貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました

峯松めだか(旧かぐつち)

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第229話 番外 ヒヨヒヨの荷物(彩羽視点)

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「これ、本家の方にお願い」

 真面目な表情で、ヒヨがスーツケースを開ける、中身には、ぎっしりとと言うか、みっしりと、都内在住のサラリーマンには見覚えのある紙箱が詰まっていた。
 主に会社同士のお中元とかお詫びの際に持たされがちな、社会人通貨である。

「あらま、張り込んだもんだ」

 受け取った側、ビタキも、心得たものと言った様子で、笑顔を浮かべて頷いた。

「じゃあ、先に渡して置くよ」

 そういって、部屋から出て行った。

 私も目が点に成った、スーツケースの中身が、一本数千円する、老舗の和菓子、てんこ盛りの羊羹だったのだから………………

「あれって、トラの羊羹ですよね?」

 二人だけに成った部屋で、ぽつりと呟いた。

「そ、手土産にはご当地で老舗な物が、間違い無い」
「あの分量って、万の桁が二桁行きません?」

 庶民にはかなり怖い金額である。
 年収的に払えなくは無いが、食べる消え物にソレは怖い、しかも贈答用の飾り箱付きである、普通の一般人は、竹皮系の安いのがせいぜいだし、そもそも今回は自分で食べる分ですら無いのだ。

「行くよ、行かなきゃ誠意が足りんって成るもん」
「何もそこまで……」
「言っておこうか、コレから会う、一番小さい、一見子供な見た目のロリババア、ヤタ婆様が、うちの会社の立ち上げ時の出資者で、普通に億単位を、無利子に近い感じに借りてる」

 まあ無利子は言い過ぎだけど、安いんだとか、もごもご言っている。

「ひゃい?」

 変な声しか出てこなかった。
 と言うかロリババアって何さ?
 小さいのが居たのは知ってるけど、どっちだっけ?

「それで、未だ返しきれてない、返済期限自体は、そのうちで良いけど、返せるけど、 繰り上げ返済も微妙な顔されるから、事あるごとに余剰分をこんな感じに……」

「大変なんですね……」

 そうとしか言えなかった。



 そんなアレコレは兎も角として、体を温めたおかげか、とてもよく眠れた。



「お久しぶりです、本日はよろしくお願いします」
 床の間付きで畳敷きの良い部屋に案内され、ヒヨが深く頭を下げる。
「よろしくお願います」
 空気を読んで、私も頭を下げた。
「何とも、大げさじゃのう?」
 ヤタ御婆様、確かに見た目幼女では有るが、独特の老獪な雰囲気のある人だった。
「あくまで翡翠が受け入れるかどうかだけの話じゃからな?」
「そうですね?」
 苦笑を浮かべるヒヨ、建前としてのそれと、実際のは別なのだと言うのは、社会人としてアレなので、順番間違えてやしないだろうかと、内心で戦々恐々する。
「儂の方からは止めんから、好きにすればよいぞ?」
 ヤタさんが、見た目の幼い容姿には、ちょっと違和感を感じる、老獪な笑みを浮かべた。
「有り難うございます」
 ヒヨが深く頭を下げた。

 肝心の翡翠さんに関してだが。
「良いですよ? よろしくお願いします」
 了解もあっさりとしたものだった、流石のチョロインである。

「つっかれた!」
 その後、色々終えたと、ヒヨが崩れ落ちたのは言うまでも無かった。



 ミサゴ視点

「うわ、ヒヨも張り込んだわねえ……」
 ツグミ母様が、楽しそうに呟く。
 運ばれて来た羊羹の山を前に、思わず総額を考えて、遠い目をする。
 実際問題、従業員数とか腹違い多いから、コレ位無いと足りないのだけど。
 足りなかったら、その時はその時で、アオバあたりに刻んで数だけ増やしてもらってごまかすのだけど。

「各地に親戚を配置して、金貸しておくと、知らんうちにご当地名物や、銘菓が飛んでくる、美味しくて、楽しいじゃろ?」

 ヤタ婆は、早くも一つ開けて居る。
 にっこにこな辺り、気に入った様子だ。

「今度は熱いお茶が怖いな?」

 古典落語なボケをかますヤタ祖母ちゃん、饅頭怖いらしい。

「はいお茶」

 分かってるとばかりに、スズメがお茶を運んできた。

「だからって、金額的にやりすぎじゃあ?」

 貸付総額は、億単位で、今回のは万単位で二桁後半、だろうか?

「エンジェル投資っぽくすると、受け渡しの時の税金も安いし、最終的に減らないからなあ?」

 当人としては節税しているつもりらしい。

「だからって・・・・・」

 思わず突っかかりそうになる。

「買ったらそこまでじゃけど、色々考えて、年替わり、季節ごと、月替わりで飽きないように手を変え品を変え、贈られてくるって考えると、別の楽しみもあるからな?」

「さいですか……」

 思わず、雑に返すが、言ってる事は、判らんことも無い。

「気持ちの縁や、血縁は、気持ちで切れるけど、真面目な奴なら、金の縁は切りようが無いから、逆に安心まである」

「そこらへん、結構現実的だね?」

 感心しつつ、返す。

「長生きしとるからな?」

 幼い容姿に似つかわしく無く、老獪に笑う、ヤタ婆ちゃん、実年齢考えると年相応なのだろうけど。
 最終的にコレを私が継ぐのか?
 この人が私よりもっと長生きするのか分からないけど、出来る限りは見て、勉強しておくべきなのだろうと、気を引き締めた。

 追伸
 そんな金持ちの遊びです。
 鳥組本家の事業内容が金貸しで、ヤクザ臭いって言われる所以のうちの一つ。
 エンジェル投資、会社とかの初期立ち上げに、表向きあまり見返りを考えずに金を出してくれる投資家の事、会社としては天使みたいな物なので。
 ただし、個人勢はただ持ち逃げ気味に食われるだけなので、あまりお勧めはしません。
 例の株券刷るだけのスタートアップとか、有史以来、山程居るので。
 最終的に負けなさそうなヤツを選ぶのも、この人が化け物扱いされる所以。
 身内で色々見てるので、多少のひいき目で査定が甘いかもしれないけど、不思議と大丈夫なのを引く人。
 因みにトラな羊羹、2025年時点で、ご自宅用でっかいほうの竹皮タイプで一本3000円前後。贈答用が一箱、小形羊羹96本入が3万ちょい。賞味期限は実質無限で、腐らないので、ある意味安心。
 作中時点だと、インフレしているので、多分倍。
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