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貴族の調査Ⅰ
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次の日、アスモデウスさん、ルシファー、パイモンは、ルシファーの黒転時道でヒーティスへと戻った。パイモンは満足してくれたようで「美味かったぞ! また来る!」とか言い出していたので、どうやら俺への恨みは提供した料理ですっかりチャラになったみたいだ。ルシファーも、まんざらではない様子だったので、またマーズベルに来てくれた時には今回のように全力でもてなそう。
「タテワキさん」
「はい――」
俺の仕事部屋にむすっとした表情を見せているアマミヤ。本当に申し訳ない。全然打ち合わせできてない。
「出発時間はずらしますか?」
「あ――はい。ごめん」
「別にいいですよ。その代わり美味しいもの食べさせて下さいね」
「ああ。ごめんな。マカロフ卿には専用機の調整を頼んでいるから、あとはデアに学校の授業内容や運用にあたっての注意事項などをさくっと伝えるだけだ」
「じゃあ出発はお昼過ぎですかね?」
「そんなところだな」
「分かりました。飛行場で待っています」
「ああ。打ち合わせは専用機でしよう」
「まあ――思い出話でもいいですよ」
と、アマミヤは言って俺の仕事部屋から出て行った。
そこからしばらく一般科目に加えて経営の授業をどのように進行していくかなどを書き記した。その他の戦闘、美術、医療、技術、音楽、料理、農学、鍛冶については部下に任せる事にした。
「成程。これがその授業内容ね」
午前11時。仕事部屋にデアを呼んで俺が書き記した資料を渡した。枚数にして100枚程だ。
「よくこんな短時間でここまで書けたわね。貴方意外と優秀なのね。正義感がめっぽう強い諦めの悪い転生者としか思ってなかった」
と、デアは俺に感心してくれたようだ。
「優秀かどうかしらんが、余計な一言が多くて俺は心が痛いぞデア」
「あら。そんな風には見えないけど?」
デアはそう言って俺を嘲笑っていた。
「成程ね。確かに穴は少々あるけど順序はちゃんと踏んでいそうね」
デアは資料をパラパラ漫画の如くめくって確認した後、資料を俺の机の上に置いた。
「あれ? いらないのか?」
「じゃあ、一応持っておこうかしら? 全て覚えたつもりだけど」
「え? マジ?」
冗談だろ。100枚前後A4用紙サイズに色々書いたのを、あの一瞬で覚えたと言うのか!?
「本当よ。戦争と死の神は知性にも長けている神様よ。天眼の瞬間眼で一瞬で覚えることができるし、天衣無縫の特性で私の脳に入る情報量に制限は無いのよ。貴方達の時代の言葉を借りるなら、スーパーコンピューターと同等くらいかしら」
「何でスパコンって言葉知っているんだよ――」
「これも天衣無縫の特性よ。思考鴉と記憶鴉というワタリガラスを使って、私は世界各国のあらゆる情報収集を常にしている。それに、欲しいと思った情報もすぐに手に入るわ。ほら、貴方が学校の事について聞いてきたでしょ? あの時も一瞬で情報を集めたのよ」
ん――? 一瞬で? ワタリガラスなんだよな?
「ワタリガラスなんだろ? 使っているの」
「そうよ。でも移動の速さは八本脚軍馬と変わらないわ」
「渡ってねえじゃん。瞬間移動じゃん」
「細かい事は気にしなくていいのよ。任せない。やるからには全力で子供達に教えるわ。貴方は貴方の責務を全うしなさい。アリシアを守るんでしょ?」
「ああ。ありがとうな」
俺がそう言うとデアは右手わっかのようなものを作った。
「報酬は弾んでもらうわよ。本が欲しいの」
「分かったよ」
俺がそう返事をするとデアは満足気な笑みを浮かべて俺の部屋を出て行った。
デアが出て行った数分後にコンコンと部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
と応じると部屋に入って来たのはしばらくマーズベルの護衛を任せていたカルディア達だった。
「ナリユキ閣下。失礼する」
「久しぶりだなカルディア」
「そうだな」
「要件はなんだ?」
「マーズベルの護衛は黒龍討伐により必要は無くなったと思う。次に俺達にできる事を命じてほしい」
確かにカルディアの言う通りだ。今はもうミクちゃんもデアもZ級。それにランベリオンとアリシアも相当な実力を付けているし、他にもマカロフ卿やメシア――といった非常な戦力がいる。
「少し待ってくれ。マカロフ卿に聞いてみる」
「何故マカロフ卿なんだ?」
「闇のオークションについて少しな――」
俺がそう言うとカルディア、スカー、カリブデウスは首を傾げていた。
バタバタで全く聞くことができていなかったけど、マカロフ卿には闇のオークションについて聞かないとな。
マカロフ卿に闇のオークションが開催されている国を手あたり次第聞いてみた。正直なところ、このパーティーに殺し無しでの情報収集は厳しい。でも闇のオークションが開催しているようなところであれば、当然犯罪に手を染めている者ばかりだ。ドライな言い方だけど死人が出ても問題は無い。
「カルディア達には創世の手がかりを探してもらう。ストーク・ディアン公爵はディオール王国のヴァレンタイン家の血を引いている可能性が高い。そしてその血が闇のオークションに出回っているかどうか調べてほしいんだ」
「ん? 何故そのヴァレンタイン家の血が闇のオークションに出回るんだ?」
カルディアの質問は当然だ。
「ヴァレンタイン家の血は特殊な血で、移動のような特殊能力を使う事ができるんだ。ストーク・ディアン公爵と因果関係があるかが知りたいから、まずはヴァレンタイン家の血を入手してほしいんだ」
「成程な。それで? 闇のオークションとやらはどこで開催されているんだ?」
「色々あるが真っ先に行ってほしいところはログウェルだ。だから、顔は隠さないとな」
俺がそう言うと、三人は「あの屑ばかりがいる国か」と文句を垂れていた。まあ俺も同感だけどな。まさかログウェルで開催されているとはな――。いかにもって感じだ。
「タテワキさん」
「はい――」
俺の仕事部屋にむすっとした表情を見せているアマミヤ。本当に申し訳ない。全然打ち合わせできてない。
「出発時間はずらしますか?」
「あ――はい。ごめん」
「別にいいですよ。その代わり美味しいもの食べさせて下さいね」
「ああ。ごめんな。マカロフ卿には専用機の調整を頼んでいるから、あとはデアに学校の授業内容や運用にあたっての注意事項などをさくっと伝えるだけだ」
「じゃあ出発はお昼過ぎですかね?」
「そんなところだな」
「分かりました。飛行場で待っています」
「ああ。打ち合わせは専用機でしよう」
「まあ――思い出話でもいいですよ」
と、アマミヤは言って俺の仕事部屋から出て行った。
そこからしばらく一般科目に加えて経営の授業をどのように進行していくかなどを書き記した。その他の戦闘、美術、医療、技術、音楽、料理、農学、鍛冶については部下に任せる事にした。
「成程。これがその授業内容ね」
午前11時。仕事部屋にデアを呼んで俺が書き記した資料を渡した。枚数にして100枚程だ。
「よくこんな短時間でここまで書けたわね。貴方意外と優秀なのね。正義感がめっぽう強い諦めの悪い転生者としか思ってなかった」
と、デアは俺に感心してくれたようだ。
「優秀かどうかしらんが、余計な一言が多くて俺は心が痛いぞデア」
「あら。そんな風には見えないけど?」
デアはそう言って俺を嘲笑っていた。
「成程ね。確かに穴は少々あるけど順序はちゃんと踏んでいそうね」
デアは資料をパラパラ漫画の如くめくって確認した後、資料を俺の机の上に置いた。
「あれ? いらないのか?」
「じゃあ、一応持っておこうかしら? 全て覚えたつもりだけど」
「え? マジ?」
冗談だろ。100枚前後A4用紙サイズに色々書いたのを、あの一瞬で覚えたと言うのか!?
「本当よ。戦争と死の神は知性にも長けている神様よ。天眼の瞬間眼で一瞬で覚えることができるし、天衣無縫の特性で私の脳に入る情報量に制限は無いのよ。貴方達の時代の言葉を借りるなら、スーパーコンピューターと同等くらいかしら」
「何でスパコンって言葉知っているんだよ――」
「これも天衣無縫の特性よ。思考鴉と記憶鴉というワタリガラスを使って、私は世界各国のあらゆる情報収集を常にしている。それに、欲しいと思った情報もすぐに手に入るわ。ほら、貴方が学校の事について聞いてきたでしょ? あの時も一瞬で情報を集めたのよ」
ん――? 一瞬で? ワタリガラスなんだよな?
「ワタリガラスなんだろ? 使っているの」
「そうよ。でも移動の速さは八本脚軍馬と変わらないわ」
「渡ってねえじゃん。瞬間移動じゃん」
「細かい事は気にしなくていいのよ。任せない。やるからには全力で子供達に教えるわ。貴方は貴方の責務を全うしなさい。アリシアを守るんでしょ?」
「ああ。ありがとうな」
俺がそう言うとデアは右手わっかのようなものを作った。
「報酬は弾んでもらうわよ。本が欲しいの」
「分かったよ」
俺がそう返事をするとデアは満足気な笑みを浮かべて俺の部屋を出て行った。
デアが出て行った数分後にコンコンと部屋の扉がノックされた。
「どうぞ」
と応じると部屋に入って来たのはしばらくマーズベルの護衛を任せていたカルディア達だった。
「ナリユキ閣下。失礼する」
「久しぶりだなカルディア」
「そうだな」
「要件はなんだ?」
「マーズベルの護衛は黒龍討伐により必要は無くなったと思う。次に俺達にできる事を命じてほしい」
確かにカルディアの言う通りだ。今はもうミクちゃんもデアもZ級。それにランベリオンとアリシアも相当な実力を付けているし、他にもマカロフ卿やメシア――といった非常な戦力がいる。
「少し待ってくれ。マカロフ卿に聞いてみる」
「何故マカロフ卿なんだ?」
「闇のオークションについて少しな――」
俺がそう言うとカルディア、スカー、カリブデウスは首を傾げていた。
バタバタで全く聞くことができていなかったけど、マカロフ卿には闇のオークションについて聞かないとな。
マカロフ卿に闇のオークションが開催されている国を手あたり次第聞いてみた。正直なところ、このパーティーに殺し無しでの情報収集は厳しい。でも闇のオークションが開催しているようなところであれば、当然犯罪に手を染めている者ばかりだ。ドライな言い方だけど死人が出ても問題は無い。
「カルディア達には創世の手がかりを探してもらう。ストーク・ディアン公爵はディオール王国のヴァレンタイン家の血を引いている可能性が高い。そしてその血が闇のオークションに出回っているかどうか調べてほしいんだ」
「ん? 何故そのヴァレンタイン家の血が闇のオークションに出回るんだ?」
カルディアの質問は当然だ。
「ヴァレンタイン家の血は特殊な血で、移動のような特殊能力を使う事ができるんだ。ストーク・ディアン公爵と因果関係があるかが知りたいから、まずはヴァレンタイン家の血を入手してほしいんだ」
「成程な。それで? 闇のオークションとやらはどこで開催されているんだ?」
「色々あるが真っ先に行ってほしいところはログウェルだ。だから、顔は隠さないとな」
俺がそう言うと、三人は「あの屑ばかりがいる国か」と文句を垂れていた。まあ俺も同感だけどな。まさかログウェルで開催されているとはな――。いかにもって感じだ。
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