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そして、朝食を食べ始めるとルミナスさんが話しかけてくれたので、会話をしながら食事を楽しんだ。
ちなみに今朝のメニューは、トーストに目玉焼き、サラダ、スープというシンプルなものだったが、どれも美味しかったので満足することができた。
食べ終わると食器を片付けてから部屋に戻ると、早速魔法の練習を始めた。
まず最初に試したのは転移魔法だ。
この魔法は以前にも使ったことがあったので問題なく使うことができた。
だが、問題はここからだった。
次にイメージしたのが、空間を飛び越えるというものだったので、それを試してみることにした。
すると、次の瞬間には見知らぬ場所に立っていたのである。
そこは見渡す限り真っ白な世界だった。地面も空も全てが白一色に染まっているため、距離感が全く掴めない不思議な場所だった。
そんな中で俺は呆然と立ち尽くしていた。
そんな時、不意に背後から声をかけられた。
振り返るとそこには、銀髪の少女が立っていた。
見た目年齢は10歳くらいだろうか、可愛らしい顔立ちをしており、服装もフリルのついたドレスのようなデザインになっていた。
この子がアレンさんの娘だと知って驚いていると、さらに驚くべきことを言ってきたのだ。
「実はお願いがあるんです」
そう切り出した彼女は、真剣な表情になると話を続けた。
俺は固唾を呑んで見守ることしかできなかった。
(一体どんな内容なんだ……?)
緊張のあまり心臓の音がバクバクと聞こえてくるような気がしたが、意を決して尋ねてみた。
すると、返ってきた答えは予想外のものだった。
なんと彼女は俺の子供を産みたいというのだ!
それを聞いた瞬間、頭が真っ白になってしまったが、何とか正気を取り戻すと聞き返すことにした。
俺が唖然としていると、彼女は恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。
「実は、私……前からあなたのことが好きだったの!」
その言葉を聞いた瞬間、心臓が止まりそうになった。
(えっ!? 今なんて言ったんだ? 好きって聞こえた気がするけど……いやいやまさかそんなはずはないよな)
そう思いつつも確認してみることにした。
「えっと……それってどういう意味ですか?」
俺が恐る恐る尋ねると、彼女は頬を赤く染めながら答えた。
「だから、私はあなたの子供が欲しいって言ってるのよ!」
その言葉に、今度こそ本当に心臓が止まりそうになった。
まさかそんなことを言われるとは夢にも思っていなかったからだ。
しかし、それと同時に嬉しさが込み上げてきたのも事実だった。
(そうか、この子は俺のことを好きでいてくれたんだな……)
そう思うと胸が熱くなった気がした。
そうして、一夜を一緒に過ごすと夜が明けて行くのでした。
翌朝になると、お互い裸のまま抱き合っていました。
(柔らかい肌だなぁ……それにいい匂いもするし……ずっとこうしていたい気分だ)
そんなことを考えながら幸せな気分に浸っていると、不意に彼女が顔を上げました。
その顔は赤く染まっていてとても可愛かったです。
俺は我慢できずにキスをすると、そのまま押し倒す形で覆い被さりました。
そして、美味しく食べてしまうといい加減に起きようと思いシャワーを浴びてから旅支度をする為に服を着ました。
「じゃあ、行ってくる」
それだけ言うと部屋から出て行こうとしたのですが、腕を掴まれてしまいました。
振り向くとそこにいたのはアリアで、なぜか悲しげな表情をしていました。
どうしたのかと首を傾げていると、意を決したように口を開いたのです。
「結婚してくれると」
「言ってないよ、俺には奥さんがいるんだ、君では無い、元・魔王・リュートの妻アリアが俺の妻だ、それは君では無い、抱いてあげたんだから、大切にしなさい、しかし、結婚はしないよ、ではいい旅を」
そう告げると背を向ける、後ろから抱きしめられた、
そろそろ限界なんだけどな、そう思いながらイライラした様に
「離れないか、殺すぞ」
「元魔王様に殺されるのなら本望ですわ」
そう言いながらぎゅっと抱きしめてくる
(コイツ!完全にイカれてやがる!)
内心焦りつつ俺はこう言った。
「炎よ、我が眼前のこの女を牽制せよ、フレイム」
炎の玉が彼女の眼前に出現したかと思うと、一直線に飛んでいき命中する。
ドォン!という爆発音と共に爆風が起こるが構わず次の魔法を詠唱する。
「雷光となりて、彼の者を貫け!ライトニングアロー」
指先から放たれた雷撃が彼女に向かって飛んでいくが寸前で躱されてしまう。
その後も次々と攻撃魔法を放つが一向に当たる気配がない。
むしろこちらが追い詰められつつある状況に陥っていた。
というのも彼女の動きが素早くて狙いが定まらない上に、こちらの動きを読んでいるかのように攻撃を回避されてしまっているのだ。
このままでは埒が明かないと思い、一度距離を取ることにした。
「チッ、面倒な女め、望みを言え」
そう吐き捨てるように言いながら睨みつけると、ニヤリと笑みを浮かべるのが見えた。
その瞬間背筋がゾクッとする感覚に襲われた俺は慌ててその場から飛び退くとほぼ同時に先程までいた場所に氷の槍が出現していた。
どうやら今のは避けなければ串刺しになっていただろうと思い冷や汗を流すと同時に反撃に出ることにした。
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