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第三章
2性教育と旅立ち シエラ視点
しおりを挟む前回の両家の晩餐会にて正式に婚約が決まった事を、お父様とお母様は家族皆が揃っている夕食の席で報告しました。
「コモン様はわたくしの物だったのよ? 泥棒猫! わたくしの物を勝手に取りやがって!!」
カエラお姉さまが下品にわたくしを罵ります。お姉さまはアルフォード公爵様狙いだったのでは?
「っていうか~カエラお姉さまじゃ、無理でしょ? コモン様って幼女趣味よねぇ?」
キエラお姉さまは嘲笑う様に言いました。
「大人になったら捨てられちゃうんでしょ? 幼女趣味って、大人の女性は愛せないのよね?」
サエラお姉さまが失礼な事を言って、お父様はこめかみを押さえています。
「お前達はどうして妹の幸福を祝えないんだ? 姉妹なんだぞ?」
お父様はお姉さま達に普通の事を求めますが難しいでしょう。
「お姉さま達に言っても無駄ですよ、父上様」
長男のキース兄様は姉達を見下して馬鹿にした様に言いました。
長男と言ってもまだ10歳でわたくしと2歳しか違わないけれど、キースは長男という責任感のせいか随分年齢の割りに大人で達観していて、凄くしっかりしているのです。
ちなみに次男のルースはまだ3歳で夕食には来られず、乳母の世話になっています。
「お嬢様方には残念なお知らせですが、コモン様は以前は数々の女性と浮名を流しておられます。決して幼女趣味などではないと思いますよ?」
メルヴィンは私を馬鹿にされたのに腹が立ったのかお姉さま達に一矢を報いろうとしてますが、無駄だと思います。
「まぁ、あれだけのイケメンだしね~そりゃ浮名流すよね~」
キエラお姉さまが羨ましそうに言いました。
「ではまだわたくしにもチャンスがあるじゃない!」
カエラお姉様は、どこをどう考えたらチャンスがあると思ったのか? わたくしは謎です。
「あなたたち! もういい加減にしなさい! 下品な言葉遣いばかりして!」
お母様が怒ります。お母様がお姉さま達を叱るのは珍しいのです。
どうしたのでしょうか?
「シエラ、あなたにはあとでお話があります。食事が終わったら談話室に来るように」
わたくしは眉間に皺が寄りました。指でなでなでして皺を伸ばします。
一体わたくしが何をしたと言うのでしょう?
怒られるような事はしていないはずです。
わたくしが食事を終えて談話室に向かうとメルヴィンも一緒に付いてきました。
コンコンとノックをし、談話室に入るとお母様が長椅子に座ってまっていました。
そちらに座りなさい。とテーブルを挟んだ個人椅子を指します。
わたくしはそこに座り、メルヴィンはわたくしの隣の個人椅子に座りました。
「お話とはなんでしょう? お母様」
「性教育の事です」
「性教育?」
「男と女の勉強をするということです。あなたも結婚するのですからね。何も知らないのはダメだという事です。わたくしは上の三人に性教育をしなかったのです。きちんと教育していなかったためカエラは貞操観念のない、所謂貴族の女になってしまいました」
お母様はいつも自分の教育方針は正しいとおっしゃってましたが、この反応はお母様が自分の間違いを認めたという事ではないのでしょうか
「下の二人も、もう今からでは無理なくらい貴族の女に近くなっています。あなたにはそうなって欲しくないのです。わかりますね?」
「お母様がわたくしの心配をしてくださっているのは伝わりました」
お母様は頷いて言いました。
「教えるのはメルヴィンです。メルヴィンが先生となってあなたに教えます」
「承知しました。お母様」
お母様は談話室を出て行きました。わたくしはメルヴィンを見ました。
「大丈夫ですよ、そんなに不安な顔をされなくても。私はあなたに危害は加えませんから」
わたくしは頷きました。小さいころからずっとわたくしの世話をしてくれたメルヴィン、メルヴィンはいつもわたくしをお姉さま達から庇ってくれます。
「で、質問なのですが、シエラ様は男と女の事をどこまで知ってます?」
「どことは?」
「めしべとおしべがくっつくと子供ができるというのは知ってますか?」
「メルヴィン、人にはおしべもめしべも付いてませんわ?」
「替わりになるものが付いているでしょう?」
私は考えてみました。思い浮かびません。
メルヴィンが言い難そうに言います。
「橘、男性器は分かりますか?」
「は、はい、見たことはありませんが」
「蜜花、女性器はわかりますか?」
「は、はい、わたくしに付いている物ですよね?」
メルヴィンが頷きました。
「蜜花に橘を入れ擦ると子供を作る液が出ます。蜜花の中でその液を出すと子供ができます」
「へ~、あっ、液? 付いてしまうと子供が出来るのですか!?」
「ん? どうしました?」
「わたくし、どうしましょう……コモン様と大人のキスをしてしまいました」
「赤ちゃんが出来てしまうかもです」
わたくしがそう言うと、メルヴィンが苦笑しました。
「口から出る唾液では子はできません。口に橘から出る液を入れても子はできません。出来るのは蜜花に橘が入っていてそこで白い液を出した時だけです。ただし、今はシエラ様がそのような行為に及んでも子は出来ません」
「え?」
「女性が子をなすには月の物が来る必要があります。ある程度の年齢になると女性は月に一度不浄の血が流れるのです。それが月の物です。シエラ様はまだその年齢になっていないので子ができないのです。ちなみに未成年の蜜花を奪うと犯罪になります。だから絶対にコモン様に蜜花を奪われないようにしてくださいませ。これは重要です。懇願されてもだめですよ? もし、シエラ様が許してコモン様が奪ってしまうとコモン様が最悪処刑されることになるやもしれません。未成年の蜜花を奪うというのはそれだけ重い犯罪なのです」
私は頷きました。
「シエラ様は貴族の女についてわかりますか?」
「所謂貴族の女っていうのが褒め言葉ではないのはわかります。けど詳しい内容は分かりません」
「所謂貴族の女というのは誰とでも寝る女という意味です。先程の蜜花に橘を入れるという行為は閨事と言って寝台の中でやります。なので寝るという言葉が使われます。ちなみに蜜花は一度だけです。散らせば元に戻らないですし、ただの蜜壷になります」
「カエラお姉さまが一度しか誘われないのは? この前、教えると言ってましたよね?」
「会ってしまったその日に閨事をしてしまうから、殿方の方が会う必要性を感じないのです。男は勝手です、下心が必ずあります、それにうまく対応して相手の心を繋ぎとめなければ良い関係は長くは続きません。ただ自分の体を全て与えるだけでは男の気持ちを繋ぎとめるのは難しいのです」
「なら、何故お姉さまは会ってすぐの方と致してしまうのですか?」
「それは……」
「それは?」
メルヴィンは言いにくそうに言いました。
「多分、気持ちが良いからだと思われます」
「気持ちがいい?」
「ええ、閨事をすると、気持ちが良くなります」
「凄く気持ちのいいことを極みと呼び、極みを得ることを達するといいます」
「快感に逆らえなくて、すぐ男と寝てしまうのでしょう。カエラ様は」
「メルヴィン、質問です」
「何でございましょう?」
「わたくしも極みを知ったら……お姉さまのようになってしまうのでしょうか?」
「……それは、何とも言えません。シエラ様次第ではないでしょうか? そうならないように、きちんとした性知識を得られるように奥様は勉強させているのだと思いますよ? シエラ様」
「お姉さまのようになりたくはないです……」
「では、きちんとお勉強を致しましょう」
わたくしはメルヴィンに頷きました。
「私の言っている事は難しいですか? わかりますか?シエラ様」
「よく分からない事もありますけど、簡単に自分を全部上げではダメってことですね?」
「そうです。シエラ様の場合年齢の関係で犯罪になってしまうので絶対に蜜花は与えてはいけません。要注意はそこだけでしょうか。あとは疑問、質問があれば随時聞いてください」
「わかりました。ありがとう、メルヴィン」
わたくしは少し大人の世界を知ってショックを受けました。だって橘を蜜花にどうやっていれるのですか? 入れるときに変な格好になりませんか?
4月になりアルフォード公爵様からお茶会の招待状が届きました。その招待状にはコモン様も招待していてわたくしを迎えに来て、一緒にアルフォード公爵邸に行くことになっているので待つようにと書いてありました。
三人のお姉さま達はわたくしがアルフォード公爵様から招待状を受けたことやコモン様が迎えに来る事などが気に入らないようでした。わたくしが廊下を歩いていると足を引っ掛けられて転んでしまいました。廊下の床は大理石だったので凄く痛かったです。
それを見ていたメルヴィンがお姉さまに言いました。
「カエラ様! 嫌がらせはおやめください! こんなことをなさってもあなたがコモン様に愛されるわけではないのですよ!?」
「違うわ! わたくしがお慕いしているのはアルフォード公爵様よ!」
「でしたら尚更関係ないではありませんか! シエラ様はコモン様の婚約者でございますよ?」
「お茶会に招待されているわ! わたくしにはお声も掛からなかったのに!」
メルヴィンはこめかみを押さえています。
「愛されたいなら愛されるように努力をすればいいではないですか……」
「あの方には胸の谷間を見せてもダメだったわ! 他の男なら喜んで付いてくるのに! 腹立たしいったらありゃしない! わたくしの谷間を見たくせに!」
メルヴィンは呆れてしまいました。
「そういう事をなさるからまともな男は逃げるのですよ!」
「とにかく、わたくしはシエラを許さないわ! この長女であるわたしよりも先に婚約するなんて! アルフォード公爵様のお茶会にはわたくしも行くわよ!! 必ずね!!」
お姉さまが力強く叫んでいるのですが、わたくしは困ってしまいました。招待客以外が誘われてもいないのに行ってもいいのでしょうか? リッツ伯爵家の品位が落ちてしまうのではないでしょうか? 爵位はアルフォード公爵様の方が上です。わたくしがメルヴィンを見るとメルヴィンはお手上げのポーズをしました。
お茶会当日になり、コモン様が屋敷までわたくしを迎えに来ました。カエラお姉さまもお洒落をして準備をしています。
「ごきげんよう、シエラ様! 迎えに来たよ。さぁ、おいで」
コモン様がわたくしに言いますが後ろにカエラお姉さまがいます。
どうしたら良いのでしょう。
「ごきげんよう、コモン様」
「ごきげんよう、コモン様! 今日はわたくしもアルフォード公爵邸に伺いますわ」
「ん? 君にもレイジェスから招待状が来たのか? 有り得ないが」
「招待状は来ていません」
メルヴィンが言うとコモン様が呆れた顔をしました。
「え? 招待状が無いにも関わらず来ると言ってるのか?」
「カエラ様、悪いけど、レイジェスは礼儀を欠いた奴は嫌いなんだ。あなたが行ってもレイジェスに出入り禁止を食らって屋敷に帰るしかなくなると思うよ」
コモン様が少し怒っているようです。
「レイジェスは嫌いな奴にはホント冷たいから。わざわざ嫌われに行く事ないのに。カエラ様って少し頭が残念だよね!」
コモン様がけたけた笑います。そしてカエラお姉さまは何故かコモン様の目の前にいた私を引っ張って、地面の砂利に突き飛ばしました。私は後ろから引っ張られたので手を突くこともできず、石で顔を切ってしまい、つーっと血が流れて、それを見たコモン様が、わたくしに駆け寄ってきてヒールを掛けてくれました。
「他に怪我はないかい? 痛い所は?」
「だ、大丈夫です」
ふるっと震えが来て、それを見たコモン様が私を抱き上げました。
そして、紳士服の内ポケットから杖を出して言ったのです。
「シエラを傷つけるお前を俺は許さない」
コモン様が呪文を唱えて杖を振るとカエラお姉さま騒ぎ出しました。
「くそくそくそ! わたくしに何をやりやがったああ!!」
わたくしはわけが分からずコモン様に聞きました。
「カエラお姉さまに何をしたのですか?」
「五感を奪っただけだよ」
にこりと笑うコモン様。お姉さまは辺りが見えないようで手探りしながらふらふら歩いています。
「じゃあ、行こうか」
わたくしを先に馬車に乗せてから、コモン様は馬車に乗り込んできました。
「あれは治るのですか?」
「解除すればすぐ治るが、解除しなければ1週間ほどあのままだよ。シエラ様にあんな酷い事をするなんて、俺は許せない」
先程言った時はわたくしのことをシエラと呼び捨てにしていたのに、今は様を付けて呼んでいます。シエラって呼び捨てにされてどきっとしたのに。呼び捨てにされたこと、わたくしは嬉しかったのかも知れません。
アルフォード公爵邸の帰りの馬車の中でわたくしは胸がどきどきしていました。わたくしは今回のお茶会でアリア様とエリザベス様と凄く仲良しになり楽しく時を過ごすことが出来ました。
けれど、わたくしが一番気になったことはアリア様が極みを知っていたということです。極みとはメルヴィンがこの前教えてくれた事です。
でも、アリア様はお姉さま達のようにふしだらではありません。メルヴィンが言ったように極みを知ったからといって全員の女性がふしだらになるとは限らないようです。
わたくしは今日のお茶会が凄く楽しかったので、また3人でお茶会をしたいと思いました。
わたくしは正式に婚約をしてから週末はコモン様とお会いすることが増えました。コモン様は毎日城に出仕していますから、週末くらいしかゆっくりわたくしと会う事が出来ないのです。一緒に買い物や遠乗り、ダンスをして過ごしたりお話をして過ごしたりもしました。
アリア様のコンサートは招待席が別々でしたがコンサート終了後に少しお話をしました。コモン様はアルフォード公爵邸に同僚の皆さんと泊まられるとおっしゃってたのですが、その時にアルフォード公爵様に5月の終春節に自分の領地へ来ないかと、わたくしと共に誘われたというのです。
本日はその領地へ共に行く為の許可を取りにリッツ伯爵邸にいらっしゃいました。
夕食を終えたお父様とお母様が応接室の長椅子に座っています。テーブルを挟んだ長椅子にコモン様とわたくしが座っていて、コモン様の手をはわたくしの手を握っています。
少し離れた所にわたくしの側仕えであるベティと執事のメルヴィンが並んで立っています。
「それで、アルフォード公爵様に終春節を領地で過ごさないかと誘われて、シエラ様と一緒に行きたいのです。許可をお願いします」
コモン様は両親に頭を下げました。
「私はいいと思うのだが……」
お父様が言いました。お母様はそんなお父様を見て眉間に皺を寄せました。
「わたくしの条件が飲めるなら一緒に行くのを許しましょう」
「条件とは何でしょう?」
コモン様がお母様に聞きました。
「シエラはまだ8歳です、蜜花を散らされては堪りません。寝室には側仕えを閨番として控えさせる事、それが条件です」
コモン様は暫く思案しているようでした。そして隣にいるわたくしを見つめてから、握っているその手をさらに握り締め決心がついた顔で答えました。
「そんなことで許して頂けるのなら、その条件を飲みましょう」
閨番とは、はたして何でしょう?閨という言葉が付くからには男女の営みに関することだというのはなんとなく分かりますが。
わたくしは疑問に思ってメルヴィンを見つめると【後で教えます】というジェスチャーをされました。
わたくしとコモン様は終春節にアルフォード公爵様の領地に行けることになりました。
「シエラ様が領地に行かれるのでしたら、私も行ってもよろしいですか? 私はシエラ様の教育係もしていますから……」
メルヴィンがそう言うと、コモン様は頷いて言いました。
「終春節は使用人が少ないから来てもらえると助かるとレイジェスが言っていた。歓迎するよメルヴィン、こき使われると思うけどね」
メルヴィンはフッと笑って光栄ですね? と言っていました。
当日、わたくしは何も用意せず、手ぶらでコモン様を待っていました。
コモン様がわたくしに何も用意しなくて良いとおっしゃったのです。
1ヶ月も領地のお城にいるのに着替えは? と聞くと、コモン様が用意するとおっしゃいました。ただ、執事や側仕えは荷物を用意せよとおっしゃられました。
わたくしが馬車の停まる音が聞こえたので、玄関に行こうと階段を歩いていたその時でした、階段の踊り場でカエラお姉さまがわたくしを突き落としたのです。
その時、わたくしはスローモーションの様に世界が遅くなる感覚の中にいました。
わたくしは驚いてカエラお姉さまを振り返って見ました。
そのお顔は醜く歪んでいて、まるで人のようには思えない程でした。メルヴィンが叫んでわたくしを助けようと駆け出しました。
「シエラ様!!」
わたくしは目を瞑っていくつかの衝撃を受けメルヴィンの腕の中にいました。
メルヴィンは落ちてくるわたくしを、その身を挺して受け止めたのです。
階段の柱にぶつけた頭の左のこめかみから、すぅっと血が流れていました。
「メルヴィン!? 血が!」
「私は大丈夫です。それよりシエラ様は!? 大丈夫でございますか!?」
「わたくしは大丈夫です」
本当は落ちるときに体のあちこちを階段の角にぶつけて痛かったのですが強がりました。メルヴィンが心配するからです。
メルヴィンはわたくしを自分の上からよけて、頭を押さえました。
血の出ているところが痛いのでしょう。
「カエラ様、これは立派な犯罪ですよ? 傷害罪だ。わかっているのですか? あなたは!!」
「わたくしは何もしてないわ? シエラが勝手に滑って落ちただけ、そうでしょ? シエラ」
わたくしはカエラお姉さまの言う事に呆れつつも、お姉さまを犯罪者とする事に躊躇いました。姉妹なのに、こんな風にしかなれないなんて悲しかったのです。
わたくしが何も言えず黙っているとメルヴィンが諦めたように言いました。
「もう……いいです。お迎えが来ております、行きましょうシエラ様」
わたくしとメルヴィンが外にでると、遅れて側仕えのベティも荷物を持って現れました。
「ごきげんよう、シエラ!」
コモン様が明るく笑います。けれど、わたくしは明るい気分になれずにしょんぼりしていました。
「ごきげんよう、コモン様」
「どうした? 元気がないね?」
「メルヴィンが、お姉さまから階段を突き落とされたわたくしを庇って、怪我を……」」
それを聞いてコモン様がメルヴィンを見ました。
こめかみから出ている血を見て、コモン様は顔を顰めました。
「メルヴィン、俺に傷を見せろ」
コモン様はメルヴィンの顎を持ち、くいっと横に向けました。
「他に痛い所や怪我は?」
「体を少し打っただけです」
「ミドルヒール!」
コモン様はメルヴィンにミドルヒールをかけ、全ての傷を癒しました。
そしてわたくしに跪きました。
「シエラも落ちたんだろ? 痛い所はないか?」
「大丈夫です」
「ミドルヒール!」
大丈夫と言ったのに、コモン様はわたくしに癒しをかけました。
ずきずきと痛かった体のあちこちがすぅっと嘘のように痛みが無くなったのです、魔術師って凄いですね。
「ありがとうございます、コモン様」
「君は優しすぎる、痛い時はちゃんと痛いって言っていいんだよ?」
わたくしに優しく言いました。
そのあとコモン様のアイテムバッグにエルサレム伯爵家執事のルイがメルヴィンの荷物やベティの荷物を入れました。どうやらエルサレム伯爵家執事のルイも、この旅行に行くようです。
この【アイテムバッグ】というのは見た目は皮の旅行鞄なのですが、開くと中が空間収納になっていて、上限はあるようですが荷物を大量に入れることができるアイテムです。買うと億単位の値段がすると聞いたことがあります。
「そのアイテムバッグは?」
メルヴィンがコモン様に聞くと、コモン様は事も無げに答えました。
「アリア様が天界に行ってた時、レイジェスにキメラ退治に誘われて二人で行ったんだ、その時にレアドロップで出た。レイジェスは空間収納を使えるから必要ないって俺にくれたんだ。キメラ退治に付き合ったお礼だってさ。あいつは元々キメラの素材が欲しかっただけだから」
メルヴィンが驚いています。
「二人でキメラ退治ですか……」
私達は馬車に乗りアルフォード公爵邸に向かいました。
アルフォード公爵邸からゲートの魔法で領地の城へ直接行くことになっていたからです。
わたくしはコモン様と一緒にいられることや、アリア様に会えることがとても楽しみで馬車の中で一人にたにたしておりました。
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