ながらもリオちゃんを小脇に抱え、玄関向けて走り出した。
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