悪役令嬢は悪役になりきれず、隣国の王子に溺愛される!

一ノ瀬 彩音

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あれだけ求めあったにも関わらず自分の体は何も応えてくれずに終わったという事実だけが残り、
それがユリアナの心に大きな傷をつけていったのだ。
その後ユリアナの部屋にやってきた者は、アベル本人であった。
アベルは事前に今日会いに来ることを約束していたのだから当然と言えば当然のことである。
ちなみにアベルが来ることを知っていたのにもかかわらずなぜ急に離れることになったかと言うと
それに関しては単純な話であり、ユリアナ自身あまり人に見せたくない姿を
見られたくなかったという理由であった。
だから、ユリアナはアベルのことを出迎えるために急いで着替えを行うことにした。
そして準備を終えたタイミングでアベルがやってきた。
ユリアナの格好を見たアベルは一瞬固まったが直ぐに我を取り戻して話しかけてくる。
「こんにちは、ユリアナ。体調はどうだい?」
それに対してユリアナは特に問題ないと伝えてから、
アベルに席につくことを勧めて自分も座って向かい合う形となる。
そしてアベルは早速本題に入ることにして、
ユリアナの目をまっすぐに見つめながら自分の気持ちを伝え始めた。
その言葉はアベルにとってみれば、自分の想いを全て伝えた上での行動であり、
それはある意味ユリアナへの愛の気持ちとも言えるものであった。
アベルのその行動にユリアナは最初戸惑っていたけど、徐々に落ち着いてきて、
真剣に考えることが出来ていた。
アベルの言葉は嬉しくもあったのだけれど、それ以上に不安を感じずにはいられなかったのだ。
だって、あまりにも都合が良すぎると思えたから。
ユリアナの知っているアベルという人物は自分のような女を好きになることは無いと思っていた。
だから、アベルが告白してくれた時は信じられなかった。
でも、よく考えてみたのだ。
アベルが自分のことを好きだと言ってくれるということは、少なくとも嫌われてはいないということ。
そして、自分のどこが好きなのかということを説明してくれた。
だから、信じたいと思えるようになっていたのだ。
だけど、どうしても確かめたくなってしまいアベルに尋ねてしまう。
どうして、自分のことを好きになってくれるようになったかということを。
その質問に対してアベルは自分がユリアナの優しさに惚れたことを伝えた。
その話はユリアナにとっても意外で、とても嬉しいことだった。
今まで誰かに優しくしたことは一度も無かった。
だけど、いつの間にかなんでそんなことをやっていたんだろうと思うくらい自然に
そういうことを行ってしまっている自分に気がついた。
そういえばアベルと一緒にいる時もそうだったかもしれないと思い返してみるが、
自分ではそんなつもりはなかったのに、自然と誰かのために動いてしまうことが増えていたことに気がつく。
そう考えたユリアナはこの気持ちを大事にするべきだと感じ、その気持ちをアベルに伝えることにした。
「アベル……私、あなたのおかげで、今まで生きてきて初めて誰かを愛せるかもしれないと、
そう思うことができたんです。本当に感謝しています。
あなたの気持ちはとてもうれしかった。
こんな私でよければ喜んでお受けいたします」
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