魔術師長様はご機嫌ななめ

鷹月 檻

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第一章

2嘆く創造神アズライルとベテル

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 そこは白い大理石のような石で出来た少し広めの円形の東屋みたいな所だった。
柱の向こうに緑や花が咲き乱れているのが見える。
天井には空と天使の絵が描かれている。
私がまだぽや~っとしてると目の前にいる超絶金髪美女が私に話しかけてきた。

「初めまして、わたくしは地球の創造神ベテルといいます。ようこそ白空はくくう宮殿へ」


 その人はそう言って私に抱きついてきた。
古代ギリシャの人達が着ていたようなドリス式キトンを身に纏い、ウエストには真紅の細帯を巻いている。薄い布越しに豊満な体がはちきれそうに自己主張していた。

 むちむちとしたおっぱいが、ぐにぐにと私の体に当たる。
……まぁ同性だからいいんだけど、圧迫するようなものの無い私の胸が寂しい。
私を抱きしめて満足したのか、そのベテル様の薄青い瞳から喜びの笑みが見える。ゴホンと左から咳払いが聞こえ、そちらに視線を向けると煌く様な金髪に透き通った翡翠のような瞳をした超絶イケメンが立っていた。

「我は名も無き惑星の創造神アズライル。今日はベテルと共にそなたに詫びに参った」

 そのアズライル様の服は白くて裾の長い牧師服のようなイメージで肩には真紅の布をマントのように肩に巻きつけている。
神様に詫びてもらう事なんかないのに? と思うとアズライル様は語りだした。

「……そなたの両親が亡くなったのは我とベテルの諍いの波動によるものが原因だ。そもそも我等が言い争っていなければ、あの悲惨な事故の中でも、奇跡的に助かるはずの二人であった。我もベテルもそなたが亡くなるまで、その後のそなたの生活があんなにも過酷な状況だと知らなかったのだ。すまぬ……」

 アズライル様は私の両手を取って包むように握って頭を垂れた。
ベテル様が続けて言った。

「わたくしは地球の創造神なので、人の子が亡くなるとその子達の過去の【歴史書】が届くのです。今回あなたの歴史書を見て愕然としました。本来なら幸福な未来が訪れるはずだったのに、寄る辺も無く過酷な道に身を置き、それでも光を忘れずに苦難を乗り越える力を得たあなた。わたくし達はあなたに申し訳なくて……」

 ベテル様の目から一粒の雫がぽとりと垂れ床に落ちる瞬間にカツンと硬質な音を立てた。涙はダイヤに変わっていた。

 私のために泣いてくれるなんて、なんていい神様なんだろう! 正直、両親のことは亡くなったその時にちゃんと悲しんだ。だから、私の中ではあの悲しみは昇華されてるし、長年嫌だった叔父夫婦の家ももう出てしまったので、あの家族に心も体も振り回される事はない。そう考えると自分にはベテル様の言ったことは、全て吹っ切れている過去の事なんだと思えるようになっていた。気付かせてくれてありがとう神様。

「ベテル様、私の過去を、肯定してくださってありがとうございます。私、ちゃんとやれてたんですね? 神様は私を見ていてくれてたんですね。私、自分の過去の努力を無駄じゃないと認めてくれる方がいて、今すごく嬉しいです」

 私は笑った、つもりだったけど、なんだか涙がつるりとすべった。これは喜びの涙だ。
アズライル様がベテル様の肩に手を置いて軽く抱き寄せた。そして二人は私を見た後涙ぐみ微笑み合う。

「それで、我等はそなたに侘びと謝礼を含めて、そなたの力になれないかと思い白空宮殿にそなたを呼びつけた。そなたの選ぶ道は3つある。1つ、転生をしないで魂の終焉を迎えて終了。2つ、地球で生まれ変わりを待つ。待ち時間は1万年程。待っている間は浮遊霊となり、エクソシストなど力のある霊能力者に浄化されると魂の終焉を迎える。3つ、まだ名も無きこの惑星、我の治めるアズライルの地で転生する。この地ではすぐ転生できる。そなたはどの道を選ぶ?」

 私は少し考えてみた。転生しないで魂の終焉を迎える。
これってそこで世界が終わっちゃうってことで、これはないな。
2つ目は地球で順番待ち。1万年も順番待ちしてたら世界は滅んでるんじゃない?とか思いつつ、私って運悪いし、鈍臭いから、絶対通りすがりのフリーなエクソシストに(そんなのいるのか?)除霊されて浄化されちゃいそうだ……と思ったら、地球もダメじゃん! って結果になった。

 残ってるのは3つ目のアズライル様の地で転生する。だけど……アズライル様の地ってどんな所なんだろう? 地球以外の惑星で知的生命体がいるって……私、宇宙飛行士よりすごい事になってるんじゃない? とワクワクしてしまった。
ゴホンとアズライル様が咳払いをする。

「わくわくしてる所に申し訳ないのだが、我の大陸はまだ人々が未熟であり犯罪が多い。文明も地球ほど発達しておらん。して、そなたの魂の器となる|魔心核が不足しておる。そなたは良き魂なので、それに釣り合う位の魔心核でなければ転生できぬからな」
「魔心核ってなんですか?」
「そなたの世界でいう所の魂だ。アズライルの地の魔心核の器にそなたの地球での魂を合成する。そうすることによってアズライルの地で生きていける体になる」

 へ~。アズライルの魂と地球での、私の魂を混ぜ合わせるってことかな?

「私の魂も使うってことは私は今の記憶も覚えてるのでしょうか?」
「残そうと思えば残せる。それはそなたが選ぶと良い。しかし、かの地で使う魔心核に少々問題があって、そなたに使うべきかどうかと思っている」
「問題といいますと?」
「我が地は未熟な者が多い。良き魂の者しか転生できぬのはこちらの、アズライルの地でも同じだ。罪人が多すぎるのだ。良き魂でも、事故で死んだものは運命が悪いし、自殺で無くなった者は魔心核が脆い。それを考えると良き魂でありながらも病で亡くなった者の魔心核しか残っていなくてなぁ……」

 とアズライル様は頭を掻いた。

「病で亡くなった者の魔心核は問題があるのですか? その病の者の魔心核を私が得たら、もしかして、その方は転生出来なくなってしまうのでは?」
「問題とはそなたの魂となじむまで少々時間がかかるだけだ。なじむまで身体的にはきついやも知れぬ、体の中心である元が悪いのだから。なじめば普通の体だ。それと、この病の者は転生を拒否した。中にはいるのだ、転生などしたくないと思う者が。その者は魔心核を残して無になる契約を我とした。地球でいうところの『魂の終焉』を迎えたのだ」
「その病の者の魔心核でかまいませんよ? だって少し時間がかかるだけでなじめば普通の体になるなら全然問題ないですから」

 私はにこりと笑った。

 
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