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王太子殿下への返信を済ませた私は、早速、領地へ帰るための準備に取り掛かった。
「まあ、ブリーナお嬢様、もう荷造りをなさるのですか?」
私の専属侍女であるエマが、驚いたように目を丸くする。
「ええ、エマ。王都にはもう何の用もありませんもの。一刻も早く、あの空気の美味しい領地に帰りたいわ」
ドレスや宝飾品が詰められていくクローゼットを眺めながら、私は心底嬉しそうに言った。
婚約者時代に作らされた、華美で動きにくいドレスの数々。そのほとんどを「不要なもの」として仕分ける。
「あら、こちらのドレスは処分なさるのですか?殿下から贈られた、大変高価なものでは…」
「だからこそ不要なのよ、エマ。あの方の思い出の品など、持っているだけで気分が悪いわ」
私はあっさりと言い放つ。
エマは、私の言葉に少しだけ驚いた後、すぐに納得したように微笑んだ。
「かしこまりました。では、慈善団体に寄付するよう手配いたします」
「ええ、お願い。誰かが喜んでくれるなら、ドレスも浮かばれるでしょう」
エマは私が幼い頃から仕えてくれている、私の最大の理解者だ。私が王太子妃教育にどれほど辟易していたかも、アルフォンス殿下との関係がとっくに冷え切っていたことも、全て知っている。
だから、彼女は私が婚約破棄されたことを、少しも悲しんではいない。
「しかし、本当に宜しいのですか?王太子殿下も、リリアーナ様も、きっとお嬢様が泣き寝入りしたと思っておりますわよ」
「それで結構よ。惨めに捨てられた哀れな女。そう思わせておけば、これ以上余計なちょっかいを出してこないでしょうから」
私は窓の外、王宮の方角を眺めながら言った。
「私の戦場は、もうあのきらびやかな社交界ではないの。私の戦場は、クライネルトの領地。あそこには、やるべきことが山ほどあるわ」
特産品の開発、新しい農法の導入、寂れた地区の再活性化。私の頭の中には、領地を豊かにするためのアイディアがたくさん詰まっている。
これまで王太子妃教育にかまけて、なかなか本格的に着手できなかった計画の数々。これからは、思う存分それに打ち込めるのだ。
「領地にお戻りになったら、お嬢様はきっと水を得た魚のようになられるでしょうね」
エマが、楽しそうに笑う。
「ええ、その通りよ。ああ、楽しみだわ!まずは、放置していたハーブ園の拡張から始めないと」
「まあ、あの薬草の専門家の方を、またお呼びになるのですか?」
「もちろんよ!彼と一緒に、新しい化粧品の開発も進めるの」
私の瞳が、夢見るように輝いているのを、エマは嬉しそうに見つめていた。
婚約破棄は、私にとって終わりではない。始まりなのだ。
王都での生活、偽りの自分、退屈な日々。その全てにさよならを告げて、私は新しい世界へと旅立つのだ。
荷造りを終えた部屋は、がらんとしていた。けれど、私の心は希望で満ちあふれていた。
「さようなら、王都。私はもう、二度とあなたに縛られたりはしないわ」
朝日が差し込む窓辺で、私は晴れやかな気持ちでそう誓った。
「まあ、ブリーナお嬢様、もう荷造りをなさるのですか?」
私の専属侍女であるエマが、驚いたように目を丸くする。
「ええ、エマ。王都にはもう何の用もありませんもの。一刻も早く、あの空気の美味しい領地に帰りたいわ」
ドレスや宝飾品が詰められていくクローゼットを眺めながら、私は心底嬉しそうに言った。
婚約者時代に作らされた、華美で動きにくいドレスの数々。そのほとんどを「不要なもの」として仕分ける。
「あら、こちらのドレスは処分なさるのですか?殿下から贈られた、大変高価なものでは…」
「だからこそ不要なのよ、エマ。あの方の思い出の品など、持っているだけで気分が悪いわ」
私はあっさりと言い放つ。
エマは、私の言葉に少しだけ驚いた後、すぐに納得したように微笑んだ。
「かしこまりました。では、慈善団体に寄付するよう手配いたします」
「ええ、お願い。誰かが喜んでくれるなら、ドレスも浮かばれるでしょう」
エマは私が幼い頃から仕えてくれている、私の最大の理解者だ。私が王太子妃教育にどれほど辟易していたかも、アルフォンス殿下との関係がとっくに冷え切っていたことも、全て知っている。
だから、彼女は私が婚約破棄されたことを、少しも悲しんではいない。
「しかし、本当に宜しいのですか?王太子殿下も、リリアーナ様も、きっとお嬢様が泣き寝入りしたと思っておりますわよ」
「それで結構よ。惨めに捨てられた哀れな女。そう思わせておけば、これ以上余計なちょっかいを出してこないでしょうから」
私は窓の外、王宮の方角を眺めながら言った。
「私の戦場は、もうあのきらびやかな社交界ではないの。私の戦場は、クライネルトの領地。あそこには、やるべきことが山ほどあるわ」
特産品の開発、新しい農法の導入、寂れた地区の再活性化。私の頭の中には、領地を豊かにするためのアイディアがたくさん詰まっている。
これまで王太子妃教育にかまけて、なかなか本格的に着手できなかった計画の数々。これからは、思う存分それに打ち込めるのだ。
「領地にお戻りになったら、お嬢様はきっと水を得た魚のようになられるでしょうね」
エマが、楽しそうに笑う。
「ええ、その通りよ。ああ、楽しみだわ!まずは、放置していたハーブ園の拡張から始めないと」
「まあ、あの薬草の専門家の方を、またお呼びになるのですか?」
「もちろんよ!彼と一緒に、新しい化粧品の開発も進めるの」
私の瞳が、夢見るように輝いているのを、エマは嬉しそうに見つめていた。
婚約破棄は、私にとって終わりではない。始まりなのだ。
王都での生活、偽りの自分、退屈な日々。その全てにさよならを告げて、私は新しい世界へと旅立つのだ。
荷造りを終えた部屋は、がらんとしていた。けれど、私の心は希望で満ちあふれていた。
「さようなら、王都。私はもう、二度とあなたに縛られたりはしないわ」
朝日が差し込む窓辺で、私は晴れやかな気持ちでそう誓った。
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