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夜会の始まりです
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結婚式の翌日。
元々冬が穏やかなエールデンでも、ここ最近まれにみる暖かな陽の中執り行われた結婚式は、魔道大国に相応しく様々な魔道具によって華々しい演出がされ、魔道を利用した通信網で国中に映像が届けられたという。
その翌日である今日は、皇家主催の披露宴を兼ねた夜会が開かれている。あまり派手な催しを好まない皇帝夫妻が国を挙げての行事のひとつとして開く夜会だ。国中の主だった貴族と友好国からの来賓が参加する大規模なものとなった。
通常社交シーズンではない冬に夜会が開かれる事はない。その為領地を持つ貴族は通年であれば皆それぞれの領地に帰るのだが、今年は準備の為に残っている者が殆どで、皇都はいつもとは違う賑わいをみせていた。
夜会が開かれている皇宮の大広間も、普段であれば寒々とした空間であるが、今宵は空調が隅々まで行き届き、女性が肌を出しても問題ない程度の気温に調節されている。エールデンでは一部屋くらいであれば庶民の家ですら冷暖房システムを利用している程一般的ではあるが、流石にここまで広いホールを、となるとどれ程の魔力と緻密な結界システムが必要なのだろう? 真似できるものならばしたいが……と他国の者は皆一様に嘆息していた。
そんな夜会は、皇帝夫妻が入場し開始の宣言により始まった。次々と夫妻の元へと来賓が挨拶に向かう。国内の貴族位を持つ者が全て挨拶に向かうとそれだけで夜会が終わってしまうため、今日の夜会は特別に開かれたという事もあって、皇帝夫妻も楽しみたいと皇帝が壇上から挨拶するだけとなっていた。
挨拶を終えると、皇帝は皇妃を伴い壇上から降りホール中央へと進む。その動きに合わせ、楽団が演奏し始める。ダンスの始まりは主催者からと決まっているため他に踊る者は居ない。軽やかに踏むステップは曲が進むにつれ次第に高度なものとなっていき、見る者達を魅了した。
一曲終わり、辺りが拍手に包まれると皇帝は皇妃を伴い壇上へと退いた。それを合図にホール中央へ何組もの男女が進み出る。美しいドレス姿の女性が曲に合わせて回りだすと、一気に華やかさが増し、参加者達の目を楽しませる。
しかし、そんな中央とはまるで正反対に戦々恐々としている人物がホールの一角に居た。元々こういった夜会では、自領の特産品であったり特定の技術などを売り込む商談の場になる事もある。彼らもまたある意味商談をするために集まっていたのだ。
もっとも、売り手と買い手、どちらも不本意ではあったが。
「殿下。こちらがお話のあった令嬢方です」
ヘンリックの声に、三人の令嬢が美しい礼をとる。流石皇妃候補として名が挙がっていた令嬢達だ。振る舞いはいたって上品で、いつぞやの男爵令嬢とは比べ物にならない洗練された仕草だ。エーベルハルトが名乗ると、彼女らも一人ずつ名を名乗り静かに頭を下げる。
「じゃ、紹介はしたのであとは皆でお話下さい」
「何っ!? ま、待てヘンリック!」
そそくさと逃げようとするヘンリックに、慌ててエーベルハルトが呼び止めると、ヘンリックはあからさまに嫌そうな顔を向けた。
「僕は部外者ですので。クルトに任せますよ」
「おい!こらヘンリック!! 僕だって部外者だろ!?」
「君はエーベルハルト殿下の側近だろ? じゃあ君にとって将来仕えるべき相手になるかもしれないじゃないか。君もしっかり話を聞いておいた方がいいと思うけどね」
「それはお前だって同じだろ!?」
「僕はまだ父の跡を継ぐとは決めてないからね」
「ず、ずるいぞっ!!」
友人とは聞いていたが予想以上に気の置けない関係の様で、エーベルハルトはクルトとヘンリックのやり取りに目を白黒させる。そんな三人に、令嬢の方三人といえば一人はぼんやりと、一人はイライラと、そして最後の一人は面白そうに視線を向けていた。
元々冬が穏やかなエールデンでも、ここ最近まれにみる暖かな陽の中執り行われた結婚式は、魔道大国に相応しく様々な魔道具によって華々しい演出がされ、魔道を利用した通信網で国中に映像が届けられたという。
その翌日である今日は、皇家主催の披露宴を兼ねた夜会が開かれている。あまり派手な催しを好まない皇帝夫妻が国を挙げての行事のひとつとして開く夜会だ。国中の主だった貴族と友好国からの来賓が参加する大規模なものとなった。
通常社交シーズンではない冬に夜会が開かれる事はない。その為領地を持つ貴族は通年であれば皆それぞれの領地に帰るのだが、今年は準備の為に残っている者が殆どで、皇都はいつもとは違う賑わいをみせていた。
夜会が開かれている皇宮の大広間も、普段であれば寒々とした空間であるが、今宵は空調が隅々まで行き届き、女性が肌を出しても問題ない程度の気温に調節されている。エールデンでは一部屋くらいであれば庶民の家ですら冷暖房システムを利用している程一般的ではあるが、流石にここまで広いホールを、となるとどれ程の魔力と緻密な結界システムが必要なのだろう? 真似できるものならばしたいが……と他国の者は皆一様に嘆息していた。
そんな夜会は、皇帝夫妻が入場し開始の宣言により始まった。次々と夫妻の元へと来賓が挨拶に向かう。国内の貴族位を持つ者が全て挨拶に向かうとそれだけで夜会が終わってしまうため、今日の夜会は特別に開かれたという事もあって、皇帝夫妻も楽しみたいと皇帝が壇上から挨拶するだけとなっていた。
挨拶を終えると、皇帝は皇妃を伴い壇上から降りホール中央へと進む。その動きに合わせ、楽団が演奏し始める。ダンスの始まりは主催者からと決まっているため他に踊る者は居ない。軽やかに踏むステップは曲が進むにつれ次第に高度なものとなっていき、見る者達を魅了した。
一曲終わり、辺りが拍手に包まれると皇帝は皇妃を伴い壇上へと退いた。それを合図にホール中央へ何組もの男女が進み出る。美しいドレス姿の女性が曲に合わせて回りだすと、一気に華やかさが増し、参加者達の目を楽しませる。
しかし、そんな中央とはまるで正反対に戦々恐々としている人物がホールの一角に居た。元々こういった夜会では、自領の特産品であったり特定の技術などを売り込む商談の場になる事もある。彼らもまたある意味商談をするために集まっていたのだ。
もっとも、売り手と買い手、どちらも不本意ではあったが。
「殿下。こちらがお話のあった令嬢方です」
ヘンリックの声に、三人の令嬢が美しい礼をとる。流石皇妃候補として名が挙がっていた令嬢達だ。振る舞いはいたって上品で、いつぞやの男爵令嬢とは比べ物にならない洗練された仕草だ。エーベルハルトが名乗ると、彼女らも一人ずつ名を名乗り静かに頭を下げる。
「じゃ、紹介はしたのであとは皆でお話下さい」
「何っ!? ま、待てヘンリック!」
そそくさと逃げようとするヘンリックに、慌ててエーベルハルトが呼び止めると、ヘンリックはあからさまに嫌そうな顔を向けた。
「僕は部外者ですので。クルトに任せますよ」
「おい!こらヘンリック!! 僕だって部外者だろ!?」
「君はエーベルハルト殿下の側近だろ? じゃあ君にとって将来仕えるべき相手になるかもしれないじゃないか。君もしっかり話を聞いておいた方がいいと思うけどね」
「それはお前だって同じだろ!?」
「僕はまだ父の跡を継ぐとは決めてないからね」
「ず、ずるいぞっ!!」
友人とは聞いていたが予想以上に気の置けない関係の様で、エーベルハルトはクルトとヘンリックのやり取りに目を白黒させる。そんな三人に、令嬢の方三人といえば一人はぼんやりと、一人はイライラと、そして最後の一人は面白そうに視線を向けていた。
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