6 / 8
第一部
第3話 『獅子の海(lion_of_the_sea)』-1-
しおりを挟む
風が心地よかった。
暖かな陽射しの中に、春のにおいがする。それが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
バサリと、一つ、洗濯物を翻す。
真っ白なシーツは太陽の光を浴びて、こちらも嬉しそうにキラキラと輝いた。
穏やかな昼の一時。
だがその時、天高く鳥の鳴き声がした。
それに空を仰いだ。
「……ルカ」
2、3度、ピュルリと声がして、空から一羽の鳩が現れた。
そしてその足にくくりつけられた物を見て、ふっとその顔から笑みが消えた。
風は心地いい。
けれどもそれは、ほんの数分前とは別のものに思える。
もう一度、空を仰いだ。
そして、陽射しに向かって歩き出した。
2
翌朝。
食堂の隅で、眠気覚ましの珈琲《コーヒー》を飲んでいると、飛《たかき》がフラフラとした足取りで現れた。
「おはよーさん」
瑛己《えいき》は、ふっと顔を上げると、「ああ」と小さく返事をした。
「……あぅ……何か、ちょーし悪いわ」
らしくなく神妙な様子に、瑛己は一つ瞬きをして、「二日酔いか?」と尋ねた。
結局昨夜、飛の〝空戦自論〟のようなものを延々と聞かされ……日付が変わってしばらく、瑛己は酒場に居座る事になった。
「聖さんも疲れているんだから」と秀一が無理になだめすかして宿舎へ引っ張っていってくれたからよかったものの。秀一がいなかったら、下手したら、朝までだって付き合わされたかもしれない。
「ちゃうちゃう。煙草がな、きれてもうた……一本めぐんで」
「悪い。俺は吸わない」
「煙草なしで、よう、素面《しらふ》でおれるなぁ……秀坊もお前も、尊敬してまうわ」
「そりゃどうも」
しゃーない、メシでも食うか……そう言って、背中を丸めて飛が立ち上がった時だった。
「飛! 聖さん!」
人のまばらな食堂のテーブルの向こうから、秀一が手を振っていた。
瑛己は返事の代わりに珈琲に口付けた。
飛は大きく息を吐くと、「朝っぱらから元気やなぁ」、シッシッと手を振った。
小走りで2人の元に駆け寄ると、
「飛、掲示板見た?」
掲示板とは、宿舎と本塔を結ぶ連結部分に設置された、各隊の召集等の連絡事項が書かれたボードだ。関係者は朝一番に閲覧を義務付けられている物である。
飛は「まだや。宿舎からここに直行したさかい」と言った。食堂は、本塔とは反対側に位置している。
瑛己も首を横に振った。彼もまた、目覚めの珈琲を優先した。
秀一はゴクリと唾を飲み込むと、声を低くしてこう言った。
「召集がかかってる。327飛空隊、0900時、第8会議室」
その言葉に、飛は目をキラリと輝かせた。「それは!」
「作戦命令、か」
飛は食堂のカウンターに飛びつくと、さっきまでの様子が嘘のように、朝から豪勢な注文を連呼した。
瑛己はそれに軽く苦笑すると、自分は軽めの朝食を頼んだ。
トーストとサラダ。昨日と同じメニューだった。
◇ ◇ ◇
「ん? 早いな」
瑛己と飛、秀一の3人が、北塔2階の第8会議室の扉を開けた時、先客が1人いた。
327飛空隊の一人、小暮 崇之(kogure_takayuki)。眼鏡をかけた、落ち着いた印象の男だった。
「早いっすね、小暮さん」
飛が笑うと、小暮は読んでいた本を閉じ、薄く笑った。「お前らも」
「さては、早ってジッとしていられなかったか」
「……それは飛だけです」
瑛己は溜め息混じりにそう言うと、手近にあった椅子に腰をかけた。
それに、秀一がハハハと笑った。飛は「あったり前や、ジッとなんかしてられるか!」と、蹴飛ばすようにテーブルに足を組んで座った。
しばらくして、同じく327のメンバーである短髪の男、元義 新(motoyosi_arata)がニヤニヤと笑いながら現れ、副隊長・風迫 ジンが仏頂面で現れた。
最後に姿を見せた、隊長・磐木 徹志の後ろには、『湊』基地総監・白河 元康の姿があった。
白河が上座に立った時、瑛己は飛の横顔をチラリと見て、こいつもたまには緊張するんだなと思った。
長テーブルに、上座から白河、磐木、風迫と順に席につき、一番下座を秀一がとった。
「さて」
総監・白河は柔らかな眼差しで、ゆっくりと全員を見回すと。
「今日集まってもらったのは、他でもない」
第327飛空隊、作戦任務を命ずる―――。その言葉に、誰かがゴクリと唾を飲み込む音がした。
「明後日の早朝、『永瀬《ながせ》』から『明義《みょうぎ》』にかけて輸送艇が2機飛ぶ」
白河はホワイトボードに貼られた地図を指しながら、ザッとまっすぐ経路を示した。
「そして今回は、その護衛の任を命ずる」
『永瀬』基地は『湊《みなと》』より少し北にある基地だ。『明義』はさらにその北に位置するが、『永瀬』と『明義』の間にはガッと切り削られたように海がある。
これを〝獅子《しし》の海〟と言う。
長いな、と瑛己は思った。
かつて彼がいた『笹川』から、この『湊』基地までの間には〝砂海〟と呼ばれる湾があった。
これは、湾岸沿いに行っても4時間あれば行ける距離だ。
だが……『永瀬』から『明義』にかけては、倍以上の距離がある上に、途中、広大な海を渡らなければならない。
〝獅子の海〟は広い。
瑛己は、胸に嫌な感覚を覚え、白河を見た。
他の隊員も同じ事を思ったのか、顔を見合わせた。
それに答えるように磐木が、白河に代わって重そうに口を開いた。
「今回の護衛の任務は、その輸送艇が狙われているという情報が入ったからだ」
「相手は?」
訊いたのは、飛だった。
磐木は飛を一瞥すると、低い声音でこう言った。
「【天賦(tenpu)】だ」
ザワリと、空気がわなないた。
【天賦】と呼ばれる空賊の事は、瑛己も噂に聞いた事があった。
空の闇を支配する、翡翠《ひすい》の集団。
その力は、空をはびこるすべての空賊の動きすら左右するといわれ、政府上層部が最も怖れている空賊だ。
そして何より、その飛空技術は一流。単独の〝渡り鳥〟などを除けば、最も厄介な相手である。
そしてその翡翠の集団をまとめるのが、
「で」風迫 ジンが、瞼を閉じたまま問い掛けた。
「無凱《むがい》は、出ると?」
無凱(mugai)。そう呼ばれる男である。
「それは未確認だ」
答えたのは白河だった。
「【天賦】総統・無凱。彼が今回、出撃するか否かに関して、詳しい情報はない」
「だが、ここの所無凱が出たという話を聞きません」
小暮が口を挟んだ。「今回の輸送艇の積荷は?」
「定期の衣料物資だ。『明義』を経由して、首都・『蒼光(saki)』へと運ばれる」
「ほな……【天賦】が狙うとしたら、やっぱり〝獅子の海〟か」
『明義』から『蒼光《さき》』にかけては、山間を縫うため、飛行には向かない。
となると〝獅子の海〟は絶好の空間となる。
「今回の作戦は、かなり重要な任務だ」
白河が、珍しく眉間にしわを寄せた。「私も上から、かなりすっぱく言われてね」
「輸送艇を2機、無事に『明義』に送り届ける事。よろしく頼む」
「全力を尽します」
磐木が敬礼した。
「うむ。私は諸君らの腕を信用している。―――だがくれぐれも気をつけて。無茶はするな」
瑛己の隣に座る、一番無茶をしそうな男が、軽く頷いた。
◇ ◇ ◇
白河が去り、残った327飛空隊のメンバーは、それぞれ色々な想いを胸に抱いていた。
「【天賦】か……また、厄介だな」
最初に口を開いたのは小暮だった。
「まぁ、無凱次第だな」
ジンが、ズボンから煙草を取り出し、磐木を向いた。
「今の所、奴が出る確率は?」
「五分と五分」
「フン……まぁ、出てきたら、その時はその時だが」
元義 新がふっと、秀一を見た。
「相楽は、どう思うんだ?」
その問いに、全員が一斉に秀一を見た。
〝予言屋〟。彼がそう呼ばれているという事を、瑛己は昨日酒場でチラリと聞いた。
何でも、何度か、彼が出撃前に言った事が当たったのだとか……ただ、詳しく聞く前に会がお開きになったので、それ以上の事はわからなかった。
秀一は少し戸惑った様子で、ぎこちなく笑うと、「えと」
「……わかりません」
「わからない?」
「はい……何か、今回は、よくわからないんです」
歯切れの悪い言葉に、瑛己以外の全員の顔が複雑な色を灯した。
「せやけど」
ポリポリと頭を描きながら、飛が明後日を見た。「俺は、会うような気ぃがする」
「何たってうちの隊には、〝運命の女神に好かれた男〟が入ったし。―――なぁ、瑛己ぃ」
トンと肩を叩かれ、瑛己は顔をしかめた。
……冗談じゃない。
しかし、その飛のその言葉に一同は、納得の面持ちになった。
「確かに……」
ちょっと待て。瑛己はとてつもなく嫌そうな顔をした。
初日から空賊に遭い、昨日飛と空戦をしたと思った矢先、出動命令。相手はそれも、最も危険で厄介な空賊・【天賦】。この上、無凱と遭遇なんぞしようものなら……。
「瑛己、宿命やわ、これは」
カカカと飛は笑った。
「お前は運がある。よかったやないか」
「……全然嬉しくない」
「なーに拗ねとん!! お前、初日っから空(ku_u)に会《お》うとって!! 文句言ったら、罰が当たるぞ!!」
「何だと!? 飛、今何て言った!?」
「それがさ、新さん、こいつ、ここにくる途中で―――」
瑛己は、頭を抱えたい心境になった。
罰が当たる? それならもう当たっているんじゃないのか?
しかし、自分が一体何をしたというのか。瑛己は、騒ぎ立てる327飛空隊の連中を無視して、大きく溜め息を吐いた……。
「ええか、瑛己」
仏頂面を浮べる瑛己に、飛は人差し指を立てて言った。
「翡翠の飛空艇が【天賦】や。やけどその中に、ひときわ輝く銀色の飛空艇がおったら。それが無凱や。絶対ちょっかい出したらアカン。とにかく逃げろ」
「……」
「下手に手ぇ出したら、即、あの世逝きや。それくらい、あいつの腕はハンパやない」
何人も、あいつの手にかかってるからな……誰かがポツリと呟いた。
「ともかく。無凱がおったら、俺に任せ」
得意顔でそう言う飛に、ジンが煙草を吹かしながらクッと笑った。
「バカが。飛、お前もだ。無凱に構うな」
灰皿にグッと煙草を押し付けながら、抑揚のない声で、ジンは言った。
「無凱が出たら、俺と磐木隊長で戦《や》る」
飛は「ちぇっ」と口を尖らせたが、それ以上何も言わなかった。
瑛己は飛のその態度に、少し驚いた。こいつの事だから、もう少し食い下がると思ったのだが……。
【天賦】の無凱。
その名を持つ飛空艇乗りに狙われて、無事に逃れた者はいないとか……かつて、討伐に当たった空軍部隊を、一人で20撃墜したとしたとか……そんな噂ならば聞いた事がある。
だが実物は。一体どんな飛空艇乗りなんだろうか?
そう思って、瑛己の脳裏を、白い飛空艇が掠めた。
「しかし、」
その時、ふっと小暮が髪を掻き上げながら言った。
「定期の衣料物資か。一体なぜ、【天賦】はそんなものを狙うんだろう」
そう言えば……と、秀一が口を開いた。
「変ですね。【天賦】は今まで、貨物船や輸送艇を狙ったりしてこなかった」
「ああ。政界や軍事関係、密輸、暗殺……奴らが動く時は決まって、何か大きな思惑がある時だ。例えて言うなら、世界を揺るがすような。何か大きな意図が、な」
「そういえば、白河総監は、やけに重要任務だと強調してたっけ」
大して気のない様子で、新が呟いた。
「……」
部屋が、静寂に包まれた。
それを破ったのは、磐木隊長その人だった。「ともかく」
「今、我々に与えられた任務は、輸送艇の護衛だ。そしてそれを狙う者がいる。我々は、それが誰であろうと、輸送艇を無事に『明義』基地へ送り届けなければならない」
それが、議論の終結の合図となった。
それから、具体的な作戦等の打ち合わせとなった。が、瑛己はそれを、何か胸に言いようのないものを覚えながら……ぼんやりと聞いていた。
◇ ◇ ◇
午前の会議を終え、会議室を出る時。瑛己は磐木に呼び止められた。
今から総監の所へ行け。短く言うと、後は何も言わず、背中を見せた。
何だろうか? 訝しがる瑛己に、横で聞いていた飛がなぜか面白そうにカカカと笑った。
「運命の女神が、まーた微笑んどるんちゃうか?」
……この上、どんな厄災があるというのか……気持ちの乗らないまま、瑛己は本塔へと向かった。
総監の部屋を訪ねると、白河が相変わらず人の良さそうな笑顔で迎えてくれた。
「聖君、昨日の飛行見たよ」
……瑛己は内心、ギクリと思った。
「申し訳ありません」
「ん? 何を謝る?」
「……命令に反し、基地に迷惑をかけるような飛行をしてしまいました」
すると、白河は大きく笑った。
「磐木に何か言われたのか? ハハハ……心配するな。磐木も若い頃は、大概無茶な事をした」
「……」
砕けた口調でそう言う白河に、瑛己は少し戸惑いを覚えた。
何と答えていいものかわからず、じっと彼を見た。すると、白河はスッと瞼を優しく細め、静かな口調でこう言った。
「327飛空隊のメンバーとはどうかね? 上手くやれそうか?」
「前途多難です」
本音だった。それにまた、白河は笑った。
「奴らも悪い連中じゃない。君ならきっと、大丈夫だろう」
「……はぁ」
「それで、今回の作戦、出立は?」
「明日の午後、1400です」
「うむ。くれぐれも気をつけてな」
「……はい」
白河は満足そうに笑うと、机の上にあった腕時計を取って、瑛己に渡した。
そこには瑛己の名前と、出身、生年月日、そして『湊』空軍基地 第327飛空隊 『七ツ』所属と掘り込まれていた。
これは、パイロットが配属と共に渡される物で、身分を証明するドッグタグの役割も担う物だった。
「期待している」
瑛己は敬礼した。
「最善を尽します」
そう言って、部屋を出た。
◇
瑛己が去って、白河は静かに瞼を伏せた。そして、
「まさか、こんな日がこようとはな」
軽く苦笑して、それから窓に目を向けた。
青い空に雲が、波のように幾重にも重なり、伸びていた。
「あの目……お前によく似てる」
意志の強さを現すような、燐とした光を持った目。そして、善も悪も、まっすぐに見晴かすような……あの瞳。
白河は、同じ光を持った者の事を思い、小さく息を吐いた。
「聖……」
その呟きは静かに、空に消えて行った。
暖かな陽射しの中に、春のにおいがする。それが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
バサリと、一つ、洗濯物を翻す。
真っ白なシーツは太陽の光を浴びて、こちらも嬉しそうにキラキラと輝いた。
穏やかな昼の一時。
だがその時、天高く鳥の鳴き声がした。
それに空を仰いだ。
「……ルカ」
2、3度、ピュルリと声がして、空から一羽の鳩が現れた。
そしてその足にくくりつけられた物を見て、ふっとその顔から笑みが消えた。
風は心地いい。
けれどもそれは、ほんの数分前とは別のものに思える。
もう一度、空を仰いだ。
そして、陽射しに向かって歩き出した。
2
翌朝。
食堂の隅で、眠気覚ましの珈琲《コーヒー》を飲んでいると、飛《たかき》がフラフラとした足取りで現れた。
「おはよーさん」
瑛己《えいき》は、ふっと顔を上げると、「ああ」と小さく返事をした。
「……あぅ……何か、ちょーし悪いわ」
らしくなく神妙な様子に、瑛己は一つ瞬きをして、「二日酔いか?」と尋ねた。
結局昨夜、飛の〝空戦自論〟のようなものを延々と聞かされ……日付が変わってしばらく、瑛己は酒場に居座る事になった。
「聖さんも疲れているんだから」と秀一が無理になだめすかして宿舎へ引っ張っていってくれたからよかったものの。秀一がいなかったら、下手したら、朝までだって付き合わされたかもしれない。
「ちゃうちゃう。煙草がな、きれてもうた……一本めぐんで」
「悪い。俺は吸わない」
「煙草なしで、よう、素面《しらふ》でおれるなぁ……秀坊もお前も、尊敬してまうわ」
「そりゃどうも」
しゃーない、メシでも食うか……そう言って、背中を丸めて飛が立ち上がった時だった。
「飛! 聖さん!」
人のまばらな食堂のテーブルの向こうから、秀一が手を振っていた。
瑛己は返事の代わりに珈琲に口付けた。
飛は大きく息を吐くと、「朝っぱらから元気やなぁ」、シッシッと手を振った。
小走りで2人の元に駆け寄ると、
「飛、掲示板見た?」
掲示板とは、宿舎と本塔を結ぶ連結部分に設置された、各隊の召集等の連絡事項が書かれたボードだ。関係者は朝一番に閲覧を義務付けられている物である。
飛は「まだや。宿舎からここに直行したさかい」と言った。食堂は、本塔とは反対側に位置している。
瑛己も首を横に振った。彼もまた、目覚めの珈琲を優先した。
秀一はゴクリと唾を飲み込むと、声を低くしてこう言った。
「召集がかかってる。327飛空隊、0900時、第8会議室」
その言葉に、飛は目をキラリと輝かせた。「それは!」
「作戦命令、か」
飛は食堂のカウンターに飛びつくと、さっきまでの様子が嘘のように、朝から豪勢な注文を連呼した。
瑛己はそれに軽く苦笑すると、自分は軽めの朝食を頼んだ。
トーストとサラダ。昨日と同じメニューだった。
◇ ◇ ◇
「ん? 早いな」
瑛己と飛、秀一の3人が、北塔2階の第8会議室の扉を開けた時、先客が1人いた。
327飛空隊の一人、小暮 崇之(kogure_takayuki)。眼鏡をかけた、落ち着いた印象の男だった。
「早いっすね、小暮さん」
飛が笑うと、小暮は読んでいた本を閉じ、薄く笑った。「お前らも」
「さては、早ってジッとしていられなかったか」
「……それは飛だけです」
瑛己は溜め息混じりにそう言うと、手近にあった椅子に腰をかけた。
それに、秀一がハハハと笑った。飛は「あったり前や、ジッとなんかしてられるか!」と、蹴飛ばすようにテーブルに足を組んで座った。
しばらくして、同じく327のメンバーである短髪の男、元義 新(motoyosi_arata)がニヤニヤと笑いながら現れ、副隊長・風迫 ジンが仏頂面で現れた。
最後に姿を見せた、隊長・磐木 徹志の後ろには、『湊』基地総監・白河 元康の姿があった。
白河が上座に立った時、瑛己は飛の横顔をチラリと見て、こいつもたまには緊張するんだなと思った。
長テーブルに、上座から白河、磐木、風迫と順に席につき、一番下座を秀一がとった。
「さて」
総監・白河は柔らかな眼差しで、ゆっくりと全員を見回すと。
「今日集まってもらったのは、他でもない」
第327飛空隊、作戦任務を命ずる―――。その言葉に、誰かがゴクリと唾を飲み込む音がした。
「明後日の早朝、『永瀬《ながせ》』から『明義《みょうぎ》』にかけて輸送艇が2機飛ぶ」
白河はホワイトボードに貼られた地図を指しながら、ザッとまっすぐ経路を示した。
「そして今回は、その護衛の任を命ずる」
『永瀬』基地は『湊《みなと》』より少し北にある基地だ。『明義』はさらにその北に位置するが、『永瀬』と『明義』の間にはガッと切り削られたように海がある。
これを〝獅子《しし》の海〟と言う。
長いな、と瑛己は思った。
かつて彼がいた『笹川』から、この『湊』基地までの間には〝砂海〟と呼ばれる湾があった。
これは、湾岸沿いに行っても4時間あれば行ける距離だ。
だが……『永瀬』から『明義』にかけては、倍以上の距離がある上に、途中、広大な海を渡らなければならない。
〝獅子の海〟は広い。
瑛己は、胸に嫌な感覚を覚え、白河を見た。
他の隊員も同じ事を思ったのか、顔を見合わせた。
それに答えるように磐木が、白河に代わって重そうに口を開いた。
「今回の護衛の任務は、その輸送艇が狙われているという情報が入ったからだ」
「相手は?」
訊いたのは、飛だった。
磐木は飛を一瞥すると、低い声音でこう言った。
「【天賦(tenpu)】だ」
ザワリと、空気がわなないた。
【天賦】と呼ばれる空賊の事は、瑛己も噂に聞いた事があった。
空の闇を支配する、翡翠《ひすい》の集団。
その力は、空をはびこるすべての空賊の動きすら左右するといわれ、政府上層部が最も怖れている空賊だ。
そして何より、その飛空技術は一流。単独の〝渡り鳥〟などを除けば、最も厄介な相手である。
そしてその翡翠の集団をまとめるのが、
「で」風迫 ジンが、瞼を閉じたまま問い掛けた。
「無凱《むがい》は、出ると?」
無凱(mugai)。そう呼ばれる男である。
「それは未確認だ」
答えたのは白河だった。
「【天賦】総統・無凱。彼が今回、出撃するか否かに関して、詳しい情報はない」
「だが、ここの所無凱が出たという話を聞きません」
小暮が口を挟んだ。「今回の輸送艇の積荷は?」
「定期の衣料物資だ。『明義』を経由して、首都・『蒼光(saki)』へと運ばれる」
「ほな……【天賦】が狙うとしたら、やっぱり〝獅子の海〟か」
『明義』から『蒼光《さき》』にかけては、山間を縫うため、飛行には向かない。
となると〝獅子の海〟は絶好の空間となる。
「今回の作戦は、かなり重要な任務だ」
白河が、珍しく眉間にしわを寄せた。「私も上から、かなりすっぱく言われてね」
「輸送艇を2機、無事に『明義』に送り届ける事。よろしく頼む」
「全力を尽します」
磐木が敬礼した。
「うむ。私は諸君らの腕を信用している。―――だがくれぐれも気をつけて。無茶はするな」
瑛己の隣に座る、一番無茶をしそうな男が、軽く頷いた。
◇ ◇ ◇
白河が去り、残った327飛空隊のメンバーは、それぞれ色々な想いを胸に抱いていた。
「【天賦】か……また、厄介だな」
最初に口を開いたのは小暮だった。
「まぁ、無凱次第だな」
ジンが、ズボンから煙草を取り出し、磐木を向いた。
「今の所、奴が出る確率は?」
「五分と五分」
「フン……まぁ、出てきたら、その時はその時だが」
元義 新がふっと、秀一を見た。
「相楽は、どう思うんだ?」
その問いに、全員が一斉に秀一を見た。
〝予言屋〟。彼がそう呼ばれているという事を、瑛己は昨日酒場でチラリと聞いた。
何でも、何度か、彼が出撃前に言った事が当たったのだとか……ただ、詳しく聞く前に会がお開きになったので、それ以上の事はわからなかった。
秀一は少し戸惑った様子で、ぎこちなく笑うと、「えと」
「……わかりません」
「わからない?」
「はい……何か、今回は、よくわからないんです」
歯切れの悪い言葉に、瑛己以外の全員の顔が複雑な色を灯した。
「せやけど」
ポリポリと頭を描きながら、飛が明後日を見た。「俺は、会うような気ぃがする」
「何たってうちの隊には、〝運命の女神に好かれた男〟が入ったし。―――なぁ、瑛己ぃ」
トンと肩を叩かれ、瑛己は顔をしかめた。
……冗談じゃない。
しかし、その飛のその言葉に一同は、納得の面持ちになった。
「確かに……」
ちょっと待て。瑛己はとてつもなく嫌そうな顔をした。
初日から空賊に遭い、昨日飛と空戦をしたと思った矢先、出動命令。相手はそれも、最も危険で厄介な空賊・【天賦】。この上、無凱と遭遇なんぞしようものなら……。
「瑛己、宿命やわ、これは」
カカカと飛は笑った。
「お前は運がある。よかったやないか」
「……全然嬉しくない」
「なーに拗ねとん!! お前、初日っから空(ku_u)に会《お》うとって!! 文句言ったら、罰が当たるぞ!!」
「何だと!? 飛、今何て言った!?」
「それがさ、新さん、こいつ、ここにくる途中で―――」
瑛己は、頭を抱えたい心境になった。
罰が当たる? それならもう当たっているんじゃないのか?
しかし、自分が一体何をしたというのか。瑛己は、騒ぎ立てる327飛空隊の連中を無視して、大きく溜め息を吐いた……。
「ええか、瑛己」
仏頂面を浮べる瑛己に、飛は人差し指を立てて言った。
「翡翠の飛空艇が【天賦】や。やけどその中に、ひときわ輝く銀色の飛空艇がおったら。それが無凱や。絶対ちょっかい出したらアカン。とにかく逃げろ」
「……」
「下手に手ぇ出したら、即、あの世逝きや。それくらい、あいつの腕はハンパやない」
何人も、あいつの手にかかってるからな……誰かがポツリと呟いた。
「ともかく。無凱がおったら、俺に任せ」
得意顔でそう言う飛に、ジンが煙草を吹かしながらクッと笑った。
「バカが。飛、お前もだ。無凱に構うな」
灰皿にグッと煙草を押し付けながら、抑揚のない声で、ジンは言った。
「無凱が出たら、俺と磐木隊長で戦《や》る」
飛は「ちぇっ」と口を尖らせたが、それ以上何も言わなかった。
瑛己は飛のその態度に、少し驚いた。こいつの事だから、もう少し食い下がると思ったのだが……。
【天賦】の無凱。
その名を持つ飛空艇乗りに狙われて、無事に逃れた者はいないとか……かつて、討伐に当たった空軍部隊を、一人で20撃墜したとしたとか……そんな噂ならば聞いた事がある。
だが実物は。一体どんな飛空艇乗りなんだろうか?
そう思って、瑛己の脳裏を、白い飛空艇が掠めた。
「しかし、」
その時、ふっと小暮が髪を掻き上げながら言った。
「定期の衣料物資か。一体なぜ、【天賦】はそんなものを狙うんだろう」
そう言えば……と、秀一が口を開いた。
「変ですね。【天賦】は今まで、貨物船や輸送艇を狙ったりしてこなかった」
「ああ。政界や軍事関係、密輸、暗殺……奴らが動く時は決まって、何か大きな思惑がある時だ。例えて言うなら、世界を揺るがすような。何か大きな意図が、な」
「そういえば、白河総監は、やけに重要任務だと強調してたっけ」
大して気のない様子で、新が呟いた。
「……」
部屋が、静寂に包まれた。
それを破ったのは、磐木隊長その人だった。「ともかく」
「今、我々に与えられた任務は、輸送艇の護衛だ。そしてそれを狙う者がいる。我々は、それが誰であろうと、輸送艇を無事に『明義』基地へ送り届けなければならない」
それが、議論の終結の合図となった。
それから、具体的な作戦等の打ち合わせとなった。が、瑛己はそれを、何か胸に言いようのないものを覚えながら……ぼんやりと聞いていた。
◇ ◇ ◇
午前の会議を終え、会議室を出る時。瑛己は磐木に呼び止められた。
今から総監の所へ行け。短く言うと、後は何も言わず、背中を見せた。
何だろうか? 訝しがる瑛己に、横で聞いていた飛がなぜか面白そうにカカカと笑った。
「運命の女神が、まーた微笑んどるんちゃうか?」
……この上、どんな厄災があるというのか……気持ちの乗らないまま、瑛己は本塔へと向かった。
総監の部屋を訪ねると、白河が相変わらず人の良さそうな笑顔で迎えてくれた。
「聖君、昨日の飛行見たよ」
……瑛己は内心、ギクリと思った。
「申し訳ありません」
「ん? 何を謝る?」
「……命令に反し、基地に迷惑をかけるような飛行をしてしまいました」
すると、白河は大きく笑った。
「磐木に何か言われたのか? ハハハ……心配するな。磐木も若い頃は、大概無茶な事をした」
「……」
砕けた口調でそう言う白河に、瑛己は少し戸惑いを覚えた。
何と答えていいものかわからず、じっと彼を見た。すると、白河はスッと瞼を優しく細め、静かな口調でこう言った。
「327飛空隊のメンバーとはどうかね? 上手くやれそうか?」
「前途多難です」
本音だった。それにまた、白河は笑った。
「奴らも悪い連中じゃない。君ならきっと、大丈夫だろう」
「……はぁ」
「それで、今回の作戦、出立は?」
「明日の午後、1400です」
「うむ。くれぐれも気をつけてな」
「……はい」
白河は満足そうに笑うと、机の上にあった腕時計を取って、瑛己に渡した。
そこには瑛己の名前と、出身、生年月日、そして『湊』空軍基地 第327飛空隊 『七ツ』所属と掘り込まれていた。
これは、パイロットが配属と共に渡される物で、身分を証明するドッグタグの役割も担う物だった。
「期待している」
瑛己は敬礼した。
「最善を尽します」
そう言って、部屋を出た。
◇
瑛己が去って、白河は静かに瞼を伏せた。そして、
「まさか、こんな日がこようとはな」
軽く苦笑して、それから窓に目を向けた。
青い空に雲が、波のように幾重にも重なり、伸びていた。
「あの目……お前によく似てる」
意志の強さを現すような、燐とした光を持った目。そして、善も悪も、まっすぐに見晴かすような……あの瞳。
白河は、同じ光を持った者の事を思い、小さく息を吐いた。
「聖……」
その呟きは静かに、空に消えて行った。
0
あなたにおすすめの小説
碧天のノアズアーク
世良シンア
ファンタジー
両親の顔を知らない双子の兄弟。
あらゆる害悪から双子を守る二人の従者。
かけがえのない仲間を失った若き女冒険者。
病に苦しむ母を救うために懸命に生きる少女。
幼い頃から血にまみれた世界で生きる幼い暗殺者。
両親に売られ生きる意味を失くした女盗賊。
一族を殺され激しい復讐心に囚われた隻眼の女剣士。
Sランク冒険者の一人として活躍する亜人国家の第二王子。
自分という存在を心底嫌悪する龍人の男。
俗世とは隔絶して生きる最強の一族族長の息子。
強い自責の念に蝕まれ自分を見失った青年。
性別も年齢も性格も違う十三人。決して交わることのなかった者たちが、ノア=オーガストの不思議な引力により一つの方舟へと乗り込んでいく。そして方舟はいくつもの荒波を越えて、飽くなき探究心を原動力に世界中を冒険する。この方舟の終着点は果たして……
※『side〇〇』という風に、それぞれのキャラ視点を通して物語が進んでいきます。そのため主人公だけでなく様々なキャラの視点が入り混じります。視点がコロコロと変わりますがご容赦いただけると幸いです。
※一話ごとの字数がまちまちとなっています。ご了承ください。
※物語が進んでいく中で、投稿済みの話を修正する場合があります。ご了承ください。
※初執筆の作品です。誤字脱字など至らぬ点が多々あると思いますが、温かい目で見守ってくださると大変ありがたいです。
巻き込まれて異世界召喚? よくわからないけど頑張ります。 〜JKヒロインにおばさん呼ばわりされたけど、28才はお姉さんです〜
トイダノリコ
ファンタジー
会社帰りにJKと一緒に異世界へ――!?
婚活のために「料理の基本」本を買った帰り道、28歳の篠原亜子は、通りすがりの女子高生・星野美咲とともに突然まぶしい光に包まれる。
気がつけばそこは、海と神殿の国〈アズーリア王国〉。
美咲は「聖乙女」として大歓迎される一方、亜子は「予定外に混ざった人」として放置されてしまう。
けれど世界意識(※神?)からのお詫びとして特殊能力を授かった。
食材や魔物の食用可否、毒の有無、調理法までわかるスキル――〈料理眼〉!
「よし、こうなったら食堂でも開いて生きていくしかない!」
港町の小さな店〈潮風亭〉を拠点に、亜子は料理修行と新生活をスタート。
気のいい夫婦、誠実な騎士、皮肉屋の魔法使い、王子様や留学生、眼帯の怪しい男……そして、彼女を慕う男爵令嬢など個性豊かな仲間たちに囲まれて、"聖乙女イベントの裏側”で、静かに、そしてたくましく人生を切り拓く異世界スローライフ開幕。
――はい。静かに、ひっそり生きていこうと思っていたんです。私も.....(アコ談)
*AIと一緒に書いています*
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる