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激突Ⅳ

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「ご無事で何よりです」

 そう言って迎えてくれたのは、ノーディルスだった。

「うぬの支援なかなかのものだった」

「いえいえ。大したことありませんよ」

 いや、実際は本当に大したことがあるスキルだったのだが。

 我がクリンコフを地面におろすと、すぐにネオンが駆け寄って来た。

「すぐに手当てをします」

 そう言って、ネオンはクリンコフに向けて手を向けて回復ヒールを行う。すると、クリンコフの傷はみるみる癒えていく。

「ふう。助かったありがとう」

「いえいえ」

 クリンコフは完全に回復したようで、ムクリと起き上がった。そして、猛々しい声が聞こえる部下達の方に目を向けていた。

「やはり、体力の消耗が多そうだな。先程勢いは無くなってきている」

「そうだな。我等も増援に行くぞ。ネオンはここにてくれ。我等が3人で畳みかける」

「かしこまりました。私は攻撃に参加しなくてもいいのですね?」

「ああ。貴重な回復士ヒーラーだからな」

「わかりました」

「待ってや、うちも行くで。いつまで寝てられへんからな」

 そう声がして馬車から姿を現したのは、レン殿と同じ関西弁を喋る明るめのベージュの髪色をした女性だった。確か名前はアズサ・スギモトだ。

「大丈夫なのか?」

 ノーディルスがそう問いかけるとアズサ殿は「わっ!」と驚いていた。

「なんや、ノーディルスか。久々にその姿見たから、吃驚したやん」

「確かに久しぶりだな。で、体はどうなんだ?」

「ばっちりやで。心配かけたな。ごめんな」

 アズサ殿はそう言って深々と頭を下げていた。

「それにしてもホンマ腹立つわ。あの帝国兵達顔覚えたからな。次会ったら絶対殴り飛ばしたるねん」

「アズサさん。それ全員レンさんが怒って燃やしてしまいました。あの場にいた人間殆ど死んでしまっています」

 ピタリと動きを止めて後、首を傾げるアズサ殿。

「ん? スキル使われへんのに?」

「そうだ。キレて魔眼を開眼したんだ。本来の人間の入手方法としては、邪眼か魔眼を持っている龍族、魔族、闇森妖精ダークエルフを倒して、一定の確率でスキルを入手できるんだ。だが、レンの場合は普通に開眼したから、多分アイツ実は人間じゃないんだろ?」

「いや、めちゃくちゃ人間やけど」

 確かにレン殿は特例すぎる。もはやこれは賢者達に報せないといけないレベルの異例。現実から目を背けているが、レン殿が実は人間ではなかったというのが考えのほうが妥当だ。

「これで3人揃いましたね」

 ネオンはそう言って微笑ましい表情を浮かべていた。

「因みにレンはナリユキ様達と同じ行動をしているから、今はいないぞ」

「なんや、そうやったんか。魔眼持ってるレン見てみたかったけどしゃあないな。よし、ほないっちょ暴れるで。あ、ランベリオンさんお願いします」

 そうアズサ殿にペコリと頭を下げられた。関西人って皆こんな感じなのか? ペースを狂わされる。

「いいだろう。我の背中に乗るがよい」

 アズサ殿が乗ったことを確認すると、我は戦闘している同胞達のほうへ向かっていく。ノーディルスはアンデッド族なのに黒翼を出して、飛んでいるので驚くばかりだ。アンデッドは本来飛べないので、冒険している中で習得したものだろう。クリンコフは再び巨人化ジャイアントになり敵陣の方へ走り、近付いたところで大ジャンプをして一気に距離を縮めていた。

「迎え撃て! 奴等を好きにさせるな!」

 すると、ラドクルスの兵達が、空に飛んでいる我等に向かって、掌を向けて来た。

「先手必勝だ」

「防衛はうちがするから任せて下さい。ランベリオンさんは存分に暴れてもらったら」

「そういえばうぬはどのようなスキルが得意なんだ?」

「うちは防衛の方が得意やねん。タンク役みたいな感じかな」

「タンクか成程」

「分かるんや」

「それはそうだろう」

 我は体内のエネルギーを再び口元まで持ってきた。

紅炎放射プロミネンス・バースト!」

 敵兵が放って来ていたスキルは風属性だった。我が吐いている火の方が圧倒的に火力があるため、相手の風の攻撃スキルの影響で、我のスキルの威力が見違えるほど上がったのだ。

 瞬く間に、ラドクルス以外の敵兵は灰と化した。

「凄い技やな。一瞬で灰になってしまった」

「我のユニークスキルだ。火属性のスキルに直撃した者は、問答無用で灰と化す。直撃した者の生きる資格を奪い取る」

「えらい恐ろしいスキルやな。よし、うちはこの辺で降りてあいつの相手するわ」

 そう言ってアズサ殿は我の背中から飛び降りた。そしてラドクルスに向かって剣を突き出していた。

「残念やけどここで死んでもらうで」

「小癪な小娘がっ!」

 ラドクルスはそう言ってアズサ殿に斬りかかった。アズサ殿は軽々と左手のプレートで受け止めて、ラドクルスの
腹部に横薙ぎを浴びせた。

 勝敗ももう近いだろう。ラドクルスを倒せば大将首を取ったことになる。

「この私がこんな小娘にっ!」

 そう言ってラドクルスは、苦い表情を浮かべながら立ち上がった。

 すると、アズサ殿は剣の鍔付近を握り締めた。短く持っている独特のスタイルに違和感を感じた。

 そして、 身体向上アップ・バーストで自身の身体能力を大幅に底上げしている。

「これでどないや!」

 アズサ殿は、ラドクルスの頬に思いっきり柄で殴りつけた。

 当然、それに直撃したラドクルスは数十メートル吹き飛び、ピクリとも動かない様子だった。

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