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結末は結構悲惨でした
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そしてラウラが次に向かったのはスヴェンの所だったが、驚いた事にこちらはスヴェンの方がラウラを追い払った。どうもあの日クラウディアの魔力操作と魔道具を目の当たりにしたショックが尾を引いていたようで、廃嫡も進んで受けたらしい。家を継ぐどころか伯爵家の継承権すら放棄し、一魔道士として魔道の研究をしたいと申し出て、今は魔道士団で平研究員として魔道具の開発に携わっているという。時折エールデンから最新の魔道具が届くと、目の色を変え鬼気迫る様子で分解しているので周りの魔道士から引かれていると聞く。
そして次に向かったのは勿論最後に残ったランベルト……と思いきや彼の所へラウラが現れる事は無かった。ランベルトが子爵令息だったからだろう。擦り寄る順が実家の爵位が高い方からであり、例え父が騎士団長であっても子爵ではラウラの実家である男爵より爵位が一つ上なだけなのが贅沢を求めるラウラのお気に召さなかった様だ。
そして流石に脳筋のランベルトもようやく気付いた。エーベルハルトはともかく、ユリウスやスヴェンよりは好かれている、だからこんな時は一番に頼ってくれる、そう思っていたのに、ラウラはちやほやしてくれる見目の良い男が欲しかっただけだったのだ。
だから、キレた。
ランベルトが謹慎させられていた屋敷を抜け出し、ラウラが戻っていた男爵家を襲撃して彼女を無理矢理連れ去った、と聞いたのは一月程前だ。その後二人は中心街から離れた場末の裏路地で遺体となって見つかった。貴族として生まれ王都の治安の良い所へしか足を運んだ事しかないランベルトに、庶民に紛れて生活など出来る筈もない。あっという間に身ぐるみ剥がされ命ごと奪われた様だ。
ランベルトの父は質実剛健を地でいく人物で、良く言えば実直、悪く言うなら朴念仁の彼はランベルトの学園での振る舞いに酷く立腹し、ランベルトの教育を任せていた奥方を離縁し自ら騎士団長の座を退き、子爵位すら返上して一兵卒からやり直すと宣言していた。
そんな中でのランベルトの行動は彼の父にとって到底許容できるものではなかった。結果ランベルトが姿を消した翌日、屋敷で自死しているのが見つかり、大騒ぎになった。これにはラウラを連れ去られた男爵家も抗議のしようがなかった。既に奥方は離縁され、ランベルトの兄弟は姉が一人で他国に嫁いでいるため、もう子爵家には誰も残っていなかったからだ。
エーベルハルトにとっては非常に後味の悪い結末だった。一年前のあの日、意気揚々と婚約破棄を告げた時は、こんなことになるとは微塵も予想していなかった。思い描いていたのは、自分で選んだ愛する妃と手足とするに不足ない部下に囲まれ、後世に名君として名を残す未来。
それが今は婚約者も恋人も部下も失い、優秀な人材を他国へ逃したと周りから冷めた目で見られる日々だ。どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「後悔しているのですか?」
「え?」
ぼんやりと寒水仙を眺めながらそんなことをつらつらと考えていると、ふいにリュシオンなから声がかけられた。振り向くと、トパーズの瞳から刺すような視線をぶつけられている。
「どうしてこうなってしまったのだろう……と思っているのではありませんか?」
「……っ」
何故今考えていた事がわかったのだろう。そんなにわかりやすい顔をしていたのだろうか。慌ててエーベルハルトは取り繕うも、リュシオンの視線からは熱を感じない。
「どうして?と思っている時点で、ちゃんと反省している、後世にと周囲に思われていないのが、どうも理解されていないようだ」
「……え?」
「貴方の『どうして』には、『自分は悪くないのに』が付いているのだと思いますが」
「そ、そんな事は……っ」
ない、と言いたいが、言われて初めて心の何処かで『そうだ!私が悪いんじゃない!』と思っていた事に気付く。
「この数年、私はディディの様子を報告させていました。そのついでに貴方のもね。婚約者を蔑ろにし公費を横領、浮気相手の言葉を鵜呑みし冤罪を着せた挙げ句に王家が結んだ契約を勝手に破棄。余程貴方の父上は貴方に甘い様だ。我が国ならとうの昔に廃嫡、下手すると断頭台だ。それでよくもまあ自分は悪くないなどと言えたものですね」
「…………」
自分の行った事を他国の王から客観的に指摘され愚かさに気付くエーベルハルト。父王にも王妃にも何度も同じことを言われていた筈なのに何が違うのだろう。エーベルハルトは羞恥で顔を赤らめた。
そして次に向かったのは勿論最後に残ったランベルト……と思いきや彼の所へラウラが現れる事は無かった。ランベルトが子爵令息だったからだろう。擦り寄る順が実家の爵位が高い方からであり、例え父が騎士団長であっても子爵ではラウラの実家である男爵より爵位が一つ上なだけなのが贅沢を求めるラウラのお気に召さなかった様だ。
そして流石に脳筋のランベルトもようやく気付いた。エーベルハルトはともかく、ユリウスやスヴェンよりは好かれている、だからこんな時は一番に頼ってくれる、そう思っていたのに、ラウラはちやほやしてくれる見目の良い男が欲しかっただけだったのだ。
だから、キレた。
ランベルトが謹慎させられていた屋敷を抜け出し、ラウラが戻っていた男爵家を襲撃して彼女を無理矢理連れ去った、と聞いたのは一月程前だ。その後二人は中心街から離れた場末の裏路地で遺体となって見つかった。貴族として生まれ王都の治安の良い所へしか足を運んだ事しかないランベルトに、庶民に紛れて生活など出来る筈もない。あっという間に身ぐるみ剥がされ命ごと奪われた様だ。
ランベルトの父は質実剛健を地でいく人物で、良く言えば実直、悪く言うなら朴念仁の彼はランベルトの学園での振る舞いに酷く立腹し、ランベルトの教育を任せていた奥方を離縁し自ら騎士団長の座を退き、子爵位すら返上して一兵卒からやり直すと宣言していた。
そんな中でのランベルトの行動は彼の父にとって到底許容できるものではなかった。結果ランベルトが姿を消した翌日、屋敷で自死しているのが見つかり、大騒ぎになった。これにはラウラを連れ去られた男爵家も抗議のしようがなかった。既に奥方は離縁され、ランベルトの兄弟は姉が一人で他国に嫁いでいるため、もう子爵家には誰も残っていなかったからだ。
エーベルハルトにとっては非常に後味の悪い結末だった。一年前のあの日、意気揚々と婚約破棄を告げた時は、こんなことになるとは微塵も予想していなかった。思い描いていたのは、自分で選んだ愛する妃と手足とするに不足ない部下に囲まれ、後世に名君として名を残す未来。
それが今は婚約者も恋人も部下も失い、優秀な人材を他国へ逃したと周りから冷めた目で見られる日々だ。どうしてこんなことになってしまったのだろう。
「後悔しているのですか?」
「え?」
ぼんやりと寒水仙を眺めながらそんなことをつらつらと考えていると、ふいにリュシオンなから声がかけられた。振り向くと、トパーズの瞳から刺すような視線をぶつけられている。
「どうしてこうなってしまったのだろう……と思っているのではありませんか?」
「……っ」
何故今考えていた事がわかったのだろう。そんなにわかりやすい顔をしていたのだろうか。慌ててエーベルハルトは取り繕うも、リュシオンの視線からは熱を感じない。
「どうして?と思っている時点で、ちゃんと反省している、後世にと周囲に思われていないのが、どうも理解されていないようだ」
「……え?」
「貴方の『どうして』には、『自分は悪くないのに』が付いているのだと思いますが」
「そ、そんな事は……っ」
ない、と言いたいが、言われて初めて心の何処かで『そうだ!私が悪いんじゃない!』と思っていた事に気付く。
「この数年、私はディディの様子を報告させていました。そのついでに貴方のもね。婚約者を蔑ろにし公費を横領、浮気相手の言葉を鵜呑みし冤罪を着せた挙げ句に王家が結んだ契約を勝手に破棄。余程貴方の父上は貴方に甘い様だ。我が国ならとうの昔に廃嫡、下手すると断頭台だ。それでよくもまあ自分は悪くないなどと言えたものですね」
「…………」
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