身代わりにと差し出された悪役令嬢は上主である、公爵様に可愛がられて~私は貴方のモノにはなれません~

一ノ瀬 彩音

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どうして今まで忘れていたのだろうか不思議に思うくらい鮮明に蘇ってきた記憶の数々に戸惑いながらも
一つ一つ確認していくうちに徐々にではあるが記憶が鮮明になっていき、それと同時に様々な疑問が浮かんできた。
まず第一にここはどこなのかということだが、少なくとも自分の知っている場所ではないことだけは明らかだった。
「ここは一体どこなんですか?」
私が尋ねると、レリオ様は少し考える素振りを見せた後で答えてくれた。
「ふむ、そうだな、簡単に言えば君の夢の中といったところかな」
それを聞いて納得したと同時に落胆してしまった。
なぜなら、これが現実でないということはつまり、
私はまだレリオ様と結ばれることはないということを意味しているからである。
そんなことを考えている間にも話は進んでいく。
「まあ、そう落ち込むなよ、どうせこれはただの夢なんだからな」
彼の言葉を聞いた瞬間、私はハッとした。確かにその通りだと思ったからだ。
それならばいっそ楽しんでしまえばいいのではないかと思った私は、思い切って彼に甘えることにした。
「じゃあ、もっとイチャイチャしてください!」
「まったく、仕方ない奴だなあ」
呆れたように言いつつも満更でもない様子の彼が愛おしく思えてならなかった。
それからしばらくの間、彼との楽しい時間を過ごしていた私であったが、不意に眠気に襲われてしまう。
どうやら時間切れのようだ。
名残惜しそうにしていると、彼はそっと抱きしめてくれて耳元で囁いた。
「続きはまた明日だ」
そう言って額に口づけを落とすと部屋を出ていったのだった。
残された私はしばらく呆然としていたが、やがて我に帰ると恥ずかしさのあまり枕に顔を埋めたままバタバタしていたという。
翌朝目が覚めるとそこは見慣れた自分の部屋でほっと安堵したものの、
昨日のことを思い出して悶々としていたところにメイドが入ってきたことで我に返った私は慌てて支度を始めたのだが、
「お嬢様、おはようございます、本日のご予定ですが、午後からレリオ様とお会いになるそうです、ですのでお早めにお召し替えをお願い致しますね?」
と言われてしまったものだから余計に意識してしまって大変だったことを覚えている。
そんなこんなで準備を終えた私は迎えに来た馬車に乗り込み、屋敷を後にした。
目的地に到着するまでの間ずっと緊張していたのだが、いざ着いてみると意外にもあっさりとしたもので拍子抜けした気分だった。
レリオ様のお屋敷は思っていたよりも大きくて立派な建物だったので驚きつつも中に入ると使用人に案内される形で応接室へと向かった。
そして部屋に入るなり中にいた人物と目が合った瞬間に固まってしまった。
何故ならそこにいたのは他ならぬ私の想い人であったからです!
まさかこんな形で再会することになるなんて思いもしなかっただけに動揺を隠しきれないまま立ち尽くしていると、
レリオ様が苦笑しながら話しかけてきた。
「そんなに固くならなくてもいいんだよ、子猫ちゃん」
そう言われても無理なものは無理である。
何しろ相手はこの国随一の美男子と名高いレリオ様なのだ。
「ほら、おいで」
そう言って両手を広げる姿に抗えずおずおずと近づいていくとそのまま抱きしめられてしまったではないか。
突然のことに頭が真っ白になってしまった私だったが、次の瞬間には唇に柔らかい感触を感じていてキスされているのだと
理解するまでに数秒を要したほどだった。
その間、何度も角度を変えながら啄むような口付けを繰り返していたのだが、ようやく解放された時にはすっかり蕩けてしまっていた。
その様子を満足げに眺めていた彼は満足げな笑みを浮かべると言った。
「ふふ、可愛いね、子猫ちゃんは本当に素直でいい子だね、ご褒美をあげなくちゃあいけないかなぁ?」
そう言って再び顔を寄せてくる彼を拒むことなどできるはずもなく、されるがままになっていると今度は首筋に吸い付かれてしまった。
チクリとした痛みが走った直後、そこを舐められてゾクゾクしてしまう自分がいるのだった。
その後、しばらくして正気に戻った私は羞恥心に苛まれることになったが、同時に幸福感に包まれていることにも気付いていた。
「あぁ……もうダメぇ……」
あまりの快感に耐えられなくなった私はその場に崩れ落ちるように倒れ込んでしまった。
そんな彼女を抱き留めるとお姫様抱っこをしてベッドまで運んでくれたようだ。
その優しさに感謝しつつも、これから起こるであろう出来事を想像してしまい期待せずにはいられなかった。
そんなことを考えているうちにいつの間にか眠ってしまったらしい。
気がつくと朝になっていたようで、隣には彼の姿はなかった。
代わりにテーブルの上に書き置きが残されていることに気付く。
そこにはこう書かれていた。
『おはよう、よく眠れたかい?昨日は疲れただろうからゆっくり休むといい、朝食を用意しておいたからね、あとで食べにくるといい』
それを見て思わず笑みがこぼれた。やはり優しい人なのだと改めて実感させられたからだ。
「ありがとうございます、必ず伺いますね」
感謝の言葉を述べると身支度を整えてから食堂へと向かうことにした。
そして、いよいよその時がやってきた。
ホールの中央に進み出た私たちに向かって盛大な拍手が巻き起こった。
周囲から向けられる視線を感じながらも堂々としていなければならないと思うと自然と背筋が伸びるような気がした。
そんな中、ついに私たちの出番がやってくる。
曲が流れ始め、それに合わせてステップを踏み始めた私たちは、最初はぎこちなかったものの段々と
慣れてくるとスムーズに踊れるようになっていった。
そうして一曲目が終わり、続いて二曲目が始まったところで事件は起こった。
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