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冥王ゾークⅧ
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「ん……?」
俺は無意識のうちにそう声を上げていた。同時に何が起こっていたのかをはっきりと思い出した。自動再生と自動回復が付いているのにこの疲労感は凄いな。そう思いながら俺は両手に力をグッと入れて、うつ伏せの状態から立ち上がった。
「痛いな……でも……」
俺は嬉しい気持ちで満たされていた。それもそうだろう。目の前にいるゾークはうつ伏せのままだ。身体を真っ二つにしたけど、それはもう元通りになっている。俺が龍騎士から受けた時は自動回復がする事は無かったがまあそこは気にしない。結果として、ゾークはダメージが酷いらしく気絶している状態だ。つまりこの勝負――俺の勝ちだ!
そう心の中で叫んだと同時に、「やった! やった!」とミクちゃんとアスモデウスさんの声がした。ふと左横を見ると2人で両手を合わせて飛び跳ねて喜んでいた。
「見事な戦いぶりだった」
そう言って近付いて来たのは青龍さんだった。
「ダメージ残ったままで身体が重たいですよ」
「それはそうだ。ナリユキ殿に何かあれば回復を施そうと思っていたが、意識はあるし傷も治ってはいたからな。漢同士の戦いを最後まで見届ける為に、あえて回復は行っていない。ナリユキ殿は自力で立ち上がったのだ。完全勝利だ。おめでとう」
青龍さんがそう握手を求めてきたので、俺はそれに応えるべく、青龍さんの手を力強く握った。
「それにしてもゾークはなかなか起きないですね」
「それはそうだよ。黒絶斬はあらゆる防御を無視して、斬ったという結果のみを残す剣術みたいだからね。もはや何でアクティブスキルの部類なのか分からないよ。効果だけはアルティメットスキルと対等のレベルだもん」
「確かにそうだな。消費MPめちゃくちゃ多いもんな」
「でもまあそれだけじゃ無いのう。ナリユキ閣下はゾークに黒絶斬を与えたと同時に、自身にも同じ痛みがあった筈じゃ。それを耐え抜いたのは流石というべきじゃの」
「まあ、黒絶斬の痛みを受けたというなら二回目だからな」
「痛みに慣れるような技でも無いがな。龍騎士ジークフリートが得意としていたアクティブスキルだ。魔王になった今でも使っているんじゃないか?」
「妾が知っているなかでは確かにルシファーは黒絶斬を得意としているのう。龍騎士の時の記憶があるのか知らんが、剣術は魔界では頂点に君臨する男じゃからのう」
「それをナリユキ殿が使う事ができるのは素晴らしい」
「でも、自動回復も自動再生も起きない筈なんですよね。なのに、ゾークは回復しているし」
「それは恐らく練度の問題だろう。使い慣れることができれば、確実に身体を真っ二つにして回復も出来ないようになる」
「成程。やっぱり何度か使わないと駄目なのか」
「普通はそんな事はないのだが、特別なスキルに関しては練度は関係するな。魔眼や邪眼もそうだろ?」
「確かに練度によって習得できるパッシブスキルが変わるらしいですもんね」
「そういう事だ」
俺達でそう話をしていると「ぬっ……」という声が微かに聞こえた。ゾークの意識が戻ったようだ。
「――我は負けたのか?」
ゾークはようやく目を覚まして、倒れたまま俺にそう問いかけてきた。
「らしいな。俺の方が起きるの早かったからな」
「成程」
ゾークはそう言って体をゆっくりと起こすなり立ち上がる。
「完敗だな。まさか本当に痛みを顧みず攻撃の手を緩めないとは思ってもみなかった」
「そうするしか勝てる方法無いんだから、考えていても仕方ないだろ?」
「それは確かにそうだな。それでまず我の魂魄を授けようか。ナリユキ、我の元へ来い」
「おう」
俺はゾークに言われるまま、ゾークの近くへと歩み寄った。俺がゾークに近付くと、ゾークは俺の頭にゆっくりと手を置いた。
「念のために説明をしておくと、我がナリユキに魂魄を与えた事によって、ナリユキに与える悪影響は無い。ナリユキという存在に、我の魂魄が入り込むだけだ。本体であるナリユキに新しい力が目覚めるのだ。それが習得できるパッシブスキルやアクティブスキル、アルティメットスキルという事だ」
「成程な。じゃあ早速頼む」
俺がそう言うとゾークは「ああ」と返事をするなり、俺に何かを送り込んできた。数秒間、何かを体内に入れられている気はしたが、何が入っているのかは正直なところ分からない。ただ言えるのは湯水のようにパワーが溢れ出てくる。
「完了だ」
ゾークはそう言って、俺の頭の上に置いていた巨大な手を離した。
「変わったのは実感できるか?」
「ああ。勿論だよ。信じられない程のパワーを感じる」
「因みに言うと、ナリユキ君の今の念波動の数値は素の状態で8,500だね」
「Z級でもまだまだ伸びるのか」
「信じられない成長じゃのう」
「8,500という戦闘値は因みに我と同等だ。格上相手の我をよく倒した。何より、自身に跳ね返るはずのダメージをよく堪えた」
「本当だよ。冥眼の効果はまだまだありそうだしな。つか、そもそももっと本気出せたろ? 何で出さなかったんだよ」
「それはナリユキも同じだろう? 我はこの場においての全力を出して戦った」
「成程な。まあ皆を巻き込まないように、攻撃してくれていたんだよな?」
「あくまで1VS1の戦いだからな。また今度は別の場所で互いに全力で戦いたいものだ」
「それは言えてるな。そん時は二人きりで戦おうぜ」
「勿論だ」
ゾークはそう言って握手を求めてきた。こうして俺とゾークは熱い握手を交わして、地下世界に君臨する王との友情が芽生えた気がした。少しずつではあるけど、黒龍を何とかできる力を蓄える事が出来ている。
俺は無意識のうちにそう声を上げていた。同時に何が起こっていたのかをはっきりと思い出した。自動再生と自動回復が付いているのにこの疲労感は凄いな。そう思いながら俺は両手に力をグッと入れて、うつ伏せの状態から立ち上がった。
「痛いな……でも……」
俺は嬉しい気持ちで満たされていた。それもそうだろう。目の前にいるゾークはうつ伏せのままだ。身体を真っ二つにしたけど、それはもう元通りになっている。俺が龍騎士から受けた時は自動回復がする事は無かったがまあそこは気にしない。結果として、ゾークはダメージが酷いらしく気絶している状態だ。つまりこの勝負――俺の勝ちだ!
そう心の中で叫んだと同時に、「やった! やった!」とミクちゃんとアスモデウスさんの声がした。ふと左横を見ると2人で両手を合わせて飛び跳ねて喜んでいた。
「見事な戦いぶりだった」
そう言って近付いて来たのは青龍さんだった。
「ダメージ残ったままで身体が重たいですよ」
「それはそうだ。ナリユキ殿に何かあれば回復を施そうと思っていたが、意識はあるし傷も治ってはいたからな。漢同士の戦いを最後まで見届ける為に、あえて回復は行っていない。ナリユキ殿は自力で立ち上がったのだ。完全勝利だ。おめでとう」
青龍さんがそう握手を求めてきたので、俺はそれに応えるべく、青龍さんの手を力強く握った。
「それにしてもゾークはなかなか起きないですね」
「それはそうだよ。黒絶斬はあらゆる防御を無視して、斬ったという結果のみを残す剣術みたいだからね。もはや何でアクティブスキルの部類なのか分からないよ。効果だけはアルティメットスキルと対等のレベルだもん」
「確かにそうだな。消費MPめちゃくちゃ多いもんな」
「でもまあそれだけじゃ無いのう。ナリユキ閣下はゾークに黒絶斬を与えたと同時に、自身にも同じ痛みがあった筈じゃ。それを耐え抜いたのは流石というべきじゃの」
「まあ、黒絶斬の痛みを受けたというなら二回目だからな」
「痛みに慣れるような技でも無いがな。龍騎士ジークフリートが得意としていたアクティブスキルだ。魔王になった今でも使っているんじゃないか?」
「妾が知っているなかでは確かにルシファーは黒絶斬を得意としているのう。龍騎士の時の記憶があるのか知らんが、剣術は魔界では頂点に君臨する男じゃからのう」
「それをナリユキ殿が使う事ができるのは素晴らしい」
「でも、自動回復も自動再生も起きない筈なんですよね。なのに、ゾークは回復しているし」
「それは恐らく練度の問題だろう。使い慣れることができれば、確実に身体を真っ二つにして回復も出来ないようになる」
「成程。やっぱり何度か使わないと駄目なのか」
「普通はそんな事はないのだが、特別なスキルに関しては練度は関係するな。魔眼や邪眼もそうだろ?」
「確かに練度によって習得できるパッシブスキルが変わるらしいですもんね」
「そういう事だ」
俺達でそう話をしていると「ぬっ……」という声が微かに聞こえた。ゾークの意識が戻ったようだ。
「――我は負けたのか?」
ゾークはようやく目を覚まして、倒れたまま俺にそう問いかけてきた。
「らしいな。俺の方が起きるの早かったからな」
「成程」
ゾークはそう言って体をゆっくりと起こすなり立ち上がる。
「完敗だな。まさか本当に痛みを顧みず攻撃の手を緩めないとは思ってもみなかった」
「そうするしか勝てる方法無いんだから、考えていても仕方ないだろ?」
「それは確かにそうだな。それでまず我の魂魄を授けようか。ナリユキ、我の元へ来い」
「おう」
俺はゾークに言われるまま、ゾークの近くへと歩み寄った。俺がゾークに近付くと、ゾークは俺の頭にゆっくりと手を置いた。
「念のために説明をしておくと、我がナリユキに魂魄を与えた事によって、ナリユキに与える悪影響は無い。ナリユキという存在に、我の魂魄が入り込むだけだ。本体であるナリユキに新しい力が目覚めるのだ。それが習得できるパッシブスキルやアクティブスキル、アルティメットスキルという事だ」
「成程な。じゃあ早速頼む」
俺がそう言うとゾークは「ああ」と返事をするなり、俺に何かを送り込んできた。数秒間、何かを体内に入れられている気はしたが、何が入っているのかは正直なところ分からない。ただ言えるのは湯水のようにパワーが溢れ出てくる。
「完了だ」
ゾークはそう言って、俺の頭の上に置いていた巨大な手を離した。
「変わったのは実感できるか?」
「ああ。勿論だよ。信じられない程のパワーを感じる」
「因みに言うと、ナリユキ君の今の念波動の数値は素の状態で8,500だね」
「Z級でもまだまだ伸びるのか」
「信じられない成長じゃのう」
「8,500という戦闘値は因みに我と同等だ。格上相手の我をよく倒した。何より、自身に跳ね返るはずのダメージをよく堪えた」
「本当だよ。冥眼の効果はまだまだありそうだしな。つか、そもそももっと本気出せたろ? 何で出さなかったんだよ」
「それはナリユキも同じだろう? 我はこの場においての全力を出して戦った」
「成程な。まあ皆を巻き込まないように、攻撃してくれていたんだよな?」
「あくまで1VS1の戦いだからな。また今度は別の場所で互いに全力で戦いたいものだ」
「それは言えてるな。そん時は二人きりで戦おうぜ」
「勿論だ」
ゾークはそう言って握手を求めてきた。こうして俺とゾークは熱い握手を交わして、地下世界に君臨する王との友情が芽生えた気がした。少しずつではあるけど、黒龍を何とかできる力を蓄える事が出来ている。
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