大阪ディープサウスまほろば食堂始末記 /黎明にカムイ先生奮闘す、trapちゃんがアシスト

二市アキラ(フタツシ アキラ)

文字の大きさ
28 / 36
第5章 侵犯

28: 待望の日

しおりを挟む
    そして、とうとう、恭司が待ちわびていた日がやってきた。 
 恭司が待ち望んだ日であったが、同時にそれはどこかおそろしい日でもあった。
 恭司にとっては、まったくの未体験のゾーンに突入することになるので期待と不安が交錯し、その日は朝から心ここにあらずといった状態だった。 

 出席日数を稼ぐために、いや気を紛らわすために行った学校を終えて、いそいそと『蠱惑』に行きブレザーを脱ぎ捨てる。
 胸に乳房パッドを当ててから、超ミニ丈のドレスを着る。
 脚や腋の無駄毛は、朝のうちにすっかりきれいに剃り落としてある。
 髪の毛を伸ばしはじめたとはいえ、まだまだウィグは必要だ。
 恭司は明るいブラウン色のウィッグをつけた。 

 今日はストッキングは穿かずに生脚に踵の高いシルバーのサンダルを履く。
 足の爪には赤いペディキュア。
 濃い目にメイクを仕上げて、王を待つ。 
 心臓がバクバクしている。
 いよいよだ……。 

「キョウちゃん、脚がきれいよね」 
「あ、ありがとうございます……」 
 落ち着きなく座っている恭司に宛ママが声をかけてくれる。 

「ほんと男の脚って感じじゃないわよ。筋肉は目立たないし、足首なんか、きゅっって締まっててセクシーよ」 
 恭司は体育系の人間ではないので、脚に分厚い筋肉がつくような運動は何ひとつしてこなかった。
 生白い脚だと思っていたが、こうして女装すると、けっこう女っぽく見えたりするのが嬉しい。 

 そしてこんな短い裾だと、ほとんどパンティが丸見えだ。
 学生服のブレザー姿から着替えるとよくわかるが下肢がひどく無防備になってしまう。
 恭司は知らず知らずのうちに太腿をぴっちりと閉じ合わせていた。 

「それで、今度はなんとか受け入れられそう?」 
「さあ……、わかりませんけど」 
 恭司は、今自分が人生を大きく左右するであろう分岐点にいるのがわかっていた。 


 暫くして王が現れたとき、恭司の緊張は極限に達した。 
 どのような顔で王を迎えてよいのかわからず、恭司は顔面を強張らせた。 
 王は恭司を認めるなり、顔をほころばせた。
 その笑顔を、恭司は、とても素敵だと思った。
 自分はこれを待っていたのだとも思った。

 そして、王は、恭司を安心させるように、二度、三度と頷く。 
 恭司は、何か言わねばならない、と口を開きかけたが言葉は出てこなかった。
 先日はすいませんでした……、王さんに気に入ってもらえるように努力します……、とか何とか言うべきだと思ったのだが、もごもごと呟きが洩れただけだった。 

 いきなり、「さあ、行こうか」と王に言われ、恭司は立ち上がった。 
 『蠱惑』を出て、王の運転するメルセデスの助手席に乗り込む。 
 たとえば、「きれいだよ」と恭司の女装姿を褒めてくれるとか、仕事の都合で連絡できなかったことを詫びるとか、王はそういう余計なことを一切しゃべらなかった。

 女装してキョウになった恭司が、助手席に座っているのが当然であり、キョウは王に従属するのが当然であり……という雰囲気があって、恭司は不思議なことに、そんな空間に自分の居場所を見つけたような気分になっていた。 

 夜の街のネオンや街灯に、ステアリングを握る王の姿が浮かび上がる。
 そんな彼をじっと見つめるわけにもいかないので、恭司は、ちらちらと王を盗み見た。
 おそらくはさり気に高価なクリームイエローのポロシャツにコットンパンツというカジュアルな出で立ちが、恰幅のよい体躯にとても似合っていた。 

 車は、とある高層マンションの地下駐車場に入った。 
 こんな超ミニで、人通りの多いところを歩かされたりしたら羞ずかしいな、と思っていたので、恭司はちょっとひと安心した。 

 車から降りてエレベーターに乗る。
 人の気配は無い。 
 20階だが21階だかのその部屋に入ってはじめて、恭司は、今日はラブホテルを使うのではない、と気付いた。
 すると、ここは王の住まいなのか……。 

 恭司は入室の際、玄関でストラップで止めるタイプの赤いハイヒールがあるのを発見した。 
 誰なのだろう? 王の奥さん……? 愛人……?  
 恭司の胸中は千々に乱れた。 
 玄関口にもリビングルームにも、必要最低限の家具類が置かれているだけで、生活臭がまったく感じられない。 

 ベッドルームに連れて行かれて、恭司は仰天した。 
 広々とした寝室のキングサイズのベッドの上に、あの紅花がいたのだ。 
 紅花は、赤いストッキングを赤いガーターサスペンダーで留め、ベッドの上で俯せにされ臀部を掲げさせられていた。
 両手首は背中で拘束され、肩と顎で上体を支えている。 
 そんな格好で、紅花は自分のものを勃起させていた。 


 ベッドから少し離れて、ソファーが設置されている。
 そのソファーに座ると、ベッドで行われている事がよく見える。 
 紅花の痴態を目にして、立っていられないぐらいに胸苦しくなった恭司の肩を抱くようにして、王が恭司をソファに座らせてくれた。 

 ソファの前には小ぶりのローテーブルが置かれ、ウィスキーのボトル、タンブラー、アイスバケット、灰皿などが載っている。
 氷は溶けつつあり、灰皿には煙草の吸い殻が積もっている。
 フィルターに真っ赤な口紅の付着した吸い殻もある。 

 ……ということは、王は紅花との淫靡なプレイを中断して、恭司を迎えに来たということなのか……。
 そして、このプレイは中断したのではなくて、放置プレイだったのかもしれない。 

 「どうだ、びっくりしたか?」と訊かれていたら、恭司は「はい、驚いてます」と答えただろう。
 だが、王は何も言わずに、ただ恭司が驚いている様子を眺めている。 
 予期せぬ展開に、恭司はただ呆然となるばかりだった。 

 王の存在よりも、ベッドの上の紅花のほうが気になる。
 恭司の視線は、否応なく紅花に吸い寄せられた。 
 よく見ると、赤いストッキングを穿いた紅花の両足首は黒い細い革ベルトで縛られている。
 更にその両足首は、短い竿のような棒に繋がれている。
 つまり、紅花は双脚を閉じられないように束縛されているのだ。 
 うんうんと、低い声の紅花の喘ぎ声が、断続的に洩れ続けている。

 明るい栗色の髪に被われてしまっているので、紅花の表情はわからない。
 恭司の視線は、紅花の股間に釘付けになる。
 とても男の臀部とは思えない白い豊麗な臀丘、むっちりとした太腿は鮮烈な緋色のストッキングに包まれ、太腿の付け根からは興奮している男性器の様子が見えた。 

 自分のものを折り畳んでパンティにくるみこんで股間に収納していた恭司だったが、紅花の姿にそれが反応するのを抑えられない。 
 さらに、咽がカラカラになり、恭司は生唾を呑みこんだ。
 
 王がタンブラーに琥珀色の液体を注ぎ、形の崩れかけたアイスキューブを放りこむ。
 そして、ウィスキーをひと口、飲んだ。
 もうひと口、口に含んだかと思うと、恭司の顔の上におおいかぶさってきた。 

 顎先を指で押し上げられ、口唇が重ねられた。
 ただのキスではなく、ウィスキーを口うつしで飲まされる。
 咽を灼くようなきついアルコールが胃に流れてゆき、恭司の全身が、カッ、と火照ってくる。 
 王は何度も口うつしでウィスキーを飲ませてくれた。
 恭司は甘えるように舌をからめてディープキスを貪った。 

「あっ、いや……」 
 王の手が下腹部に伸びてきて興奮した恭司の股間をまさぐりはじめた。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件

こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。 ・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。 ・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。 ・物静かで儚げな美術部員。 ・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。 ・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。 拓海の生活はどうなるのか!?

God Buddy

燎 空綺羅
キャラ文芸
アメリカ合衆国、ミズーリ州コロンビアを舞台に、ゾロアスター教の2神の生まれ変わりである少年たちが、仲間たちと共に、市民を守る為に戦いを繰り広げる物語。 怒りと憎しみを乗り越えられるのか? 愛する人を救えるのか? 16歳のオーエン・テイラーは、悩み、苦しみ、運命に抗いながら、前へと進んでゆく。 過ちを抱えながらも、歩むしかない。 この物語は、オーエン・テイラーの、成長の軌跡である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

不可思議カフェ百鬼夜行は満員御礼

一花カナウ
キャラ文芸
【キャラ文芸大賞に参加中】 カフェ百鬼夜行に集まるのは不可思議な噂や奇妙な身の上話。 呑気な店長・百目鬼(どうめき)と、なりゆきで働くことになった俺・獅子野王(ししの・おう)はお客のあれこれに巻き込まれながら、ゆるゆると日々を送る。 ※カクヨム、ノベルアップ+、pixivにて先行公開中

処理中です...