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激突Ⅲ
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「撃てー!」
ラドクルスの合図で敵の大群は、一斉に矢やスキルを繰り出してきた。
「ノア!」
「分かってるよ。ったく雑魚を庇うのは大変だな」
ノアがそう言ってこの戦場全てのモノを対象に、ユニークスキル時間の錯覚を放った。全てのスローの世界の中で、我等だけは正常な動きを行う。
「地獄の業火に焼き払われるがいい。地獄の火炎玉!」
我は上空に直径50mほどの巨大な火の玉を出した。それほど力んでおらず、MPも半分以上残している筈が、思った以上の大きだった。そして、この火の玉は太陽の熱さをも凌ぐ。
我の玉がゆっくりと帝国兵と連合軍に襲い掛かった。そして、彼らのスキルは我によっていくつかは無効化された。
そのゆるりと感じる時間で絶望を胸に刻むがよい。
スキルを放っていた兵士共は、我の地獄の火炎玉を見て、攻撃するより逃げるに専念していた。当然のようにパニックを起こしていることから、統率力なんてものはない。
そして彼等を一気に飲み込んだ。地獄の火炎玉は地面に触れると、山火事ならぬ丘火事を起こして、敵兵50,000のうち、10,000程は消し炭になった。勿論このスキルは熱無効Ⅴ、熱変動耐性Ⅴがあればダメージを負うことはないが、我の死の灰のスキル効果で、普通の人間であれば触れた時点で灰になる。
「流石ですね。俺も負けてはいられない」
ノーディルスは我を褒めるなり、右の人差し指を額に当てた。
「こっちの姿のほうが本領発揮できるんですよ。指輪のお陰で集中力も高まります」
いや、めちゃくちゃ喋っていますけど。と――。思っていたが禍々しいオーラが右指に一点集中していた。あれ? このアンデッド我と同等くらいだったりする?
「死絶」
ノーディルスはそう唱えると、その禍々しいオーラが集中した右指を左から右に真っすぐ引っ張った。もっと簡単に言うと漢字の一を空に描いたのだ。
すると、敵兵の数百人が、上半身と下半身が2つに分かれていた。我が言うのも何だが、厨二病臭満載のアクティブスキルの威力は半端じゃなかった。
そして、そのスキルで敵が混乱の渦中にあるなか、巨人化のクリンコフが敵陣のど真ん中に着地して、数百人の敵兵を踏みつけて殺した。
敵兵は恐れながらもクリンコフに集中攻撃を放った。
「ネオン。 強化だ」
ノーディルスの指示に、ネオンは防御系の強化をクリンコフにかける。集中攻撃をされてもビクともしない全身鋼鉄のような彼には、ダメージを与えることなど到底できない。
そのクリンコフに集中しているなか、我等の同胞達がたたみかけ始めた。剣や槍で己の行く手を阻む輩に、容赦なく斬りかかっていた。勢いづいて前衛が崩れかけていることから、彼等の士気が相当高いものだと再認識させられる。
「これは私の出番は無さそうですね」
ティラトンはそう言って剣を納めていた。まあ今の彼等の勢いならそう思うのが妥当だろ。ほら――。クリンコフが拳に強力なパワーを溜め込んでいる。
「彗星撃!」
光る拳を地面に叩きつけた。一瞬何が起きたか分からなかったが、彼がジャンプで別のところに移動したのですぐ分かった。
先程のパンチで地盤沈下を起こして、数千人の敵兵を奈落の底へ葬ったのだ。
まるで戦神の如く暴れるクリンコフに、元仲間だったクラッツとイーナは顔が強張っていた。
しかし、敵も黙っていなかった。ラドクルスが手を向けると、その部下達もクリンコフに手を向けた。同時に毛穴という毛穴から血が噴出してクリンコフがダウンした。
「今のスキルはヤバいですね」
「そうだな。風のスキルでクリンコフの体の内から破壊したような感じだ。ネオンの強化を見破った観察眼は帝国軍の騎士団長というだけはあるな」
「そうですね。どうされますか?」
「無論我が助けに行く。うぬは我を遠距離攻撃で支援してくれ」
「お任せ下さい」
我は翼を大きく羽ばたかせて、クリンコフがいる敵陣に突っ込んだ。一目で分かったがダメージが大きくて巨人化が解け始めているようだ。
敵兵は我に向かって掌を向けて来た。我も体内に溜め込んでいる火力を喉元まで準備していた時だった。
邪悪なエネルギーの矢が雨のように降り注ぎ、クリンコフの周りにいる敵兵は、腹部やら頭やらにそのエネルギーが突き刺さり次々と絶命した。足に刺さっても死ぬことはないのだが、このスキルの恐ろしいところは、刺さった対象者は瞬時にミイラ化するところだ。恐らく、体内の水分を、あのエネルギーの矢が吸い上げているのだろう。うむ。スキル名が気になる。何気にここまで強いアンデッドを見るのは初めてだしな。
我はクリンコフの周りにいる敵兵に、追い打ちをかけるように紅炎放射を放出した。これもまた太陽の温度に近い強烈な火炎放射だ。敵はみるみる消し炭になっていく。
「すまない」
「ネオンに治療を行ってもらうがよい」
我はクリンコフを背に乗せて味方陣営へと引き返した。背に乗せた頃のクリンコフは既に元の姿に戻っていたので、ダメージはやはり大きかったようだ。命を落とすことはないだろうが、敵の追い打ちがやはり目障りだ。
我は一度振り返り――。
「龍の咆哮!」
我の口からは、高音を立てながら放出された赤色のエネルギー波は、全ての攻撃を無効にして敵兵達を蹴散らした。
「戻るぞ」
「助かる」
敵を無力化したことを確認しながら我は味方陣営に引き返すことに成功した。
ラドクルスの合図で敵の大群は、一斉に矢やスキルを繰り出してきた。
「ノア!」
「分かってるよ。ったく雑魚を庇うのは大変だな」
ノアがそう言ってこの戦場全てのモノを対象に、ユニークスキル時間の錯覚を放った。全てのスローの世界の中で、我等だけは正常な動きを行う。
「地獄の業火に焼き払われるがいい。地獄の火炎玉!」
我は上空に直径50mほどの巨大な火の玉を出した。それほど力んでおらず、MPも半分以上残している筈が、思った以上の大きだった。そして、この火の玉は太陽の熱さをも凌ぐ。
我の玉がゆっくりと帝国兵と連合軍に襲い掛かった。そして、彼らのスキルは我によっていくつかは無効化された。
そのゆるりと感じる時間で絶望を胸に刻むがよい。
スキルを放っていた兵士共は、我の地獄の火炎玉を見て、攻撃するより逃げるに専念していた。当然のようにパニックを起こしていることから、統率力なんてものはない。
そして彼等を一気に飲み込んだ。地獄の火炎玉は地面に触れると、山火事ならぬ丘火事を起こして、敵兵50,000のうち、10,000程は消し炭になった。勿論このスキルは熱無効Ⅴ、熱変動耐性Ⅴがあればダメージを負うことはないが、我の死の灰のスキル効果で、普通の人間であれば触れた時点で灰になる。
「流石ですね。俺も負けてはいられない」
ノーディルスは我を褒めるなり、右の人差し指を額に当てた。
「こっちの姿のほうが本領発揮できるんですよ。指輪のお陰で集中力も高まります」
いや、めちゃくちゃ喋っていますけど。と――。思っていたが禍々しいオーラが右指に一点集中していた。あれ? このアンデッド我と同等くらいだったりする?
「死絶」
ノーディルスはそう唱えると、その禍々しいオーラが集中した右指を左から右に真っすぐ引っ張った。もっと簡単に言うと漢字の一を空に描いたのだ。
すると、敵兵の数百人が、上半身と下半身が2つに分かれていた。我が言うのも何だが、厨二病臭満載のアクティブスキルの威力は半端じゃなかった。
そして、そのスキルで敵が混乱の渦中にあるなか、巨人化のクリンコフが敵陣のど真ん中に着地して、数百人の敵兵を踏みつけて殺した。
敵兵は恐れながらもクリンコフに集中攻撃を放った。
「ネオン。 強化だ」
ノーディルスの指示に、ネオンは防御系の強化をクリンコフにかける。集中攻撃をされてもビクともしない全身鋼鉄のような彼には、ダメージを与えることなど到底できない。
そのクリンコフに集中しているなか、我等の同胞達がたたみかけ始めた。剣や槍で己の行く手を阻む輩に、容赦なく斬りかかっていた。勢いづいて前衛が崩れかけていることから、彼等の士気が相当高いものだと再認識させられる。
「これは私の出番は無さそうですね」
ティラトンはそう言って剣を納めていた。まあ今の彼等の勢いならそう思うのが妥当だろ。ほら――。クリンコフが拳に強力なパワーを溜め込んでいる。
「彗星撃!」
光る拳を地面に叩きつけた。一瞬何が起きたか分からなかったが、彼がジャンプで別のところに移動したのですぐ分かった。
先程のパンチで地盤沈下を起こして、数千人の敵兵を奈落の底へ葬ったのだ。
まるで戦神の如く暴れるクリンコフに、元仲間だったクラッツとイーナは顔が強張っていた。
しかし、敵も黙っていなかった。ラドクルスが手を向けると、その部下達もクリンコフに手を向けた。同時に毛穴という毛穴から血が噴出してクリンコフがダウンした。
「今のスキルはヤバいですね」
「そうだな。風のスキルでクリンコフの体の内から破壊したような感じだ。ネオンの強化を見破った観察眼は帝国軍の騎士団長というだけはあるな」
「そうですね。どうされますか?」
「無論我が助けに行く。うぬは我を遠距離攻撃で支援してくれ」
「お任せ下さい」
我は翼を大きく羽ばたかせて、クリンコフがいる敵陣に突っ込んだ。一目で分かったがダメージが大きくて巨人化が解け始めているようだ。
敵兵は我に向かって掌を向けて来た。我も体内に溜め込んでいる火力を喉元まで準備していた時だった。
邪悪なエネルギーの矢が雨のように降り注ぎ、クリンコフの周りにいる敵兵は、腹部やら頭やらにそのエネルギーが突き刺さり次々と絶命した。足に刺さっても死ぬことはないのだが、このスキルの恐ろしいところは、刺さった対象者は瞬時にミイラ化するところだ。恐らく、体内の水分を、あのエネルギーの矢が吸い上げているのだろう。うむ。スキル名が気になる。何気にここまで強いアンデッドを見るのは初めてだしな。
我はクリンコフの周りにいる敵兵に、追い打ちをかけるように紅炎放射を放出した。これもまた太陽の温度に近い強烈な火炎放射だ。敵はみるみる消し炭になっていく。
「すまない」
「ネオンに治療を行ってもらうがよい」
我はクリンコフを背に乗せて味方陣営へと引き返した。背に乗せた頃のクリンコフは既に元の姿に戻っていたので、ダメージはやはり大きかったようだ。命を落とすことはないだろうが、敵の追い打ちがやはり目障りだ。
我は一度振り返り――。
「龍の咆哮!」
我の口からは、高音を立てながら放出された赤色のエネルギー波は、全ての攻撃を無効にして敵兵達を蹴散らした。
「戻るぞ」
「助かる」
敵を無力化したことを確認しながら我は味方陣営に引き返すことに成功した。
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