文字の大きさ
大
中
小
22 / 57
三章 募るはずのなかった想い
第22話 お姫様抱っこ
「尿に血に。僕のスカートさんは、過酷な環境に生きてるね」
よくわからない言葉を僕はスカートにかける。
少しだけ意識が飛びそうになる。
「駄目だ。何とか自力で保健室行かなきゃ」
僕を突き動かすのは意地と恥。
正直、トイレも瑠々だから許せている。
こんな状況を誰かに見られる覚悟はまだできていない。
それでも、そんな僕の気持ちとは裏腹に体から力が抜けていく。
とすん、とお尻が地面についてしまった。
気持ちの悪い感触がお尻全体に広がっていく。
「うっくう……」
強くなる痛みに、僕はさらに体を縮こませる。
やっぱ無理かも。
誰か来てほしい。
でも来ないでほしい。
こんな僕を、見ないでほしい。
僕は男なのに、女として生きていかなければいけない。
だから、その狭間で揺れる醜い僕を見ないでほしい。
見てもいい、のは……。
「薫!」
僕の耳に飛び込んできたのは聞きなれた声。
「……誠?」
僕は顔を上げる。滲む視界の中にいたのは誠だった。
輪郭はぼやけているけれど、誠の声と雰囲気が僕に目の前の存在が誠だと実感させる。
「大丈夫か?」
「あ、はは。何とか」
「保健室行くぞ」
「ごめん、動けないかも。いいよ、もう少しで授業始まるし誠は教室行きなよ。僕も落ち着いたら保健室、自分で行くから」
「……」
「誠?」
瞬間、僕の体がふわりと浮かび上がった。
「俺が連れて行ってやる」
僕のすぐ目の前には誠の横顔。
どうやら僕は誠にお姫様抱っこされたらしい。
「お、下ろして! 重いしそれに汚れるって」
驚きのあまり僕は足をばたつかせる。
しかし、今の僕が彼の力に敵うわけもなく、体は宙に浮き続ける。
「黙ってろ」
そのまま誠は走り出した。
背の高い誠が、女の子になった僕をお姫様抱っこして校内を駆け抜けていく。
結果、授業に向かう生徒たちの視線を集めに集め続けた。
「落ち着いたか?」
保健室。僕はベッドの上で横になっている。
既に着替えは済ませ、痛みを止めるための薬も飲んだけれど、まだめまいが落ち着かないためそのまま保健室で様子を見ることになった。
ベッドの横には誠。
彼のシャツも盛大に僕の血やらなにやらで汚れてしまったため、養護教諭の先生から予備をもらい着替えている。
「うん、ありがと……」
僕は誠を見てはいるが、目は合わせてはいない。
彼の胸元あたりに視線を向ける。
正直、恥ずかしい。
もちろん、自分のあんな状況を見られたこともだけれど、それ以上に彼による抱っこが尾を引いている。
自身の小さい体を包み込む誠の腕。
背中と足から感じた力強さに思わずどきりとしてしまった。
いや、僕は今、女の子なんだから男性の体との違い、そこから来るギャップに驚くのは当然だ。
なのに、僕は誠の顔を見ることができないでいる。
どうしてだろう。
そんなことを脳内でくるくると回していると、一つの疑問が浮かび上がってきた。
「それにしても、どうして近くにいたの? 誠、別のところ掃除してたはずだよね」
「いや、その、なんだ……」
どうにも歯切れが悪そうな彼は後頭部を掻く。
「どうして?」
「……見てたんだ」
誠の頬は一気に赤らんでいく。
見ていた。
見ていた?
何を?
「何を?」
僕は全く意味が理解できずに聞き返す。
「だから、薫を見てたんだよ」
「は? 僕を? 誠、掃除サボったの?」
誠は瑠々と同様、与えられた役割を全うすることに対する責任感が人一倍強い。
そんな彼が、掃除をほっぽり出して僕の後をつけていたことが信じられなかった。
「だってお前、人に迷惑かけたくないからって明らかに重たいごみ袋二つも持って行ってただろ? 見るからに体もふらついてたし、危ないこけかたすんじゃないかって心配で」
誠は恥ずかしさがオーバーヒートしたのか、首がとれてしまうんじゃないかと言うほどうなだれてしまった。
「つまり、僕のことが心配で、掃除サボってまであとつけてきたんだ」
「そう言うことだ」
「ちょっと待って。ていうことは、僕が変な声出しながら歩いていたところも見てたってこと?」
「……すまん」
僕の体は変な熱を帯びていく。
見られていたのか。
一人だからって軽快な声を出していたところを見られていたのか。
「見ないでよ」
「すまん」
僕は顔を布団の中に隠す。
いくら親友と言えど、見られたくないこともある。
生理という避けようのない現象ならまだしも、変な声を出していたところは見られたくなかった。
よくわからない言葉を僕はスカートにかける。
少しだけ意識が飛びそうになる。
「駄目だ。何とか自力で保健室行かなきゃ」
僕を突き動かすのは意地と恥。
正直、トイレも瑠々だから許せている。
こんな状況を誰かに見られる覚悟はまだできていない。
それでも、そんな僕の気持ちとは裏腹に体から力が抜けていく。
とすん、とお尻が地面についてしまった。
気持ちの悪い感触がお尻全体に広がっていく。
「うっくう……」
強くなる痛みに、僕はさらに体を縮こませる。
やっぱ無理かも。
誰か来てほしい。
でも来ないでほしい。
こんな僕を、見ないでほしい。
僕は男なのに、女として生きていかなければいけない。
だから、その狭間で揺れる醜い僕を見ないでほしい。
見てもいい、のは……。
「薫!」
僕の耳に飛び込んできたのは聞きなれた声。
「……誠?」
僕は顔を上げる。滲む視界の中にいたのは誠だった。
輪郭はぼやけているけれど、誠の声と雰囲気が僕に目の前の存在が誠だと実感させる。
「大丈夫か?」
「あ、はは。何とか」
「保健室行くぞ」
「ごめん、動けないかも。いいよ、もう少しで授業始まるし誠は教室行きなよ。僕も落ち着いたら保健室、自分で行くから」
「……」
「誠?」
瞬間、僕の体がふわりと浮かび上がった。
「俺が連れて行ってやる」
僕のすぐ目の前には誠の横顔。
どうやら僕は誠にお姫様抱っこされたらしい。
「お、下ろして! 重いしそれに汚れるって」
驚きのあまり僕は足をばたつかせる。
しかし、今の僕が彼の力に敵うわけもなく、体は宙に浮き続ける。
「黙ってろ」
そのまま誠は走り出した。
背の高い誠が、女の子になった僕をお姫様抱っこして校内を駆け抜けていく。
結果、授業に向かう生徒たちの視線を集めに集め続けた。
「落ち着いたか?」
保健室。僕はベッドの上で横になっている。
既に着替えは済ませ、痛みを止めるための薬も飲んだけれど、まだめまいが落ち着かないためそのまま保健室で様子を見ることになった。
ベッドの横には誠。
彼のシャツも盛大に僕の血やらなにやらで汚れてしまったため、養護教諭の先生から予備をもらい着替えている。
「うん、ありがと……」
僕は誠を見てはいるが、目は合わせてはいない。
彼の胸元あたりに視線を向ける。
正直、恥ずかしい。
もちろん、自分のあんな状況を見られたこともだけれど、それ以上に彼による抱っこが尾を引いている。
自身の小さい体を包み込む誠の腕。
背中と足から感じた力強さに思わずどきりとしてしまった。
いや、僕は今、女の子なんだから男性の体との違い、そこから来るギャップに驚くのは当然だ。
なのに、僕は誠の顔を見ることができないでいる。
どうしてだろう。
そんなことを脳内でくるくると回していると、一つの疑問が浮かび上がってきた。
「それにしても、どうして近くにいたの? 誠、別のところ掃除してたはずだよね」
「いや、その、なんだ……」
どうにも歯切れが悪そうな彼は後頭部を掻く。
「どうして?」
「……見てたんだ」
誠の頬は一気に赤らんでいく。
見ていた。
見ていた?
何を?
「何を?」
僕は全く意味が理解できずに聞き返す。
「だから、薫を見てたんだよ」
「は? 僕を? 誠、掃除サボったの?」
誠は瑠々と同様、与えられた役割を全うすることに対する責任感が人一倍強い。
そんな彼が、掃除をほっぽり出して僕の後をつけていたことが信じられなかった。
「だってお前、人に迷惑かけたくないからって明らかに重たいごみ袋二つも持って行ってただろ? 見るからに体もふらついてたし、危ないこけかたすんじゃないかって心配で」
誠は恥ずかしさがオーバーヒートしたのか、首がとれてしまうんじゃないかと言うほどうなだれてしまった。
「つまり、僕のことが心配で、掃除サボってまであとつけてきたんだ」
「そう言うことだ」
「ちょっと待って。ていうことは、僕が変な声出しながら歩いていたところも見てたってこと?」
「……すまん」
僕の体は変な熱を帯びていく。
見られていたのか。
一人だからって軽快な声を出していたところを見られていたのか。
「見ないでよ」
「すまん」
僕は顔を布団の中に隠す。
いくら親友と言えど、見られたくないこともある。
生理という避けようのない現象ならまだしも、変な声を出していたところは見られたくなかった。
感想 0
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?
ただ巻き芳賀(宇多田真紀)学校一の美人、姫川菜乃。
栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。
その彼女に脅された。
「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」
今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。
でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる!
しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ??
訳が分からない……。それ、俺困るの?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった
白藍まこと 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。
クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。
明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。
しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。
そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。
三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。
※他サイトでも掲載中です。