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新たな冒険者Ⅱ
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「て、事はオックス・マーキュリー本人に会う事になるのか」
「そういう事ね」
デアはそう言った後、「ご馳走さまでした」と手を合わせて食材に感謝を込めていた。
「ここのご飯なかなか美味しいわね」
「まあ俺の従者達だからな」
「成程。料理人を集めるのよね? さらに美味しくなるって事かしら?」
「そういう事」
俺がそう言うとデアは満足気な笑みを浮かべていた。
「食事自体は私の場合最悪摂らなくてもいいけど食べるのが楽しみならまた別の話ね」
「気に入ってくれた?」
「勿論よ」
そのデアの笑顔を見て良かった~とホッと胸を撫で下した。
「子供達はどうだ?」
「まあ始めだしちゃんと授業を受けてくれているわ。学校も楽しいとは言ってくれているけど」
「食堂で食べてないのか?」
「食べ終わって外で遊んでいるわ。まだ生徒は20人程だけだし」
「どおりで人を見かけない訳だ。生徒ときちんと交流はできているのか?」
「それなりには出来ている筈よ」
と、キッパリと言っているが、それなら子供の一人くらいは一緒に食べていても可笑しくないと思うのだが――。
「デアの授業内容は問題無いと思うし引き続き頑張ってくれ」
「ええ。分かっているわ。今度私の授業を見てみるのもいいかもね」
「それもそうだな。じゃあ俺はこの辺りで失礼するよ」
「そう。学校の集客も忘れずにね。人がいなかったらこんなに大層な学校を設立した意味が無いもの」
「そりゃそうだ。じゃあ少しだけ子供達の様子を見てくるわ。校庭にいるんだろ?」
「ええ。外で遊んでいるわ」
デアにそう伝えられたので俺は校庭に向かう事にした。
校庭は食堂とはちょうど反対側に配置している為ここから歩いて10分程の距離がある。校内を歩いて階段を下り、校庭へと繋がる出口を潜る。
校庭に出ると子供達が鬼ごっこしていた。
が、追いかける方の人数が明らかに多い。様子をしばらく見ていると捕まった子供が鬼となり逃げている子供を追い掛け回していた。どうやら鬼ごっこをしている訳では無く増え鬼をしているようだ。
最終的には1人の魔族の男の子が29人の子供に追いかけられる事になった。普通に考えればすぐに捕まるのだがこれがなかなか捕まえる事ができない。5歳~14歳までの子供達が一緒になって遊んでいるなか、追いかけられている銀髪の魔族の男の子は8歳くらいだ。身長も130cm程と人間の子供と変わりない。
身体向上の使い方が上手なのは明らかだが、そもそもの身体能力がスバ抜けている。鬼の子供達は躍起になって放出系の攻撃スキルを連発するが、逃げている男の子はそれらをするりと躱していく。
名前はサルガタナスというらしい。戦闘値は3,500――。神童という言葉に相応しい高い戦闘値だなこれは――。
サルガナタスはふと俺と目があった。
「ナリユキ様!」
そうサルガナタスが俺に声をかけると同時に、鬼の子供達が一斉に飛びかかって一瞬の隙を見せたサルガナタスを捕らえた。サルガナタスは子供という瓦礫に埋もれてしまったが、乗っかている子供という瓦礫を振り払い、俺の方へと駆け寄って来るなり「はじめてまして!」と元気良く挨拶をしてきた。
「はじめてまして。随分と鬼ごっこが上手いね」
俺がそう言うと「そうでしょ~」とサルガナタスは誇らしげだった。
「俺、サルガナタス。ベリトとフィオナから良く話は聞いているよ!」
「ん? ベリトとフィオナの子供? あの二人にこんな大きい子供いたの!?」
と、俺は驚きを隠せなかった。だってあの二人知り合ってまだ一年も経ってない――。そもそも建国して一年経ってないのに。
「違うよ。俺は孤児だから二人に今は育ててもらっているんだ」
「そうだったのか。それでそんなに鬼ごっこが上手い訳だな?」
「そうでしょ? ナリユキ様も一緒に混ざってよ」
サルガナタスがそう言って俺の袖を引っ張ってきた。俺がどうしようか悩んでいるところ、10歳の森妖精の少女がサルガナタスに「駄目でしょ」と忠告をしていた。
「ナリユキ様は忙しいんだから邪魔しちゃ駄目」
「――でもお前達じゃ相手にならないじゃん」
「でも捕まえたじゃん」
と、29人のうちの約半数から反論されていた。「ぐぬぬぬ――」と歯を食いしばって悔しがるサルガナタス。
「次は絶対に捕まらないから! つうか一生捕まらないから!」
と子供らしい反応を見せていた。
「まああんまりムキになるなって。実際に戦闘値だけではサルガナタスがダントツ上みたいだ。でも、その力に過信せずに己を磨いてほしい。デアの授業で心身共に磨くんだ」
「心身共に――。確かにそれはベリトにもフィオナにも言われてる」
「そうだろ? サルガナタスは他の子よりも数倍強い。じゃあその力をどのように使うのかを考えてほしい」
俺がそうアドバイスをするとサルガナタスは少し考えて問いかけてきた。
「一つだけいい?」
「何だ?」
「ナリユキ様にとって力とは何?」
子供は突拍子もない質問をしてくる――。力とは何? って質問もどこか哲学的なものだしな――。
「俺か? 俺にとっての力とは、困っている人を助けるための手段。また、平和を守るための抑止力」
「抑止力――」
サルガナタスはそう呟きながら困惑した表情を浮かべていた。
「つまりナリユキ様は、ナリユキ様自身が世界の平和を維持する為のキッカケの一つに過ぎない――と言いたいのよ」
そう付け加えた森妖精の少女。やりよる。
「何となく分かったかも」
理解するサルガナタス。
「付け加えたんですけど合っていましたか?」
と心配そうに俺の方を視線を送ってくる森妖精の少女。
「大丈夫。合ってるよ」
俺がそう返すと森妖精の少女はパアと表情が明るくなった。改めて思うのが森妖精は知能が高い子が多い。それに人の感情をくみ取るのが長けている。
「そういう事ね」
デアはそう言った後、「ご馳走さまでした」と手を合わせて食材に感謝を込めていた。
「ここのご飯なかなか美味しいわね」
「まあ俺の従者達だからな」
「成程。料理人を集めるのよね? さらに美味しくなるって事かしら?」
「そういう事」
俺がそう言うとデアは満足気な笑みを浮かべていた。
「食事自体は私の場合最悪摂らなくてもいいけど食べるのが楽しみならまた別の話ね」
「気に入ってくれた?」
「勿論よ」
そのデアの笑顔を見て良かった~とホッと胸を撫で下した。
「子供達はどうだ?」
「まあ始めだしちゃんと授業を受けてくれているわ。学校も楽しいとは言ってくれているけど」
「食堂で食べてないのか?」
「食べ終わって外で遊んでいるわ。まだ生徒は20人程だけだし」
「どおりで人を見かけない訳だ。生徒ときちんと交流はできているのか?」
「それなりには出来ている筈よ」
と、キッパリと言っているが、それなら子供の一人くらいは一緒に食べていても可笑しくないと思うのだが――。
「デアの授業内容は問題無いと思うし引き続き頑張ってくれ」
「ええ。分かっているわ。今度私の授業を見てみるのもいいかもね」
「それもそうだな。じゃあ俺はこの辺りで失礼するよ」
「そう。学校の集客も忘れずにね。人がいなかったらこんなに大層な学校を設立した意味が無いもの」
「そりゃそうだ。じゃあ少しだけ子供達の様子を見てくるわ。校庭にいるんだろ?」
「ええ。外で遊んでいるわ」
デアにそう伝えられたので俺は校庭に向かう事にした。
校庭は食堂とはちょうど反対側に配置している為ここから歩いて10分程の距離がある。校内を歩いて階段を下り、校庭へと繋がる出口を潜る。
校庭に出ると子供達が鬼ごっこしていた。
が、追いかける方の人数が明らかに多い。様子をしばらく見ていると捕まった子供が鬼となり逃げている子供を追い掛け回していた。どうやら鬼ごっこをしている訳では無く増え鬼をしているようだ。
最終的には1人の魔族の男の子が29人の子供に追いかけられる事になった。普通に考えればすぐに捕まるのだがこれがなかなか捕まえる事ができない。5歳~14歳までの子供達が一緒になって遊んでいるなか、追いかけられている銀髪の魔族の男の子は8歳くらいだ。身長も130cm程と人間の子供と変わりない。
身体向上の使い方が上手なのは明らかだが、そもそもの身体能力がスバ抜けている。鬼の子供達は躍起になって放出系の攻撃スキルを連発するが、逃げている男の子はそれらをするりと躱していく。
名前はサルガタナスというらしい。戦闘値は3,500――。神童という言葉に相応しい高い戦闘値だなこれは――。
サルガナタスはふと俺と目があった。
「ナリユキ様!」
そうサルガナタスが俺に声をかけると同時に、鬼の子供達が一斉に飛びかかって一瞬の隙を見せたサルガナタスを捕らえた。サルガナタスは子供という瓦礫に埋もれてしまったが、乗っかている子供という瓦礫を振り払い、俺の方へと駆け寄って来るなり「はじめてまして!」と元気良く挨拶をしてきた。
「はじめてまして。随分と鬼ごっこが上手いね」
俺がそう言うと「そうでしょ~」とサルガナタスは誇らしげだった。
「俺、サルガナタス。ベリトとフィオナから良く話は聞いているよ!」
「ん? ベリトとフィオナの子供? あの二人にこんな大きい子供いたの!?」
と、俺は驚きを隠せなかった。だってあの二人知り合ってまだ一年も経ってない――。そもそも建国して一年経ってないのに。
「違うよ。俺は孤児だから二人に今は育ててもらっているんだ」
「そうだったのか。それでそんなに鬼ごっこが上手い訳だな?」
「そうでしょ? ナリユキ様も一緒に混ざってよ」
サルガナタスがそう言って俺の袖を引っ張ってきた。俺がどうしようか悩んでいるところ、10歳の森妖精の少女がサルガナタスに「駄目でしょ」と忠告をしていた。
「ナリユキ様は忙しいんだから邪魔しちゃ駄目」
「――でもお前達じゃ相手にならないじゃん」
「でも捕まえたじゃん」
と、29人のうちの約半数から反論されていた。「ぐぬぬぬ――」と歯を食いしばって悔しがるサルガナタス。
「次は絶対に捕まらないから! つうか一生捕まらないから!」
と子供らしい反応を見せていた。
「まああんまりムキになるなって。実際に戦闘値だけではサルガナタスがダントツ上みたいだ。でも、その力に過信せずに己を磨いてほしい。デアの授業で心身共に磨くんだ」
「心身共に――。確かにそれはベリトにもフィオナにも言われてる」
「そうだろ? サルガナタスは他の子よりも数倍強い。じゃあその力をどのように使うのかを考えてほしい」
俺がそうアドバイスをするとサルガナタスは少し考えて問いかけてきた。
「一つだけいい?」
「何だ?」
「ナリユキ様にとって力とは何?」
子供は突拍子もない質問をしてくる――。力とは何? って質問もどこか哲学的なものだしな――。
「俺か? 俺にとっての力とは、困っている人を助けるための手段。また、平和を守るための抑止力」
「抑止力――」
サルガナタスはそう呟きながら困惑した表情を浮かべていた。
「つまりナリユキ様は、ナリユキ様自身が世界の平和を維持する為のキッカケの一つに過ぎない――と言いたいのよ」
そう付け加えた森妖精の少女。やりよる。
「何となく分かったかも」
理解するサルガナタス。
「付け加えたんですけど合っていましたか?」
と心配そうに俺の方を視線を送ってくる森妖精の少女。
「大丈夫。合ってるよ」
俺がそう返すと森妖精の少女はパアと表情が明るくなった。改めて思うのが森妖精は知能が高い子が多い。それに人の感情をくみ取るのが長けている。
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