557 / 565
新たな冒険者Ⅰ
しおりを挟む
「凄い事になったじゃない」
学校の教師を全うしてくれているデアが、マーズベル学校の食堂で昼食を摂りながらそうコメントをくれた。
「まあ今のところ敵では無いのは確かだからな。あとは調査をどうするかだな――」
「引き続きアヌビスとメルム・ヴィジャに任せるのはどうかしら?」
「いや、多分地下世界にいるぞ。千里眼使っても視えないし――」
「――そうね。思考鴉と記憶鴉でも情報を入手できないわ。博士の領域に入っているのは間違いなさそうね。相当厄介ね。生殺与奪って」
「そうだろ? とりあえずマーズベルからも派遣するか、ギルドに依頼するかだな。カーネル王国以外に優秀なギルドがある場所は無いのか?」
「どんな国でもいいの?」
「勿論」
俺がデアの質問に頷くと「そうね~」と言いながら目を瞑った。
「北側にある国でマーズベルから約8,000kmのところに、シールズという国があるわ。以前のアードルハイムのように鎖国的な風習があるから冒険者の戦闘値アベレージが高いというのはあまり知られていないみたい」
「西の国と東の国。どちらに当たるんだ?」
「西の国ね。北の大地エウルア連邦共和国よりさらに北にある国で、マーズベルの国土の2/3くらいの大きさね」
「そんな事まで分かるのか」
「勿論。気になる情報があれば何でも言って。地下世界のように特殊な力が働いていない限り、何でも情報は手に入るから」
「それはありがたい」
俺がそう言って微笑むとデアは怪訝な表情を浮かべていた。
「あら。もしかして情報は無料で手に入ると思ってる? 甘いわね」
と、言われたので何かが欲しいという意味だ。でもデアが欲しいものって――。
「飲みに連れて行けばいいか? とびきり美味しいお店」
「魅力的な提案だけど、私の心を射止めるには少し足りないわね」
――おい。食欲って人間の三大欲求だぞ。他に何が――。
俺の様子を見かねてデアはハアと溜息をついた。
「私がピックアップする数冊の小説を頂戴。思考鴉と記憶鴉の情報だと面白そうな小説が数冊あるの」
そう言ってデアは水を口に運んだ。
「どんな小説?」
「創世期の神。群青色の空。転生奇譚。地下世界の冒険者が神になった話。とりあえずこの4冊ね」
「確かに何か気になるタイトルがちらほら」
「そうでしょ? 群青色の空以外はこの世界にまつわる話よ。創世期の神は、維持神についての話だし。転生奇譚は転生者の物語。地下世界の冒険者が神になった話は、博士が地下世界にいると噂から着想して考えた小説なの。博士の存在は十賢者で有名だから、読者家の人なら名前くらいは見たことがあるし、貴方がお気に入りの博士が書いた世界の歩き方も、知っている人は知っているからね」
「成程――。でも姿はあまり見せないんだよな?」
「そうよ。だから既知の通り、名前と表の功績だけを知っている人が多数ね。ね? 私が言った小説気になるでしょ?」
「確かにな。それどこに置いているんだ?」
「さあ。どこでしょう?」
と悪戯な笑みを浮かべるデア。つまり自分で探せと言いたいのだ。
「分かったよ。見つけて買うのは約束するよ」
「約束ね。それじゃあ国主、ギルド一番強い冒険者パーティー。一番強い人物と顔を教えてくれ」
「仕方ないわね。まずは国主は転生者みたいね。オックス・マーキュリー60歳。次にギルドで一番強いパーティーはジェノフというパーティーよ。シールズのみで使われる言葉で、繋がりを意味するみたい」
「へえ。って事は割と親しみやすいパーティーなのかな?」
「そうでもないわ。冒険者パーティーって言っても今はたった二人のパーティーで、余所者を受け付けない雰囲気が出ているようね。二人共戦闘値は6,000近くあるわ。何でこんな逸材が埋もれていたのか分からない。それ故にこの二人の星は一つしか無いわ」
「強い割には少ないな」
「シールズがそれほど鎖国的な証拠ね。星の授与は一つ国の評価だけは無く、様々な国の評価も加味されて貰える勲章だからね。埋もれているダイヤの原石とはこの事かしら」
「インフレについてきたかと思った」
「何、メタい発言しているのよ」
デアはそう言って溜息をついた。
「あと顔ね――。面倒くさいから知性・記憶の略奪と献上で奪ってくれないかしら?」
「ああ。勿論」
俺は早速知性・記憶の略奪と献上を発動してデアの頭に触れた。その瞬間、シールズに関する情報が流れ込んだ。国主であるオックス・マーキュリー閣下の顔も――。見た感じアメリカ人かな? 口元にある髭と、男性の魅力を引き立てる太くキリっとした眉。頭頂部はハゲてはいるが、それらが気にならない程整った顔をしている。
そして――。
「この二人が強い冒険者か――」
二人共黒い般若の仮面を付けているので年齢を把握する事はできない。ただ言えるのは体格的に男性と女性の二人のパーティーのようだ。男性は190cm近く。女性は170cm近くの身長がある。
「会うしかないな」
「でも顔が分からないなら無理じゃない?」
デアのコメントに俺は「あ――」と呟いてしまった。
「仮面を付けている相手は、素顔が分からないから転移イヤリングが発動しないと思うけど」
うん。ごもっとも!
学校の教師を全うしてくれているデアが、マーズベル学校の食堂で昼食を摂りながらそうコメントをくれた。
「まあ今のところ敵では無いのは確かだからな。あとは調査をどうするかだな――」
「引き続きアヌビスとメルム・ヴィジャに任せるのはどうかしら?」
「いや、多分地下世界にいるぞ。千里眼使っても視えないし――」
「――そうね。思考鴉と記憶鴉でも情報を入手できないわ。博士の領域に入っているのは間違いなさそうね。相当厄介ね。生殺与奪って」
「そうだろ? とりあえずマーズベルからも派遣するか、ギルドに依頼するかだな。カーネル王国以外に優秀なギルドがある場所は無いのか?」
「どんな国でもいいの?」
「勿論」
俺がデアの質問に頷くと「そうね~」と言いながら目を瞑った。
「北側にある国でマーズベルから約8,000kmのところに、シールズという国があるわ。以前のアードルハイムのように鎖国的な風習があるから冒険者の戦闘値アベレージが高いというのはあまり知られていないみたい」
「西の国と東の国。どちらに当たるんだ?」
「西の国ね。北の大地エウルア連邦共和国よりさらに北にある国で、マーズベルの国土の2/3くらいの大きさね」
「そんな事まで分かるのか」
「勿論。気になる情報があれば何でも言って。地下世界のように特殊な力が働いていない限り、何でも情報は手に入るから」
「それはありがたい」
俺がそう言って微笑むとデアは怪訝な表情を浮かべていた。
「あら。もしかして情報は無料で手に入ると思ってる? 甘いわね」
と、言われたので何かが欲しいという意味だ。でもデアが欲しいものって――。
「飲みに連れて行けばいいか? とびきり美味しいお店」
「魅力的な提案だけど、私の心を射止めるには少し足りないわね」
――おい。食欲って人間の三大欲求だぞ。他に何が――。
俺の様子を見かねてデアはハアと溜息をついた。
「私がピックアップする数冊の小説を頂戴。思考鴉と記憶鴉の情報だと面白そうな小説が数冊あるの」
そう言ってデアは水を口に運んだ。
「どんな小説?」
「創世期の神。群青色の空。転生奇譚。地下世界の冒険者が神になった話。とりあえずこの4冊ね」
「確かに何か気になるタイトルがちらほら」
「そうでしょ? 群青色の空以外はこの世界にまつわる話よ。創世期の神は、維持神についての話だし。転生奇譚は転生者の物語。地下世界の冒険者が神になった話は、博士が地下世界にいると噂から着想して考えた小説なの。博士の存在は十賢者で有名だから、読者家の人なら名前くらいは見たことがあるし、貴方がお気に入りの博士が書いた世界の歩き方も、知っている人は知っているからね」
「成程――。でも姿はあまり見せないんだよな?」
「そうよ。だから既知の通り、名前と表の功績だけを知っている人が多数ね。ね? 私が言った小説気になるでしょ?」
「確かにな。それどこに置いているんだ?」
「さあ。どこでしょう?」
と悪戯な笑みを浮かべるデア。つまり自分で探せと言いたいのだ。
「分かったよ。見つけて買うのは約束するよ」
「約束ね。それじゃあ国主、ギルド一番強い冒険者パーティー。一番強い人物と顔を教えてくれ」
「仕方ないわね。まずは国主は転生者みたいね。オックス・マーキュリー60歳。次にギルドで一番強いパーティーはジェノフというパーティーよ。シールズのみで使われる言葉で、繋がりを意味するみたい」
「へえ。って事は割と親しみやすいパーティーなのかな?」
「そうでもないわ。冒険者パーティーって言っても今はたった二人のパーティーで、余所者を受け付けない雰囲気が出ているようね。二人共戦闘値は6,000近くあるわ。何でこんな逸材が埋もれていたのか分からない。それ故にこの二人の星は一つしか無いわ」
「強い割には少ないな」
「シールズがそれほど鎖国的な証拠ね。星の授与は一つ国の評価だけは無く、様々な国の評価も加味されて貰える勲章だからね。埋もれているダイヤの原石とはこの事かしら」
「インフレについてきたかと思った」
「何、メタい発言しているのよ」
デアはそう言って溜息をついた。
「あと顔ね――。面倒くさいから知性・記憶の略奪と献上で奪ってくれないかしら?」
「ああ。勿論」
俺は早速知性・記憶の略奪と献上を発動してデアの頭に触れた。その瞬間、シールズに関する情報が流れ込んだ。国主であるオックス・マーキュリー閣下の顔も――。見た感じアメリカ人かな? 口元にある髭と、男性の魅力を引き立てる太くキリっとした眉。頭頂部はハゲてはいるが、それらが気にならない程整った顔をしている。
そして――。
「この二人が強い冒険者か――」
二人共黒い般若の仮面を付けているので年齢を把握する事はできない。ただ言えるのは体格的に男性と女性の二人のパーティーのようだ。男性は190cm近く。女性は170cm近くの身長がある。
「会うしかないな」
「でも顔が分からないなら無理じゃない?」
デアのコメントに俺は「あ――」と呟いてしまった。
「仮面を付けている相手は、素顔が分からないから転移イヤリングが発動しないと思うけど」
うん。ごもっとも!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
326
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる