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第一章
4細雪の中で神との邂逅 レイジェス視点
しおりを挟む細雪がしんしんと降り積もる中、私は雪に濡れることも無く天馬に乗っていた。大きな金色に輝く光が天馬ごと私達を包んでいる。きっとこの光のおかげで雪も積もらないし、寒さも感じないんだろうと私は思った。私の後ろにはアズライル様が私のことを落ちないように支えながら天馬の手綱を握りしめていた。
◇◇◆◆◆◇◇◆◆◆◇◇◆◆◆◇◇◆◆◆◇◇
私はレイジェス=アルフォード。24歳独身である。
仕事は王国魔術師団で魔術師長をしている。今は帰宅の途中で私の屋敷の前庭にいた所だった。城へはそう遠くない。いつも徒歩で通っているのだが、今日は雪が降り積もり足元がぬかるむ。フード付きのマントを羽織っているが濡れ防止の魔法も何もかけてないので頭や肩が濡れていて少々気持ちが悪い。さっさと邸宅に入って風呂に浸かりたいと思っていた所に変な位置から声をかけられる。
「プリストン王国の魔術師長、レイジェス=アルフォード!」
はるか上空から私を呼び捨てにする男の声が聞こえ、私はむっとしながら、細雪が降りしきる濁った灰色の空を見上げた。大きな光がこちらにやってきて私は驚いた。光る天馬に乗った輝く男が現れ、その男は天馬から降りて私に言った。
「我はこの地の守護神である創造神アズライル。そなたに我が愛し子、アリア=アズライルを託す。そなたは庇護者となり、我が娘を守るのだ」
不思議な事にその男は光輝いて顔が見えない。腰から下、足元などは見えるのに。
会った事もない、顔も見えないような者にいきなり呼び捨てにされ、その人物に娘を預かれ! 面倒見ろよ! と言われるのだ。
この事態はなんだ? 育児放棄か? これは騎士団案件ではなかろうか……。
私が固まっているのを見て承諾したと思ったのか、自称神は天馬の所に行き、空中からホワイトサーベルの毛皮のマントを出し、その娘をぐるぐる巻きにして抱き上げた。その足で私の所にまっすぐ来る。
抱きかかえていた幼女の顔が見える。
黒く艶のある肩まで伸びた髪、肌は白磁のように色素の薄い白。
黒曜石のように輝く瞳、それに瞬くたびに影を作る長い睫に薔薇色の唇。
かなり美しい。こんな綺麗な子供がいるのかと少々驚いた。
「父神様、この方は父神様のお知り合いなのでしょうか?」
「いや、知らん。今日初めて見知った」
娘は顔面蒼白になった。
「え? 私、父神様の知らない方に預けられるのでしょうか?」
「仕方なかろう。我に人間界の知り合いなどおらぬ」
「それもそうですね」
少しは常識のある美幼女かと思ったが父とたいして変わらないようだ。
「プリストン王国の魔術師長で名前はレイジェス=アルフォード。アルフォード公爵自身でもある。アリアと相性のいい者は他に5人いたのだが、レイジェスが群を抜いていた。そなたの良き庇護者となるであろう」
娘は父に抱っこされながら父の話を聞いていた。見知らぬものが何故私の個人情報を知っているのか? と疑問に感じたが、もしかして本当に神なのかも知れぬ。
光っていて顔が判別できない。
大体、天馬など神話の生き物だし、ホワイトサーベルは聖獣だ。それの毛皮など到底人の手では手に入らない。フードを目深に被っていたせいか、娘が私の顔を覗き込もうとしたのでフードをはずす。娘の黒曜石のように輝く瞳が私を見つめる。
「私とお揃いの髪色ですね」
ふわりと笑ったその顔を見て、私の中でピキーンと金属音が弾かれる様な音がした。
この金属音の正体は自分のステータスに何か新しいものが加わった時に音がする。何事かとステータスウィンドウを開いて絶句した。
称号の欄に『神の愛し子の庇護者』と書いてある。今まで無かった一文だ。
「お、称号に庇護者と書き込まれたようだな。ああ、言い忘れたことがある。この愛し子はそなたら愚かな人間共の中に咲く一輪の清廉な花である」
その父は力強く美しく響くその声で恐ろしい事をほざいた。
何せ光っているのでその表情は読めない。
「穢したり、手折るなどもってのほかだ。この子に何かあれば我は怒りこの国、いや大陸全土を滅ぼすであろう。穢れから守り慈しみ愛護を持って、心して育てよ。努々忘れるな」
私が諦めたように小さなため息を吐くと、父は娘を私に渡し天馬に飛び乗り天空へ駆け上って光の泡となって消えた。
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