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アスモデウスとルシファーの復活Ⅱ
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「他には何て言っていたんだ?」
「そうだな。よく人間を助けたな。少しは見直したぞ――と」
「――それもしかしてルシファーが英雄ノ神に褒められた話?」
「そうだ」
真顔でそう呟くルシファー。まさかルシファーがこういうどうでもいい事を言うとは思ってなかった。
「私は知りたかったのだ。魔王になる以前の話を。そしてそこで色々と聞かされた。黒龍が私の事を龍騎士と呼んでいたのも納得ができた。全て聞いたうえで思い出せない」
そうか――。ルシファーは自分の事を聞いたのか。そりゃ、ルシファーは初対面と思っていたのに黒龍があれだけ敵視していれば気になるわな。
「どっちの名前で呼ばれたいとかあるか?」
「ルシファーでいい。私は魔王ルシファーだ。龍騎士ジークフリートではない」
「じゃあルシファーでいいか。話を聞いて人間の時の記憶が戻らないのは仕方ない。黒龍を倒した今。別に無理に思い出す必要ないしな」
「確かにそうだな。役に立てなくて済まなかったな」
「いや。気になる事を神に聞きたいのは分かる。俺もそうだったからな」
「そうか――」
ルシファーはそう呟いた後、「あ、そうだ。頼み事を聞いてくれないか?」と要求された。俺は特に何も考えずに「いいぞ」と応える。
「町を案内してほしい。私が人間だった事もあり、人間がどのような生活をしているのか少し興味が湧いた」
「全然いいぜ。俺の自慢の国を案内するよ」
「楽しみにしている」
と。ルシファーは笑みを浮かべた。その後に「それにもう一つ気になる事があるしな――」と小さく呟いていた。「どんな事だ?」と聞くのもアリだったが、何となく答えてくれそうに無い気がしたのもあり、聞こえないフリをした。
そこからはいつも通りだ。青龍さんやアスモデウスさん。マカロフ卿を案内した時のようにリリアン・クロック、風力発電所。最近観光地となっているワイナリーや、マーズベル最高級のワインを製造するブドウ畑のエスポワール。国外へ大量に輸出しているブドウ畑ソレイユなどを案内した。勿論、マーズベル山脈やマーズベル湖も。
しかしルシファーが一番興味を示していたのは他でもない。リリアンだった。リリアンにいる大勢の人々を見て強い関心を抱いているようだった。いや、と言うよりかは俺に声をかけてくる国民を見ているようだった。何を考えているのか分からないけど、その様子を見ている時のルシファーの表情は穏やかだった。
ルシファーを一日中案内した後、俺、アスモデウスさん、ルシファー、パイモンの四人で食事を摂る事にした。これから各国のVIPと会う機会が増えると思い、マーズベル国内にいる選りすぐりの料理人を集めて、高級レストラン施設を設置した。単純な話。お金持ちだけの人だけが使用できるレストランだ。中には転生者でミシュランを獲得した料理人なんてのもいる。和食、イタリアン、フレンチ、中華、トルコの5ジャンルが集約された宮殿のような佇まいをした施設だ。
そしてアスモデウスさんとルシファーが選んだジャンルは和食だった。あくまで俺が思う和食のイメージだが、栄養価は高くバランスが取れているけど、コースにしてもお腹いっぱいたらふく食べるというものでは無く、卓越した技によって生み出された芸術のようなヴィジュアルと繊細な味を楽しむものだ。決して腹一杯食べるものでは無い。見て感じて味わうのが和食。
しかし、これだと満足いかないVIPもいるかもしれない。そう考えた時に何か和食を代表する肉料理は無いかと考えた。それがこれだ――。
「な――なんだこれは~!」
と、今か今かと目をキラキラと輝かせて涎を垂らしながら、ぐつぐつと音を立てている鍋に投入されるマーズベル屈指のブランド牛、成輝牛を眺めていた。この名前はモトリーナの村の住人が名付けた名前で、成輝牛の成は、俺の成幸から取ったもの。そして輝くは、シンプルにお肉のサシが太陽のように輝いて見えたらしくこの名前が付いた。そして、すき焼きの卵は勿論緑王鶏の卵だ。美味いに決まってる。
他にも魚やら蟹やらも用意しているフルコースだ。どんなVIPが来ようと満足して帰ってもらえると思うが、パイモンにこの繊細な味が分かるのだろうか――と少し疑問に思う。
「いつできるんだ!?」
と、鼻息を荒くしているパイモン。
「いいぞ。完成だ」
こんなにも楽しみにしているパイモンを見ると、アスモデウスさんやルシファーより先にパイモンを優先してしまう。俺がパイモンの器にお肉と野菜をよそってあげると、パイモンは「す――凄い!」と感動していた。
「俺が用意してあげた卵をかき混ぜたところに、お肉や野菜を潜らせてあげて食べてみろ」
「うん!」
と勢いよく返事をしたパイモンは、肉を口の中へと運んだ。そして、口の中に入れた瞬間、「美味ーい!」と大声で叫んでいたのだ。
「パイモン。少しは弁えろ」
「今回ばかりは無理です。ルシファー様のご命令でも」
とパイモンはガツガツとすき焼きを食べ始めた。
アスモデウスさんもルシファーもその食べっぷりに触発されて、俺によそってくれと懇願してきた。そして口の中に入れた瞬間には笑みが零れていた。
決して俺が創った料理ではないけど、違う種族――ましてや魔界に住む住人とこうして食卓を囲えることができるのは俺にとって幸福な事だ。全人類――。いや、全種族のこの笑み――俺は守りたい。
「そうだな。よく人間を助けたな。少しは見直したぞ――と」
「――それもしかしてルシファーが英雄ノ神に褒められた話?」
「そうだ」
真顔でそう呟くルシファー。まさかルシファーがこういうどうでもいい事を言うとは思ってなかった。
「私は知りたかったのだ。魔王になる以前の話を。そしてそこで色々と聞かされた。黒龍が私の事を龍騎士と呼んでいたのも納得ができた。全て聞いたうえで思い出せない」
そうか――。ルシファーは自分の事を聞いたのか。そりゃ、ルシファーは初対面と思っていたのに黒龍があれだけ敵視していれば気になるわな。
「どっちの名前で呼ばれたいとかあるか?」
「ルシファーでいい。私は魔王ルシファーだ。龍騎士ジークフリートではない」
「じゃあルシファーでいいか。話を聞いて人間の時の記憶が戻らないのは仕方ない。黒龍を倒した今。別に無理に思い出す必要ないしな」
「確かにそうだな。役に立てなくて済まなかったな」
「いや。気になる事を神に聞きたいのは分かる。俺もそうだったからな」
「そうか――」
ルシファーはそう呟いた後、「あ、そうだ。頼み事を聞いてくれないか?」と要求された。俺は特に何も考えずに「いいぞ」と応える。
「町を案内してほしい。私が人間だった事もあり、人間がどのような生活をしているのか少し興味が湧いた」
「全然いいぜ。俺の自慢の国を案内するよ」
「楽しみにしている」
と。ルシファーは笑みを浮かべた。その後に「それにもう一つ気になる事があるしな――」と小さく呟いていた。「どんな事だ?」と聞くのもアリだったが、何となく答えてくれそうに無い気がしたのもあり、聞こえないフリをした。
そこからはいつも通りだ。青龍さんやアスモデウスさん。マカロフ卿を案内した時のようにリリアン・クロック、風力発電所。最近観光地となっているワイナリーや、マーズベル最高級のワインを製造するブドウ畑のエスポワール。国外へ大量に輸出しているブドウ畑ソレイユなどを案内した。勿論、マーズベル山脈やマーズベル湖も。
しかしルシファーが一番興味を示していたのは他でもない。リリアンだった。リリアンにいる大勢の人々を見て強い関心を抱いているようだった。いや、と言うよりかは俺に声をかけてくる国民を見ているようだった。何を考えているのか分からないけど、その様子を見ている時のルシファーの表情は穏やかだった。
ルシファーを一日中案内した後、俺、アスモデウスさん、ルシファー、パイモンの四人で食事を摂る事にした。これから各国のVIPと会う機会が増えると思い、マーズベル国内にいる選りすぐりの料理人を集めて、高級レストラン施設を設置した。単純な話。お金持ちだけの人だけが使用できるレストランだ。中には転生者でミシュランを獲得した料理人なんてのもいる。和食、イタリアン、フレンチ、中華、トルコの5ジャンルが集約された宮殿のような佇まいをした施設だ。
そしてアスモデウスさんとルシファーが選んだジャンルは和食だった。あくまで俺が思う和食のイメージだが、栄養価は高くバランスが取れているけど、コースにしてもお腹いっぱいたらふく食べるというものでは無く、卓越した技によって生み出された芸術のようなヴィジュアルと繊細な味を楽しむものだ。決して腹一杯食べるものでは無い。見て感じて味わうのが和食。
しかし、これだと満足いかないVIPもいるかもしれない。そう考えた時に何か和食を代表する肉料理は無いかと考えた。それがこれだ――。
「な――なんだこれは~!」
と、今か今かと目をキラキラと輝かせて涎を垂らしながら、ぐつぐつと音を立てている鍋に投入されるマーズベル屈指のブランド牛、成輝牛を眺めていた。この名前はモトリーナの村の住人が名付けた名前で、成輝牛の成は、俺の成幸から取ったもの。そして輝くは、シンプルにお肉のサシが太陽のように輝いて見えたらしくこの名前が付いた。そして、すき焼きの卵は勿論緑王鶏の卵だ。美味いに決まってる。
他にも魚やら蟹やらも用意しているフルコースだ。どんなVIPが来ようと満足して帰ってもらえると思うが、パイモンにこの繊細な味が分かるのだろうか――と少し疑問に思う。
「いつできるんだ!?」
と、鼻息を荒くしているパイモン。
「いいぞ。完成だ」
こんなにも楽しみにしているパイモンを見ると、アスモデウスさんやルシファーより先にパイモンを優先してしまう。俺がパイモンの器にお肉と野菜をよそってあげると、パイモンは「す――凄い!」と感動していた。
「俺が用意してあげた卵をかき混ぜたところに、お肉や野菜を潜らせてあげて食べてみろ」
「うん!」
と勢いよく返事をしたパイモンは、肉を口の中へと運んだ。そして、口の中に入れた瞬間、「美味ーい!」と大声で叫んでいたのだ。
「パイモン。少しは弁えろ」
「今回ばかりは無理です。ルシファー様のご命令でも」
とパイモンはガツガツとすき焼きを食べ始めた。
アスモデウスさんもルシファーもその食べっぷりに触発されて、俺によそってくれと懇願してきた。そして口の中に入れた瞬間には笑みが零れていた。
決して俺が創った料理ではないけど、違う種族――ましてや魔界に住む住人とこうして食卓を囲えることができるのは俺にとって幸福な事だ。全人類――。いや、全種族のこの笑み――俺は守りたい。
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