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3章 活躍する坊主

摸擬戦(時間軸少しあと)

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次の話し書けていないので手持ちの球でお茶を濁します。


「暇だったら新人教育任せられるか?」
 義父上がそんな提案をしてきた。そろそろ臨月という事で、貸出期間を一旦終えて、家に引きこもる流れになっている、既に出来上がった木仏は結構な数になっていて。乾燥の為に細切れの丸太が暖炉の横に大量に積まれ、出来上がった後も予備乾燥でそこらじゅうを圧迫している。乾燥終わりと言う事でそろそろ虚空の蔵に入れておくかな?
「俺の技術で良いんですか?」
「最初に俺を転がしたのは純粋な技術だよな?」
「ええ、向こうの技ですね。」
「調子に乗り始めた新人やら中級、何なら上級者も呼ぶ、勝ち残りでも乱取りでも良いから一通り戦ってみてくれ、その様子を見物させて、見取り稽古という事にしたい。」
「それぐらいなら良いですか。そんなに見るものありますか?」
「自覚無いかもしれんが、珍しい技が結構ある、出来れば記録の宝珠で映像記録の後にその手の団体に預けて分析して貰いたい位だ。」
「良いですよ?」
「もちろん、秘密の技だって言うなら其処はしょうがないが・・良いのか?」
 断られる前提で考えていた様子で驚かれた。
「最終的にこっちの魔物に対する人類の劣勢をひっくり返せって事だったので。私だけ強くても意味が無いのです。」
 多分、俺の仕事自体は、人類側が多少強くなれば達成になる。技術でも何でも良い筈だ。
「ありがたいが、戦闘技術は冒険者の飯の種だからな、安売りするのも・・」
「自分で提案しといて何言ってるんです?報酬に色付けてくれればいいです。」
「そうだな、無理して死ぬ新人が少しでも減れば元は取れる、頼んだ。」
「はい。」


 後日
 結構な人数が集まっていた、50人ぐらい?
「この辺の冒険者半分ぐらいだな、もし和尚が負けたら大銀貨1枚って事で集めた。休憩は好きにとっていいから、後は頼んだ。」
「思ったよりも雑な・・・」
「細かい指定は審判に頼む、俺はここで見学させてもらうから。」
 どうやら特等席らしい場所の椅子に座り、高みの見物を決め込むらしい。
「分かりました、じゃあ、一人ずつ並んで順番決めて、かかって来てください。」
 模擬戦用の6尺棒のような物を一本持って、軽く振り回して、感触を確かめる。
 特に違和感なくひゅんひゅんと回る、特に重りとかは仕込んでいない純粋な棒らしい。
「ルールはどうします?。」
 審判担当らしい職員の人が聞いて来る。
「良い当たりがあったら1本の2本先取で。寸止め有だけど当たったらすいません程度で、棄権有。露骨な殺傷攻撃禁止でお願いします。」
 多分、一本だと負けた事が判らない人が多くなるので、納得させるなら2本欲しいと思う。
「はい、軽い打撲や骨折、切り傷程度なら治療できますので、即死するとか内臓系以外は大丈夫です。」
「いざと言う時はお願いします。」
「はい、それじゃあ、初めますね。」
「どうぞ。」
 相手は既に目の前で待って居る。
「そんなわけで、初め!」

 様子見で真っ直ぐ飛んできた相手を素直に横なぎして弾き飛ばす。体勢が崩れて盛大に地面に転がった。念の為追撃の体制で残心を入れる。
「1本!」
 審判が素直に反応する。構え直して次に備える。
「どうぞ。」
 次来いと促すと、相手がヨロヨロと構え直す。
 構えなおしただけで来ないので、素直に踏み込んで下から武器を跳ね上げて、棒の先を首元に突きつける。
「2本!次!」
 こんな感じで蹴散らして行った。

 深紅の翼、前衛サイク視点
「あれ?参加しないんですか?」
 和尚が模擬戦の相手をすると言うので、見物だけでもしておこうかと、少し顔を出した所、顔見知りの冒険者にそんなことを言われた。
「正直あいつにこのルールで勝てる線が思いつかん・・・」
 腕相撲で苦も無くへし折られ、先日まで一緒の臨時PTで活動していたが、本気でゴブリンキングをソロ討伐された日にはどうしようかと思った、しかも純粋な力だけではなく、技術も伴っている、曲がりなりにも自分たちのPTは上級冒険者のランクなのだが、束になってもまともに勝てる線が思いつかなかった。
「そんなにですか?」
「やって見りゃわかる、今日はギルドで治療してくれるから気にせず行って来い。」
 何を大げさなと言う様子でこちらを見て来るが、大袈裟でも何でもないのが困るのだ。
「俺は人が空いてからで良いさ。」
 技でも盗めればめっけものだと、見物を決め込むことにした。


 大上段の振り被りに合わせて柄を打ち抜いて武器を飛ばしたり、下段攻撃を素直に上から迎撃、そのまま素手で殴って見たり、突いて来たのを巻き込んで跳ね上げたりと、相手の動きに合わせて一通り技や応手を繰り出して見せる、棒術は最終的に剣術槍術体術全てをごちゃ混ぜにした技の多さが身上だ、最終的に武器と言うより、ただの棒として扱うので、極論トンファーキックも似た様な物である。持ってさえ居れば良い。
 トンファービームやスコップビームは流石に違うが・・・
 寸止め有、当たれば勝ちなら、ぶ厚い表皮や鎧を気にしなくて良いので刃が付いて居る必要すらない。刃筋や刃こぼれを気にせずに戦闘できる鈍器は優秀である。
 剣の方が恰好が良いと言われるが、そこら辺は無視する方向で。
 斬りたい時、突きたい時は武器を取り換えればいいのだ。
 横なぎに切り付けてきたのを斜めに構えて上方向に流し、蹴り飛ばして転がす。
 大上段を受け流してそのまま地面に落ちるように誘導して、がら空きの本体を殴る。
 同じく相手の大上段を振り下ろしに斜めに合流して受け流し、回転を乗せた反対側で攻撃するなど。
 思いつく限り色々やって見せた。
 合気道の約束稽古では無いかと言う位に楽々と技が決まった。

 気が付いたら、対戦相手が居なくなった。
「これで全員です、お疲れさまでした。」
「あ、終わりました?」
「すごいですね、休憩も無しに全員相手にするとは。」
「今回ほぼ固定砲台でしたから。」
 相手が自分の間合いに飛んできてくれるなら全て迎撃するだけである、攻めずに逃げるのならば追いかけずに待って居るだけ、うっかり待って居ると変な所から矢が飛んで来るゴブリンの里襲撃よりはかなり安全である。
「待って居ると何も無しに負けてる人が居ましたが?」
「ああ、これ?」
 審判相手に真っ直ぐ構えて見せる、視点に合わせて真っ直ぐになるように調整。
「こうすると柄の点しか見えなくなるから。」
 そのまま軽く突き出すとコン、と、先が審判のオデコにぶつかった。
「こんな風に当たる。」
 審判はオデコを軽くさすっているが、本当に軽くだったので怪我は無いだろう。
「なるほど・・・」
 当人は納得したようだが。
 周囲を見ると、見学を決め込んでいた一団が、何でそんな子供だましに?という目で見ていたので。
 呼び出してやって見せる。横から見ると子供だましだが、実際やられてみると避けられないし、やる方も意外と高等技術である。揃って避けもせず当たった。
「ご納得いただけました?」
 実演の実験台にされた一団は、こくこくと頷いて退場した。

「それじゃあ、今日はこの辺で引き揚げますね?」
 待って居ても次の挑戦者は来ないので、終わりと言う流れになった。
「おう、お疲れ様、また明日、集団戦で頼む。」
 ギルマスがそんな事を言ってきた。
「えー。」
「あの人数息も切らせずに潰して置いて良く言う。多分余裕だ。」
「はいはい、では先帰ります、また明日・・・」
「はい、お願いしますね。」
 そのまま素直に帰路に着いた。

 息は上がって居ないが、気疲れはしている、集中するのは疲れるのだ・・・
 ただいまと帰って部屋に入った所で、灯とエリスを巻き込んでベッドに倒れこんだ。
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