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魂魄と石板Ⅰ

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「続いて3人こっちへ来い」

「何だ? 何もしていないのに本当に余達にも魂魄こんぱくを与えてくれるのか?」

「勿論だ。我は嘘はつかない」

 ゾークがそう言うと3人は顔を見合わせた。

「何もやっていないのにいいのかな――?」

「妾達は見守っていただけじゃしのう。少し気が引けるわい」

「でも本当に魂魄こんぱくをもらう事によってナリユキ殿のように強くなるのであれば是非頂こう。何よりゾーク本人が授けると言っているのだからな」

「確かにそうですね。それではお願いします」

「全員一気に与えることはできないから、1人ずつだな。まずは娘からにしよう」

「お願いします。でも何の魂魄こんぱくを頂けるのですか?」

「まあ待て。ちゃんと今後役に立つであろう魂魄こんぱくを授ける。それは巫女とやらの魂魄こんぱくだ」

「巫女――って巫女?」

 ゾークはミクちゃんの問いかけにコクリと頷き、ミクちゃんの頭に手を置いた。そして数秒して離す。

 戦闘値は300程上がって7,800。もうここ最近で一気に皆のステータスが上昇したから、今更突っ込む必要も無いだろう。問題はミクちゃんも魂魄こんぱくを授けてもらった事によって数種類のスキルを新たに入手したようだけど、一番の変化はユニークスキルが追加された事だろう。ユニークスキルの名前は巫女の祈りプリースト・ブレスと呼ばれる能力だ。両手を合わせる事によって、あらゆる未来を知る事ができるらしい。

「――凄いスキル手に入れちゃった。でも巫女って言うとあの巫女かな?」

「そうだろうな。どうなんだゾーク?」

「2人が想像している巫女で合っていると思う。もう随分と前だが地下世界アンダー・グラウンドに迷い込んだ女性がいてな。その転生者は巫女みこと呼ばれる職業に就いていたらしく、普段はとうをしたり、精霊を憑依させて人々に神のお告げを伝えていたらしい」

「――一体いつの時代の人だろう? 現代の人じゃ無さそうだよね?」

「平安時代とかか?」

「ざっくりだと1,000年程前だな」

「――平安時代だな」

「本当に色々な人がこの世界に来ているんだね」

「この力を授けたのは娘の顔とその巫女の女性と似ていたからだな。それに持っているスキルの属性も似ている。なので我が持っている魂魄こんぱくの中で一番相性が良いと思ったのだ」

「そうだったんですね。新しいユニークスキルの巫女の祈りプリースト・ブレスもそうだけど、闇を寄せ付けないというパッシブスキル、闇払やみばらいも気になるところだね」

「そのスキルは闇の力を寄せ付け無いというものだ。当然、黒龍にも有効的だ。まあでもどんな風なスキルかは具体的には分からないがな」

「アスモデウスさん、ちょっと闇属性のスキル放ってくれませんか?」

「別に良いぞ。いつでもいいのか?」

「はい」

 そう言って2人は何やら実験を始め出した。まあ気になるスキルがあったら早速試したくなるわな。

 ミクちゃんとアスモデウスさん一度距離を置いた。大体10m程と言ったところか。万が一にもアスモデウスさんの攻撃が直撃してもミクちゃんに大したダメージは入らない。

悪の破壊光アビス・ディストラクション!」

 そう言って放たれた邪悪で禍々しい闇のエネルギー光。距離が近いのでミクちゃんに到達するのは0コンマ何秒という世界だ。対してミクちゃんは立っているだけだった――が。

「ほう――そう来たか」

 アスモデウスさんはそう呟いて嬉しそうだった。俺も意外な効果に驚いているが一番驚いているのはミクちゃんだ。

「凄い――何もしていないのに攻撃が消えた」

 攻撃がある程度近付くと、悪の破壊光アビス・ディストラクションが消えてしまったのだった。これが闇払やみばらいのスキルの力――強力過ぎないか? 魔族涙目じゃん。

「それ、魔真王サタンを使って無力化されるのでは、ミク殿に絶対に勝つことはできないのう」

「そういう事になりますね――」

「気に入ってくれたようだな。それでは次はアスモデウスだ」

 そうしてアスモデウスさん、青龍リオさんの順番にゾークから魂魄こんぱくが授けられた。アスモデウスさんは以前にいた魔王ベレトの魂魄こんぱくを授かり、青龍リオさんは一部の地下世界アンダー・グラウンドからは神と呼ばれている、冥龍オルクスの魂魄こんぱくを授かったようだ。何で、ゾークがそんな魔物の魂魄こんぱくを持っているのかというと、一度戦ったことがあり、その際に魂魄こんぱくを抜き取ったようだ。お互いに致命傷を負っていたから引き分けとなって戦闘は終了したようだ。じゃあ何故そんな重要な魂魄こんぱくを、青龍リオさんに授けたかというと、単純にその魂魄こんぱくが、ゾーク自身に適合しなかったらしい。

 と、言う事で、ミクちゃんは平安時代の巫女さんの転生者の魂魄こんぱくを授かり、7,500から7,800に。アスモデウスさんは、前魔王ベレトの魂魄こんぱくを授かり、7,000から7,500に。青龍リオさんは何気にZ級の魂魄こんぱくを授かったので、7,200から8,000と大幅に上昇した。

「余は特に何もしていないのに、凄い力を手に入れたようだな」

「嫌な奴じゃのう――Z級になっているじゃないか。鑑定士でステータスが視えない」

「ん? Z級になったという事は8,000に到達したのか」

「そうですよ! 青龍リオ・シェンラン様凄く強くなっています!」

 ミクちゃんは青龍リオさんに興奮気味にそう言っていた。

「因みに青龍リオさん、天眼によるパッシブスキルめちゃくちゃ増えていますよ」

「そのようだな。ミク殿の下位互換ではあるが、少し先の未来が視えるようだ」

「いや、それだけでは無いですけどね」

 俺がそう言ったのは、青龍リオさんの天眼がパワーアップして、未来が視えたり、寿命が分ったり、物に命を与える事ができたり、味方のMPを回復させたりと、まあ色々な事ができるようだ。羨ましい――。
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