悪役令嬢は悪役になりきれず、隣国の王子に溺愛される!

一ノ瀬 彩音

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「みんな落ち着いてくれ。確かにユリアナは少し変わっているけどそれは彼女の魅力の一つでもあるんだ。
それに今はショックな出来事があったから冷静さを欠いているだけに過ぎないはずだ。
だからもう少しだけ待って欲しい。頼む」
頭を下げるアベルに対して最初に駆け出そうとしていた人物は慌てるものの、
周りの者はどうしたらいいのか分からず戸惑っている様子であったが一人の人物が前に出てきて答えを出す。
それはアルフでありその答えというものはアベルに任せるということであった。
それに対してアベルは何も言わずにありがとうと言い残してからユリアナを追って走り去って行った。
一方その頃、一人になったユリアナは自室で自分のしてしまったことについて思い悩んでいた。
「私はなんてことを言ってしまったのでしょう。
あれほどまでにアベルが想ってくれていたというのに、それなのに、あんな風に拒絶してしまうなど、
私にはまだ早かったのかもしれません。
やはり、私がこんな体である以上アベルに迷惑をかけてしまうことになるのでしょうか。
いえ、それ以前に私なんかよりももっと素敵な人がきっとアベルの前に現れて、
そして、アベルは私を捨ててしまうのではないのだろうか?」
ユリアナは不安に押しつぶされそうになってしまう。
だけど、
「アベルに会って謝らないければいけません。例えどんな結末になろうとも、
このまま終わらせては駄目な気がします。
アベル、どうか無事であってください。
そうでないと、今の私のように不安な気持ちになってしまいますから。
だから、お願い、アベルを助けてあげて。
アベル、あなたを信じています。
アベル、ごめんなさい。
でも、それでも、アベルのことが好きなんです。
アベル!  だから、助けて、アベル!」
そう叫んだ瞬間ユリアナの中で不思議なことが起こった。
まるで自分の中にあった暗い感情が消え去り、
「大丈夫だよ、ユリアナ。俺はここにいるからさ」
(えっ?)
突然の声の方に振り返るとそこにはアベルが立っていた。
その姿を見た瞬間ユリアナの目からは大粒の涙を流していたのだった。
そしてユリアナの元にたどり着いた時、アベルはユリアナの唇を奪うと自分の想いをぶつけることにした。
その言葉を聞いたユリアナがどのような行動に出るか分からないが、
それでも伝えないといけないと思ったからだ。
それからアベルはユリアナのことを優しく抱きしめるとしばらくしてからユリアナが話を始めるのだった。
その話を一言一句聞き逃さないようにとユリアナの瞳を見つめながら聞いていく。
その話はユリアナにとってみれば衝撃的なものであったのと同時に、
「どうして今まで気づかなかったんだろう。私も、私も、アベルのことが好き。
初めて出会った時から好きになっていたんだと思う。
だけど、この気持ちを自覚するのが怖くて、気付かないふりをしていたんだと思う。
だけど、その気持ちはもう隠す必要がなくなったんだよね。
だって、アベルが好きだと言ってくれたんだもん。
アベルが私を好きになってくれるのなら、私もアベルのことを愛する資格があるんだと思う。
アベル、私もあなたのことが好きで好きでたまらない。
アベル、私をもらって下さい。
アベル、私をいっぱい可愛がってほしい。
アベル、私をアベルだけのものにしてほしい。
アベル、私のことを愛してください!」
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